守備兵A「うへえ……うまいもん食えてよかったな」
守備兵B「ウサギのスープ、最高だった……」
守備兵C「おれはもう飲めないぞ……
ワインで腹がたぷたぷだぞ……うへ」
守備兵たちは、大広間にごろりと横たわった。
早くもいびきをかき始めている。
かつてお城が生まれた頃は、城主も兵士も、
大広間で食事をし、
大広間で休んで寝食をともにしていたそうだ。
しかし、今や城主は別の部屋に引きこもり、
兵だけが大広間に残っている。時代は変わるものだ。
おれも兵士のそばに寝転がったが、
なかなか睡魔は訪れなかった。
シャムシェルもどこに行ったのか、姿が見えない。
(眠れないな……)
少し大広間の中心から離れると、見知った人影が立っていた。
そこにいたのは、同じように眠れない様子のアイシスだった。
リュート「眠れないのか」
アイシス「別に」
リュート「眠れないんだろ」
アイシスは答えなかった。
やはり、眠れないらしい。
アイシス「お腹がムカムカするわ。ひどいお酒。ここって最低ね」
リュート「そう、最低最低って言うなよ。
王都が世界の基準ってわけじゃないだろ」
アイシス「人に意見できると思っているの?」
リュート「親衛隊だからって偉そうにしていたら、
いざって時に人がついてこなくなるぞ」
アイシスが黙った。
痛いところを突かれてしまったらしい。
リュート「モテールのこと、考えているのか?」
アイシス「あなたに関係ないでしょ」
声が少し険を帯びていた。
やはり、そうだった。
モテールとアイシスは確か婚約者になったはずだ。
でも、モテールには女がいる。別の女と遊びまくっている。
きっとその女とは、今も関係が続いているのだろう。
なぜ、モテールなどと婚約したのだろう。
アイシスにだって選ぶ権利はあると思うが……。
アイシス「はあ……」
アイシスがため息をついた。
リュート「ベッドが変わると眠れないタイプだろ」
アイシス「だったら、何?」
リュート「眠れるようにしてやろっか?」
アイシス「あなたに何ができるっていうの?」
リュート「いいからじっとしてろ」
おれはアイシスの頭に手を伸ばした。
アイシス「汚い手でさわら------ひぁっ!」
伸ばした手を頭に置くと、ビクッとアイシスがふるえた。
アイシスはもう眠そうな顔をしている。
おれはゆっくりと手を離した。
アイシス「何を……したの……」
リュート「おまじない」
アイシス「わたしに変な真似をしたら……
許さないん……だか……ら……」
倒れたアイシスを、慌てておれは抱き留めた。
まぶたはすでに閉じて、あちらの世界に行ってしまっている。
(ちょっとやりすぎたかな)
寝て重くなったアイシスの身体を両腕に抱くと、
おれは奥方の部屋へ運び込んだ。
--------------------------------------------------------------------------------
ロクサーヌ「まあ……」
ロクサーヌが驚いた顔をしていた。まだ普段着を着ている。
下着姿にはなっていなかったらしい。
リュート「夜分遅くにすみません……こいつが寝ちゃって」
ロクサーヌ「くす。きっと王都からの長旅で疲れたのね」
リュート「たぶん」
嘘だった。
おれが眠らせたのだ。
ロクサーヌ「こちらに寝かせて」
ロクサーヌは普段自分が使っているベッドに案内した。
旦那の長官には自分の寝室を譲ってまで
もてなそうという気がないらしいが、奥方は違うらしい。
アイシスの身体を横たえると、ロクサーヌは微笑んだ。
ロクサーヌ「この子も、もっと素直になればいいのにね。
変に片意地なんか張らないで……。所詮、女は女なのに」
リュート「ええ……」
おっしゃる通りだ。
黙っていれば巨乳だし、結構いい女だと思うのだが、
なにぶん、性格に難がある。
リュート「で、では、おれはこれで……」
ロクサーヌ「待って。せっかくだからもう少し……」
リュート「いや、でも、女性の部屋に男がいるというのは------」
ロクサーヌ「二人きりではないわ。3人よ」
リュート「でも------」
ロクサーヌ「わたしのこと、お嫌い?」
そう言われると、首を振れなかった。
リュート「では、もう少し」
おれがそう言うと、ロクサーヌは安心したように微笑んだ。
リュート「ずいぶん遅くまでおきていらしたんですね」
ロクサーヌ「ええ……なんだか、お乳が張っちゃって」
リュート「……い?」
ロクサーヌ「わたし、変なの。子供もいないのに、お乳が出ちゃうの。
だから、毎日搾らなきゃいけなくて……」
突然の告白にドキマギしてしまった。
ロクサーヌは母乳が出るというのだ。
思わず、飲みたい……と思ってしまったおれは、
自分を恥じた。
(だめだ!そんなけしからん妄想をするなんて!)
