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エッチな騎士の成り上がり
- 王都淫謀編02 -

数時間後、おれは鏡の前で新しい服に目を瞬かせていた。

どうも着慣れない。

かっこよすぎるというか、威圧感がありすぎるというか、
自分じゃない感じがする。

エメラリア「どうかなさいましたか」

リュート「ほんとにこの服で行くの?」

エメラリア「将軍が普通の騎士の服では示しがつきませぬ」

リュート「ううん……」

エメラリア「さ、みなさまがお待ちかねでございます」

エメラリアが先導して歩いていく。角を曲がると------

2人の美女を連れたモテールとぶつかりそうになった。

モテール「わっ!」

リュート「わっ!」

モテール「この無礼者!よく前を見て------」

モテール「ぬ?貴様ではないか」

リュート「モテールも宴に出るの?」

モテール「フン。我が家は由緒正しき家柄なのでな」

リュート「ああ、親父さんか」

モテールの家は、名門プラティーヌ家だ。
最近ではブラジャーを発明して大儲けをしている。

アリステラ「ねえ、モテール様。この方どなた?」

ドロワット「ステキなお召し物をしていらっしゃるけど」

同伴の悩ましい美女がモテールに尋ねた。

モテール「おれの糞同期だ」

アリステラ「まあ、同期の御方?」

ドロワット「お名前は?」

モテール「へのへのもへじ」

アリステラ「そんな方、いらっしゃいませんわ」

ドロワット「是非、お名前を」

2人が情熱の眼差しを向ける。
おれは、息を吸い込んで答えた。

リュート「リュート・ヘンデ」

ドン!

モテール「うげっ!」

突然モテールを突き飛ばしたかと思うと、
2人の巨乳美女がおれに駆け寄っていた。

アリステラ「まあ!あの有名なリュート・ヘンデ様!?」

ドロワット「なんて素晴らしいのかしら!
      こんなところでお会いできるなんて……!!」

アリステラ「もしかして、運命!?」

ドロワット「いえ、宿命!?」

2人が目を輝かせる。

ずいぶん前におれに会っていることは、
どうやら覚えていないらしい。

アリステラ「ねえ、リュート様。決まった恋人はいらっしゃるの?」

ドロワット「女性の方とお付き合いしたことはあって?」

リュート「あ、いや……」

2人がズイズイと迫る。

元々露出度が高い服だけに、
胸元が思い切り迫って、ついつい見てしまう。

なかなか凄いオッパイ……!

アリステラ「今度、いっしょにお食事なんかいかが?」

ドロワット「お部屋に遊びに行ってもよろしい?」

リュート「あ……その……」

エメラリア「リュート将軍。宴の時間でございますので」

エメラリアが2人の間に割って入った。

リュート「あ、うん」

エメラリア「参りましょう」

エメラリアが強引におれの腕を引っ張った。

アリステラ「ああっ、リュート様」

ドロワット「お待ちになってぇ……!」

おれは2人を後にして会場に向かった。

2人を残すのはちょっと心残りだったが、
会場ではおれを待っている人がいるのだ。

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すでに宴の場には、多くの客が詰めかけていた。
広い謁見の間が、人で埋め尽くされている。

ハーゲル1世「おおっ、リュート・ヘンデよ!
       ずいぶんと待ちわびたぞ!」

国王がいち早くおれを見つけて大股で
ずしずしと駆け寄ってきた。

リュート「すみません、遅くなりました……」

ハーゲル1世「よいよい!ずいぶんと勇ましい姿になったな!
       よく似合うぞ、リュートよ!」

リュート「ありがとうございます」

国王の声に、すぐさま、
貴婦人や恰幅のいい男たちが群がってきた。

まあ、陛下。

この方がリュート将軍?

