「っ!はあっ!」
「うん、だいぶ上手くなったね……でも、まだまだ。隙がありすぎる。」
「っ!やあっ!」
「終わり、かな。……ふっ!」
「うっ……また、負けちゃった。」
「しょうがないさ。1日2日で上達するなら、今頃みんな僕なんか追い越しちゃうからね。」
ここは、私の家から少し離れた天狗の練習場。そこで私は、彼と剣術の鍛練をしていた。
「ちょっと、休憩しよっか。」
「うん。」
彼女とは、入学試験の際に出会った。初対面のはずなのに、自分に話しかけ、更に剣術を教えてくれ、と懇願してきた。第一印象は、『変わったヤツ』だった。勿論断った。
しかし、彼女の戦いぶりを見て、考えが変わった。……彼女の戦い方は、美しく、幽雅で……自分もそんな戦い方ができたら……と不覚にも思ってしまった。その後話しかけると、彼女はにこり、と愛らしい花を咲かせ、
「よろしくお願いしますね。私、剣を扱ったことがないものですから。」
さらりと爆弾発言を放り投げてきた。……しかし、僕の思いは変わらない。
「……条件があります。僕に妖術を教えること。あとは……鍛練は夜に行うこと。その方がそちらにとっても良いでしょう。それから、その口調もです。仮にも貴女は、あの『射命丸 文』様でしょう。敬語など、貴女様が僕に使ってよろしい言葉ではない。これらの条件を飲んでくださるのなら、僕は貴女に、教える程のこともないですが剣術を指南します。」
「分かりました。貴方の提示した条件を飲みます。…………わがままを言うけれど、貴方も敬語をやめて。私の口調は変えるわ。でも、私だけがこうして話すのは、おかしいと思うから。」
「分かった。射命丸 文……文。これから、よろしく。」
「うん。こちらこそよろしく。犬走 銅。(いぬばしり あか)」
私は、彼のくり広げる剣劇に、見とれていた。私も、あんな風に剣術を使いたい。漠然と、そう思った。
私は、今まで妖術や能力を応用した技で、相手を捩じ伏せてきた。だからだろう。初対面だった彼に、あんなことを頼んでしまって。……結果は、無理だった。あたりまえだろう。誰でもそうするに决まっている。
さあ、私の出番だ。いつものように、存分に暴れてきましょう。
……驚いた。とにかく驚いた。彼が、私にこう言ってきた。要約すると、「条件あるけどいいよ。」ということになる。良かった。もう、絶対に『変なヤツと思われた』と思ってたもん!それにしても、妖術なんて……私、生まれた時から使ってたと思うんだけどな……やっぱり、鴉と白狼は役割が違うからかな。
「……文。何で文は、僕なんかに剣術の指南を頼んだのか、教えてくれるかな?」
「一番。」
「え?」
「一番、貴方が、凄いと思ったから。私、白狼天狗の試合、ずっと見てたの。そしたら、貴方がいたから。本当に凄かった。…………何で、貴方が一番最後だったのか、分からない。」
・・・・・・・
「…………戦う前、筆記の問題があったよね?あれ、全部、解答しなかったんだ。」
「え」
「さあ、そろそろ再開しようか。今の文の課題は、隙をなくすことと、『風を剣に纏わせる』ことだよ。」
「はい。…………やあぁっ!」
「うん、良くなった。でも、まだ少しダメかな。ほら、こことか。」
「あ…………全然ダメね、私。向いてないのかな。」
銅にまわりこまれ、背中側を木刀でつつかれる。その拍子に、私の手にあったはずの木刀は、彼の手に握られていた。
「いや、この短期間でそこまでできるようになったんだ、とても凄いよ。……妖術の練習にしようか。」
「そんなこと、ないのに、何で……」
私の今できることは、風を纏わせ、斬りかかることくらい。そんなの、できるの内に入らない。
「文?」
「……うん、練習しよう。」
「……銅、何で貴方は私に妖術を?」
