おれは、ようやくビュステンハルターに戻ってきていた。
正直、戻る計画は立てていなかった。
とにかく会ってみよう、
農民の格好をしたら入れるかも……と思っただけだった。
その後のことはまったく考えていなかった。
捕まったらどうなるとか、そういう心配もしなかった。
我ながら、能天気さに呆れる。
でも------もしかすると、そういう心配も
しなくてもいいとわかっていたからかもしれない。
自分の目で見て初めてわかったが、やはり攻略するのは
難しい城だった。恐らく、今の倍の兵力で攻め立てても、
陥落させるのは難しいかもしれない。
おまけに、我が城には弾薬がない。
準備しているがなかなか届かないという。
今戦えば、負けるのは必定だ。
おれは、敵将の姿を思い出した。
城も凄かったが、それよりも印象に残ったのは、
敵将の胸だった。
グラディス・フォン・ワッケンハイム。
正真正銘、上流貴族の娘だ。
オレなんて荒っぽい口調でしゃべっていたが、
それでも貴族の娘らしい気品を感じる。
まるで豹のような女だ。
野性的なエロスに溢れた女------1度組み敷きたいという、
叶わぬ欲望を懐かせる女だった。
あの露骨な下乳の露出を目にしていると、
すぐさま襲いかかりたくなってしまう。
が------もし本当にそのような行為に走れば、
一瞬にして葬り去られるだろう。
相手は剣の達人------
あのモテールより剣技に優れているのだから。
シャムシェル「な~に考えてるの」
シャムシェルが冷やかし顔でおれを見ていた。
ニヤニヤしているのは、おれの欲望を
看破しているからだろう。
リュート「偵察のし甲斐はあったな」
シャムシェル「そ?」
リュート「相手のことがよくわかったし」
シャムシェル「相手の『胸』が、でしょ?」
シャムシェルがニヤニヤと笑う。
やはり、こいつ、わかっていたか。
シャムシェル「大きなオッパイだったね」
リュート「うん」
シャムシェル「さわりたいとか思ったんでしょ」
リュート「全然」
シャムシェル「嘘ばっかり」
思わず苦笑する。
シャムシェル「跪(ひざまず)かせてパ〇ズリさせたいとか
思ったんでしょ」
リュート「そんなこと、考えたこともない」
シャムシェル「嘘が下手なんだから」
シャムシェルがくすくすと笑う。
リュート「あの司令官と事を構えるのは大変だな」
シャムシェル「夜なら、リュートの圧勝だと思うけど」
リュート「昼間の戦争なら、全敗だな」
シャムシェル「そうね。戦争屋としては、相手が上だね」
リュート「さすが英雄ワッケンハイム将軍の娘だ」
シャムシェル「お城に入る時、怖くなかったの?」
リュート「別に」
シャムシェル「帰って来られないかもって思わなかった?」
リュート「それが……不思議となかったんだよなあ。
別に根拠はないんだけど」
シャムシェル「くすくす……やっぱり大物だね」
シャムシェルが笑う。
リュート「おれが処刑されるって言われたら、助けてくれた?」
シャムシェル「見放す」
リュート「あっ、こいつめ」
シャムシェル「くすくすくす」
シャムシェルが笑った。なんだか、いつになく上機嫌だった。
-------------------------------------------------------------------------------
ワン・コアン「司令官!」
ワン・コアン「今まで、いったいどこに行ってらっしゃったのですか!」
リュート「敵の城」
ワン・コアン「まさか……ヴンダーバルト城までご偵察ですか?」
リュート「敵将に会ってきたよ。グラディスって、面白いね」
ワン・コアン「それは誠ですか?」
リュート「うん」
ワン・コアン「それでどうやってここまで!?」
リュート「普通に出してくれたよ」
ワン・コアン「どういうことです?」
リュート「グラディスって、なんかいい人っぽいね。
どうして叛乱しているのか、よくわかんない子だね」
ワン・コアン「いったい何を考えていらっしゃるのです!?
