リュート「では、司令官を拝命いたします」
ベルンシュタイン「なかなか大物ですな」
ハーゲル1世「頼もしいやつだ」
リュート「ただ、陛下。1つ……いえ、2つだけ条件がございます」
ベルンシュタイン「何っ」
ハーゲル1世「よい。申せ」
リュート「あの……非常に私事なのですが、ブラジャーを……」
ハーゲル1世「何、ブラジャーとな?」
リュート「はい。できればかなり大きめのものを」
ハーゲル1世「愛しい女にでも贈ろうというのだな。
よかろう。プラティーヌに持ってこさせよう」
リュート「ありがとうございます」
ハーゲル1世「して、もう1つとは何だ」
リュート「討伐したら、首領は処刑になるのでしょうか」
ベルンシュタイン「今更何を」
リュート「どうするか、自分に決めさせてほしいのです」
ベルンシュタイン「貴様、身の程も知らずも------」
ハーゲル1世「よいよい。どう処罰するかは、
そちに任せてくれというのだな」
リュート「はい」
ハーゲル1世「よかろう。余が約束する」
ベルンシュタイン「陛下!」
ハーゲル1世「余はこの男に賭けてみたいのだ。この男なら、
もしかすると余の悩みを1つ無くしてくれるかもしれぬ」
ベルンシュタイン「しかし------」
ベルンシュタイン「------いえ。承知いたしました」
ハーゲル1世「うむ。頼んだぞ」
リュート「はい」
ベルンシュタイン「フ」
ハーゲル1世が立ち去ると、
それを待っていたかのように宰相は不気味な笑みを浮かべた。
ベルンシュタイン「無知は幸せなり、か」
謎の言葉を残すと、宰相は立ち去った。
なんだか妙な感じだった。
途中まで反対してたのに、なぜ承諾したのだろう。
言い出したら国王は聞かないからだろうか……?
しっかり耳を持っている元首のように見えたけれども……。
いや。
そんなことを気にしている場合ではなかったのだ。
長官の副官しか務めたことのない自分が、
騎士になってわずか2週間で、
一軍の司令官に抜擢されたのだ。
いいのか?という気がする。
夢じゃないだろうか。
おれが将軍------司令官なんて。
これからが大変だ。
この有り余る幸福を受け止めて任務を果たさなければならない。
自分でも、まだ信じられない。
ビリケツで騎士学校を出た自分が、誰よりも早く
一軍の司令官なんて……それも、あの反乱軍を
鎮圧するための司令官なんて、凄すぎる。
一番の出世株だ。
こんなに恵まれていいのだろうか……?
???「リュート様」
また、眼鏡の女性が立っていた。
相変わらず大きな胸をしている。
エメラリア「こちらが勅書です。これを持って
ビュステンハルターへお発ちになってください」
リュート「ビュステンハルターね」

エメラリア「ご武運を」
眼鏡の女性が立ち去ると、じぃんと実感が込み上げた。
本当に……本当におれは司令官になったのだ。
(モテールも、アイシスも、
みんなびっくりするだろうな……)
-------------------------------------------------------------------------------
???「あら」
リュート「あ」
???「まあ……以前お会いした御方」
リュート「その節はどうも」
???「卒業証書、受け取れましたか?」
リュート「はい。おかげさまで。本当にありがとうございます」
???「よかったですね」
リュート「はい。あの、お名前は?」
???「え?」
リュート「あ、すみません。順番が逆でした。
リュート・ヘンデと申します」
???「まあ……あなたがリュート・ヘンデ様?」
リュート「え?どうしてぼくの名前を------」
???「今、エメラリアから------」
エメラリア「姫様」
エメラリア「姫様、こちらにおいででしたか」
???「ええ。さっき伺ったリュート様と
お話をしていたところでしたの」
リュート「ひ……姫……?」
ドキッとした。
以前、もの凄く胸がでかかったと
モテールが話していたことが思い出される。
まさか。
これが国王の愛娘------ルセリア王女なのか。
リュート「す、すみません、姫とは知らずに道案内を------」
ルセリア「よろしいのよ。お顔をあげてください。
将軍になられたんですってね」
リュート「え?」
ルセリア「エメラリアから聞きました。凄いんですのね」
リュート「い、いえ……たまたま……」
ルセリア「インラントのことについては、
お父様も頭を悩ましておられます。
どうか、悩みの種を取り除いてあげてください」
リュート「はい」
ルセリア「それから……あの、彼女のことも寛大に」
リュート「彼女?」
ルセリア「いえ。何でもありません。ご武運を」
ルセリア姫は微笑んで立ち去った。
おれは呆然としていた。
あの時あの場所を尋ねた相手が、あのルセリア姫だったとは------。
しかも、その姫君にまた再会し、
おまけに『ご武運を』なんていわれてしまった。
よろこばないわけがない。
(本当に姫様……かわいかった……)
(胸も……凄かった……)
(あの胸は、国宝級だ……というか、
ユーロディア大陸全土を探しても、
なかなかお目にはかかれない胸だ……)
-------------------------------------------------------------------------------
アイシス「!」
モテール「ぬっ!」
ざっと音がしたかと思うと、懐かしき旧友が身構えていた。
リュート「あ……あれ?二人とも久しぶり」
モテール「何が久しぶりだ!」
アイシス「モテール、相手はもう目上の人間よ」
モテール「認めん……認めんぞ、貴様が司令官など!」
リュート「あれ?もう知ってんの?」
モテール「今、エメラリア殿から聞いた。こんな屈辱があるか……!
