戦いの朝の幕開けだった。
といっても、剣の一騎討ちをするわけではない。
戦いそのもので死ぬことはないが、
負ければその後、死が待っている。
シャムシェル「はい、リュート。あ~ん♪」
リュート「あ~ん♪ぱくっ」
シャムシェル「美味しい?」
リュート「美味しい」
シャムシェル「わたしのパ〇ズリより?」
リュート「パ〇ズリより上」
シャムシェル「んもう!そういう時はお世辞でも
パ〇ズリのうほうが美味しいって言うのっ!」
リュート「だって、食事とセ〇クスは同列に比べられないだろ」
コンッコンッ!
リュート「入って」
ガチャッ!
入ってきたのは、しばらく会議から遠ざけられていた
ワン・コアンだった。
今朝、ようやく謹慎処分を解かれたのだ。
ワン・コアン「今朝の調子はいかがですか?」
リュート「いい感じ」
ワン・コアン「それはようございました。
これは料理人からの差し入れでございます」
そう言って、ワン・コアンはアップルパイを差し出した。
リュート「うは、うまそう♪」
ワン・コアン「是非勝ってくださいとのことです」
リュート「ありがとう。いただきま~す。あんぐ」
おれは早速かぶりついた。
リュート「んん……ンンッ……うまい、これ」
ワン・コアン「料理人に伝えておきます」
リュート「チェスの戦いはいっしょに来るの?」
ワン・コアン「司令官のお許しがいただければ」
リュート「いいよ」
ワン・コアン「ありがとうございます。将軍たちも同席ですか?」
リュート「いや、お城が空白になっちゃまずいから」
ワン・コアン「さようでございますか。よいことです」
ワン・コアンは満足そうにうなずいた。
ワン・コアン「それでは、ご検討をお祈りしております」
ワン・コアンは部屋を出ていった。
リュート「あれ?何怒ってんの?」
シャムシェル「毒味するのはわたしの役目なのにぃ」」
リュート「ああ。でも、うまかったよ」
シャムシェル「んもう、馬鹿!」
リュート「わあっ、パンを投げつけるな!」
シャムシェル「リュートの馬鹿馬鹿馬鹿~~!」
リュート「うわぁぁっ!」
パンが顔面に当たって、おれは後ろに倒れた。
-------------------------------------------------------------------------------
時間は刻一刻と、戦いの瞬間に近づいていた。
兵士たちも慌ただしく歩きまわっている。
守備兵A「おい。今日だな」
守備兵B「ああ」
守備兵A「どっちが勝つと思う」
守備兵B「聞かずもがなだろ」
守備兵A「おれたち、どうなるのかな。捕虜になるのか?」
守備兵B「そこまでは行かんだろうが」
守備兵A「いつも白パンをくれる、いい司令官殿だったんだがな」
守備兵B「いい人間がいい司令官とは限らんさ」
守備兵A「しかし、いい司令官はいい人間であることが多い」
守備兵B「まあ、出来はともかく、
前の司令官と違ってやりやすかったな」
守備兵A「次の司令官も、頭のやわらかいやつだといいが」
守備兵B「そうはいかんだろう。いい人ほど、早く亡くなるもんだ」
-------------------------------------------------------------------------------
おれはいよいよ服に着替えて出かける準備をしていた。
そろそろ、出発の頃合いだ。
グラディスも戦いを待ち望んでいるに違いない------
自分が勝つという圧倒的な自信の下に。
でも、不思議と緊張はない。
勝つという意識はもちろんないが、負けるという意識もない。
不思議な感覚だ。
シャムシェル「リュート、いい顔をしてるよ」
リュート「そうか?」
シャムシェル「うん。きりっとして、とってもかっこいい。
惚れ直しちゃうかも」
リュート「惚れると火傷するぞ」
シャムシェル「悪魔がするわけないじゃん」
リュート「そりゃごもっとも」
シャムシェル「くす。出かける前に、励ましてあげよっか」
リュート「パ〇ズリするつもりじゃないだろうな」
シャムシェル「違うよ」
シャムシェル「ちゅっ♪」
シャムシェルはおれのほっぺたにキスをした。
シャムシェル「元気出た?」
リュート「いい手、打てるかも」
シャムシェル「がんばってね」
リュート「来ないのか?」
シャムシェル「そばにはいない。空から見てる」
コンッコンッ!
リュート「はい」
ガチャッ!
