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サクラ学院魔獣討伐科


朝の授業は終わり、太陽燦々と光が降り注ぐ外の空気を吸うためレンツは学院の屋上に来ていた。
屋上の小さな手すりに座り空を見つめ、イヴに作って貰ったおにぎりを食べていた。
これは極日東共和国に伝わる食べ物。
お米を三角、俵の形になるように握り、塩、昆布、梅、などいろんな材料で味も雰囲気も変えられる大変汎用性の高い食べ物である。

「これで最後か…お、最後は梅かラッキー」

ちなみにレンツは梅が好きらしい。
機嫌よくおにぎりを食べていると、屋上のドアが開いた。

レンツは、それに気づきドアの方に目をやる。
それもそのはず、本来生徒は用もなく屋上に行くのは禁止されているから余計に敏感になるのである。

(やべっ…誰か来るまずい)

レンツはおにぎりを一気に口に頬張り、屋上のドアの真上の屋根に瞬間移動しようと利き足である右足に少しだけ力を込め瞬発的エネルギーを一気に解放する。

右足で蹴ったコンクリートの地面にカタが残り、その場所を中心とした地点から放射状に軽い衝撃波が起こった。

「誰ッ!?」

屋上に来たのは、聞いた事のある声だった。
声からして強気な女性。
その強気な女性は屋上入り口の真上の屋根に身を隠すレンツに気づいたのか、じっと屋根を見つめ問いただす。

レンツは建物の壁に背中を押し付け張り付くようにそーっと覗く。
覗いた瞬間その女性の正体が判明。
すぐにもう一度身を隠した。
何故ならその正体は昨日レンツと接触事故を起こした、気の強い金髪の女子生徒だったからだ。

(マズイな…ここは誤魔化すしかないな…何か動物の鳴き声で。あ、そうだ!)

「ガオォウゥゥンンーン!!」

「なんだ…怪獣か」

(お…?うまくいった?)

レンツは一瞬安堵するも、女子生徒はすぐ振り返り手に持っていた紫色の長い布袋の先をレンツが隠れている屋根に向ける。

「茶番に付き合ってあげたんだから、あと5つ数える間に姿を現しなさい。でないと不審者と見なし屋根ごと破壊する」

女子生徒は脅しではなく、多分実行するだろう。
そう思ったレンツは空に向かって両手を大きくかざし、

「降参だ!」

レンツは両手を挙げたまま、高い屋根の上から降りた。金髪の女子生徒は何事も無かったかのように着地を決めたレンツの身体能力に対して眼を丸くしていた。そして、我に返り。

「あ、アンタ昨日の…」

「昨日は俺が悪かった…なんつーか、その…超すいませんでした。」

「……?ああ。もういいわよ。その代わり…次やったら確実に殺す」

「は、はいぃ……」

金髪の女子生徒が発した「その代わり…」の後の声音が普段より低く冷たかった。
レンツは首筋を鋭い刃物でなぞられるような感覚を覚えた。

(この女…怖ぇぇ。さっさと離れよ)

「では、お疲れ様でした」

レンツは深々と金髪の女子生徒に頭を下げ、紳士のように屋上から去ろうとした時、足を掴まれ、盛大にコケてしまった。レンツは起き上がり金髪の女子生徒を睨んだ。

「なんだよ。許してくれたんじゃねーのかよ!」

「忘れものよ」

金髪の女子生徒はレンツの魔動力剣を持ち手の部分を反転させ刃の腹の部分を掴み、レンツに持ち手の部分を掴ませた。

「これ今日親父にもらった剣なんだ。いきなり失くしたら親父にぶん殴られるところだったよ。サンキュー」

「……その魔動力剣。かなり年季が入ってるわね」

「わかるのか?」

「もともと古い魔動力剣だし。見た目は文句無し綺麗にしてあるからわかりにくいけど刃の色が少し傷んでるわ。それにこの刃は鋭すぎて…近い内に…いや、なんでもない」

「近い内になに?」

「なんでもないわよ。それよりアンタのお父様は魔動力剣の扱いに長けてるわね」

「確かにいつも手入れは欠かして無かったかも」

「アンタ幸せ者ね。そんな大事にされていた剣を託されるなんて」

「……さぁな」

「父親が息子に剣を託す意味わかる?」

「……いや。わからない」

金髪の女子生徒の真剣な眼差しの問いにレンツは考えた。しかし、いつも嫌々扱っていたため、剣を貰えた事には感謝していたが、その意図はわからないでいた。

「……なら、考えときなさい。剣は剣士にとって命そのものよ。その命を受け取ったんだからアンタにはその義務がある」

「……意味がわからないよ。なんだよ?義務って。お前が考えとけ!じゃあな!」

レンツは少し怒り気味で金髪の女子生徒の前から去って行った。
レンツの嫌いなもの、命令だとか、義務だとかそう言った自分を縛り付けるものが特に嫌いで聞く耳は持たない。そこが成人していない分未熟でレンツの悪い部分である。

「あんな事言うつもりなかったのにな…なんでアイツの顔見ると何か言いたくなるんだろ?」

そして、屋上にいる金髪の女子生徒はベンチで紅茶を飲みながら、レンツとのやり取りを思い出していた。その姿はとても静かで少し寂し気な背中をしていた。








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