朝、準備をしてすぐに教室へ向かうとそこには誰と誰が同じ組か、どの組同士が戦うのかなどが表示された紙が置いてあり、ものすごい人だかりができていた。
「え……?」
文と俺が同じ組になっていた。
いや、朝起きて文が俺の部屋にいた時点でうすうす気付いていたけど。
みんながワーワーと騒いでいるところに指示が通る。
「30分後に試合を始めますので生徒の皆さんは競技場1と2ヘ移動してください。最初の試合は1番と4番です。」
俺と文は8番、銅と椛は14番……というか銅と椛、同じ組だったんだな。
銅と椛には色々助けられてるからな……戦えるといいな。まあ、1~10組で1番にならなきゃいけないが。
「…………桐。」
彼の名前を呼ぶと自信が湧いてくるような気がする。ああ、やっぱり私は今までずっと助けられてきたんだな、と感じる。
今日こそは私の力で勝ちたいな。でも、きっとまた助けられてしまうんだろうな。……私は私の全力で闘うだけ。
俺達は最初5番と戦い、圧倒的な優位で勝利。……鍛えすぎたかな。
銅達も最初の戦いは普通に勝ったらしい。
これで残りは5組ずつになった。残ったのは、2、4、8、9、10、12、13、14、15、18、で10番と12番は違う組だが数合わせの為に戦うことになり、次の戦いで一番速く勝った組はその次の戦いは無しということを指示で聞いた。
俺達の次の相手は4番だ。銅達の相手は18番らしい。ここで1番速く勝つことができれば次に戦わなくても3位以上になれる。
速さでは絶対に負けない。そう言い切れる自信がある。
だって、俺の隣には文がいるのだから。必ず大丈夫。言葉を交わさずとも分かる、安心感。
『俺達なら行ける。どこまでも。』
過去最速だと思われるくらいの速さで4番の小柄な男子ぺアを倒し切ることができた。
記録は約20秒……1番、だった。
文がいたからできたことだし、本当に文と同じ組になれて良かった。
これで次は戦わずにすむ。このまま決勝までいけるといいな。
これで残りが5組になり、2、8、10、14、18になった。その内俺達はこの戦いは通過、よって2対10、14対15になり、この戦いでも速く勝った方が次の戦いはなしでその次に出ることができるらしい。そういえぱまた何か他の行事のときも同じルールだと言っていたような気がする。
勿論ここでも銅達は突破し、見事タイムでも勝利した。
次は俺達の番だ。対戦相手の10番は2人の鴉天狗の少女だ。……姫海棠家の者がいるのか。
この戦いで勝てたら次は……文とか。
はっきり言って勝てる気が全くしない。…………はぁ。
もし勝てたとしても銅か椛と戦わないといけない。うん、不可能な気がする。それでも全力を尽くすことは変わらないけどね。
試合開始の合図がなった。
数瞬遅れて文が浮いている足元の地面に風を発生させ、永続的に続くように力を働かせる。これで完全な空中戦になった。
これには相手もびっくりしたようで、慌てて浮かぶところを俺が木刀の峰で打ち落とす。
挟み撃ちのような形でこちらから攻撃した。文と目が合い、様子を見ようと目線で伝える。
相手は鴉天狗の為、主に妖術を使用するのだろう。しかし、油断はできない。どんな技を使うのか知らないし、戦闘スタイルも分からない。
相手は風にぶち当たることもなく、体勢を整えようとしている。流石はここまで残るだけはあるな。
再び文と視線を交わす。
(立ち上がりましたよ、どうします?)