驚いたことに、入ってきたのはアイシスだった。
リュート「いいのか?婚約者がいるのに、
男の部屋に1人で入ってきて」
アイシス「あなたに異性は感じてないもの」
出端を挫かれておれは苦笑した。
まあ、アイシスにはおれは異性として
見えていないのかもしれないが------。
(いい女だと思うんだけどなあ)
とおれは思った。
騎士学校の頃からいいなと思い続けてきたが、
いまだにアイシスを抱けてはいない。
アイシス「どうするの」
リュート「何が」
アイシス「今日よ」
リュート「ああ……何とかなるんじゃない?」
アイシス「あなた、神経あるの!?
グラディス将軍はモテールより強いのよ!?」
リュート「じゃあ、今から引き受けられませんって断る?
それこそ、総攻撃を仕掛ける理由を与えちゃうよ。
向こうだってそのくらいの準備はしてるさ」
アイシス「出世のつもりが、貧乏籤を引かされたものね」
リュート「貧乏籤でもないと思うけど。白パンだって食えるし、
料理人も、がんばってくださいってアップルパイを
焼いてくれたんだよ」
アイシス「あなた、食事のことしかないの?」
リュート「いや、そういういい面もあるよっていう」
アイシス「それしかないでしょ」
どうあってもアイシスはケチをつけたいらしい。
なんだか、戦いを前にしてアイシスの方が
イライラしているみたいだ。
おれは逆に、落ち着きはらっている。
話すこともないので、おれはアイシスの胸を眺めた。
やはり、アイシスの胸はでかい。
ムラムラとする。
妙な自信と焦りの中でどこかグラグラしているはずなのに、
それはそれ。乳は乳。見ればやはり反応してしまう。
アイシス「どこを見てるのよ」
リュート「胸」
アイシス「あなたって、ほんと最低ね」
アイシスはそっぽを向いた。
アイシス「結局、運だけでつかんだ地位なんて、消えるってことね」
リュート「あれ?おれを励ましに来たんじゃないの?」
アイシス「あなたにそんな価値があると思う?」
相変わらず、言葉尻がきつい。
リュート「おれがもし負けたらさ」
アイシス「もしじゃなくて、確実にでしょ」
リュート「モテールを抑えてやってよ。あいつ、すぐカッカするから。
あれじゃあ、将軍になれない」
アイシスが驚いた表情を見せた。
リュート「あいつが婚約者の意見を聴くかどうかはわからないけど、
抑えられるのはたぶん、アイシスだけだと思うから」
リュート「あいつが暴走したら勝てる戦いも負けてしまう」
アイシス「ずいぶん司令官らしいことを言うのね」
リュート「これでも1週間だけ司令官をやったからね」
言っておれは、にやりと笑った。
リュート「あ、あとさ」
アイシス「何」
リュート「おれが死んだら、その胸を顔面に押しつけてくれない?」
アイシス「お断りよ!」
アイシスは背中を向け、部屋を出ていった。
わざわざ批判しに来た……わけではあるまい。
ここに来たのは、きっとおれのことが心配になったのだろう。
彼女にも人の心あり。
氷の女ではないということだ。
でも、意地っ張りのアイシスには素直な言葉が言えない。
そういう子だっているものだ……
なんて、上から目線で言っちゃってるけど。
コンッコンッ!
リュート「どうぞ」
ガチャッ!
やはり、来たのはフェルゼン将軍だった。
リュート「ちょうど呼ぼうと思ってたんだ。
いっしょに来てくれない?」
フェルゼン「何だと?」
リュート「3人いっしょに連れてっちゃうと
お城が空っぽになっちゃうから無理だけど、
フェルゼン将軍1人なら平気でしょ」
フェルゼン「なぜ、わしを連れていく」
リュート「お城を守るのなら、
ザント将軍とシュラム将軍がいれば充分。
攻撃するにはフェルゼン将軍。そうでしょ?」
フェルゼン「敵城を攻めに行くわけではないぞ」
リュート「でも、何かといた方が心強いかなと思って。
敵城も視察できるし、それに、3人の中では
フェルゼン将軍が一番格闘術が強いし」
フェルゼン「フフン」
フェルゼン将軍が初めて笑った。
フェルゼン「仕方がない。貴様の最期ぐらい、見取ってやる」
リュート「お願いね。じゃ、行こうか」
先にフェルゼン将軍が歩き出した。
おれは後ろを振り返った。
シャムシェルが手を振っていた。
おれも手を振り返した。
リュート「行ってくるよ」
シャムシェル「行ってらっしゃい♪」
フェルゼン「何を独り言を言っておるのだ」
リュート「別に。行こう」
-------------------------------------------------------------------------------
通路に出ると、兵士たちが待っていた。
守備兵A「司令官殿、がんばってください」
守備兵B「吉報をお待ちしております」
リュート「ありがとう」
みんな、本当は負けると思っているのだろうけど、
励ましてくれる。
ワン・コアン「それでは参りましょうか」
リュート「うん。フェルゼン将軍もいっしょでいいでしょ?」
ワン・コアン「フェルゼン将軍もですか?」
フェルゼン「わしがおるのでは不満か」
ぎろっと将軍が睨んでみせる。
ワン・コアン「ま、まあ、よいでしょう」
-------------------------------------------------------------------------------
お城を出ると、外で2人の騎士が待っていた。
モテール「フン。やっと来たか。時間に遅れたらどうするつもりだ?」
リュート「さあ、どうしよう」
モテール「相変わらず緊張感のないやつめ。
だから、おまえは将軍の器ではないというのだ。
おれが司令官ならば、まだ勝機があったものを……」
リュート「おれの留守中、頼むね」
モテール「上から目線で頼むな!」
フェルゼン「モテール。口に気をつけよ」
モテール「はっ……!?」
フェルゼン「たとえ同期といえど、司令官に対して言う物言いか。
大事な戦いの時になじる馬鹿がおるか」
モテール「はっ……し、しかし……」
フェルゼン「わしに口答えするのか?