「綺麗だと思ったから。文の妖術は、綺麗だから。……初めて文と話した後に、文の戦い、見てたんだよ。幸い動体視力には自信があるから、文のこと、よく見えた。……文と一緒にいたのって、紅葉山様だろ?2人とも、有名だよ。10秒で終わったのは、あの試合だけだから。あの試合を見て、自分もあんな風になりたいって……思ったから。バカだよね、僕って。才能なんかかけらもない、能力も剣術にしか使い道がないんだから、練習したって、無駄なんだ。なのに」
「そんなこと、ない!……無駄なんかじゃ、ない。貴方と私が本気で闘ったら、貴方が勝つんだから。……その場合、私は死ぬでしょうけどね。」
「何で、やってもないのに分かるんだ?」
「……貴方の能力ですよ。たとえ私が風で身を護ろうとも、その能力の前では無意味だから。……風と私の間には、少し間があるの。私が自身の身を傷付けないように、本能でそれ以上寄せ付けない。貴方は私から離れた位置で攻撃し、その場所から私に『届かせれば』いいだけ。その前に私が攻撃していたとしても、貴方は回避行動を取れるのに対して、私は逃げられない。貴方の剣で、八つ裂きにされるでしょう。」
「それは、考えたことがなかったな。」
「だから、私は貴方と闘えば意図も容易く死ぬわ。…………それこそ、無残なくらいに。」
「僕は、文に攻撃なんかしないよ。文は大事な友達で……仲間だから。」
「だれかに仲間なんて言われたの、初めて……これからも、よろしくね……」
「こっちこそ。」
再び、練習が始まる。しかし、今からは教わる方ではなく、教える方。私は剣術のことは全くできないのに対し、彼は最初から平均くらいは妖術が扱えた。こんなの、申し訳なさすぎる。私が妖術に関して教えてあげられることなんてほとんどないのに。どうやって思返しをすればいいのか分からない。
また今度桐にでも聞いてみようかな……でも、バレちゃうか。自分で考えよっかな。
「うん、だいぶ上手くなったね……でも、まだまだ。隙がありすぎる。」
「っ!やあっ!」
「終わり、かな。……ふっ!」
「うっ……また、負けちゃった。」
「しょうがないさ。1日2日で上達するなら、今頃みんな僕なんか追い越しちゃうからね。」
ここは、私の家から少し離れた天狗の練習場。そこで私は、彼と剣術の鍛練をしていた。
「ちょっと、休憩しよっか。」
「うん。」
彼女とは、入学試験の際に出会った。初対面のはずなのに、自分に話しかけ、更に剣術を教えてくれ、と懇願してきた。第一印象は、『変わったヤツ』だった。勿論断った。
しかし、彼女の戦いぶりを見て、考えが変わった。……彼女の戦い方は、美しく、幽雅で……自分もそんな戦い方ができたら……と不覚にも思ってしまった。その後話しかけると、彼女はにこり、と愛らしい花を咲かせ、
「よろしくお願いしますね。私、剣を扱ったことがないものですから。」
さらりと爆弾発言を放り投げてきた。……しかし、僕の思いは変わらない。
「……条件があります。僕に妖術を教えること。あとは……鍛練は夜に行うこと。その方がそちらにとっても良いでしょう。それから、その口調もです。仮にも貴女は、あの『射命丸 文』様でしょう。敬語など、貴女様が僕に使ってよろしい言葉ではない。これらの条件を飲んでくださるのなら、僕は貴女に、教える程のこともないですが剣術を指南します。」
「分かりました。貴方の提示した条件を飲みます。…………わがままを言うけれど、貴方も敬語をやめて。私の口調は変えるわ。でも、私だけがこうして話すのは、おかしいと思うから。」
「分かった。射命丸 文……文。これから、よろしく。」
「うん。こちらこそよろしく。犬走 銅。(いぬばしり あか)」
私は、彼のくり広げる剣劇に、見とれていた。私も、あんな風に剣術を使いたい。漠然と、そう思った。
