コンッコンッ!
ワン・コアン「ワン・コアンです」
ワン・コアン「こ、これは……司令官、縄もつけずによいのですか?
この者は人間兵器ですぞ」
グラディス「兵器ならおまえの前におる。
この者は、女にとってもまことに快き兵器であった」
フェルゼン「オ、オホン!」
おれは黙った。
兵器とは、もちろんおれのことである。
ワン・コアン「とにかく、縄はつけさせていただきます」
リュート「その必要はない」
ワン・コアン「司令官!」
リュート「命令だよ」
ワン・コアン「しかし!」
リュート「それよりも、後のことをきっちり決めておきたいんだ。
反乱軍は誰も処罰しない、グラディスも断頭台に送らない」
ワン・コアン「それは陛下が決められることです」
リュート「陛下から好きにしていいって委任されてるんだ」
ワン・コアン「それは過去のことでございます。今はどう言われるか。
危険な芽はやはり摘み取っておかねばなりませぬ。
即刻絞首刑に処すのがよいと思いますが」
グラディス「ククク……何を怖がっておるのだ、ワン・コアン」
ワン・コアン「何のことでございますか」
グラディス「危険な芽とは、おまえにとってということではないのか」
ワン・コアン「よくわかりませぬが」
グラディス「リュート・ヘンデがこの城に到着した時に、
刺客を放ったのは誰であろうな」
フェルゼン「!」
ワン・コアン「はて、何のことでございましょう」
グラディス「新しい司令官が着任するたびに、
オレに極秘の情報を送って殺害に手を貸していたのは、
誰であろうな」
ワン・コアン「どうやらご婦人は昨日のチェスの負けで
頭がおかしくなってしまわれたようだ。衛兵!衛兵!」
グラディス「見苦しいぞ、ワン・コアン!
オレはおかしくはなっておらぬ!」
グラディス「貴様は自分からオレの手先になると
申し込んできたではないか!
その代わり、命だけは助けてほしいと」
フェルゼン「ワンコイン!貴様!」
ワン・コアン「ワン・コアンです!
何度お間違えになられたらわかるのですか!」
フェルゼン「名前などどうでもよい!今のは誠か!」
ワン・コアン「これはフェルゼン将軍らしくない。
早くも敵の術中に引っ掛かるとは」
ワン・コアン「わたくしを亡き者にした後で、
この城を乗っ取ろうという敵将の戦略が見抜けませぬか!」
グラディス「それはおまえの方であろう。
ずいぶんと端金(端金)がたまったのではないのか」
ワン・コアン「衛兵!衛兵!」
グラディス「都合が悪くなると兵士に頼るか。
確か、武器庫を空にしたのも貴様であったな。
攻め落とすなら今でございますと。オレは乗らなかったが」
ワン・コアン「司令官!この女の戯れ言に惑わされてはなりませぬぞ!
わたくしがこの城のためにどんなにどんなに心を
砕いてきたかは------」
リュート「おれ、昨日のアップルパイ、持ってるんだよね。ほら」
取り出したアップルパイを目の前に、
ワン・コアンが初めて狼狽の表情を見せていた。
リュート「これ、食べてみる?」
フェルゼン「は?今はアップルパイなど------」
リュート「ワン・コアン、食べる?」
ワン・コアン「結構でございます」
リュート「遠慮しなくていいよ」
ワン・コアン「いえ、お腹がいっぱいでございますから」
リュート「命令だ。このアップルパイを食べよ」
フェルゼン「……司令官」
リュート「いいから食べよ」
ワン・コアン「お……お断りいたします」
リュート「毒でも盛ってると思ってるの?」
ワン・コアン「わたくし、アップルパイは嫌いでございます」
リュート「ならば、なおのこと命ずる。
ただちにこのアップルパイを食べよ」
ワン・コアン「……」
リュート「どうして食べぬ?」
ワン・コアン「お腹が……」
ぐぅぅ……。
ぐぅぅと腹の音が鳴った。ワン・コアンの腹の音だった。
リュート「お腹ねえ」
ワン・コアン「……」
フェルゼン「司令官、これは------」
リュート「この中に、腹下しが入っていたんだ」
フェルゼン「腹下し!?」
リュート「これを料理人につくらせたやつがいる」
フェルゼン「料理人に!?」
フェルゼンの目がワン・コアンを向いた。
フェルゼン「まさか、貴様------」
リュート「料理人に聞いてみようか。
昨日おれにアップルパイをつくるように命令したのは誰か」
ワン・コアン「……」
リュート「食べられないのは、
この中に腹下しが入っているのを知っていたから」
リュート「そしてそのことを知っているのは、料理人と、
その料理人に命令をしたその張本人だけ------」
フェルゼン「ワンコイン!貴様、司令官を------!」
ワン・コアン「ち、違います!わたくしではございません!」
フェルゼン「貴様意外に誰がおる!」
ワン・コアン「わたくしが自分の意思でやったのではございません!