(もう同じ戦法は使えないだろうな。)
(分かりました。私が接近します。)
(じゃあ俺は後援するぞ。ほら、これ。)
(ありがとう。)
これも一緒にいた時間の成せる技だといわんばかりに文に木刀を投げ渡す。
それを受け取ると同時に文は敵中へ飛び込んでいく。速い。
敵が文の技を避けようと動いている方に接近させていた雲から雷を落とす。結局能力使ってるけどな。
それに気付いた相手が更に違う方向へ逃げようとするが自らに風を纏わせた文がそれを阻止し、木刀を振るう。これで1人脱落。
そこからは速かった。俺が何かをする間もなく、あっという間に試合が終わった。
文の戦いに判断が遅れたのは俺だけではなかったようで、文が相手を倒し終わってから10秒くらいは皆ぽかんとしていた。
それ程までに彼女は……文は美しく、勝っていた。
これで残りは俺と文、銅と椛になったわけだが。次の試合では仲間が敵だ。
…………つまり、俺の相手は文な訳で。
「こんなの、ムリに決まってるだろ。」
「……桐、1つ言わせてもらいます。…………私は貴方に負ける気は、ありません。本気でいきます。」
「分かった。俺も本気でいくよ。」
能力も全開でいく。全開とは言ってもまだまだ発展途上にも辿り着けないくらいしか扱えないが。それでも山が半壊するぐらいのことはできる。文の力量にも見合うだろう。
どうやら先に銅達が戦うらしい。そういえば、アイツらって双子の姉弟だっけ。たしか白狼天狗は双子とかが多いんだよな。白狼天狗がなんであんなにコンビネーションいいのか分かる気がする。まあ、俺と文も家族みたいなものだけど。
それにしても、何で文はあんなに強いのだろうか。文がとてもたくさんの努力をしているのは知っている。しかし、それだけではないような気がするのだ。何というのだろう、才能は才能でもそんじょそこらの才能とは比べものにならない圧倒的な強さの才能。流れるような一連の動きは観る者を魅せる。そんな才能の結晶のような少女に、せいぜい前の記憶があるだけの俺が勝てる訳がない。
文について想いを巡らせていると、いつの間にか銅達の試合が終わっていた。
どうやら長期戦になっていたらしい。まあ、そりゃそうだ。双子には不思議なテレパシーが通じ合っているとかよく言われていたし、今までずっと一緒にいたなら相手の戦闘パターンも分かっていただろうし。
次は俺達か、と思うとどうしても緊張する。というか文と戦うとか初めてな気がする。
試合開始の合図がなる。
合図と同時に雨を降らせる。これは嵐の応用版だ。
雨が降ると羽根が濡れて重くなり、速さも落ちるはず……だったのだが。
これまた文も風の応用で自分のまわりに風の壁をつくり、雨を阻んでいる。
ヤバイ。
才能だけではなく、頭もいいのだ、文は。俺は人間のときのままだから遠く及ばない。
地震も使えない、雨も使えない、雨を降らせたから火も使えない、春だから雪も使えない、雷も使えない。危ないし。こうなったら、こっちも接近して刀でいくしかない!
この身1つと木刀を持ち、文の方へ突っこむ。どうやら予想外だったようでびっくりしている。だが、そこは文だ。腕のあたりを狙った木刀は文が反射的に動かした自らの木刀によって受け止められていた。
恐ろしいくらいの反射神経と神経伝達速度、そしてその頭脳、今の攻撃も普通に視えていたのだろう。ここで一旦距離をおくが、この程度の距離、文の前では無に等しい。
無言の対峙が続く。凛とした文の顔、ああ、『くる』と思い、文が狙いそうな位置に感覚を集める。
彼女が動く、だが事前に予想していた通りだった為、隙ができることはなく、そのまま足に打ち込む、これまた予想外だったようだが受け止められる。
先程よりも長い距離をおき、木刀を構える。……これは、マズイ。文が自身の身体に風を纏おうとしている。うん、もう危ないとかそういう問題ではないような気がする。雷を使おう。
文のまわりを雷で囲う。名付けて『四方雷結界』。今考えた。
すぐに解かれ、文の攻撃が始まった。風を纏った文は鴉天狗でも視認できない速さだ。辛うじて気配が分かるくらいだ。
文が行くと思われる位置に雷を落としてはいるが、全て綺麗に避けられてしまう。
そうこうしている間にもぐるぐると俺のまわりを飛んでいる文との距離がどんどん縮んでいく。
近付いてくるに従って風で肌が斬られていく。
もう既に詰んでいるような気がするが、最後に一矢報いたいな。
文の真似をして雷を纏う(※10cmくらい肌と間を開けて)
今は360度風に囲まれている。だから……
「文っ!!!」
大声で叫ぶと、一瞬だけピタリと風が止んだ気がした。
本当に一瞬だけど、その隙があればいける…………!なんてことなく、文と俺の木刀がぶつかり合い、俺の木刀が不吉な音を立てて折れ、そのままの勢いで文の木刀は俺の方ヘ向かってくる。
そして……
目と鼻の先で止まった。いや、風も消えてたからそこまで威力がある訳ではないのだが、何故だかとても怖かった。
そして、世界は暗転した。
「え……?」
何故だか桐は気絶してしまった。そんなに追い詰めていないと思うんだけど……?