なぜ貴様如きが司令官なのだ!」
リュート「さ、さあ。なんでかな」
モテール「貴様に一軍を指揮できるわけがない!兵法の時間でも、
貴様は何も理解しておらんかったではないか!」
リュート「そうなんだよ、だからどうしようかなと思って」
モテール「ええい、その性根、ここで叩き切ってくれる!」
アイシス「モテール!」
モテール「わかっている、わかっているが、しかし……」
リュート「……モテールだったら、すぐあがってくるよ」
モテール「貴様に言われたくない!いいか、1つだけ覚えておけ!」
リュート「何?」
モテール「おれこそが将軍の器だということをな!」
リュート「将軍って、そんなカッカしてたら務まらないと思うけど」
モテール「ぐぅっ……!」
アイシス「モテール、あなたの負けね」
モテール「アイシス!
おまえは婚約者のおれよりこいつを認めるのか!?」
アイシス「人に聞かれたらどうするの?」
モテール「かまうものか。おれは認めんからな。
おまえはおれより、ずっと格下だ!」
二人は立ち去った。
相変わらず尖ったやつだ。
尖っていいのはチ〇ポだけでいいのに、どうもモテールは
毎日イライラしている。あれさえなければ、
名将になれるんだろうにな……と余計なことを思ってしまう。
シャムシェル「くす。あれは王にはなれないね」
いきなりシャムシェルが現れていた。
宮殿内を探検して戻ってきたらしい。
リュート「『あれ』って、モテールのこと?」
シャムシェル「頑張って親衛隊隊長かな?一軍の将なんて、無理ね。
一部隊の将としては適してるかもしれないけど」
リュート「相変わらず手厳しいな」
シャムシェル「だって、わたし悪魔だもん。
何年人間を見てきたと思ってるの」
リュート「1千万年」
シャムシェル「後で思い切りパ〇ズリで搾り取ってやる」
リュート「ははは……」
-------------------------------------------------------------------------------
有意義な時間を過ごして王宮の前に戻ってくると、
衛兵A「ご、ご苦労様です!」
衛兵が心地よく挨拶をしてくれた。
リュート「ありがとう」
そう返事したものの、二人の雰囲気がおかしい。
リュート「何?」
衛兵A「さきほどは……大変失礼いたしました」
どうやら、さっき意地悪をして入れなかったことを
気にしていたらしい。
リュート「ああ、気にしないで。貫祿がないのは慣れてるから。
だいたい、おれ、体重軽い方だし」
衛兵B「はは……」
リュート「また、今度よろしくね」
衛兵A「はっ!」
衛兵B「ははっ!」
リュートが去った後、衛兵2人は顔を突き合わせ、
ささやき合った。
衛兵A「意外と……というか、結構、いい方かもしれない」
衛兵B「でも、いい方に限って早く死……」
衛兵A「おい」
-------------------------------------------------------------------------------
エーデルラント王国・王宮------
リュート・ヘンデがビュステンハルター城へ向かって
出発した頃、ルビーン・フォン・ベルンシュタインは
自室で女の到着を待っていた。
???「お呼びですか、閣下」
現れたのは、ルセリア姫お付きの教育係、
エメラリアだった。相変わらずの無表情だ。
ベルンシュタインは机の上の羊皮紙をつかむと、
エメラリアに手渡した。
ベルンシュタイン「老いぼれ3人に連絡を」
エメラリア「はい」
ベルンシュタイン「意外に驚かぬな」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「わたしにも人の心というのがあってな。
1人では心細かろうと思って、
名だたる将軍たちを補佐として選んでおいた」
エメラリア「お優しいことで」
ベルンシュタイン「本気で思っているのか?」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「わたしがなぜ、あの出来損ないを司令官に推したのか、