わたくしは上からの命令で------」
フェルゼン「上から!?誰だ、それは!」
ワン・コアンがはっとした表情を見せた。
そのことは口にしてはいけないことになっていたに違いない。
不意に懐から妙な包みを取り出すと、いきなり呷った。
グラディス「しまった!」
フェルゼン「待て、貴様!」
ワン・コアン「自分の意思でございます。
わたくしは自分の意思で------ごわぁぁぁっ!」
グサッ!
血を噴いて、ワン・コアンはその場に倒れていた。
フェルゼン「ワン・コアン!ワン・コアン!」
ようやくフェルゼン将軍がまともに名前を呼んだというのに、
すでにワン・コアンはこと切れていた。
グラディス「これで誰が裏切り者か、わかったようだな」
フェルゼン「……他に内通者は?」
グラディス「こいつだけだ。
チェスの話を持ってきた時のやつの顔が思い出される」
グラディス「あの馬鹿司令官はチェスがだめだから、
チェスで行きましょうと、ニヤニヤしながら言いおった」
フェルゼン「……」
リュート「……やっぱり、手紙通りだったのか」
フェルゼン「手紙?」
リュート「陛下から密書に、裏切り者がいるって書いてあったんだ。
名前はわからなかったみたいだけど」
フェルゼン「まさか、こやつだったとは……」
グラディス「報告することが1つ増えたようだな、フェルゼン」
フェルゼン「むぅ……」
グラディス「親衛隊の馬鹿どもを呼ぶがいい。
こういうことには役に立つ」
フェルゼン「衛兵~~っ!衛兵~~っ!」
フェルゼンが声を張り上げた。
おれは黙って、ワン・コアンの死体を見下ろしていた。
-------------------------------------------------------------------------------
------夜が、ビュステンハルター城に訪れていた。
おれの部屋に呼び出されたモテールとアイシスは、
驚いていた。
まさか、
ワン・コアンが裏で手を引いていたとは思わなかったようだ。
死体を片づけて、グラディスからも話を聞いていた。
その後、再び将軍たちも集めて、
反乱軍をどうするかの話をして、ようやく、夜に解散した。
シャムシェル「大変な一日だったね~」
リュート「どこにいたんだ」
シャムシェル「大聖堂」
リュート「……」
おれは思わず沈黙した。
その話を聞くと、
あそこで祈りを捧げるのはやめようという気分になってくる。
リュート「アップルパイ、助かったよ。
あれがなかったら、しらばっくれてたと思う」
シャムシェル「くす。リュート、また出世だね」
リュート「うん……でも、自分の力じゃなくて、
シャムシェルのおかげだからな」
シャムシェル「わたしを惚れさせたリュートの力なのっ。
自分1人でやることだけが偉いわけじゃないんだよ?
人から助けてもらえるのも、その人の力なんだから」
リュート「そうなのかな」
シャムシェル「そうなの。というわけで、ご褒美くれない?」
おれは微笑んだ。
豊満に発育した身体を引き寄せて、ちゅっとキスをする。
シャムシェルが夢中でおれの舌を吸う。
それだけで痺れそうになる。
シャムシェル「王都に行ったら……またいっぱいエッチしようね……」
リュート「うん……」
シャムシェル「リュートのお嫁さんに……わたしも考えてね……」
どうやら、グラディスの話を聞いていたらしい。
リュート「しっかり考えておくよ」
シャムシェル「正妻はわたしなんだから……」
おれも夢中でシャムシェルの舌を吸い返しながら、
それも悪くない……なんて、ふざけたことを、
本気で考えていた。
ワン・コアン「ワン・コアンです」
ワン・コアン「こ、これは……司令官、縄もつけずによいのですか?