いつから偉くなったのだ、モテール」
モテール「はっ……はは……申し訳ございません」
フェルゼン将軍の一睨みに、モテールは小さくなった。
フェルゼン「貴様にもいずれ将軍になる時が訪れる。
それまで黙して待つのもまた、将軍の器だ。
犬のように泣き叫ぶな」
モテール「はっ……ははぁ……」
モテールが頭を下げる。
ワナワナふるえているのは、
痛いところを突かれたのか、よっぽどの屈辱だったのか。
だが、相手は騎士学校の大先輩。口答えできるわけがない。
リュート「将軍、行こう。モテールはモテールなりの流儀で
おれを励まそうとしてくれてるんだよ。同期だから」
フェルゼン「------貴様、いい同期を持ったな」
フェルゼン将軍は先に歩き出した。
リュート「じゃあ、後のことはお願い。
アイシス、オッパイの件よろしく」
アイシス「だ、誰がオッパイよ、この馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
アイシスの叫ぶ声が、おれの背中に響いた。
といっても、剣の一騎討ちをするわけではない。
戦いそのもので死ぬことはないが、
負ければその後、死が待っている。
シャムシェル「はい、リュート。あ~ん♪」
リュート「あ~ん♪ぱくっ」
シャムシェル「美味しい?」
リュート「美味しい」
シャムシェル「わたしのパ〇ズリより?」
リュート「パ〇ズリより上」
シャムシェル「んもう!そういう時はお世辞でも
パ〇ズリのうほうが美味しいって言うのっ!」
リュート「だって、食事とセ〇クスは同列に比べられないだろ」
コンッコンッ!
リュート「入って」
ガチャッ!
入ってきたのは、しばらく会議から遠ざけられていた
ワン・コアンだった。
今朝、ようやく謹慎処分を解かれたのだ。
ワン・コアン「今朝の調子はいかがですか?」
リュート「いい感じ」
ワン・コアン「それはようございました。
これは料理人からの差し入れでございます」
そう言って、ワン・コアンはアップルパイを差し出した。
リュート「うは、うまそう♪」
ワン・コアン「是非勝ってくださいとのことです」
リュート「ありがとう。いただきま~す。あんぐ」
おれは早速かぶりついた。
リュート「んん……ンンッ……うまい、これ」
ワン・コアン「料理人に伝えておきます」
リュート「チェスの戦いはいっしょに来るの?」
ワン・コアン「司令官のお許しがいただければ」
リュート「いいよ」
ワン・コアン「ありがとうございます。将軍たちも同席ですか?」
リュート「いや、お城が空白になっちゃまずいから」
ワン・コアン「さようでございますか。よいことです」
ワン・コアンは満足そうにうなずいた。
ワン・コアン「それでは、ご検討をお祈りしております」
ワン・コアンは部屋を出ていった。
リュート「あれ?何怒ってんの?」
シャムシェル「毒味するのはわたしの役目なのにぃ」」
リュート「ああ。でも、うまかったよ」
シャムシェル「んもう、馬鹿!」
リュート「わあっ、パンを投げつけるな!」
シャムシェル「リュートの馬鹿馬鹿馬鹿~~!」
リュート「うわぁぁっ!」
パンが顔面に当たって、おれは後ろに倒れた。
-------------------------------------------------------------------------------
時間は刻一刻と、戦いの瞬間に近づいていた。
兵士たちも慌ただしく歩きまわっている。
守備兵A「おい。今日だな」
守備兵B「ああ」
守備兵A「どっちが勝つと思う」
守備兵B「聞かずもがなだろ」
守備兵A「おれたち、どうなるのかな。捕虜になるのか?」
守備兵B「そこまでは行かんだろうが」
守備兵A「いつも白パンをくれる、いい司令官殿だったんだがな」
守備兵B「いい人間がいい司令官とは限らんさ」
守備兵A「しかし、いい司令官はいい人間であることが多い」
守備兵B「まあ、出来はともかく、
前の司令官と違ってやりやすかったな」
守備兵A「次の司令官も、頭のやわらかいやつだといいが」
守備兵B「そうはいかんだろう。いい人ほど、早く亡くなるもんだ」
-------------------------------------------------------------------------------
