朝から、ボーアンの町は晴れ渡っていた。
陰謀など素知らぬ顔で、青く澄みきっている。
でも、おれにとっては勝負の時だ。
長官の手紙のことについては、
まさかという気持ちの方が強い。
嘘であってくれという気持ちもないわけではない。
手紙の相手が相手だけに------。
夢であってくれればいいのだが……と今でも少し思っている。
でも、恐らく、運命がそうさせてくれないだろう。
--------------------------------------------------------------------------------
マドワーズが厩舎に出かけている間に、
おれは馴染みの守備兵を呼んだ。
守備兵A「リュート様、ご用というのは------?」
リュート「実は、頼みたいことがあるんだ」
守備兵B「頼みたいこと?」
リュート「これはマドワーズにも内緒のことなんだ」
守備兵A「秘密の命令で?」
おれはうなずいた。
リュート「実は------」
--------------------------------------------------------------------------------
------そして、約束の夜が訪れていた。
シャムシェル「これでよしと」
おれに変装を施していたシャムシェルは
ようやく手を止めると、にこにこと微笑んだ。
シャムシェル「これで完璧」
リュート「そっくりになったか?
少なくとも、おれだとはわからないよな」
シャムシェル「うん。ばっちり」
リュート「一応、守備兵には寝ないでくれって話をしておいたけど、
ちゃんと動いてくれるかな」
シャムシェル「大丈夫だよ。長官がいない今、
リュートがこの城の長なんだから」
リュート「うん……」
シャムシェル「自信もって。リュートは大物なんだから」
コンッコンッ!
ドアのノックが鳴っていた。
リュート「マドワーズか?」
マドワーズ「へい」
リュート「入って」
入室したマドワーズが、ぽかんと口を開けた。
リュート「こんなもんでどう?」
マドワーズ「え……ええ……。本当にリュートの旦那で?」
リュート「うまく化けたかな」
マドワーズ「へ、へい……これじゃあ、絶対リュートの旦那とは
わからんですね。あっしは、長官が元気になったのかと
思いやしたぜ」
リュート「長官は?」
マドワーズ「地下に運びやした」
リュート「奥方は部屋から出さないでね。バレると厄介だから」
マドワーズ「そりゃもう、ばっちりでさ」
リュート「先方は?」
マドワーズ「そろそろ着く頃です」
--------------------------------------------------------------------------------
おれは部屋の外に出た。
守備兵たちは眠ったふりをしている。
おれが言った通りにしてくれているらしい。
--------------------------------------------------------------------------------
おれは長官の部屋に入った。
いよいよ、戦いの開始だ。
マドワーズ「うまく行きそうですね」
リュート「ああ。おまえはそろそろ迎えに行ってくれ」
マドワーズ「へい。これからが楽しみでやすね、ひひひ」
何も知らないマドワーズは部屋を出ていった。
シャムシェル「いよいよだね」
リュート「心臓がドキドキしてるよ」
シャムシェル「くすくす。今日、リュートは大物になるんだよ」
リュート「どうだか」
シャムシェル「いい?相手が持ちかけてきて、印を押してからだよ」
リュート「わかってる」
シャムシェル「リュートが動いたら、
わたしが守備兵を中に入れてあげるから」
リュート「わかった」
--------------------------------------------------------------------------------
コンッコンッ!