この者は人間兵器ですぞ」
グラディス「兵器ならおまえの前におる。
この者は、女にとってもまことに快き兵器であった」
フェルゼン「オ、オホン!」
おれは黙った。
兵器とは、もちろんおれのことである。
ワン・コアン「とにかく、縄はつけさせていただきます」
リュート「その必要はない」
ワン・コアン「司令官!」
リュート「命令だよ」
ワン・コアン「しかし!」
リュート「それよりも、後のことをきっちり決めておきたいんだ。
反乱軍は誰も処罰しない、グラディスも断頭台に送らない」
ワン・コアン「それは陛下が決められることです」
リュート「陛下から好きにしていいって委任されてるんだ」
ワン・コアン「それは過去のことでございます。今はどう言われるか。
危険な芽はやはり摘み取っておかねばなりませぬ。
即刻絞首刑に処すのがよいと思いますが」
グラディス「ククク……何を怖がっておるのだ、ワン・コアン」
ワン・コアン「何のことでございますか」
グラディス「危険な芽とは、おまえにとってということではないのか」
ワン・コアン「よくわかりませぬが」
グラディス「リュート・ヘンデがこの城に到着した時に、
刺客を放ったのは誰であろうな」
フェルゼン「!」
ワン・コアン「はて、何のことでございましょう」
グラディス「新しい司令官が着任するたびに、
オレに極秘の情報を送って殺害に手を貸していたのは、
誰であろうな」
ワン・コアン「どうやらご婦人は昨日のチェスの負けで
頭がおかしくなってしまわれたようだ。衛兵!衛兵!」
グラディス「見苦しいぞ、ワン・コアン!
オレはおかしくはなっておらぬ!」
グラディス「貴様は自分からオレの手先になると
申し込んできたではないか!
その代わり、命だけは助けてほしいと」
フェルゼン「ワンコイン!貴様!」
ワン・コアン「ワン・コアンです!
何度お間違えになられたらわかるのですか!」
フェルゼン「名前などどうでもよい!今のは誠か!」
ワン・コアン「これはフェルゼン将軍らしくない。
早くも敵の術中に引っ掛かるとは」
ワン・コアン「わたくしを亡き者にした後で、
この城を乗っ取ろうという敵将の戦略が見抜けませぬか!」
グラディス「それはおまえの方であろう。
ずいぶんと端金(端金)がたまったのではないのか」
ワン・コアン「衛兵!衛兵!」
グラディス「都合が悪くなると兵士に頼るか。
確か、武器庫を空にしたのも貴様であったな。
攻め落とすなら今でございますと。オレは乗らなかったが」
ワン・コアン「司令官!この女の戯れ言に惑わされてはなりませぬぞ!
わたくしがこの城のためにどんなにどんなに心を
砕いてきたかは------」
リュート「おれ、昨日のアップルパイ、持ってるんだよね。ほら」
取り出したアップルパイを目の前に、
ワン・コアンが初めて狼狽の表情を見せていた。
リュート「これ、食べてみる?」
フェルゼン「は?今はアップルパイなど------」
リュート「ワン・コアン、食べる?」
ワン・コアン「結構でございます」
リュート「遠慮しなくていいよ」
ワン・コアン「いえ、お腹がいっぱいでございますから」
リュート「命令だ。このアップルパイを食べよ」
フェルゼン「……司令官」
リュート「いいから食べよ」
ワン・コアン「お……お断りいたします」
リュート「毒でも盛ってると思ってるの?」
ワン・コアン「わたくし、アップルパイは嫌いでございます」
リュート「ならば、なおのこと命ずる。
ただちにこのアップルパイを食べよ」
ワン・コアン「……」
リュート「どうして食べぬ?」
ワン・コアン「お腹が……」
ぐぅぅ……。
ぐぅぅと腹の音が鳴った。ワン・コアンの腹の音だった。
リュート「お腹ねえ」
ワン・コアン「……」
フェルゼン「司令官、これは------」
リュート「この中に、腹下しが入っていたんだ」
フェルゼン「腹下し!?」
リュート「これを料理人につくらせたやつがいる」
フェルゼン「料理人に!?」
フェルゼンの目がワン・コアンを向いた。
フェルゼン「まさか、貴様------」
リュート「料理人に聞いてみようか。
昨日おれにアップルパイをつくるように命令したのは誰か」
ワン・コアン「……」
リュート「食べられないのは、
この中に腹下しが入っているのを知っていたから」
リュート「そしてそのことを知っているのは、料理人と、
その料理人に命令をしたその張本人だけ------」
フェルゼン「ワンコイン!貴様、司令官を------!」
ワン・コアン「ち、違います!わたくしではございません!」
フェルゼン「貴様意外に誰がおる!」
ワン・コアン「わたくしが自分の意思でやったのではございません!