「勝者、射命丸 文!」
試合終了の合図が空しく響いている。
ああ、勝てたんだ、私。
決は銅と戦うんだ……なんだか楽しくなってきたな。
その後15分くらい休憩があった。
「……文?」
「あ、桐、起きたんですね。急に気絶したからびっくりしましたよ。」
「ごめん。……それにしても文、すごいな!決勝だぞ!」
「…………ありがとう。」
「次も頑張れ。俺も3位決定戦頑張るから、文も頑張って優勝しろよ!」
「はい!」
彼に応援されたら、絶対に勝てるような気がしてきた。
きっと今なら…………勝てる。別に勝ちたい訳じゃないけど、それで皆が喜んでくれるなら、勝ちたいな。
「それじゃあ、そろそろ時間なので行ってきますね!」
「ああ、頑張れよ!」
「はい!」
銅は私に剣術を、私は銅に妖術を教えた。だから実力は大差ないだろう。相手がどんな戦いをするか……そんなのはいつも模擬戦をしているから知り尽くしている。……それでも、応援されたからには勝たないと。
試合開始の合図が響く。
彼の能力は千里まで届かせることができる。…………全てのものを。
限りなく身体に風を近付ける。少しでも隙間があると、そこに攻撃が届いてしまう。
とりあえず、一直線に彼の元を目指す。
誰にも見せていない秘策がある。それは圧縮した妖力を球状にして放出する技。何となく名前を考えたくなったこの技の名前は『幻想風靡』。
私の速さで飛びながらばらまくから、かなり相手がこちらを攻撃しにくくなるだろう。
勝つためには、これしかない。そう確信できる。
銅のまわりを囲むようにぐるぐると私の最高速でまわり、緑色に発光している球体を数え切れないくらいに放つ。
誰にも見せていなかった、それはつまりこの技の対処法も分からないということ。動きが鈍くなり、隙ができた。
自分の放った球体を避けつつ、銅に背後から近付く。銅が気付いたときにはもう遅い。決着は、ついた。
「…………っ、射命丸 文の勝利、よって射命丸 文の優勝です!」
戻ると、桐がいた。
「文っ!おめでとう!」
「…………ありがとう。」
「文?どうしたんだ?」
「ありがとう。貴方がいてくれたから、貴方が応援してくれたから、私は頑張れた。本当に……ありがとう。」
「いや、そんなことないよ……俺だって、文がいてくれるから今までもこれからも………ずっと頑張れる。」
「桐……大好きですよ。貴方のこと。私をあの屋敷から連れ出してくれて、本当にありがとう。貴方のおかげで今の私はいるんです。」
「だから……………これからも、よろしくお願いしますね?」
「え……?」
文と俺が同じ組になっていた。
いや、朝起きて文が俺の部屋にいた時点でうすうす気付いていたけど。
みんながワーワーと騒いでいるところに指示が通る。
「30分後に試合を始めますので生徒の皆さんは競技場1と2ヘ移動してください。最初の試合は1番と4番です。」
俺と文は8番、銅と椛は14番……というか銅と椛、同じ組だったんだな。
銅と椛には色々助けられてるからな……戦えるといいな。まあ、1~10組で1番にならなきゃいけないが。
「…………桐。」
彼の名前を呼ぶと自信が湧いてくるような気がする。ああ、やっぱり私は今までずっと助けられてきたんだな、と感じる。
今日こそは私の力で勝ちたいな。でも、きっとまた助けられてしまうんだろうな。……私は私の全力で闘うだけ。
俺達は最初5番と戦い、圧倒的な優位で勝利。……鍛えすぎたかな。
銅達も最初の戦いは普通に勝ったらしい。
これで残りは5組ずつになった。残ったのは、2、4、8、9、10、12、13、14、15、18、で10番と12番は違う組だが数合わせの為に戦うことになり、次の戦いで一番速く勝った組はその次の戦いは無しということを指示で聞いた。
俺達の次の相手は4番だ。銅達の相手は18番らしい。ここで1番速く勝つことができれば次に戦わなくても3位以上になれる。
速さでは絶対に負けない。そう言い切れる自信がある。
だって、俺の隣には文がいるのだから。必ず大丈夫。言葉を交わさずとも分かる、安心感。
『俺達なら行ける。どこまでも。』
過去最速だと思われるくらいの速さで4番の小柄な男子ぺアを倒し切ることができた。
記録は約20秒……1番、だった。
文がいたからできたことだし、本当に文と同じ組になれて良かった。
これで次は戦わずにすむ。このまま決勝までいけるといいな。
これで残りが5組になり、2、8、10、14、18になった。その内俺達はこの戦いは通過、よって2対10、14対15になり、この戦いでも速く勝った方が次の戦いはなしでその次に出ることができるらしい。そういえぱまた何か他の行事のときも同じルールだと言っていたような気がする。
勿論ここでも銅達は突破し、見事タイムでも勝利した。
次は俺達の番だ。対戦相手の10番は2人の鴉天狗の少女だ。……姫海棠家の者がいるのか。
この戦いで勝てたら次は……文とか。
はっきり言って勝てる気が全くしない。…………はぁ。
もし勝てたとしても銅か椛と戦わないといけない。うん、不可能な気がする。それでも全力を尽くすことは変わらないけどね。
試合開始の合図がなった。
数瞬遅れて文が浮いている足元の地面に風を発生させ、永続的に続くように力を働かせる。これで完全な空中戦になった。
これには相手もびっくりしたようで、慌てて浮かぶところを俺が木刀の峰で打ち落とす。
挟み撃ちのような形でこちらから攻撃した。文と目が合い、様子を見ようと目線で伝える。
相手は鴉天狗の為、主に妖術を使用するのだろう。しかし、油断はできない。どんな技を使うのか知らないし、戦闘スタイルも分からない。
相手は風にぶち当たることもなく、体勢を整えようとしている。流石はここまで残るだけはあるな。
再び文と視線を交わす。
(立ち上がりましたよ、どうします?)
