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エッチな騎士の成り上がり
- 叛乱軍性圧編24 -

エーデルラント王国首都シェーンブルグ------

王宮の一角にある堅苦しい部屋で、
宰相ルビーン・フォン・ベルンシュタインは
ビュステンハルター城からの連絡を待っていた。

コンッコンッ!

エメラリア「失礼します」

ベルンシュタイン「来たか」

エメラリアが黙って手紙を渡す。

ビュステンハルター城からのものだ。

ベルンシュタイン「さて、うまくやったものか。吉報が聞けると------」

不意に宰相は黙っていた。

手紙の内容は、予想を裏切るものだった。

ベルンシュタイン「……」

ベルンシュタイン「これは偽物ではあるまいな」

エメラリア「はい」

ベルンシュタイン「……ワン・コアンめ、しくじりおったか」

エメラリア「……」

ベルンシュタイン「陛下にも知らせは行っているのだろうな」

エメラリア「はい」

ベルンシュタイン「困ったものだ。使えないものが多くて困る」

エメラリア「……」

ベルンシュタイン「それとも、リュート・ヘンデが予想を裏切り過ぎるのか。
         よもや、ワッケンハイムの娘が仕組んだのではあるまいな」

エメラリア「……」

ベルンシュタイン「わざと負けおったか……。
         いったい、何を企んでいるのだ、ワッケンハイム」

エメラリア「真剣勝負だったと聞いておりますが」

ベルンシュタイン「何?」

エメラリア「……」

ベルンシュタイン「そんなはずはない。奇跡などは起きぬから奇跡なのだ。
         チェスに奇跡など存在せぬ」

エメラリア「……」

ベルンシュタイン「頭痛を取り除くつもりが、
         またさらに大きくなるとはな……」

エメラリア「……」

ベルンシュタイン「陛下のところにご挨拶に伺う」

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しばらくして、
宰相ベルンシュタインは謁見の間に向かっていた。

ハーゲル1世「おおっ、ベルンシュタインよ、でかしたぞ!」

ベルンシュタイン「はい」

ハーゲル1世「そちの言う通りにしてよかったぞ!
       まさかとは思ったが、リュートがまたやりおったわ!」

ベルンシュタイン「は……まことに将軍の器にございます」

ハーゲル1世「うむ!余の頭痛を取り払ってくれたわ!素晴らしい!
       実に素晴らしい!将軍の中の将軍ではないか!」

ベルンシュタイン「はい、まことにその通りにございます」

ハーゲル1世「すぐ呼び寄せよ。それ相応のことをせねばなるまい。
       祝典の用意だ!」

ベルンシュタイン「はっ!」

国王が立ち去ると、
ベルンシュタインは一人呟(つぶや)いた。

ベルンシュタイン「さて、どうしてくれるかな。リュート・ヘンデ」

ベルンシュタイン「貴様は、わたしにとって癌だ」

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こんなにもすぐ、
この部屋を出ることになるとは思わなかった。

おれは、2週間ほど暮らした自分の部屋を眺めまわした。
ボーアンに来た時と状況は似ているが、気分はまた違う。

シャムシェル「な~~に、感傷的になってんの」

リュート「もう、これで終わりなのかなと思って」

シャムシェル「くす。終わりじゃないよ。始まりだよ。
       リュートは偉い将軍様になるんだから」

リュート「なんか、その言い方微妙」

シャムシェル「くすくすくす」

シャムシェルが笑う。

ほんと、彼女のおかげだよな、とおれは思う。
おれがしたことなんて……パ〇ズリされたことぐらいか。

あ。

自分でしたわけじゃないじゃん。されただけじゃん。

なんてことを思って、ちょっとおかしくなってしまう。

シャムシェル「向こうに着いたら、凄いよ~。リュート、もてもて~♪」

リュート「そうかな」

シャムシェル「いろんな人に言い寄られたりして。
       下半身に気をつけないと」

リュート「はは」

シャムシェル「変なことしないように、向こうに行っても、
       いっぱいパ〇ズリしてあげるね」

リュート「せっかく胸も大きくなったことだしな」

シャムシェル「うん!」

シャムシェルがおれに身体を預けてきた。

ちょっと甘えたい気分らしい。

おれもシャムシェルを抱き寄せて、口づけした。

コンッコンッ!