おれはいよいよ服に着替えて出かける準備をしていた。
そろそろ、出発の頃合いだ。
グラディスも戦いを待ち望んでいるに違いない------
自分が勝つという圧倒的な自信の下に。
でも、不思議と緊張はない。
勝つという意識はもちろんないが、負けるという意識もない。
不思議な感覚だ。
シャムシェル「リュート、いい顔をしてるよ」
リュート「そうか?」
シャムシェル「うん。きりっとして、とってもかっこいい。
惚れ直しちゃうかも」
リュート「惚れると火傷するぞ」
シャムシェル「悪魔がするわけないじゃん」
リュート「そりゃごもっとも」
シャムシェル「くす。出かける前に、励ましてあげよっか」
リュート「パ〇ズリするつもりじゃないだろうな」
シャムシェル「違うよ」
シャムシェル「ちゅっ♪」
シャムシェルはおれのほっぺたにキスをした。
シャムシェル「元気出た?」
リュート「いい手、打てるかも」
シャムシェル「がんばってね」
リュート「来ないのか?」
シャムシェル「そばにはいない。空から見てる」
コンッコンッ!
リュート「はい」
ガチャッ!
驚いたことに、入ってきたのはアイシスだった。
リュート「いいのか?婚約者がいるのに、
男の部屋に1人で入ってきて」
アイシス「あなたに異性は感じてないもの」
出端を挫かれておれは苦笑した。
まあ、アイシスにはおれは異性として
見えていないのかもしれないが------。
(いい女だと思うんだけどなあ)
とおれは思った。
騎士学校の頃からいいなと思い続けてきたが、
いまだにアイシスを抱けてはいない。
アイシス「どうするの」
リュート「何が」
アイシス「今日よ」
リュート「ああ……何とかなるんじゃない?」
アイシス「あなた、神経あるの!?
グラディス将軍はモテールより強いのよ!?」
リュート「じゃあ、今から引き受けられませんって断る?
それこそ、総攻撃を仕掛ける理由を与えちゃうよ。
向こうだってそのくらいの準備はしてるさ」
アイシス「出世のつもりが、貧乏籤を引かされたものね」
リュート「貧乏籤でもないと思うけど。白パンだって食えるし、
料理人も、がんばってくださいってアップルパイを
焼いてくれたんだよ」
アイシス「あなた、食事のことしかないの?」
リュート「いや、そういういい面もあるよっていう」
アイシス「それしかないでしょ」
どうあってもアイシスはケチをつけたいらしい。
なんだか、戦いを前にしてアイシスの方が
イライラしているみたいだ。
おれは逆に、落ち着きはらっている。
話すこともないので、おれはアイシスの胸を眺めた。
やはり、アイシスの胸はでかい。
ムラムラとする。
妙な自信と焦りの中でどこかグラグラしているはずなのに、
それはそれ。乳は乳。見ればやはり反応してしまう。
アイシス「どこを見てるのよ」
リュート「胸」
アイシス「あなたって、ほんと最低ね」
アイシスはそっぽを向いた。
アイシス「結局、運だけでつかんだ地位なんて、消えるってことね」
リュート「あれ?おれを励ましに来たんじゃないの?」
アイシス「あなたにそんな価値があると思う?」
相変わらず、言葉尻がきつい。
リュート「おれがもし負けたらさ」
アイシス「もしじゃなくて、確実にでしょ」
リュート「モテールを抑えてやってよ。あいつ、すぐカッカするから。
あれじゃあ、将軍になれない」
アイシスが驚いた表情を見せた。
リュート「あいつが婚約者の意見を聴くかどうかはわからないけど、
抑えられるのはたぶん、アイシスだけだと思うから」
リュート「あいつが暴走したら勝てる戦いも負けてしまう」
アイシス「ずいぶん司令官らしいことを言うのね」
リュート「これでも1週間だけ司令官をやったからね」
言っておれは、にやりと笑った。
リュート「あ、あとさ」
アイシス「何」
リュート「おれが死んだら、その胸を顔面に押しつけてくれない?」
アイシス「お断りよ!」
アイシスは背中を向け、部屋を出ていった。
わざわざ批判しに来た……わけではあるまい。
ここに来たのは、きっとおれのことが心配になったのだろう。
彼女にも人の心あり。
氷の女ではないということだ。
でも、意地っ張りのアイシスには素直な言葉が言えない。
そういう子だっているものだ……
なんて、上から目線で言っちゃってるけど。
コンッコンッ!
