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エッチな騎士の成り上がり
- 叛乱軍性圧編18 -

ようやく、おれはヴンダーバルト城に到着していた。

いよいよ戦いの舞台------運命の場所だ。

だが------どうにもお腹の具合が悪い。

(ううん……なんでだろ……なんかお腹の調子が悪いな……)

敵兵「ここでお待ちください」

フェルゼン「ついにか」

ワン・コアン「泣いても笑っても、これで勝負が決まりですな」

リュート「ううん……」

ワン・コアン「どうされました」

リュート「なんか、お腹が痛い」

ワン・コアン「どういたしましょう」

リュート「ううん……厠はないかな」

グラディス「やはり、来たか」

グラディスがにやりと笑った。

グラディス「戦わずに逃げ出すか、
      泣き言を言ってくるかと思っていたがな」

リュート「あ、うん……」

グラディス「クククク。表情が冴えぬな。
      さすがのおまえでも、やはり死ぬのが怖いか。
      オレに死んでもいいと言ったのは、嘘のようだな」

リュート「はは……あの、厠はない?」

グラディス「ククク……緊張しておるようだな。
      それでは戦いに勝てぬぞ」

リュート「ううん……こんな時に腹痛なんて……」

グラディス「戦いが始まったら、席を外すのは一切なしだ。
      誰かに次の手を聞かぬとも限らぬからな」

リュート「え?そんな……」

グラディス「ククク。モテールに聞くつもりだったのかもしれぬが、
      無駄なことだ。やつの手はすべて知っておる。
      教えたのは、このオレだからな」

リュート「ううん……」

グラディス「では、始めるか」

リュート「え?先に厠に------」

グラディス「時間厳守だ」

リュート「そ、そんな……」

グラディス「では、参るぞ。おまえから打て」

ついに戦いが始まった。

それも最悪の始まりだった。

腹痛でお腹がきゅんきゅん痛んでいる。
いったい、なぜこんなに遺体のだろう。

緊張?

いや、そんなものはなかったはずだ。

もしかして、自分でも緊張に気づいていなかったのだろうか?

それにしても、変だ。

早く厠に駆け込みたい。

おれは手を考えようとしたが、
お腹がきりきり痛んで、とても考えている場合ではない。

グラディス「どうした。早く打たぬか。打たねば始まらぬぞ」

ええい、ままよ。

おれはポーンに手をかけて1駒進めた。

グラディス「ククク。オーソドックスだな」

グラディスがすぐさま次の手を打つ。

(うっ……)

おれはまたしても呻いた。

お腹が痛い。

猛烈に洩らしそうだ。

考えている場合ではない。

(こ、ここで洩らしては最悪の状態になる……
 なんとかして耐えねば……!)

考えるのは、いかにして内蔵の衝動を抑えるかだ。

手を考えている場合ではない。

おれは呻きながら、またチェスの駒を手にした。

ポコッ!

どこに置いたのかすら覚えてはいない。

グラディス「ほう」

またグラディスが次の手をくり出す。

(ぐぅ……やばい……!)

おれは懸命に衝動と戦いながら、次の手を打った。

すぐさまグラディスが打ち返し、
おれもまた打ち返すという状況が続いていく。

戦いがどうなっているかなんて、わからない。

とにかく、洩らさないこと、内臓の衝動を抑えることだけだ。

(早く終わってくれぇ……!)

ポコッ!

その一念だけで、矢継ぎ早に打ち返していく。

グラディス「ぬっ……!」

一瞬、グラディスが唸った。

おれには何に反応しているのかわからない。

(ぐぁぁぁ……誰かお腹の衝動を止めてくれ……)

グラディス「やるな」

ポコッ、ポコッ!

グラディスが手を打ち返す。
すぐさま、おれはルークを移動させる。

グラディス「ぐっ!」

(驚いてないで、早く打ち返してくれ……!)

おれはお腹を抑えてひたすら呻き声をこらえる。
だが、グラディスは考え込んでいてなかなか打たない。

一手打つのに許された時間は、砂時計が落ちるまで。

ポコッ、ポコッ!

時間に迫られて、グラディスが手を打った。
おれは待っていたように、すぐさま打ち返した。

グラディス「……」

グラディスが盤面を睨む。

ポコッ、ポコッ!

また時間ぎりぎりまで粘って手を打つ。
その直後、おれはまた手を打ち返す。

グラディス「ぐぅ……」

グラディスが唸った。

まわりの者たちは唾を飲んで見守っている。

ワン・コアンも、フェルゼン将軍も。

時間ぎりぎりでまたしてもグラディスが打った。

(ぐはぁっ……洩れるぅ……!)

おれはすぐさまポーンを移動させた。

グラディス「ふぉっ……!」

グラディスがまたしても唸った。

ずっと考え込む。

なぜ考え込むのだ。

時間を引き延ばさないでくれ。

耐えられん。

ここで尻から大爆発だけはいやだ。

ポコッ、ポコッ!

またしても時間ぎりぎりでグラディスが打った。
すぐさまおれはまた打ち返した。

ワン・コアン「おおっ……!」

フェルゼン「むおっ……!」

横で見ていた2人が思わず声を上げた。

グラディスは苦渋の表情を浮かべていた。

あのグラディスが苦しんでいる。

まさか、おれと同じ腹痛なのか?

とにかく、早く、早く打ってくれ。

時間いっぱいまで粘って、またグラディスが打った。

(ぎょわぁぁぁぁ、やばい!もう死ぬ、死ぬぅぅぅぅっ!)

おれは速攻で打ち返した。

グラディス「……!!」

グラディスが息を呑んだ。

まわりでも、おおという声があがった。

グラディスがポーンをつかんで移動させようとする。

が、また元に戻す。

そのまま考える。

砂時計はどんどん進んでいくだけだ。

そしておれの腹の衝動もどんどん強まっていく。

おれは声なく呻いた。

グラディスの手がふるえた。

またチェスの駒を動かそうとして、やめた。置き直した。

砂時計が止まっていた。

砂が全部落ち切っていた。

グラディス「……まさか、これほどの名手とはな」

ため息をつくように言った。

敵兵「グラディス将軍!」

グラディス「わかっておる。オレの負けだ。どこに打っても逃れられん」

リュート「え?」

グラディス「こう、打つ手打つ手が妙手ではな……
      いったい、どこでチェスを学んだ?」

リュート「おれ、勝ったの?」

グラディス「相変わらずふざけたことを言う。人を負かしておいて」

リュート「じゃあ、、厠に行っていいの?」

グラディス「当たり前だ」

おれは全力で厠に走った。

走っている最中の方が、人生最大の危機だった。

ここまで我慢していて爆発は最悪だ。

が------なんとかお尻からの大爆発は免れることができた。

それにしても------

戦いの場に戻りながらおれは考えた。

なぜ、勝ってしまったのだろう。

グラディスがわざと負けた?

いや。

そんな感じじゃなかった。

グラディスは本気だった。

なら------なぜグラディスは負けたのだろう。

おれが打った手がそんなによかったのだろうか?

でも、腹痛をこらえるのに精一杯で、
どこに打つなんて考えている場合ではなかったのだが……。



キャラクター紹介第六弾
『グラディス(叛乱軍将軍)』<<グラディス・フォン・ワッケンハイム>>
名将の娘で、自分のことを「オレ」と言う。
ショートヘアで色黒。好きになった男には
とことん身も心も捧げる。
一方的に好きになって追いかけ回すタイプ。
<2016/10/01 20:12 RUKA>消しゴム
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