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隣の一条くん
- 彼が神故に・・・? -

私の隣の席の一条くんは、完璧という言葉がまさに似合う完璧超人だ。
成績優秀、文武両道、容姿端麗と三拍子揃った天才で、もちろん女子の人気も高い。
実際、学校の女子生徒の約九割が彼のことを好きになった経験がある。それに、私も例に漏れてはいない。
しかし、彼は持てるとは言っても日持ちはしない。

何故か。

そう。彼は性格がちょっとアレなのである。

これは、文化祭に起こった惨劇の結論である。

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文化祭・・・・・・。それは九月の中間に行われる、全く持って面倒であり、全く持って最終的に感動する学校の祭りである。

そして勿論一条くんがいるこのクラスでは、今年も大いに盛り上がっていた。

「やっぱりぃ、一条くんがロミオのロミジュリやりたぁい。ジュリエットはぁ、えっとぉ・・・(チラッチラッ)」
「いやいや、ここは男女逆転カフェっしょ!・・・一条くんの女装・・・・・・ぐひひ」
「ダメダメ。甘い甘い!一条くんの良さを引き出すためには、執事のカッコでしょ!執事&メイド喫茶!『おかえりなさいませ、お嬢様』なーんて、一条くんに言ってもらいたぁい」

大いに盛り上がるのは結構なことだが、意見がまったくもって一致しない。それに一条くん一条くんとはやし立てられているので、実行委員の男子や他の男子生徒、そして当の本人である一条くんが嫌そうな顔をしている。
なので、私は挙手をし、飢えた狼のような女子共言ってやった。

「ねぇ、一条くん一条くんって、本人の気持ちも考えてあげなよ。文化祭なんだから、みんなで協力できるやつにしよ────」
「「「あぁん?(女子一同)」」」
「あ、何でもないっす」

私の勇気は、たった二秒で終わりを告げた。
新幹線の如く速さで決まってゆく女子会議は、やがて終焉を迎えた。そう。このクラスの出し物が、決定したのだった。
代表らしい女子が前に出て言った。

「えっとー、決りました!多数決の結果、このクラスはロミジュリの演劇で行こうと思いまーす。満場一致でロミオは一条くん、ジュリエットは女子の中で決めます。以下、質問がある人ー。反論は受付けませーん」

怖ぇわ。女子怖ぇわ。
男子共まで竦み上がっている。
と、そんな中、ある生徒が挙手をした。

「オラ!女子、お前ら何勝手に決めてんだよ!オレだってロミオやりて────」
「聞こえなかった?反論は受付けませーん」

満面の笑みで、しかし額には青筋を浮かべ、代表の女子はそういった。

「・・・・・・はい」
「おっけー。じゃあ質問はほかにないみたいなので、これで決定しまーす」

そして、この男子があまりにも不憫な会議は幕を下ろした。しかし、納得のいっていない男子、そしてあまりにも苛立ちすぎて身体をわなわなとさせている一条くんだけは、幕を下ろしたがってはいなかった。


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やがて、当日を迎えた。
役回りは順調に決まった(というのも表向きで、裏では強制的やら、女子の殴り合いやらで決定)。そして決定した結果がこれだ。

ロミオ・・・一条くん
ジュリエット・・・西野夢
王様・・・新藤くん
妃・・・杉浦澪(短髪の女子生徒。3話登場)
一般人・・・その他もろもろ
木・・・宇佐美香菜(私)
その他(照明等)・・・その他もろもろ

いろいろと酷い。クラスの人々は、一条くんにしか興味が無いのだということが、この決定結果を見ただけで分かる。
その上、私は木である。思うのだが、木って必要だろうか?一人だけ木というのが、とても異物感があるのでやめていただきたい。私もその他もろもろに追加してもらいたい。
それよりも、冴えない新藤くんが何故王様という大役になったかというと、男子が女子のせいで物凄くやる気をなくし、そのうえすこぶる付きで機嫌が悪かったので、女子への腹いせとして誰も挙手しなかった結果、押しに弱い新藤くんが王様をやるということになったのだ。

「みんな!今日まで色々あったけど、今日は頑張ろう!エイッエイッオー!」
「「「・・・・・・ぉ―」」」
「あ?」
「「「お、オー!」」」

と、そこで、大事件が発覚した。
「ね、ねえ?一条くんいなく無い?」
「ほ、ホントだ!一条くーん」
「えっ?一条くんロミオなのに!」

そう。主役の一条くんがいないのだ。
女子は、それはそれはもう本気で、文字通り血眼になって探したが、一条くんはどこにもいなかったのだ。それどころか、一条くんを探している女子、待っている男子達がバタバタと倒れだしたのだ。
そして、担任の教師の言葉である。

「え?一条?今日、あいつインフルで休みだぞ?」




────そう。私たちは知らなかったのだ。今、インフルエンザが大流行していたことに・・・・・・!!!




そう。一条くんは自分の身を犠牲にして、教えてくれたのだ。
人は協力して、本来の力を発揮するのだと。少なくとも、暴走していた女子はそう捉えた。
これは、神(一条くん)からの天罰だったのだ。


しかし、一条くん率いるこのクラスは、一条くんの写真集(盗撮)の販売に方向を切り替え、このクラスは成功を収めた。


その話を翌日聞いた一条くんは、二度とこのクラスとは関わらないと、そう誓った。



一条くんがあまりにも不憫。
<2016/10/10 17:47 田中太郎>消しゴム
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