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エッチな騎士の成り上がり
- 辺境乱乳編05 -

守備兵「入れ。特別に、長官が会ってくださるそうだ」

ぞろぞろと村人たちが大広間に入り込んできた。
総勢で10名以上いる。
みな、落ち着きのない表情をしている。

家令と長官が、村人たちの前に姿を見せた。

アーボイン「代表は、おまえたちか」

村人A「領主様!」

村人B「お助けください、我々はもう夜も寝られないんで」

村人C「これ以上人が死ぬんじゃ、町を出ていくしかありません!」

アーボイン「うむ。おまえたちの気持ちはよくわかっておる。
わしの方も早速手を打った」

アーボイン「実は、王都に頼んで、
      悪魔退治の者をよこしてもらったのだ」

場がざわついた。

おれも、少しだけ胸の奥で不安になった。
悪魔退治の兵を派遣したなんて話は、聞いたことがない。

村人A「悪魔退治の?」

村人B「それはえらい司祭様で……?」

アーボイン「この男だ」

長官がまっすぐ指差した------その先にあったのは、
こともあろうに、おれだった。

リュート「な、なぬっ!?」

寝耳に水だった。

サキュバスの退治をしてほしいとは頼まれたが、
王都から派遣されてきた者ということにはなっていない。

アーボイン「この男はつい先日王都から到着したばかりでな。
      ようやく、我等の頼みが聞き届けられることになった」

リュート「えっ!?」

村人A「騎士様!」

村人B「お助けを!」

村人C「我らに平安な夜を!
    女はいいとしても、わしら、おちおち眠れません」

リュート「あ、いや、おれは------」

アーボイン「この男が命に代えてでも、悪魔を退治してくれるそうだ。
      わしとしても、この男に賭けたい」

村人A「ありがとうございます、領主様!」

村人B「ありがとうございます!」

村人C「これでやっとゆっくり寝れる!」

リュート「あ、いや、だから------」

アーボイン「わかったら、行け」

村人たち「ありがとうございます!」

安心して村人たちは引き上げていった。

残るはおれと長官、そして家令のマドワーズ。

アーボイン「わしらは引き上げるか」

リュート「待ってください!」

アーボイン「何だ、うるさいやつだな」

リュート「王都からって、おれ------」

マドワーズ「まあ、いいじゃないですか」

リュート「いいって、
     おれ、そんなことのために呼ばれたわけじゃないですから」

マドワーズ「でも、連中、安心して帰りやしたぜ」

アーボイン「マドワーズ、確かに名案だったな」

リュート「名案って、嘘ついたんでしょうが」

マドワーズ「じゃ、今から追い掛けていって本当のことを
      告白しやすか?八つ裂きにされやすぜ」

思わず、黙った。

マドワーズの言う通りだった。

真実が常に正しい力を発揮するわけではない。
真実は毒と同じだ。

アーボイン「まあ、いずれ誰かがやらねばならぬことだ。
      おまえがやり果たせるとは少しも期待しておらんが、
      おまえしかおるまい」

リュート「いや、でも、どうやってサキュバスを」

マドワーズ「簡単でさ。窓に自分の精液をかけておけばいいんでさ。
      匂いを嗅ぎつけて、サキュバスがやってきますぜ」

リュート「でも、その後どうやって退治するんです?
     十字架って効くんですか?」

マドワーズ「効かんでしょうなあ」

リュート「ええっ!?じゃ、いったいどうやって------」

マドワーズ「それはご自分でお考えなすってください」

リュート「失敗したら、おれ、死ぬんですか?」

マドワーズ「そういうことになりやすかね」

リュート「そういうことって------」

アーボイン「リュート・ヘンデよ。これはわしからの命令だ。
      まさか、主君の命令を聞かぬというわけではあるまいな」

リュート「そんな……無茶苦茶な……」

マドワーズ「今夜、頼みやすよ」

リュート「いくらなんでも、あんまりだ。成功報酬ぐらいないと……」

アーボイン「成功?成功すると思ってるのか?」

リュート「失敗するとわかっていておれに頼まれたんですか」

アーボイン「あ、いや……そういうわけでは」

リュート「こんな大仕事、普通じゃできません。
     でっかい報酬がないと……」

アーボイン「……マドワーズ、どうする?」

マドワーズ「どうせ散る命です。奮発してやっても」

アーボイン「そうだな」

アーボイン「オホン。よかろう。申してみよ」

リュート「食事はいつも白パン。それから、1つお城がほしいです」

アーボイン「何?お城だぁ?身の程------」

マドワーズ「長官!ここではねのけては……」

アーボイン「わ、わかった」

アーボイン「よかろう。白パンは保証する」

リュート「お城も」

アーボイン「お城も1つ、ぼろいのを選んでおまえに授けよう」

リュート「ありがとうございます」

アーボイン「まあ、せいぜいがんばれ」

渋々認めて長官は立ち去った。

これでただ働きということはなくなったが、
問題が解決したわけではない。

たった1人でサキュバスを退治しなければならないのだ。

それも、十字架の効かないサキュバスを------。

サキュバスには嫌いなものがあるのだろうか。

たとえばコーヒーとか……。

いや、苦いものも効果がないだろう。

そもそも、王都から取り寄せている時間がない。

人生の苦みも、もちろん効かないに違いない。

そんなものが効果的なら、
ボーアンにサキュバスは出てこない。

サキュバスの好物は、男の精液のみ。

しかし、おびき寄せてどうやって退治するというのか。

やはり、己の剣の腕に頼るしかないのか。

(厄介なものを引き受けさせられちゃったな……)