6時課の鐘が鳴る前に、ノックの音が聞こえた。
マドワーズが到着したのだろう。
リュート「入れ」
おれはできるだけ威厳のある声で答えてみた。
最初に妙ないでたちの男が入ってきた。
一度、見かけたことがある男だ。
やはり、こいつが密使だったらしい。
続いて、
マドワーズ「さ、こちらでやすよ」
マドワーズが入ってきた。
そのマドワーズに案内されてきたのは------
騎士学校の同期、ボボン王子だった。
信じたくなかった事実------しかし、紛れもない事実だった。
アーボイン長官への手紙の送り主は、ボボン王子だったのだ。
ボボン王子「結構汚い部屋だね」
マドワーズ「恐れ入ります」
ボボン王子「まあ、いいや。そっちが長官?」
リュート「アーボインでございます」
おれは深々と頭を下げた。
ボボンは、
おれが同期のリュートだとは気づいていない様子だ。
ボボン王子「ぷぷ。ひどい顔。やっぱり田舎の長官って田舎の顔だね」
リュート「恐縮です」
ボボン王子「どれくらい動かせるの?」
兵士のことを聞いているらしい。
リュート「ボーアン管区の兵はすべて」
ボボン王子「ふ~ん。それなら、いっか」
マドワーズがおれの方にまわった。
その後ろには、
シャムシェルがいて警戒に当たってくれている。
もちろん、中にいる連中には見えない。
ボボン王子「ぼくが叛乱を起こしたら、
君はぼくについてくれるんだよね」
リュート「はい。これからの時代はボボン様が
おつくりになるものと確信しております」
ボボン王子「むふ~♪やっぱりそう思う?」
リュート「はい」

ボボン王子「ぼくもそう思ってたんだ♪
これからは、やっぱりぼくちんだよね」
勝手なことを言う。
ボボン王子「ぼくの目のつけどころ、いいでしょ?」
ボボン王子「みんなボーアンなんかどうでもいいって言うけど、
隣のインラントは、騎士官僚制に反対して
パパに叛乱してるからね。」
ボボン王子「ボーアンも叛乱に加わったとなると、
もっと大変になるよね~」
リュート「そこが狙いでございます」
ボボン王子「パパもひどいよね。ぼくは元首として不適格だから
王位を継承させないなんてさ。ぼくは王子だっつうの」
リュート「まったくその通りでございます。
この国の将来を任せられるのは、
王子以外の他におりません」
ボボン王子「君もそう思う?」
リュート「はい」
ボボン王子「ムフ~♪ぼくもそう思うんだ♪」
おれは内心呆れた。
相変わらずのとんでもぶりだ。
ボボン王子「正直なところ、ぼく、騎士官僚制なんて
どうでもいいんだよね。貴族制に戻っても
別にかまわないし。そういうところ、寛大なんだ」
寛大というより無頓着だ、とおれは思った。
ボボン王子「ぼくが王位に即ければそれでいいの。ぼく、思う存分
国を動かしたいんだ。手始めにハーレムとかいいなあ。
国中から巨乳の子を集めて揉みまくり」
リュート「是非ともわたくしめに協力させてください」
ボボン王子「うん、頼むね。
------ところで、ここって、役立たずがいるでしょ?」
リュート「役立たず……とおっしゃいますと?」
ボボン王子「リュート・ヘンデって馬鹿なやつ。
一応同期だったんだけど、最下位だったんだ。
凄い馬鹿だろ?」
リュート「ああ……あの役立たずですか」
ボボン王子「あいつ、どうしてる?ちょっと顔を見たいな」
リュート「いいえ、とんでもございません。
王子の前に連れ出せるような者ではありません」
ボボン王子「ぼくが見たいと言ってるの!」
リュート「では、印をいただいた後に」
ボボン王子「あ、そうね。名前、書けばいいんだよね」
リュート「はい、是非いただければ」
ボボン王子「裏切ったらだめだよ。ぼくが兵を起こしたのに
君が起こさなかったら、ぼく、八つ裂きにするから」
リュート「王子はわが希望にございます」
ボボン王子「君、出世するよ。ぼくが王位に即いたら、
宰相にしてあげる」
ボボン王子はニコニコしながら言うと、
羊皮紙にサインをした。それから、
ボボン王子「おい、おまえ。印(いん)を押せ」
そばの怪しい男に命じた。男が押すと、完成だった。
これで証拠は全部そろった。
この契約書があれば、
ボボン王子が謀叛を企んだということが証明できる。
ボボン王子「じゃあ、今度は君の番ね。早くサインしてね」
リュート「はい。ところで、王子。
その前にひとつ余興はいかがでしょうか」
ボボン王子「余興?」
リュート「これからわたくしめが、
一瞬にしてリュート・ヘンデを連れてまいります」
陰謀など素知らぬ顔で、青く澄みきっている。
でも、おれにとっては勝負の時だ。
長官の手紙のことについては、
まさかという気持ちの方が強い。
嘘であってくれという気持ちもないわけではない。
手紙の相手が相手だけに------。
夢であってくれればいいのだが……と今でも少し思っている。
でも、恐らく、運命がそうさせてくれないだろう。
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マドワーズが厩舎に出かけている間に、
おれは馴染みの守備兵を呼んだ。
守備兵A「リュート様、ご用というのは------?」
リュート「実は、頼みたいことがあるんだ」
守備兵B「頼みたいこと?」
リュート「これはマドワーズにも内緒のことなんだ」
守備兵A「秘密の命令で?」
おれはうなずいた。
リュート「実は------」
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------そして、約束の夜が訪れていた。
シャムシェル「これでよしと」
おれに変装を施していたシャムシェルは
ようやく手を止めると、にこにこと微笑んだ。
シャムシェル「これで完璧」
リュート「そっくりになったか?