司令官にもしものことがあれば------」
リュート「一騎討ちの方がいいかもしれない」
ワン・コアン「はい?一騎討ち?」
リュート「大軍で攻め立てても無駄だよ。
一騎討ちの方がまだ勝機があるかも。
剣の戦いじゃ、無理だけど」
ワン・コアン「とにかく、今後勝手に出歩くのはお止めください。
司令官は狙われていらっしゃるのですから」
リュート「今度からそうするよ」
-------------------------------------------------------------------------------
部屋に入ると、すぐに夕食が運ばれてきた。
やはり、朝の賊は見つからなかったらしい。
当たり前だ。
賊は敵将------グラディスだったのだから。
おれが会いに行った時、
グラディスはすでに自分の居城に戻っていた。
このビュステンハルター城の警戒網を破って
真っ昼間から侵入した相手だ。
まともに戦うとなれば、痛みは避けられない。
どうやって戦うか------。
<<9時にでも祈っていろ>>
別れ際の言葉が蘇った。
9時にでも祈っていろ、か。
9時というのは、恐らく9時課のことだろう。
9時課にでも祈っていろという意味か。
しかし、なぜグラディスは
祈祷の時間などを口にしたのだろう。
おれは、はっとした。
まさか、暗号------!?
ガチャッ!
いきなり扉が開いて、
またしても老将たち3人が部屋に入ってきていた。
リュート「何か用事?」
フェルゼン「貴様、ヴンダーバルト城に行ったというのは本当か?」
リュート「うん」
フェルゼン「ワッケンハイムの『伜』と会ったそうだな」
リュート「うん」
フェルゼン「嘘をつけ!貴様如きが脱出できるはずがない!」
リュート「それがいい子でさ、帰してくれたんだ」
フェルゼン「またしても偽の武勇伝をこしらえるつもりか!?」
リュート「あの子、自分のこと『オレ』って言うんだね。
面白い言い方をするね」
フェルゼン将軍が黙った。彼女が『オレ』と自称するのは、
彼らも知っていたらしい。
ザント「フェルゼン将軍……出鱈目です。当てずっぽうで------」
リュート「『9時課にでも祈っていろ』って、どういう意味かな」
フェルゼン「9時課にでも祈れ?」
リュート「別れ際に、グラディスから言われたんだ」
フェルゼン「……」
リュート「もう一度、グラディスには会ってみたいな。
会って色々話をすれば、なんとかなるような気がする」
フェルゼン「話し合いで解決すれば、貴様など不要だ」
来た時と同じように、老将たち3人は去っていった。
シャムシェル「相変わらず失礼なやつ。食っちゃおうか?」
リュート「だから、やめろって」
シャムシェル「でも、もう骨と皮ばかりだしな……
精液もあんまり出てこないし」
リュート「だから、食うのはやめろって」
シャムシェル「そうだね。あんなまずいのを食べなくても、
もっと美味しいものがここにいるもんね」
シャムシェルがぎゅっとおれに抱きついてきた。
リュート「わっ」
シャムシェル「キスして」
リュート「え?」
シャムシェル「キスするのっ。僕(しもべ)になる時に約束したじゃん」
リュート「してないって」
シャムシェル「しないとあの老人に悪戯するじょ」
シャムシェルが脅してみせる。
おれは、ちゅっと口づけした。
リュート「シャムシェルはキスが好きだな」
シャムシェル「普通、キスは人間にしないんだからね……んちゅ……」
リュート「わかってる」
シャムシェル「わかってないんだから……」
-------------------------------------------------------------------------------
その夜------リュート・ヘンデが食事もキスも終えて
豪華な自室で眠りに就いた頃、町中に怪しい男の影があった。
暗殺者D「ちゃんと手引きしてくれるんだろうな」
暗殺者の声に、依頼者の男はうなずいた。
暗殺者D「いいだろう。金は受け取った。結果は楽しみにしていろ」