ロクサーヌ「ごめんなさい、変なお話をして」
リュート「い、いえ……いいお話です」
ロクサーヌ「そ、そう」
リュート「はい」
妙な会話である。
ロクサーヌ「いつもは召使におねがいするのだけど、
酔っぱらって動かなくなっちゃったものだから……」
リュート「ま、まあ……宴会でしたし……」
二人はまた無言になった。
夜だけに、妙な雰囲気になってくる。
ロクサーヌ「リュート殿……」
ロクサーヌが、意味のある視線を向けてきた。
ドキッとした。
まさか。
乳を搾ってくださいとか言われるのか?
それはまずい。
自分の仕える長官の奥方。
しかも、不倫。国家が信奉する聖十字教は、
不倫を禁じている。
サキュバスとエッチするのまではまだいいとしても------いや、
あんまりよくはないが------奥方はさすがにまずい。
ロクサーヌ「またお会いできてよかった……
悪魔と対決するってお聞きした時、
もうお会いできないのかと……」
リュート「いや、まあ……」
ロクサーヌ「もう、今生のおわかれになるのかと……思っていました」
リュート「いえ……」
ロクサーヌ「でも……またお会いできて、本当によかった……」
リュート「……」
ロクサーヌ「リュート殿は、王都にステキな方とかいらっしゃるの?」
リュート「い、いえ、いませんけど」
ロクサーヌ「そう」
リュート「……」
ロクサーヌ「もし王都でリュート殿にお会いしていたら……」
リュート「え?」
ロクサーヌ「いえ。なんでもありません」
リュート「……」
ロクサーヌ「リュート殿」
リュート「は、はい」
ロクサーヌ「また、明日も部屋に来てくださる?」
リュート「は、はい」
ロクサーヌ「ほんとよ。わたし、毎日寂しいの」
リュート「は、はい、必ず」
ロクサーヌ「待ってます。絶対、会いにいらしてね」
--------------------------------------------------------------------------------
言われて外に出た。
大広間はもう静かになっていた。
みんな、すっかり寝ているらしい。
しかし、おれの方はまだ眠れそうになかった……。
守備兵B「ウサギのスープ、最高だった……」
守備兵C「おれはもう飲めないぞ……
ワインで腹がたぷたぷだぞ……うへ」
守備兵たちは、大広間にごろりと横たわった。
早くもいびきをかき始めている。
かつてお城が生まれた頃は、城主も兵士も、
大広間で食事をし、
大広間で休んで寝食をともにしていたそうだ。
しかし、今や城主は別の部屋に引きこもり、
兵だけが大広間に残っている。時代は変わるものだ。
おれも兵士のそばに寝転がったが、
なかなか睡魔は訪れなかった。
シャムシェルもどこに行ったのか、姿が見えない。
(眠れないな……)
少し大広間の中心から離れると、見知った人影が立っていた。
そこにいたのは、同じように眠れない様子のアイシスだった。
リュート「眠れないのか」
アイシス「別に」
リュート「眠れないんだろ」
アイシスは答えなかった。
やはり、眠れないらしい。
アイシス「お腹がムカムカするわ。ひどいお酒。ここって最低ね」
リュート「そう、最低最低って言うなよ。
王都が世界の基準ってわけじゃないだろ」
アイシス「人に意見できると思っているの?」
リュート「親衛隊だからって偉そうにしていたら、
いざって時に人がついてこなくなるぞ」
アイシスが黙った。
痛いところを突かれてしまったらしい。
リュート「モテールのこと、考えているのか?」
アイシス「あなたに関係ないでしょ」
声が少し険を帯びていた。
やはり、そうだった。
モテールとアイシスは確か婚約者になったはずだ。
でも、モテールには女がいる。別の女と遊びまくっている。
きっとその女とは、今も関係が続いているのだろう。
なぜ、モテールなどと婚約したのだろう。
アイシスにだって選ぶ権利はあると思うが……。
アイシス「はあ……」
アイシスがため息をついた。
リュート「ベッドが変わると眠れないタイプだろ」
アイシス「だったら、何?」
リュート「眠れるようにしてやろっか?」
アイシス「あなたに何ができるっていうの?」
リュート「いいからじっとしてろ」
おれはアイシスの頭に手を伸ばした。
アイシス「汚い手でさわら------ひぁっ!」
伸ばした手を頭に置くと、ビクッとアイシスがふるえた。
アイシスはもう眠そうな顔をしている。
おれはゆっくりと手を離した。
アイシス「何を……したの……」