わたくしは上からの命令で------」
フェルゼン「上から!?誰だ、それは!」
ワン・コアンがはっとした表情を見せた。
そのことは口にしてはいけないことになっていたに違いない。
不意に懐から妙な包みを取り出すと、いきなり呷った。
グラディス「しまった!」
フェルゼン「待て、貴様!」
ワン・コアン「自分の意思でございます。
わたくしは自分の意思で------ごわぁぁぁっ!」
グサッ!
血を噴いて、ワン・コアンはその場に倒れていた。
フェルゼン「ワン・コアン!ワン・コアン!」
ようやくフェルゼン将軍がまともに名前を呼んだというのに、
すでにワン・コアンはこと切れていた。
グラディス「これで誰が裏切り者か、わかったようだな」
フェルゼン「……他に内通者は?」
グラディス「こいつだけだ。
チェスの話を持ってきた時のやつの顔が思い出される」
グラディス「あの馬鹿司令官はチェスがだめだから、
チェスで行きましょうと、ニヤニヤしながら言いおった」
フェルゼン「……」
リュート「……やっぱり、手紙通りだったのか」
フェルゼン「手紙?」
リュート「陛下から密書に、裏切り者がいるって書いてあったんだ。
名前はわからなかったみたいだけど」
フェルゼン「まさか、こやつだったとは……」
グラディス「報告することが1つ増えたようだな、フェルゼン」
フェルゼン「むぅ……」
グラディス「親衛隊の馬鹿どもを呼ぶがいい。
こういうことには役に立つ」
フェルゼン「衛兵~~っ!衛兵~~っ!」
フェルゼンが声を張り上げた。
おれは黙って、ワン・コアンの死体を見下ろしていた。
-------------------------------------------------------------------------------
------夜が、ビュステンハルター城に訪れていた。
おれの部屋に呼び出されたモテールとアイシスは、
驚いていた。
まさか、
ワン・コアンが裏で手を引いていたとは思わなかったようだ。
死体を片づけて、グラディスからも話を聞いていた。
その後、再び将軍たちも集めて、
反乱軍をどうするかの話をして、ようやく、夜に解散した。
シャムシェル「大変な一日だったね~」
リュート「どこにいたんだ」
シャムシェル「大聖堂」
リュート「……」
おれは思わず沈黙した。
その話を聞くと、
あそこで祈りを捧げるのはやめようという気分になってくる。
リュート「アップルパイ、助かったよ。
あれがなかったら、しらばっくれてたと思う」
シャムシェル「くす。リュート、また出世だね」
リュート「うん……でも、自分の力じゃなくて、
シャムシェルのおかげだからな」
シャムシェル「わたしを惚れさせたリュートの力なのっ。
自分1人でやることだけが偉いわけじゃないんだよ?
人から助けてもらえるのも、その人の力なんだから」
リュート「そうなのかな」
シャムシェル「そうなの。というわけで、ご褒美くれない?」
おれは微笑んだ。
豊満に発育した身体を引き寄せて、ちゅっとキスをする。
シャムシェルが夢中でおれの舌を吸う。
それだけで痺れそうになる。
シャムシェル「王都に行ったら……またいっぱいエッチしようね……」
リュート「うん……」
シャムシェル「リュートのお嫁さんに……わたしも考えてね……」
どうやら、グラディスの話を聞いていたらしい。
リュート「しっかり考えておくよ」
シャムシェル「正妻はわたしなんだから……」
おれも夢中でシャムシェルの舌を吸い返しながら、
それも悪くない……なんて、ふざけたことを、
本気で考えていた。