暗殺者が足音もなく立ち去ると、
依頼者は一人ほくそ笑みを浮かべた。
これで、仲間にも吉報を知らせることができる。
明日の夜が、楽しみだ。
正直、戻る計画は立てていなかった。
とにかく会ってみよう、
農民の格好をしたら入れるかも……と思っただけだった。
その後のことはまったく考えていなかった。
捕まったらどうなるとか、そういう心配もしなかった。
我ながら、能天気さに呆れる。
でも------もしかすると、そういう心配も
しなくてもいいとわかっていたからかもしれない。
自分の目で見て初めてわかったが、やはり攻略するのは
難しい城だった。恐らく、今の倍の兵力で攻め立てても、
陥落させるのは難しいかもしれない。
おまけに、我が城には弾薬がない。
準備しているがなかなか届かないという。
今戦えば、負けるのは必定だ。
おれは、敵将の姿を思い出した。
城も凄かったが、それよりも印象に残ったのは、
敵将の胸だった。
グラディス・フォン・ワッケンハイム。
正真正銘、上流貴族の娘だ。
オレなんて荒っぽい口調でしゃべっていたが、
それでも貴族の娘らしい気品を感じる。
まるで豹のような女だ。
野性的なエロスに溢れた女------1度組み敷きたいという、
叶わぬ欲望を懐かせる女だった。
あの露骨な下乳の露出を目にしていると、
すぐさま襲いかかりたくなってしまう。
が------もし本当にそのような行為に走れば、
一瞬にして葬り去られるだろう。
相手は剣の達人------
あのモテールより剣技に優れているのだから。
シャムシェル「な~に考えてるの」
シャムシェルが冷やかし顔でおれを見ていた。
ニヤニヤしているのは、おれの欲望を
看破しているからだろう。
リュート「偵察のし甲斐はあったな」
シャムシェル「そ?」
リュート「相手のことがよくわかったし」
シャムシェル「相手の『胸』が、でしょ?」
シャムシェルがニヤニヤと笑う。
やはり、こいつ、わかっていたか。
シャムシェル「大きなオッパイだったね」
リュート「うん」
シャムシェル「さわりたいとか思ったんでしょ」
リュート「全然」
シャムシェル「嘘ばっかり」
思わず苦笑する。
シャムシェル「跪(ひざまず)かせてパ〇ズリさせたいとか
思ったんでしょ」
リュート「そんなこと、考えたこともない」
シャムシェル「嘘が下手なんだから」
シャムシェルがくすくすと笑う。
リュート「あの司令官と事を構えるのは大変だな」
シャムシェル「夜なら、リュートの圧勝だと思うけど」
リュート「昼間の戦争なら、全敗だな」
シャムシェル「そうね。戦争屋としては、相手が上だね」
リュート「さすが英雄ワッケンハイム将軍の娘だ」
シャムシェル「お城に入る時、怖くなかったの?」
リュート「別に」
シャムシェル「帰って来られないかもって思わなかった?」
リュート「それが……不思議となかったんだよなあ。
別に根拠はないんだけど」
シャムシェル「くすくす……やっぱり大物だね」
シャムシェルが笑う。
リュート「おれが処刑されるって言われたら、助けてくれた?」
シャムシェル「見放す」
リュート「あっ、こいつめ」
シャムシェル「くすくすくす」
シャムシェルが笑った。なんだか、いつになく上機嫌だった。
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ワン・コアン「司令官!」
ワン・コアン「今まで、いったいどこに行ってらっしゃったのですか!」
リュート「敵の城」
ワン・コアン「まさか……ヴンダーバルト城までご偵察ですか?」
リュート「敵将に会ってきたよ。グラディスって、面白いね」
ワン・コアン「それは誠ですか?」
リュート「うん」
ワン・コアン「それでどうやってここまで!?」
リュート「普通に出してくれたよ」
ワン・コアン「どういうことです?」
リュート「グラディスって、なんかいい人っぽいね。
どうして叛乱しているのか、よくわかんない子だね」
ワン・コアン「いったい何を考えていらっしゃるのです!?