リュート「おまじない」
アイシス「わたしに変な真似をしたら……
許さないん……だか……ら……」
倒れたアイシスを、慌てておれは抱き留めた。
まぶたはすでに閉じて、あちらの世界に行ってしまっている。
(ちょっとやりすぎたかな)
寝て重くなったアイシスの身体を両腕に抱くと、
おれは奥方の部屋へ運び込んだ。
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ロクサーヌ「まあ……」
ロクサーヌが驚いた顔をしていた。まだ普段着を着ている。
下着姿にはなっていなかったらしい。
リュート「夜分遅くにすみません……こいつが寝ちゃって」
ロクサーヌ「くす。きっと王都からの長旅で疲れたのね」
リュート「たぶん」
嘘だった。
おれが眠らせたのだ。
ロクサーヌ「こちらに寝かせて」
ロクサーヌは普段自分が使っているベッドに案内した。
旦那の長官には自分の寝室を譲ってまで
もてなそうという気がないらしいが、奥方は違うらしい。
アイシスの身体を横たえると、ロクサーヌは微笑んだ。
ロクサーヌ「この子も、もっと素直になればいいのにね。
変に片意地なんか張らないで……。所詮、女は女なのに」
リュート「ええ……」
おっしゃる通りだ。
黙っていれば巨乳だし、結構いい女だと思うのだが、
なにぶん、性格に難がある。
リュート「で、では、おれはこれで……」
ロクサーヌ「待って。せっかくだからもう少し……」
リュート「いや、でも、女性の部屋に男がいるというのは------」
ロクサーヌ「二人きりではないわ。3人よ」
リュート「でも------」
ロクサーヌ「わたしのこと、お嫌い?」
そう言われると、首を振れなかった。
リュート「では、もう少し」
おれがそう言うと、ロクサーヌは安心したように微笑んだ。
リュート「ずいぶん遅くまでおきていらしたんですね」
ロクサーヌ「ええ……なんだか、お乳が張っちゃって」
リュート「……い?」
ロクサーヌ「わたし、変なの。子供もいないのに、お乳が出ちゃうの。
だから、毎日搾らなきゃいけなくて……」
突然の告白にドキマギしてしまった。
ロクサーヌは母乳が出るというのだ。
思わず、飲みたい……と思ってしまったおれは、
自分を恥じた。
(だめだ!そんなけしからん妄想をするなんて!)
ロクサーヌ「ごめんなさい、変なお話をして」
リュート「い、いえ……いいお話です」
ロクサーヌ「そ、そう」
リュート「はい」
妙な会話である。
ロクサーヌ「いつもは召使におねがいするのだけど、
酔っぱらって動かなくなっちゃったものだから……」
リュート「ま、まあ……宴会でしたし……」
二人はまた無言になった。
夜だけに、妙な雰囲気になってくる。
ロクサーヌ「リュート殿……」
ロクサーヌが、意味のある視線を向けてきた。
ドキッとした。
まさか。
乳を搾ってくださいとか言われるのか?
それはまずい。
自分の仕える長官の奥方。
しかも、不倫。国家が信奉する聖十字教は、
不倫を禁じている。
サキュバスとエッチするのまではまだいいとしても------いや、
あんまりよくはないが------奥方はさすがにまずい。
ロクサーヌ「またお会いできてよかった……
悪魔と対決するってお聞きした時、
もうお会いできないのかと……」
リュート「いや、まあ……」
ロクサーヌ「もう、今生のおわかれになるのかと……思っていました」
リュート「いえ……」
ロクサーヌ「でも……またお会いできて、本当によかった……」
リュート「……」
ロクサーヌ「リュート殿は、王都にステキな方とかいらっしゃるの?」
リュート「い、いえ、いませんけど」
ロクサーヌ「そう」
リュート「……」
ロクサーヌ「もし王都でリュート殿にお会いしていたら……」
リュート「え?」
ロクサーヌ「いえ。なんでもありません」
リュート「……」
ロクサーヌ「リュート殿」
リュート「は、はい」
ロクサーヌ「また、明日も部屋に来てくださる?」
リュート「は、はい」
ロクサーヌ「ほんとよ。わたし、毎日寂しいの」
リュート「は、はい、必ず」
ロクサーヌ「待ってます。絶対、会いにいらしてね」
--------------------------------------------------------------------------------
言われて外に出た。
大広間はもう静かになっていた。
みんな、すっかり寝ているらしい。
しかし、おれの方はまだ眠れそうになかった……。