理由を聞かぬのだな」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「大方、見当はついているということか」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「陛下は騎士官僚制の完成を急がれているようだが、
何事も急ぎすぎるのはいかんのだ。
そのあたりが陛下はおわかりでない」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「ボボン王子がボーアンで何をしていたのか、
知っている者が王都にいるのも好ましくはない」
ベルンシュタイン「王子は謀叛の企みなどしていなかった。
ただ母君のためにリンゴバルトに帰った。それでよい」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「知りすぎた者に用はない」
ベルンシュタイン「部下に謀叛を起こされて追われるもよし、
戦いの中で無様に死ぬもよし。出来損ないにも、
それくらいの自由はある」
ベルンシュタイン「陛下は宝石よりも道端の石ころの方がお好きなようだが、
石ころを集めても宝石にはならぬ。陛下のそばには、
わたしに忠実な宝石だけがあればよい」
エメラリアの表情がわずかに動いた。
ベルンシュタイン「何だ」
エメラリア「万が一、成功したらどうなさいます」
ベルンシュタイン「面白いことを言う。
おまえも、冗談を言うようになったとはな」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「出来損ないにワッケンハイムの『伜』は討てぬ。
所詮、石ころは石ころだ。ダイヤモンドは砕けぬ」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「まさか、あの男に惚れたわけではあるまいな」
エメラリア「男はみな嫌いです」
ベルンシュタイン「そうだったな。------下がれ」
-------------------------------------------------------------------------------
宰相の部屋を出ると
背を向けたままエメラリアは呟(つぶや)いた。
エメラリア「運がなかったってことね……リュート・ヘンデ」
エメラリア「成り上がり者の末路は、所詮、こんなものよ」
ベルンシュタイン「なかなか大物ですな」
ハーゲル1世「頼もしいやつだ」
リュート「ただ、陛下。1つ……いえ、2つだけ条件がございます」
ベルンシュタイン「何っ」
ハーゲル1世「よい。申せ」
リュート「あの……非常に私事なのですが、ブラジャーを……」
ハーゲル1世「何、ブラジャーとな?」
リュート「はい。できればかなり大きめのものを」
ハーゲル1世「愛しい女にでも贈ろうというのだな。
よかろう。プラティーヌに持ってこさせよう」
リュート「ありがとうございます」
ハーゲル1世「して、もう1つとは何だ」
リュート「討伐したら、首領は処刑になるのでしょうか」
ベルンシュタイン「今更何を」
リュート「どうするか、自分に決めさせてほしいのです」
ベルンシュタイン「貴様、身の程も知らずも------」
ハーゲル1世「よいよい。どう処罰するかは、
そちに任せてくれというのだな」
リュート「はい」
ハーゲル1世「よかろう。余が約束する」
ベルンシュタイン「陛下!」
ハーゲル1世「余はこの男に賭けてみたいのだ。この男なら、
もしかすると余の悩みを1つ無くしてくれるかもしれぬ」
ベルンシュタイン「しかし------」
ベルンシュタイン「------いえ。承知いたしました」
ハーゲル1世「うむ。頼んだぞ」
リュート「はい」
ベルンシュタイン「フ」
ハーゲル1世が立ち去ると、
それを待っていたかのように宰相は不気味な笑みを浮かべた。
ベルンシュタイン「無知は幸せなり、か」
謎の言葉を残すと、宰相は立ち去った。
なんだか妙な感じだった。
途中まで反対してたのに、なぜ承諾したのだろう。
言い出したら国王は聞かないからだろうか……?