(もう同じ戦法は使えないだろうな。)
(分かりました。私が接近します。)
(じゃあ俺は後援するぞ。ほら、これ。)
(ありがとう。)
これも一緒にいた時間の成せる技だといわんばかりに文に木刀を投げ渡す。
それを受け取ると同時に文は敵中へ飛び込んでいく。速い。
敵が文の技を避けようと動いている方に接近させていた雲から雷を落とす。結局能力使ってるけどな。
それに気付いた相手が更に違う方向へ逃げようとするが自らに風を纏わせた文がそれを阻止し、木刀を振るう。これで1人脱落。
そこからは速かった。俺が何かをする間もなく、あっという間に試合が終わった。
文の戦いに判断が遅れたのは俺だけではなかったようで、文が相手を倒し終わってから10秒くらいは皆ぽかんとしていた。
それ程までに彼女は……文は美しく、勝っていた。
これで残りは俺と文、銅と椛になったわけだが。次の試合では仲間が敵だ。
…………つまり、俺の相手は文な訳で。
「こんなの、ムリに決まってるだろ。」
「……桐、1つ言わせてもらいます。…………私は貴方に負ける気は、ありません。本気でいきます。」
「分かった。俺も本気でいくよ。」
能力も全開でいく。全開とは言ってもまだまだ発展途上にも辿り着けないくらいしか扱えないが。それでも山が半壊するぐらいのことはできる。文の力量にも見合うだろう。
どうやら先に銅達が戦うらしい。そういえば、アイツらって双子の姉弟だっけ。たしか白狼天狗は双子とかが多いんだよな。白狼天狗がなんであんなにコンビネーションいいのか分かる気がする。まあ、俺と文も家族みたいなものだけど。
それにしても、何で文はあんなに強いのだろうか。文がとてもたくさんの努力をしているのは知っている。しかし、それだけではないような気がするのだ。何というのだろう、才能は才能でもそんじょそこらの才能とは比べものにならない圧倒的な強さの才能。流れるような一連の動きは観る者を魅せる。そんな才能の結晶のような少女に、せいぜい前の記憶があるだけの俺が勝てる訳がない。
文について想いを巡らせていると、いつの間にか銅達の試合が終わっていた。
どうやら長期戦になっていたらしい。まあ、そりゃそうだ。双子には不思議なテレパシーが通じ合っているとかよく言われていたし、今までずっと一緒にいたなら相手の戦闘パターンも分かっていただろうし。
次は俺達か、と思うとどうしても緊張する。というか文と戦うとか初めてな気がする。
試合開始の合図がなる。
合図と同時に雨を降らせる。これは嵐の応用版だ。
雨が降ると羽根が濡れて重くなり、速さも落ちるはず……だったのだが。
これまた文も風の応用で自分のまわりに風の壁をつくり、雨を阻んでいる。
ヤバイ。
才能だけではなく、頭もいいのだ、文は。俺は人間のときのままだから遠く及ばない。
地震も使えない、雨も使えない、雨を降らせたから火も使えない、春だから雪も使えない、雷も使えない。危ないし。こうなったら、こっちも接近して刀でいくしかない!