シャムシェル「せっかくいいところなのに」

ガチャッ!

現われたのは、アイシスとモテールだった。

アイシス「時間よ」

リュート「ありがとう。2人とも送ってくれるの?」

アイシス「ええ」

モテール「任務だからな」

モテールは少し面白くなさそうだ。

モテール「おれは今でも信じていないからな。
     貴様がグラディスに勝つなど、絶対にありえないことだ」

リュート「頑固だね」

モテール「やかましい!なぜ貴様はそうなのだ!
     おれの方が格上なのに、おれよりも------」

グラディス「おお、まだここにいたか」

グラディスが部屋に現われていた。

モテール「グラディス様……困ります。
     あなたは一応捕虜なのですから」

グラディス「確かにその通りだな。オレはリュートの捕虜だ。
      リュートの心と肉体の捕虜と言ってもいいがな」

アイシス「……」

モテール「……」

2人が沈黙した。あからさまなのろけに呆れたらしい。

相変わらずグラディスは大胆すぎる発言である。

グラディス「さ、行くぞ、リュート。愛しい男といっしょに
      旅ができるのは、何より嬉しいことだ」

リュート「そ、そうだね」

グラディス「昼も夜も、オレはおまえのそばにいるからな。
      いつでも好きな男のそばにいて、夜はお慰めするのが、
      妻たる者の役目だ」

アイシス「コ、コホンッ!」

モテール「ゲホッ!」

グラディス「何だ、おまえたち。風邪か?
      健康管理は親衛隊の基礎だぞ」

モテール「違います、呆れておるのです!」

グラディス「なんだ、妬いておるのか?
      貴様、オレとセ〇クスしたかったのであろう」

モテール「な、な、な、何を!」

グラディス「かかかか!わかりやすいやつめ。
      オレにチェスを教えてもらいながら、
      チラチラと胸元を窺っておったではないか」

モテール「こ、子供の頃のことです!」

グラディス「安心せい、オレが貴様とセ〇クスすることはない。
      オレはもっと趣味がいいのだ。
      オレが身も心も預けるのは、リュートだけだ」

モテール「ぶぅっ!」

グラディス「失礼なやつだな。貴様の顔の形を変えていいか」

モテール「い、いえ……」

グラディス「貴様はもっとオレの男を敬え。貴様とは器が違うのだ」

モテール「はぁ……」

グラディス「まだ『お子ちゃま』にはわからぬか」

モテール「ぐぅ……」

お子ちゃま呼ばわりされて、モテールが悶える。
彼にとって、グラディスは天敵らしい。

グラディス「さ、行くぞ、リュート」

言うが早いか、グラディスは腕を組んできた。
シャムシェルは仕方ないねという顔をして、
少し離れておれにウインクしてみせた。

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通路に出ると、兵たちが出迎えてくれた。

守備兵A「司令官、御達者で!」

守備兵B「司令官の下で働けたことを、一生の宝にします!」

リュート「ありがとう。みんな、元気でね」

守備兵A「はっ!」

守備兵B「本当にありがとうございました!!」

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お城の外まで出ると、将軍たちがついてきてくれた。

リュート「わざわざお見送り、ありがとうございます」

ザント「フン。わしは認めたわけではないぞ。
    あれはただのまぐれだ」

リュート「はは……」

シュラム「……」

フェルゼン「司令官閣下、わたしも遅れて王都には参ります。
      くれぐれも、お気をつけください」

リュート「うん、親衛隊がいるから平気」

フェルゼン「そのことではございません。司令官は今、
      一番の時の人です。いろんな者が取り入ろうとして
      参ります。足を引っ張ろうとする者もおります」