おれは、答えを求めるようにヴォールトの天井を見上げた。
しかし、もちろん、解はなかった。

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リュート・ヘンデが退治方法を考えて悩んでいる頃、
長官の部屋ではアーボイン長官と家令のマドワーズが、
顔を突き合わせてニヤニヤしていた。

アーボイン「おまえの言う通りになったな」

マドワーズ「恐れ入りやす」

アーボイン「考えたものだな。王都から派遣された者が死んだとなれば、
      愚民どもも諦めがつく」

マドワーズ「やつが正体だったと言って
      死体を磔にすることだってできやす」

アーボイン「まったく、おまえというやつは悪人だな」

マドワーズ「人生、毒も悪も必要でやすからね」

アーボイン「ふ」

マドワーズ「くく」

アーボイン「くくくくくくく」

マドワーズ「しかし、残念でやすね。
      『あっちの計画』にはもってこいだと思ったんですがね」

アーボイン「それはまたそれでいい。
      例の計画に影響がなければそれでいい」

マドワーズ「あっちは平気ですよ。王子------」

アーボイン「その名前は禁句だ」

マドワーズ「へい」

アーボイン「さて。わしは少し出かけてくる」

マドワーズ「どちらへ」

アーボイン「久々にブリュンヒルドを抱きたくなった」

マドワーズ「奥方はいいんですか?

アーボイン「フン。知っておるくせに。わしは成熟した女より、
      小娘の方がいい。牛のような乳の女は趣味ではない」

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挽課の鐘が鳴る頃、おれは奥方の部屋の扉を叩いた。

突然、奥方から呼び出されたのだ。

リュート「あの、リュートですが……」

ロクサーヌ「どうしてお引き受けなさったの?」

おれが現れると、突然ロクサーヌは真顔で迫った。

リュート「え?何が?」

ロクサーヌ「悪魔を退治するなんて……」

リュート「あれ?もうお聞きになったんですか?」

ロクサーヌ「あんな命を投げ出すようなこと、どうして------」

リュート「いや、どうしてと言われても、成り行きで------」

ロクサーヌ「せっかくお会いできたばかりなのに------」

リュート「奥方様?」

ロクサーヌ「……」

ロクサーヌ「こんなことなら、もっと早く身を……」

リュート「え?」

ロクサーヌはうつむいた。

ロクサーヌ「この町には悪魔が住んでいるんです。
      それも、若い中央から来た騎士ばかり狙うんです。
      昔からボーアンにいる人間は狙わないんです」

リュート「……ご存じだったんですね」

ロクサーヌ「ごめんなさい……あの人がしゃべらないようにって……。
      怯えさせるから……」

リュート「……」

ロクサーヌ「今まで、誰も倒した者はおりません。
      隣の城からも武勲を立てて名を上げようと
      何人もやってきましたが、皆------」

リュート「……死んだんですね」

ロクサーヌは答えなかった。

奥方に深刻な顔をされると、
本当におれは死んじゃうのだろうかという気がしてしまう。

ロクサーヌ「リュート殿」

ロクサーヌが顔をあげていた。

ロクサーヌ「1つだけ、お願いがあります」

リュート「え?」

ロクサーヌ「わたしを抱い------」

マドワーズ「奥方ぁ!」

マドワーズ「おや、リュート様もごいっしょでしたか」

リュート「うん、ちょっと」

マドワーズ「コックが相談したいことがあると言ってますんでさ。
      厨房へお願いできますか」

ロクサーヌ「ええ」

リュート「あの、お話は------?」

ロクサーヌ「いいえ、何でもないの。がんばってね」

リュート「はい」

おれは奥方の姿を見送った。

あの時、彼女は何を言いかけたのだろう。

<<わたしを抱い------>>

わたしを抱いてと言おうとしたのだろうか。

まさか。

人妻なのに?

……。

おれはため息をついた。

もしあの時マドワーズが来なかったら、
おれはどうしただろう。

倫理的に許されることではない。

でも、今の不安を逃れるために、
おれはロクサーヌをだいていたかもしれない。

(死んだら、ロクサーヌ様の胸を味わうこともないんだな)

そう思うと、欲望染みた切なさが込み上げた。

このまま待って、逆に彼女に告白しようか?

馬鹿な。

おれは何を考えているのだ。

これからサキュバスを打ち取らねばならないのに。

人妻との一夜?

不倫?

おれは首を振った。

それでも、しばらく部屋で待っていたが、
ロクサーヌは帰ってこなかった。

<2016/09/24 16:28 RUKA>消しゴム
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