司令官にもしものことがあれば------」
リュート「一騎討ちの方がいいかもしれない」
ワン・コアン「はい?一騎討ち?」
リュート「大軍で攻め立てても無駄だよ。
一騎討ちの方がまだ勝機があるかも。
剣の戦いじゃ、無理だけど」
ワン・コアン「とにかく、今後勝手に出歩くのはお止めください。
司令官は狙われていらっしゃるのですから」
リュート「今度からそうするよ」
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部屋に入ると、すぐに夕食が運ばれてきた。
やはり、朝の賊は見つからなかったらしい。
当たり前だ。
賊は敵将------グラディスだったのだから。
おれが会いに行った時、
グラディスはすでに自分の居城に戻っていた。
このビュステンハルター城の警戒網を破って
真っ昼間から侵入した相手だ。
まともに戦うとなれば、痛みは避けられない。
どうやって戦うか------。
<<9時にでも祈っていろ>>
別れ際の言葉が蘇った。
9時にでも祈っていろ、か。
9時というのは、恐らく9時課のことだろう。
9時課にでも祈っていろという意味か。
しかし、なぜグラディスは
祈祷の時間などを口にしたのだろう。
おれは、はっとした。
まさか、暗号------!?
ガチャッ!
いきなり扉が開いて、
またしても老将たち3人が部屋に入ってきていた。
リュート「何か用事?」
フェルゼン「貴様、ヴンダーバルト城に行ったというのは本当か?」
リュート「うん」
フェルゼン「ワッケンハイムの『伜』と会ったそうだな」
リュート「うん」
フェルゼン「嘘をつけ!貴様如きが脱出できるはずがない!」
リュート「それがいい子でさ、帰してくれたんだ」
フェルゼン「またしても偽の武勇伝をこしらえるつもりか!?」
リュート「あの子、自分のこと『オレ』って言うんだね。
面白い言い方をするね」
フェルゼン将軍が黙った。彼女が『オレ』と自称するのは、
彼らも知っていたらしい。
ザント「フェルゼン将軍……出鱈目です。当てずっぽうで------」
リュート「『9時課にでも祈っていろ』って、どういう意味かな」
フェルゼン「9時課にでも祈れ?」
リュート「別れ際に、グラディスから言われたんだ」
フェルゼン「……」
リュート「もう一度、グラディスには会ってみたいな。
会って色々話をすれば、なんとかなるような気がする」
フェルゼン「話し合いで解決すれば、貴様など不要だ」
来た時と同じように、老将たち3人は去っていった。
シャムシェル「相変わらず失礼なやつ。食っちゃおうか?」
リュート「だから、やめろって」
シャムシェル「でも、もう骨と皮ばかりだしな……
精液もあんまり出てこないし」
リュート「だから、食うのはやめろって」
シャムシェル「そうだね。あんなまずいのを食べなくても、
もっと美味しいものがここにいるもんね」
シャムシェルがぎゅっとおれに抱きついてきた。
リュート「わっ」
シャムシェル「キスして」
リュート「え?」
シャムシェル「キスするのっ。僕(しもべ)になる時に約束したじゃん」
リュート「してないって」
シャムシェル「しないとあの老人に悪戯するじょ」
シャムシェルが脅してみせる。
おれは、ちゅっと口づけした。
リュート「シャムシェルはキスが好きだな」
シャムシェル「普通、キスは人間にしないんだからね……んちゅ……」
リュート「わかってる」
シャムシェル「わかってないんだから……」
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その夜------リュート・ヘンデが食事もキスも終えて
豪華な自室で眠りに就いた頃、町中に怪しい男の影があった。
暗殺者D「ちゃんと手引きしてくれるんだろうな」
暗殺者の声に、依頼者の男はうなずいた。
暗殺者D「いいだろう。金は受け取った。結果は楽しみにしていろ」
暗殺者が足音もなく立ち去ると、
依頼者は一人ほくそ笑みを浮かべた。
これで、仲間にも吉報を知らせることができる。
明日の夜が、楽しみだ。