是非、わたくしめに将軍をご紹介ください。

あ、陛下。わたくしにもご紹介を。

陛下、わたくしにも是非。
あ、わたくし、銀行をやっております。

あら、まあ、ステキな御方。
是非、うちの娘の婿になっていただきたいものですわ。

瞬く間におれのまわりに人だかりができる。

老若男女、貴婦人も紳士も騎士も大使も、
そして着飾った若い娘たちも、
母親に引き連れられて挨拶に訪れる。

うちの娘ですの。これ、挨拶なさい。

初めまして、リュート様。ルクレツィアと申します。
以後、お見知り置きを。

誉れある将軍と顔見知りになり、
できれば自分の娘を結婚させようという貴婦人たち。

おれがこれから王国を背負っていくだろうという考えの下に
おれとパイプを築いておこうとする男たち。

人、人、人、人の群れで、遠くが見えない。
まるで人の城壁だ。

エメラリアが早速順番に並ばせていた。
おれは軽く数えて絶句した。

すでに100人を越えている。

宴とは、どうやら、世界で最も疲れるものの別言らしい……。

シャムシェル、ぼく疲れたよ……なんちゃって。

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ようやく、行列がなくなっていた。

200人くらいと握手したかもしれない。
娘にもいっぱい引き合わされた。みんなきれいな子だったが、
名前なんてほとんど覚えていない。

国王は『余が今、一番頼りにしておる者だ』と
何度も繰り返していた。
運だけでこんなふうになっただけなのに、恐縮だ。

と同時に、嬉しいなと思う。
騎士学校の頃はなじられてばかりだったから、
こんなに褒められるのは、やっぱり嬉しい。

モテール「図に乗るなよ」

気がつくと、モテールが睨みつけていた。
ずいぶんとご機嫌斜めの様子だ。

リュート「あれ?今来たの?」

モテール「とっくの昔にいる!」

リュート「あ、そうなんだ。見えなかったから」

モテール「……厭味か」

リュート「機嫌悪いね。あの子たちはどこへ行ったの?」

モテール「知るか!」

リュート「いっしょじゃないの!?」

くわっとモテールはおれを睨みつけた。

(え?何!?)

と思った時には、モテールはおれの首を絞めていた。

モテール「全部、貴様のせいだ!」

リュート「わっ!」

モテール「貴様のせいで、おれは、おれは-------」

???「何をしておるか、この馬鹿者!」

どがっ!