しっかり耳を持っている元首のように見えたけれども……。
いや。
そんなことを気にしている場合ではなかったのだ。
長官の副官しか務めたことのない自分が、
騎士になってわずか2週間で、
一軍の司令官に抜擢されたのだ。
いいのか?という気がする。
夢じゃないだろうか。
おれが将軍------司令官なんて。
これからが大変だ。
この有り余る幸福を受け止めて任務を果たさなければならない。
自分でも、まだ信じられない。
ビリケツで騎士学校を出た自分が、誰よりも早く
一軍の司令官なんて……それも、あの反乱軍を
鎮圧するための司令官なんて、凄すぎる。
一番の出世株だ。
こんなに恵まれていいのだろうか……?
???「リュート様」
また、眼鏡の女性が立っていた。
相変わらず大きな胸をしている。
エメラリア「こちらが勅書です。これを持って
ビュステンハルターへお発ちになってください」
リュート「ビュステンハルターね」

エメラリア「ご武運を」
眼鏡の女性が立ち去ると、じぃんと実感が込み上げた。
本当に……本当におれは司令官になったのだ。
(モテールも、アイシスも、
みんなびっくりするだろうな……)
-------------------------------------------------------------------------------
???「あら」
リュート「あ」
???「まあ……以前お会いした御方」
リュート「その節はどうも」
???「卒業証書、受け取れましたか?」
リュート「はい。おかげさまで。本当にありがとうございます」
???「よかったですね」
リュート「はい。あの、お名前は?」
???「え?」
リュート「あ、すみません。順番が逆でした。
リュート・ヘンデと申します」
???「まあ……あなたがリュート・ヘンデ様?」
リュート「え?どうしてぼくの名前を------」
???「今、エメラリアから------」
エメラリア「姫様」
エメラリア「姫様、こちらにおいででしたか」
???「ええ。さっき伺ったリュート様と
お話をしていたところでしたの」
リュート「ひ……姫……?」
ドキッとした。
以前、もの凄く胸がでかかったと
モテールが話していたことが思い出される。
まさか。
これが国王の愛娘------ルセリア王女なのか。
リュート「す、すみません、姫とは知らずに道案内を------」
ルセリア「よろしいのよ。お顔をあげてください。
将軍になられたんですってね」
リュート「え?」
ルセリア「エメラリアから聞きました。凄いんですのね」
リュート「い、いえ……たまたま……」
ルセリア「インラントのことについては、
お父様も頭を悩ましておられます。
どうか、悩みの種を取り除いてあげてください」
リュート「はい」
ルセリア「それから……あの、彼女のことも寛大に」
リュート「彼女?」
ルセリア「いえ。何でもありません。ご武運を」
ルセリア姫は微笑んで立ち去った。
おれは呆然としていた。
あの時あの場所を尋ねた相手が、あのルセリア姫だったとは------。
しかも、その姫君にまた再会し、
おまけに『ご武運を』なんていわれてしまった。
よろこばないわけがない。
(本当に姫様……かわいかった……)
(胸も……凄かった……)
(あの胸は、国宝級だ……というか、
ユーロディア大陸全土を探しても、
なかなかお目にはかかれない胸だ……)
-------------------------------------------------------------------------------
アイシス「!」
モテール「ぬっ!」
ざっと音がしたかと思うと、懐かしき旧友が身構えていた。
リュート「あ……あれ?二人とも久しぶり」
モテール「何が久しぶりだ!」
アイシス「モテール、相手はもう目上の人間よ」
モテール「認めん……認めんぞ、貴様が司令官など!」
リュート「あれ?もう知ってんの?」
モテール「今、エメラリア殿から聞いた。こんな屈辱があるか……!
なぜ貴様如きが司令官なのだ!」
リュート「さ、さあ。なんでかな」
モテール「貴様に一軍を指揮できるわけがない!兵法の時間でも、
貴様は何も理解しておらんかったではないか!」
リュート「そうなんだよ、だからどうしようかなと思って」
モテール「ええい、その性根、ここで叩き切ってくれる!」
アイシス「モテール!」
モテール「わかっている、わかっているが、しかし……」
リュート「……モテールだったら、すぐあがってくるよ」
モテール「貴様に言われたくない!いいか、1つだけ覚えておけ!」
リュート「何?」
モテール「おれこそが将軍の器だということをな!」
リュート「将軍って、そんなカッカしてたら務まらないと思うけど」
モテール「ぐぅっ……!」
アイシス「モテール、あなたの負けね」
モテール「アイシス!