私は、今まで妖術や能力を応用した技で、相手を捩じ伏せてきた。だからだろう。初対面だった彼に、あんなことを頼んでしまって。……結果は、無理だった。あたりまえだろう。誰でもそうするに决まっている。
さあ、私の出番だ。いつものように、存分に暴れてきましょう。
……驚いた。とにかく驚いた。彼が、私にこう言ってきた。要約すると、「条件あるけどいいよ。」ということになる。良かった。もう、絶対に『変なヤツと思われた』と思ってたもん!それにしても、妖術なんて……私、生まれた時から使ってたと思うんだけどな……やっぱり、鴉と白狼は役割が違うからかな。
「……文。何で文は、僕なんかに剣術の指南を頼んだのか、教えてくれるかな?」
「一番。」
「え?」
「一番、貴方が、凄いと思ったから。私、白狼天狗の試合、ずっと見てたの。そしたら、貴方がいたから。本当に凄かった。…………何で、貴方が一番最後だったのか、分からない。」
・・・・・・・
「…………戦う前、筆記の問題があったよね?あれ、全部、解答しなかったんだ。」
「え」
「さあ、そろそろ再開しようか。今の文の課題は、隙をなくすことと、『風を剣に纏わせる』ことだよ。」
「はい。…………やあぁっ!」
「うん、良くなった。でも、まだ少しダメかな。ほら、こことか。」
「あ…………全然ダメね、私。向いてないのかな。」
銅にまわりこまれ、背中側を木刀でつつかれる。その拍子に、私の手にあったはずの木刀は、彼の手に握られていた。
「いや、この短期間でそこまでできるようになったんだ、とても凄いよ。……妖術の練習にしようか。」
「そんなこと、ないのに、何で……」
私の今できることは、風を纏わせ、斬りかかることくらい。そんなの、できるの内に入らない。
「文?」
「……うん、練習しよう。」
「……銅、何で貴方は私に妖術を?」
「綺麗だと思ったから。文の妖術は、綺麗だから。……初めて文と話した後に、文の戦い、見てたんだよ。幸い動体視力には自信があるから、文のこと、よく見えた。……文と一緒にいたのって、紅葉山様だろ?2人とも、有名だよ。10秒で終わったのは、あの試合だけだから。あの試合を見て、自分もあんな風になりたいって……思ったから。バカだよね、僕って。才能なんかかけらもない、能力も剣術にしか使い道がないんだから、練習したって、無駄なんだ。なのに」
「そんなこと、ない!……無駄なんかじゃ、ない。貴方と私が本気で闘ったら、貴方が勝つんだから。……その場合、私は死ぬでしょうけどね。」
「何で、やってもないのに分かるんだ?」
「……貴方の能力ですよ。たとえ私が風で身を護ろうとも、その能力の前では無意味だから。……風と私の間には、少し間があるの。私が自身の身を傷付けないように、本能でそれ以上寄せ付けない。貴方は私から離れた位置で攻撃し、その場所から私に『届かせれば』いいだけ。その前に私が攻撃していたとしても、貴方は回避行動を取れるのに対して、私は逃げられない。貴方の剣で、八つ裂きにされるでしょう。」
「それは、考えたことがなかったな。」
「だから、私は貴方と闘えば意図も容易く死ぬわ。…………それこそ、無残なくらいに。」
「僕は、文に攻撃なんかしないよ。文は大事な友達で……仲間だから。」
「だれかに仲間なんて言われたの、初めて……これからも、よろしくね……」
「こっちこそ。」
再び、練習が始まる。しかし、今からは教わる方ではなく、教える方。私は剣術のことは全くできないのに対し、彼は最初から平均くらいは妖術が扱えた。こんなの、申し訳なさすぎる。私が妖術に関して教えてあげられることなんてほとんどないのに。どうやって思返しをすればいいのか分からない。
また今度桐にでも聞いてみようかな……でも、バレちゃうか。自分で考えよっかな。