この身1つと木刀を持ち、文の方へ突っこむ。どうやら予想外だったようでびっくりしている。だが、そこは文だ。腕のあたりを狙った木刀は文が反射的に動かした自らの木刀によって受け止められていた。
恐ろしいくらいの反射神経と神経伝達速度、そしてその頭脳、今の攻撃も普通に視えていたのだろう。ここで一旦距離をおくが、この程度の距離、文の前では無に等しい。
無言の対峙が続く。凛とした文の顔、ああ、『くる』と思い、文が狙いそうな位置に感覚を集める。
彼女が動く、だが事前に予想していた通りだった為、隙ができることはなく、そのまま足に打ち込む、これまた予想外だったようだが受け止められる。
先程よりも長い距離をおき、木刀を構える。……これは、マズイ。文が自身の身体に風を纏おうとしている。うん、もう危ないとかそういう問題ではないような気がする。雷を使おう。
文のまわりを雷で囲う。名付けて『四方雷結界』。今考えた。
すぐに解かれ、文の攻撃が始まった。風を纏った文は鴉天狗でも視認できない速さだ。辛うじて気配が分かるくらいだ。
文が行くと思われる位置に雷を落としてはいるが、全て綺麗に避けられてしまう。
そうこうしている間にもぐるぐると俺のまわりを飛んでいる文との距離がどんどん縮んでいく。
近付いてくるに従って風で肌が斬られていく。
もう既に詰んでいるような気がするが、最後に一矢報いたいな。
文の真似をして雷を纏う(※10cmくらい肌と間を開けて)
今は360度風に囲まれている。だから……
「文っ!!!」
大声で叫ぶと、一瞬だけピタリと風が止んだ気がした。
本当に一瞬だけど、その隙があればいける…………!なんてことなく、文と俺の木刀がぶつかり合い、俺の木刀が不吉な音を立てて折れ、そのままの勢いで文の木刀は俺の方ヘ向かってくる。
そして……
目と鼻の先で止まった。いや、風も消えてたからそこまで威力がある訳ではないのだが、何故だかとても怖かった。
そして、世界は暗転した。
「え……?」
何故だか桐は気絶してしまった。そんなに追い詰めていないと思うんだけど……?
「勝者、射命丸 文!」
試合終了の合図が空しく響いている。
ああ、勝てたんだ、私。
決は銅と戦うんだ……なんだか楽しくなってきたな。
その後15分くらい休憩があった。
「……文?」
「あ、桐、起きたんですね。急に気絶したからびっくりしましたよ。」
「ごめん。……それにしても文、すごいな!決勝だぞ!」
「…………ありがとう。」
「次も頑張れ。俺も3位決定戦頑張るから、文も頑張って優勝しろよ!」
「はい!」
彼に応援されたら、絶対に勝てるような気がしてきた。
きっと今なら…………勝てる。別に勝ちたい訳じゃないけど、それで皆が喜んでくれるなら、勝ちたいな。
「それじゃあ、そろそろ時間なので行ってきますね!」
「ああ、頑張れよ!」
「はい!」
銅は私に剣術を、私は銅に妖術を教えた。だから実力は大差ないだろう。相手がどんな戦いをするか……そんなのはいつも模擬戦をしているから知り尽くしている。……それでも、応援されたからには勝たないと。
試合開始の合図が響く。
彼の能力は千里まで届かせることができる。…………全てのものを。
限りなく身体に風を近付ける。少しでも隙間があると、そこに攻撃が届いてしまう。
とりあえず、一直線に彼の元を目指す。
誰にも見せていない秘策がある。それは圧縮した妖力を球状にして放出する技。何となく名前を考えたくなったこの技の名前は『幻想風靡』。
私の速さで飛びながらばらまくから、かなり相手がこちらを攻撃しにくくなるだろう。
勝つためには、これしかない。そう確信できる。
銅のまわりを囲むようにぐるぐると私の最高速でまわり、緑色に発光している球体を数え切れないくらいに放つ。
誰にも見せていなかった、それはつまりこの技の対処法も分からないということ。動きが鈍くなり、隙ができた。
自分の放った球体を避けつつ、銅に背後から近付く。銅が気付いたときにはもう遅い。決着は、ついた。
「…………っ、射命丸 文の勝利、よって射命丸 文の優勝です!」
戻ると、桐がいた。
「文っ!おめでとう!」
「…………ありがとう。」
「文?どうしたんだ?」
「ありがとう。貴方がいてくれたから、貴方が応援してくれたから、私は頑張れた。本当に……ありがとう。」
「いや、そんなことないよ……俺だって、文がいてくれるから今までもこれからも………ずっと頑張れる。」
「桐……大好きですよ。貴方のこと。私をあの屋敷から連れ出してくれて、本当にありがとう。貴方のおかげで今の私はいるんです。」
「だから……………これからも、よろしくお願いしますね?」
