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隣の一条くん
- 彼の場合 -

私の隣は、一条佑馬(いちじょうゆうま)という完璧超人の席である。
真っ黒な髪に、黒縁眼鏡。澄んだ二重瞼の瞳に、その下には泣きぼくろ。一箇所も着崩していない制服。
一見、モブ感が滲み出ている彼だが、彼から醸し出すカリスマオーラに跪かない人間は少なからずいない。
成績優秀、容姿端麗、文武両道と三拍子揃った天才で、おまけに家柄も良い。
彼のことを気に止めたことがない人間は存在せず、学校の女子九割が彼のことを好きになった経験がある。そして、私もその例に漏れてはいない。
然し、彼のことを好いた人間は、一週間も経たないうちに冷めてしまう。
何故か。
そう、それは────────




これは一条くんの日常の話です。


────────────────────────────────────


「ん、んぅ・・・・・・」

とある女子生徒が日直で頼まれた仕事をこなしている時、彼は隣に聳え立っていた。
次の授業で使用する実験器具がいくつも入った、ダンボール。それを持っているのは華奢な身体付きの、男子からはかなりモテる西野夢(モブなので覚えなくて結構です)。
彼女はそこまで重たくもないダンボールを持ち運びながら、隣に歩く一条くんをちらりちらりと見る。
そう、彼女も、一条くんに恋をしてしまった女子生徒のうちのひとりだ。

「重たぁい・・・・・・(チラッチラッ)」

小聡明い(あざとい)!私がそこにいれば、間髪入れずにつっこんでいただろう。

彼女はそのまま廊下を歩き続け、そしてもうすぐ教室、という地点に来てしまった。

そんな中、一条くんは隣の西野さんを見もせずに、読書をし続けている。オイ一条。

そして耐え兼ねたのか、西野さんはやっと一条くんの方を向いて、

「一条くぅん。お願いなんだけどぉ、これ、一緒に運んでくれなぁい?」

西野さんは唇を突っ張らせ、身体をくねらせながら言う。
それに一条くんは西野さんの方を向いて、本を閉じる。

「・・・・・・それ、僕になんのメリットがあるの?」

廊下全体が凍りついた。いや、廊下から滑り階段を下り、職員室くらいにまで行ったかもしれない。
取り敢えず、学校の気温が夏だと言うのに下がった。

「え、えっと?」

「・・・いや、教室そこだし。じゃあね、・・・・・・えっと、中山さん?」

一文字も合っていない。

西野さんのガラスハートにビキビキと亀裂が入り、一瞬で砕け散った音が、私には聞こえた。


一条くんは良い人でも悪い人では無い。
ただ、こういう人である。



一条くんは、性格がちょっとアレなのである。

宜しくお願いします。
<2016/06/18 22:30 田中太郎>消しゴム
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