少なくとも、おれだとはわからないよな」
シャムシェル「うん。ばっちり」
リュート「一応、守備兵には寝ないでくれって話をしておいたけど、
ちゃんと動いてくれるかな」
シャムシェル「大丈夫だよ。長官がいない今、
リュートがこの城の長なんだから」
リュート「うん……」
シャムシェル「自信もって。リュートは大物なんだから」
コンッコンッ!
ドアのノックが鳴っていた。
リュート「マドワーズか?」
マドワーズ「へい」
リュート「入って」
入室したマドワーズが、ぽかんと口を開けた。
リュート「こんなもんでどう?」
マドワーズ「え……ええ……。本当にリュートの旦那で?」
リュート「うまく化けたかな」
マドワーズ「へ、へい……これじゃあ、絶対リュートの旦那とは
わからんですね。あっしは、長官が元気になったのかと
思いやしたぜ」
リュート「長官は?」
マドワーズ「地下に運びやした」
リュート「奥方は部屋から出さないでね。バレると厄介だから」
マドワーズ「そりゃもう、ばっちりでさ」
リュート「先方は?」
マドワーズ「そろそろ着く頃です」
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おれは部屋の外に出た。
守備兵たちは眠ったふりをしている。
おれが言った通りにしてくれているらしい。
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おれは長官の部屋に入った。
いよいよ、戦いの開始だ。
マドワーズ「うまく行きそうですね」
リュート「ああ。おまえはそろそろ迎えに行ってくれ」
マドワーズ「へい。これからが楽しみでやすね、ひひひ」
何も知らないマドワーズは部屋を出ていった。
シャムシェル「いよいよだね」
リュート「心臓がドキドキしてるよ」
シャムシェル「くすくす。今日、リュートは大物になるんだよ」
リュート「どうだか」
シャムシェル「いい?相手が持ちかけてきて、印を押してからだよ」
リュート「わかってる」
シャムシェル「リュートが動いたら、
わたしが守備兵を中に入れてあげるから」
リュート「わかった」
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コンッコンッ!
