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エッチな騎士の成り上がり
- 叛乱軍性圧編19 -

グラディス「ククク……まさか、このオレがチェスで負けるとはな」

おれを見ると、グラディスは笑いを洩らした。

グラディス「おまえの表情を見た時には、
      さすがのおまえも緊張しておるのかと思っておったが……
      まさか、演技だったとはな」

リュート「いや、演技じゃなくて、本当にお腹が痛かったんだって」

グラディス「それであの手を打ったのか?
      腹痛がなければ、どうなっていたかわからんな」

リュート「いや、おれ、チェス、強くないから」

グラディス「オレは信じぬぞ。
      オレが人生で負けたのは、父が死んでから初めてだ」

リュート「あの……手加減なんかしてないよね」

グラディス「このオレがすると思うか?」

リュート「ほんとに?」

おれはワン・コアンに顔を向けた。

ワン・コアン「その……何と申しますか、
       ことごとくいい手ばかりでございました」

フェルゼン「感服した。あれほどよい手の連続は見たことがない。
      よもやワッケンハイムの『伜』が負けるとはな」

リュート「え、ええ~~~~っ!?」

驚くのはおれの方だった。

そんな。

腹痛をこらえるのに精一杯で、闇雲に打っただけなのに。
それが、ことごとく妙手だって!?

そ、そんな馬鹿な~~~っ!

グラディスは腰の剣を抜いて地面に投げつけた。

リュート「?」

グラディス「まさか、こんな時が来るとはな。
      一番犠牲なく勝つつもりが、正反対の結果に陥るとはな」

グラディスは自嘲的に微笑み、ため息をついた。

グラディス「オレの負けだ。好きにするがよい」

グラディスはすがすがしい笑みを向けた。

グラディス「ただし、兵は処刑するな。処刑するのはオレだけでよい」

リュート「うん……わかった。ヴンダーバルト城の者には
     一切危害を加えない」

グラディス「約束だぞ」

リュート「約束する」

敵兵「グラディス将軍!」

グラディス「気にするな。おまえたちの命の保証はとりつけた。
      こいつは信頼できる男だ」

敵兵「しかし、将軍は------!」

グラディス「戦いというのはこういうものだ。
      いつでも勝者が敗者と入れ代わる。そこに必然はない」

敵兵「将軍……!」

グラディスはおれの方に顔を向けた。

グラディス「早くお前たちの城につれていけ。
      煮るなり焼くなり、好きにするがよい」

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------それからは、凄い大騒ぎだった。

誰もが、おれが負けると思っていたのだ。

それが------勝ってしまった。

誰が攻めても首を取ることのできなかったグラディス将軍を、
捕虜にしてしまったのだ。

モテール「貴様、いったい何をした~~~~~っ!」

おれが帰ってくると、
モテールがおれの襟をつかんで揺さぶった。

リュート「や、やぁ、モテール」

モテール「貴様、何をした!金で買収したか!?」

リュート「そんなお金ないって」

モテール「貴様に勝てるわけがないのだ!
     貴様に、貴様に、貴様に……!」

ドンッ!

モテール「ぐはっ!」

フェルゼン「司令官の襟首をつかむ馬鹿がおるか!恥を知れ!」

モテール「し、しかし------」

フェルゼン「この無礼者が!頭をつけて詫びよ!」

ドンッ!

モテール「ぐ、ぐぁぁっ……お、おやめください、
     フェルゼン将軍……!」

フェルゼン「早く詫びぬか!」

モテール「た、大変申し訳ございませんでした……」

フェルゼン「目障りだ。立ち去れ」

モテール「は、ははっ……」

モテールはよろよろとよろめきながら立ち去った。

守備兵A「司令官!」

守備兵B「司令官殿!」

守備兵A「ま……まさか、本当に勝つなんて……!」

守備兵B「き、奇跡だ……奇跡が起こったんだ!」

フェルゼン「何を言うか、実力だ!早く宴の支度をせぬか!
      今日は宴会だ!」

守備兵A&B「ははっ!」

リュート「まだ宴会は早いんじゃない?ヴンダーバルト城の連中、
     攻撃を仕掛けてくるかもしれないよ」

フェルゼン「心配には及びませぬ。元々、あの城は
      グラディス将軍だからこそ統率できていたもの。
      グラディスなしでは、有効な戦いの仕掛けもできますまい」

リュート「でも、一応念のため」

フェルゼン「警備は厳重にさせます。
      ヴンダーバルト城の近くにも斥候を置いておりますゆえ」

おれは、はっとした。

フェルゼン将軍が、おれに丁寧語を使っている。
ずっと……ずっと乱暴な口調だったのに。

ザント「フェルゼン将軍!」

フェルゼン「おお、ザント将軍!見よ、勝ったぞ!」

ザント「そんな馬鹿な……いったい、どんな手を打って……!?」

フェルゼン「それがわしも見たことのないほど、妙手の連続であった。
      あのグラディスが苦しむ表情を初めて見たわ!」

シュラム「手を抜いたのではないのか」

フェルゼン「棋譜はとってある。後で見れば
      手を抜いていないことぐらいわかる。
      あれは、一生に一度お目にかかれるかどうかの手であった」

フェルゼン「今宵は宴だ!陛下にも早くお伝えするのだ!」

2人の将軍は慌ただしく立ち去った。

きっと王都に向けて使者を走らせるよう、
伝えに行ったのだろう。

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城の中は大騒ぎになっていた。
おれの方が、なんだかついていけていない感じだ。

リュート「やあ、アイシス」

アイシス「リュ、リュート……噂は本当なの?」

リュート「みたい」

アイシス「そんな……」

リュート「ごめんね。オッパイの件、なくなっちゃった」

アイシス「ば、馬鹿……!」

アイシスは真っ赤になって立ち去った。

フェルゼン「司令官。オッパイの件とは何事ですか」

リュート「え?ああ、あれ?
     おれが死んだら顔に胸を押しつけてって頼んだんだけど」

フェルゼン「ははははははは!」

フェルゼン将軍が大声を上げた。

フェルゼン「王都に戻ったら、いろんな女から言い寄られますぞ!
      司令官は、英雄ですからな!」

おれが初めて見た、フェルゼン将軍の笑い顔だった。


キャラクター紹介第七弾
『ルビーン(宰相)』<<ルビーン・フォン・ベルンシュタイン>>
国王の右腕と言われている宰相。
非情に計算高く、あまり人を信用しない。
非情に裏表のある人物。
<2016/10/02 21:02 RUKA>消しゴム
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