リュート「ああ……そういうことね」

フェルゼン「麗しき言葉には耳を貸しませぬように」

リュート「うん、ありがとう。また王都で会おうね」

フェルゼン「はっ」

フェルゼン「貴様ら、しっかりと司令官を護衛してさしあげよ。よいな」

モテール「は、はっ」

アイシス「承知しております」

フェルゼン「うむ。では、司令官閣下」

リュート「うん。フェルゼン将軍、またね」

おれは3人の将軍に見送られて、
ビュステンハルター城を後にした。

王都で何が待っているのか、ろくに理解しないまま……。

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リュート・ヘンデが同期の親衛隊2人に護衛されて
王都に向かっている頃、宰相ベルンシュタインは、
すっかり暗くなった外に目をやり、フと笑みを浮かべた。

愉快な笑みではない。

苦笑であった。

ベルンシュタイン「まさか……このような事態になるとはな」

ベルンシュタイン「おまえの言う通りになったな」

エメラリア「?」

ベルンシュタイン「もし成功したらどうするかと……。冗談だと思っていたが」

エメラリアは答えなかった。

皮肉を飛ばすつもりもなかったし、
自分とてまさか本当にこうなると思って言ったわけではない。

エメラリア自身は、
成り上がり者は成り上がり者の末路をたどると
予想していたのだ。

だが------。

リュート・ヘンデはしぶとすぎる。

否、しぶとすぎるというよりも、予想外すぎる。

国王陛下のおよろこびようは尋常ではなかったそうだ。
勝利の報告を聞いた家臣どもも、大いに戦いたという。

誰も、あと数年は陥落させられないだろうと思っていた
相手を、打ち負かしてしまったのだ。
それも、王国きってのチェスの名手を、チェスの一騎討ちで。

今や、王宮の外でも、
リュート・ヘンデの名前は口にされている。

あの名将ワッケンハイムの『伜』を、
リュート・ヘンデという者が破ったらしいぞ。
今年騎士学校を出たばかりの俊英らしいぞ。

王都の噂は、今やリュート・ヘンデを中心に渦巻いている。

ベルンシュタイン「あまりにも予想外に運び過ぎる。
         いったい、やつは何者なのか。
         わたしの予想をここまで外してくれるとはな……」

エメラリア「まるで魔物のような存在でございます」

珍しくエメラリアは感想を口にした。

ベルンシュタイン「魔物か。いっそ、魔族であれば納得するであろうな」

エメラリア「……」

ベルンシュタイン「さて、それにしても邪魔であることに変わりはない。
         どうやって勢力を削ぐか……」

エメラリア「……」

ベルンシュタイン「宴で葬り去るか」

エメラリア「準備はできております」

ベルンシュタイン「フン。宴で気分が悪くなるのは、よくあることだ」

宰相は鼻先で笑った。

ベルンシュタイン「言っている意味がわかるな」

エメラリア「ただちに」

エメラリアが頭を下げると、ドアを開ける音が鳴った。

宰相の部屋に入ってきたのは、
ハーゲル1世の愛娘、ルセリア姫だった。

ルセリア「ベルンシュタイン。あの方が帰ってこられるってほんと?」

ベルンシュタイン「こ……これはルセリア様」

ルセリア「ごめんなさい……お話の最中でした?
     わたしったら、つい……」

ベルンシュタイン「明日、ご帰還の予定です」

ルセリア「まあ……。じゃあ、お会いできるのね」

ベルンシュタイン「はい。宴も予定されているとか」

ルセリア「エメラリア……後で着る服を選んでちょうだい。
     もう胸がドキドキして……」

ルセリア姫は風のように入ってきて、
風のように去っていった。
宰相ベルンシュタインは冷たい目で後ろ姿を見送った。

ベルンシュタイン「どいつもこいつも、リュート・ヘンデか。
         実に不愉快なことだ」

エメラリア「……」

これで第二章は終わりです。
次回からは新章が始まります。
<2016/10/24 17:43 RUKA>消しゴム
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