リュート「どうぞ」
ガチャッ!
やはり、来たのはフェルゼン将軍だった。
リュート「ちょうど呼ぼうと思ってたんだ。
いっしょに来てくれない?」
フェルゼン「何だと?」
リュート「3人いっしょに連れてっちゃうと
お城が空っぽになっちゃうから無理だけど、
フェルゼン将軍1人なら平気でしょ」
フェルゼン「なぜ、わしを連れていく」
リュート「お城を守るのなら、
ザント将軍とシュラム将軍がいれば充分。
攻撃するにはフェルゼン将軍。そうでしょ?」
フェルゼン「敵城を攻めに行くわけではないぞ」
リュート「でも、何かといた方が心強いかなと思って。
敵城も視察できるし、それに、3人の中では
フェルゼン将軍が一番格闘術が強いし」
フェルゼン「フフン」
フェルゼン将軍が初めて笑った。
フェルゼン「仕方がない。貴様の最期ぐらい、見取ってやる」
リュート「お願いね。じゃ、行こうか」
先にフェルゼン将軍が歩き出した。
おれは後ろを振り返った。
シャムシェルが手を振っていた。
おれも手を振り返した。
リュート「行ってくるよ」
シャムシェル「行ってらっしゃい♪」
フェルゼン「何を独り言を言っておるのだ」
リュート「別に。行こう」
-------------------------------------------------------------------------------
通路に出ると、兵士たちが待っていた。
守備兵A「司令官殿、がんばってください」
守備兵B「吉報をお待ちしております」
リュート「ありがとう」
みんな、本当は負けると思っているのだろうけど、
励ましてくれる。
ワン・コアン「それでは参りましょうか」
リュート「うん。フェルゼン将軍もいっしょでいいでしょ?」
ワン・コアン「フェルゼン将軍もですか?」
フェルゼン「わしがおるのでは不満か」
ぎろっと将軍が睨んでみせる。
ワン・コアン「ま、まあ、よいでしょう」
-------------------------------------------------------------------------------
お城を出ると、外で2人の騎士が待っていた。
モテール「フン。やっと来たか。時間に遅れたらどうするつもりだ?」
リュート「さあ、どうしよう」
モテール「相変わらず緊張感のないやつめ。
だから、おまえは将軍の器ではないというのだ。
おれが司令官ならば、まだ勝機があったものを……」
リュート「おれの留守中、頼むね」
モテール「上から目線で頼むな!」
フェルゼン「モテール。口に気をつけよ」
モテール「はっ……!?」
フェルゼン「たとえ同期といえど、司令官に対して言う物言いか。
大事な戦いの時になじる馬鹿がおるか」
モテール「はっ……し、しかし……」
フェルゼン「わしに口答えするのか?
いつから偉くなったのだ、モテール」
モテール「はっ……はは……申し訳ございません」
フェルゼン将軍の一睨みに、モテールは小さくなった。
フェルゼン「貴様にもいずれ将軍になる時が訪れる。
それまで黙して待つのもまた、将軍の器だ。
犬のように泣き叫ぶな」
モテール「はっ……ははぁ……」
モテールが頭を下げる。
ワナワナふるえているのは、
痛いところを突かれたのか、よっぽどの屈辱だったのか。
だが、相手は騎士学校の大先輩。口答えできるわけがない。
リュート「将軍、行こう。モテールはモテールなりの流儀で
おれを励まそうとしてくれてるんだよ。同期だから」
フェルゼン「------貴様、いい同期を持ったな」
フェルゼン将軍は先に歩き出した。
リュート「じゃあ、後のことはお願い。
アイシス、オッパイの件よろしく」
アイシス「だ、誰がオッパイよ、この馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
アイシスの叫ぶ声が、おれの背中に響いた。