おまえは婚約者のおれよりこいつを認めるのか!?」
アイシス「人に聞かれたらどうするの?」
モテール「かまうものか。おれは認めんからな。
おまえはおれより、ずっと格下だ!」
二人は立ち去った。
相変わらず尖ったやつだ。
尖っていいのはチ〇ポだけでいいのに、どうもモテールは
毎日イライラしている。あれさえなければ、
名将になれるんだろうにな……と余計なことを思ってしまう。
シャムシェル「くす。あれは王にはなれないね」
いきなりシャムシェルが現れていた。
宮殿内を探検して戻ってきたらしい。
リュート「『あれ』って、モテールのこと?」
シャムシェル「頑張って親衛隊隊長かな?一軍の将なんて、無理ね。
一部隊の将としては適してるかもしれないけど」
リュート「相変わらず手厳しいな」
シャムシェル「だって、わたし悪魔だもん。
何年人間を見てきたと思ってるの」
リュート「1千万年」
シャムシェル「後で思い切りパ〇ズリで搾り取ってやる」
リュート「ははは……」
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有意義な時間を過ごして王宮の前に戻ってくると、
衛兵A「ご、ご苦労様です!」
衛兵が心地よく挨拶をしてくれた。
リュート「ありがとう」
そう返事したものの、二人の雰囲気がおかしい。
リュート「何?」
衛兵A「さきほどは……大変失礼いたしました」
どうやら、さっき意地悪をして入れなかったことを
気にしていたらしい。
リュート「ああ、気にしないで。貫祿がないのは慣れてるから。
だいたい、おれ、体重軽い方だし」
衛兵B「はは……」
リュート「また、今度よろしくね」
衛兵A「はっ!」
衛兵B「ははっ!」
リュートが去った後、衛兵2人は顔を突き合わせ、
ささやき合った。
衛兵A「意外と……というか、結構、いい方かもしれない」
衛兵B「でも、いい方に限って早く死……」
衛兵A「おい」
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エーデルラント王国・王宮------
リュート・ヘンデがビュステンハルター城へ向かって
出発した頃、ルビーン・フォン・ベルンシュタインは
自室で女の到着を待っていた。
???「お呼びですか、閣下」
現れたのは、ルセリア姫お付きの教育係、
エメラリアだった。相変わらずの無表情だ。
ベルンシュタインは机の上の羊皮紙をつかむと、
エメラリアに手渡した。
ベルンシュタイン「老いぼれ3人に連絡を」
エメラリア「はい」
ベルンシュタイン「意外に驚かぬな」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「わたしにも人の心というのがあってな。
1人では心細かろうと思って、
名だたる将軍たちを補佐として選んでおいた」
エメラリア「お優しいことで」
ベルンシュタイン「本気で思っているのか?」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「わたしがなぜ、あの出来損ないを司令官に推したのか、
理由を聞かぬのだな」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「大方、見当はついているということか」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「陛下は騎士官僚制の完成を急がれているようだが、
何事も急ぎすぎるのはいかんのだ。
そのあたりが陛下はおわかりでない」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「ボボン王子がボーアンで何をしていたのか、
知っている者が王都にいるのも好ましくはない」
ベルンシュタイン「王子は謀叛の企みなどしていなかった。
ただ母君のためにリンゴバルトに帰った。それでよい」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「知りすぎた者に用はない」
ベルンシュタイン「部下に謀叛を起こされて追われるもよし、
戦いの中で無様に死ぬもよし。出来損ないにも、
それくらいの自由はある」
ベルンシュタイン「陛下は宝石よりも道端の石ころの方がお好きなようだが、
石ころを集めても宝石にはならぬ。陛下のそばには、
わたしに忠実な宝石だけがあればよい」
エメラリアの表情がわずかに動いた。
ベルンシュタイン「何だ」
エメラリア「万が一、成功したらどうなさいます」
ベルンシュタイン「面白いことを言う。
おまえも、冗談を言うようになったとはな」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「出来損ないにワッケンハイムの『伜』は討てぬ。
所詮、石ころは石ころだ。ダイヤモンドは砕けぬ」
エメラリア「……」
ベルンシュタイン「まさか、あの男に惚れたわけではあるまいな」
エメラリア「男はみな嫌いです」
ベルンシュタイン「そうだったな。------下がれ」
-------------------------------------------------------------------------------
宰相の部屋を出ると
背を向けたままエメラリアは呟(つぶや)いた。
エメラリア「運がなかったってことね……リュート・ヘンデ」
エメラリア「成り上がり者の末路は、所詮、こんなものよ」
