いーち。
にーい。
さーん。
しーい。
ごーお。
病室の白いベッドに転がされた色とりどりのビー玉を幼い風羽は数えていた。
ろーく。
しーち。
はーち。
きゅーう。
じゅーぅ。
『何個 あったの?』
風羽がビー玉を数え終わったとき七歳年上の兄が聞いた。その時見た光景は綺麗なビー玉とそれに触れる小さな自分の手と兄の女性のような白い顔くらいしか高校生の風羽は覚えていない。ただ一言『じゅーう』と言った。教えてもらったばかりの不慣れな言葉だった。
『すごいね、風羽。正解だよ。』そう兄は言った。
当時、三歳の自分と十歳の兄。
考えてみれば兄は小学五年生で、まだ遊びたい盛りだったはずだ。
しかし、兄が外に出て、まず布団から出て遊んでいるのを見たことはなかったし、遊びたいと言ったこともなかった。いつも風羽を布団のかかった自分の膝にのせて遊んでくれていた。だから、「兄は自分と必ず遊ぶものだ」と思っていた。
その日は、兄に誉められたのが嬉しくて、兄の膝の上でキャッキャッと笑って飛び跳ねた。
嬉しくて、楽しくて。
跳ねる風羽につられてビー玉も兄の膝の上をコロコロと転がった。
その日の帰りだったか。
兄はいつものように病院のロビーまで送りに来てくれた。風羽はその小さな手で母の手をしっかりと握った。兄が手をふる。風羽はそれに返そうと手を上げたその時だった。
バラバラバラバラバラッ!!
ビー玉が一斉に散らばる。同時に耳をつんざくような風羽の泣き声がロビーに響く。風羽がこけたのだ。ビー玉はほとんど転がっていってしまい、探しても見つからなかった。だから、風羽も泣き止まない。
『風羽、待ってて』
そう言って兄は何処かへ走っていってしまった。そこで風羽の泣き声もヒートアップする。母がなだめても風羽は聞かない。しばらくして兄が息を切らしながら戻ってきた。
『ほら、風羽』
にこり。兄が笑った。
『んぇ…?』
ジャラッと音がして、風羽の目にビー玉が映しだされる。そして涙でぐしゃぐしゃの顔にみるみる笑顔が戻っていく。
『ありまと…///』
ろれつの回っていない小さな言葉はあの時、兄の耳に届いただろうか。今はもうわからない。兄が死んで一周忌。風羽は高校二年生になった。遥とは相も変わらずギクシャクしている。
願わなくとも必ず明日はくる。
そして期限も。残り一年。第一歩は
明日からだ。
兄が死んだからと言ってへこたれててはいけない。
「頑張らなくちゃ……!!」
風羽は小声で呟いた。
にーい。
さーん。
しーい。
ごーお。
病室の白いベッドに転がされた色とりどりのビー玉を幼い風羽は数えていた。
ろーく。
しーち。
はーち。
きゅーう。
じゅーぅ。
『何個 あったの?』
風羽がビー玉を数え終わったとき七歳年上の兄が聞いた。その時見た光景は綺麗なビー玉とそれに触れる小さな自分の手と兄の女性のような白い顔くらいしか高校生の風羽は覚えていない。ただ一言『じゅーう』と言った。教えてもらったばかりの不慣れな言葉だった。
『すごいね、風羽。正解だよ。』そう兄は言った。
当時、三歳の自分と十歳の兄。
考えてみれば兄は小学五年生で、まだ遊びたい盛りだったはずだ。
しかし、兄が外に出て、まず布団から出て遊んでいるのを見たことはなかったし、遊びたいと言ったこともなかった。いつも風羽を布団のかかった自分の膝にのせて遊んでくれていた。だから、「兄は自分と必ず遊ぶものだ」と思っていた。
その日は、兄に誉められたのが嬉しくて、兄の膝の上でキャッキャッと笑って飛び跳ねた。
嬉しくて、楽しくて。
跳ねる風羽につられてビー玉も兄の膝の上をコロコロと転がった。
その日の帰りだったか。
兄はいつものように病院のロビーまで送りに来てくれた。風羽はその小さな手で母の手をしっかりと握った。兄が手をふる。風羽はそれに返そうと手を上げたその時だった。
バラバラバラバラバラッ!!
ビー玉が一斉に散らばる。同時に耳をつんざくような風羽の泣き声がロビーに響く。風羽がこけたのだ。ビー玉はほとんど転がっていってしまい、探しても見つからなかった。だから、風羽も泣き止まない。
『風羽、待ってて』
そう言って兄は何処かへ走っていってしまった。そこで風羽の泣き声もヒートアップする。母がなだめても風羽は聞かない。しばらくして兄が息を切らしながら戻ってきた。
『ほら、風羽』
にこり。兄が笑った。
『んぇ…?』
ジャラッと音がして、風羽の目にビー玉が映しだされる。そして涙でぐしゃぐしゃの顔にみるみる笑顔が戻っていく。
『ありまと…///』
ろれつの回っていない小さな言葉はあの時、兄の耳に届いただろうか。今はもうわからない。兄が死んで一周忌。風羽は高校二年生になった。遥とは相も変わらずギクシャクしている。
願わなくとも必ず明日はくる。
そして期限も。残り一年。第一歩は
明日からだ。
兄が死んだからと言ってへこたれててはいけない。
「頑張らなくちゃ……!!」
風羽は小声で呟いた。