6時課の鐘が鳴る前に、ノックの音が聞こえた。
マドワーズが到着したのだろう。
リュート「入れ」
おれはできるだけ威厳のある声で答えてみた。
最初に妙ないでたちの男が入ってきた。
一度、見かけたことがある男だ。
やはり、こいつが密使だったらしい。
続いて、
マドワーズ「さ、こちらでやすよ」
マドワーズが入ってきた。
そのマドワーズに案内されてきたのは------
騎士学校の同期、ボボン王子だった。
信じたくなかった事実------しかし、紛れもない事実だった。
アーボイン長官への手紙の送り主は、ボボン王子だったのだ。
ボボン王子「結構汚い部屋だね」
マドワーズ「恐れ入ります」
ボボン王子「まあ、いいや。そっちが長官?」
リュート「アーボインでございます」
おれは深々と頭を下げた。
ボボンは、
おれが同期のリュートだとは気づいていない様子だ。
ボボン王子「ぷぷ。ひどい顔。やっぱり田舎の長官って田舎の顔だね」
リュート「恐縮です」
ボボン王子「どれくらい動かせるの?」
兵士のことを聞いているらしい。
リュート「ボーアン管区の兵はすべて」
ボボン王子「ふ~ん。それなら、いっか」
マドワーズがおれの方にまわった。
その後ろには、
シャムシェルがいて警戒に当たってくれている。
もちろん、中にいる連中には見えない。
ボボン王子「ぼくが叛乱を起こしたら、
君はぼくについてくれるんだよね」
リュート「はい。これからの時代はボボン様が
おつくりになるものと確信しております」
ボボン王子「むふ~♪やっぱりそう思う?」
リュート「はい」

ボボン王子「ぼくもそう思ってたんだ♪
これからは、やっぱりぼくちんだよね」
勝手なことを言う。
ボボン王子「ぼくの目のつけどころ、いいでしょ?」
ボボン王子「みんなボーアンなんかどうでもいいって言うけど、
隣のインラントは、騎士官僚制に反対して
パパに叛乱してるからね。」
ボボン王子「ボーアンも叛乱に加わったとなると、
もっと大変になるよね~」
リュート「そこが狙いでございます」
ボボン王子「パパもひどいよね。ぼくは元首として不適格だから
王位を継承させないなんてさ。ぼくは王子だっつうの」
リュート「まったくその通りでございます。
この国の将来を任せられるのは、
王子以外の他におりません」
ボボン王子「君もそう思う?」
リュート「はい」
ボボン王子「ムフ~♪ぼくもそう思うんだ♪」
おれは内心呆れた。
相変わらずのとんでもぶりだ。
ボボン王子「正直なところ、ぼく、騎士官僚制なんて
どうでもいいんだよね。貴族制に戻っても
別にかまわないし。そういうところ、寛大なんだ」
寛大というより無頓着だ、とおれは思った。
ボボン王子「ぼくが王位に即ければそれでいいの。ぼく、思う存分
国を動かしたいんだ。手始めにハーレムとかいいなあ。
国中から巨乳の子を集めて揉みまくり」
リュート「是非ともわたくしめに協力させてください」
ボボン王子「うん、頼むね。
------ところで、ここって、役立たずがいるでしょ?」
リュート「役立たず……とおっしゃいますと?」
ボボン王子「リュート・ヘンデって馬鹿なやつ。
一応同期だったんだけど、最下位だったんだ。
凄い馬鹿だろ?」
リュート「ああ……あの役立たずですか」
ボボン王子「あいつ、どうしてる?ちょっと顔を見たいな」
リュート「いいえ、とんでもございません。
王子の前に連れ出せるような者ではありません」
ボボン王子「ぼくが見たいと言ってるの!」
リュート「では、印をいただいた後に」
ボボン王子「あ、そうね。名前、書けばいいんだよね」
リュート「はい、是非いただければ」
ボボン王子「裏切ったらだめだよ。ぼくが兵を起こしたのに
君が起こさなかったら、ぼく、八つ裂きにするから」
リュート「王子はわが希望にございます」
ボボン王子「君、出世するよ。ぼくが王位に即いたら、
宰相にしてあげる」
ボボン王子はニコニコしながら言うと、
羊皮紙にサインをした。それから、
ボボン王子「おい、おまえ。印(いん)を押せ」
そばの怪しい男に命じた。男が押すと、完成だった。
これで証拠は全部そろった。
この契約書があれば、
ボボン王子が謀叛を企んだということが証明できる。
ボボン王子「じゃあ、今度は君の番ね。早くサインしてね」
リュート「はい。ところで、王子。
その前にひとつ余興はいかがでしょうか」
ボボン王子「余興?」
リュート「これからわたくしめが、
一瞬にしてリュート・ヘンデを連れてまいります」