モテール「ぎょわっ!」

モテールがぎょっとしていた。

ビュステンハルター城にいるはずのザント将軍が、
怖い形相で睨んでいたのだ。

リュート「将軍……!」

ザント「モテール!貴様、閣下に対して何たる態度だ!
    恥を知れ!」

おれを罵ってばかりだったザント将軍が、
モテールを怒鳴りつける。

モテール「は!?」

ザント「『は』があるか!貴様の前にいらっしゃるのは、
    天下の英雄、リュート将軍であるぞ!
    貴様はただの一親衛隊員であろうが!」

リュート「い、いや、そんな英雄って------」

ザント「無礼を詫びよ!今すぐ、床に頭をつけぃ!」

モテール「な!?」

ザント「何をしておるか!早くせい!
    貴様は非礼を詫びることもできぬのか!」

モテール「ザ、ザント将軍!お言葉ですが、
     わたしがこやつに劣るとは思ってはおりませぬ!」

モテール「わたしは一位卒業者、この者は最下位卒業者!
     誰がそのような屈辱を------」

ザント「できぬと言うのか」

モテール「わたしのプライドが許しませぬ」

ザント「騎士学校の屑め!衛兵!」

衛兵が早速駆け寄った。

ザント「この屑をつまみ出せ!」

衛兵「モテール様を……ですか?」

ザント「この者はリュート閣下の首を絞めようとした大馬鹿者だ。
    二度とこの会場に入れるな!これは命令だ!」

衛兵「はっ!」

衛兵たちがモテールを取り囲んだ。

モテール「貴様!わたしに手を触れるか!」

衛兵「ザント将軍のご命令ですので」

モテール「父上が黙ってはいないぞ!」

ザント「貴様、親の傘を着るか!
    この宴は陛下がお開きになったのだぞ!
    陛下のお顔に泥を塗るつもりか!」

モテール「そ、それは……」

モテールが言葉に詰まる。

ザント「見苦しい。早く連れてゆけ!」

衛兵「ははっ!」

モテールは衛兵に連れられて謁見の間から出ていった。

リュート「いらしてたんですね、ザント将軍」

ザント「わしはフェルゼンの付き添いで来ただけだ。
    祝いに来たわけではない」

へそ曲がりなことをザント将軍が言う。

リュート「ありがとうございます」

ザント「礼には及ばぬ。わしは無礼者を正しただけだ。
    まったく、あのような恥知らずが我が後輩とは、
    聞いて呆れる」

おれは思わず笑いそうになった。

少し前までは、その言葉はおれに向けられていたものだ。

リュート「モテールは悔しいだけなんです。自分が一番だったから」

ザント「そこにこだわるようではただの屑だ。
    将軍は剣ができればよいわけではない。器の問題だ」

大まじめにザント将軍が言い張る。

リュート「フェルゼン将軍もいらしてるんですか?」

ザント「そこらで油を売っておる」

リュート「シュラム将軍は?」

ザント「城におる。英雄の祝いに駆けつけぬとは、
    まったく頑固だ。常識を欠いておる」

おれは危うく笑い出すところだった。

祝いに来たわけではないと言いながら、
自分が祝いに駆けつけたことを自ら暴露している。

ザント「騎士学校の先輩として、ひとつだけ閣下に
    ご忠告さしあげる。女には注意されることだ」

リュート「はい」

ザント「女が近づくのは、たいてい閣下の名誉を狙ってのことだ。
    女は腹に一物、子宮に二物(にもつ)だからな」

どうやら、ザント将軍は、ずいぶんと女に苦労したらしい。

ザント「もてる今こそ、注意が必要だ。
    女とは簡単に二人きりになってはならぬ」

リュート「ありがとう。そうします」

ザント「うむ」

ザント将軍は上機嫌で歩いていった。
見ていると、プラティーヌ氏が声をかけていた。

モテールの父親だ。自分の息子が退去させられた理由を
聞いているのかもしれない。

それとも、ただの世間話だろうか。

おれはようやく一人になって、息をついた。

ワインはまだグラスに残っている。

ふと気づくと、アイシスが目の前に現われていた。

リュート「やあ、アイシスも来てたのか」

アイシス「え、ええ……護衛の任務で……」

リュート「よかったよ、知ってる顔がいて。
     国王と将軍たち以外は、みんな知らない人ばかりだから、
     どうしようかと思っちゃった」

アイシス「た、大変そうね……」

リュート「うん……握手しすぎて、握力がなくなっちゃった」

アイシス「す、凄い行列だったものね……」

リュート「全員の名前をちゃんと覚えてるか、思い切り不安」

言っておれは微笑んだ。

なぜか、アイシスの目は浮ついている。

リュート「どうしたの?」

アイシス「い、いえ、何でも……」

リュート「こういうところ、苦手?」

アイシス「そういうわけじゃ……ないけど……」

どうも歯切れが悪い。

おれはワインを呷った。

ボーアンで飲んだものよりも、遥かに上等のワインだった。
フロンスから取り寄せたという話だ。

上質のワインのせいかずいぶんと
酔ってきている感じだったが、
まだ足元は平気だ。ダンスぐらい踊れる。

アイシス「あなた……本当にリュート・ヘンデなの……?」

リュート「影武者だったりして」

冗談を言ってみたが、通じなかった。

アイシス「なんだか……違う人になってしまったみたい……。
     あなたに会うためにあんなに人が並ぶなんて……。
     夢を見ているみたい……」

リュート「おれも夢を見ているみたいだよ。つねってくれない?」

アイシス「そ、そんなことをしたら、無礼者って言われてしまうわ」

リュート「え?そうなの?」

アイシス「だって、あなたは……英雄だもの……」

言ってアイシスが視線を伏せた。

なんだか、ずいぶんしおらしい態度だった。
いったい、何を遠慮しているのだろう。

リュート「グラディスはどうしてる?」

アイシス「今は地下牢にいるわ」

リュート「処刑されたりしてないよね」

アイシス「それは、平気。面会できるのは、
     陛下とあなただけになっているから。陛下のご命令よ」

リュート「後で会い------」

ベルンシュタイン「何をしておる、アイシス。持ち場はどうした」

アイシス「す、すみません、すぐ戻ります」


補足
ワインの話で出てきた『フロンス』は
エーデルラントの西側に隣接するリンゴバルト
の西側に隣接する国。
エーデルラントやリンゴバルトを中国とすると
フロンスの国土は大国並みに大きい。
<2016/10/29 20:18 RUKA>消しゴム
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