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サクラ学院魔獣討伐科


クサナギ山。
アルバ王国に聳える北東に位置する山岳地帯。
標高も非常に高く、冬場は頂上に必ずといって良いほど雪がよく積もっている。

この4月の時期は流石に雪は積もってはないが、それでも市街地との温度差があり、冷たい空気が流れている。

地形も悪く、並大抵の身体能力では頂上まで登るのは不可能。
土砂災害などで足場が削られていたり、山の道が分断され、橋も掛かっていないため通行不可。

出現する魔獣もこのような悪条件で鍛えられているのか、アルバ王国に出現する魔獣の中でほぼ最強クラスの魔獣が出現する。

そのためA級以上の魔獣討伐士しか立ち入れない決まりになっている。
決まりを破っても特に罰則はないが、そこで死んでも事故責任という事で国や市からの保証は一切ない。

E級魔獣討伐士(E級は見習い扱い)のレンツはそんな過酷な山を深夜に登っていた。
そしてレンツは既に10体以上討伐していた。
その影響か魔獣の返り血を浴び、顔や服が黒く汚れていた。

「掴めた。なるほど、いいね。剣自体重いからブレないし、力を入れなくても重力の恩恵で強い斬撃を繰り出せる。俺向きだ」

レンツは自分の剣を隅々まで見つめ、すこし満足していた。
課題を終えて、帰ろうとした時、レンツは約100m先前方でオレンジ色の綺麗な火花を見た。

火花はついたり、消えたりしていた。
そして、深夜の山に響く鉄と鉄がぶつかり合う独特なサウンド。
魔獣と人間の声。
レンツはすぐに理解した。
自分のすぐ側で魔獣狩りをしている事を。

「オレ以外にも魔獣狩りをしている奴がいる?」

レンツは自分以外にも狩りをしている人物が気になり、足を運んだ。
見つからないように近くの木に背中を押し付け木の影から現場を覗く。

すると、そこには黄色のジャケットを羽織った金髪の少女の背中が見えた。

そして、その正面には大きな一本角を前頭部に生やした白い馬型の魔獣が前足を地面に擦り、突進の準備をしていた。

ジャケットの少女は長い太刀を両手に持ち、いつ突進されても良いように構えていた。
その姿からは鈍く輝くオーラが僅かながら身体から発していた。

「来なさいッ!!その角へし折ってあげるわッ!!」

ジャケットの少女から発せられた大きい声にレンツはすぐに気付いた。
今日の昼間、学院の屋上で少し喧嘩した金髪の女子生徒だという事に。

(あの声…昼間のお節介金髪女だ。アイツこんな所で訓練してんのかよ…大丈夫なのか?)

ジャケットの少女の挑発に一本角の魔獣は雄叫びをあげた。
少女は一本角の魔獣の突進を難なく回避した。

しかし、それは実体が無かった。
これは魔獣の残像で本体はジャケットの少女の背後から突進を仕掛けていた。

「1回目の突進はフェイント!?そんなッ…」

ジャケットの少女はすぐに振り向き太刀を魔獣の角に向けるも間に合わない。

魔獣の角で剣を弾かれ、魔獣はすぐさま腹部を狙い突き殺そうと突進を開始。

「しまっ……!」

ジャケットの少女は諦めたのか目を閉じていた。突き刺さったはずなのに、痛みは感じなかった。
そう思った少女は恐る恐るゆっくりと目を開き前を見た。

すると、そこには黒い防寒着を着た人物が両手で魔動力剣を持ち、魔獣の突進を受け止めていた光景が目に映った。

顔はフードで隠しているため、ジャケットの少女には正体がわかっていない。
ジャケットの少女は衝撃的な光景に目を見開いて驚愕していた。

(チッ…助けるつもりなんか、これっぽっちも無かったのになぁ。何やってんだ?俺は。まぁいいバレないように早いとこやっちまおう)

レンツは歯を思いきり食いしばり、剣の腹の部分に拳を衝突させた。
そのショックで魔獣は一瞬怯み、よろめいた。
その一瞬の隙を逃さず一息で自慢の剣を振り下ろし角を切断。

そして間髪入れずに一瞬で10個以上の斬撃を加えた。

レンツは左腕を空に向かって高く突き出し、指を鳴らした瞬間、魔獣は細切れに切断された。
その一部始終を見ていたジャケットの少女は目の前の出来事に眼を揺らし驚いていた。

レンツはフードを被ったまま、正体を明かすことなく去ろうと足を帰路へと進めた。

「待って!」

ジャケットの少女は去ろうとするレンツを引き止めた。

そして、長い金色の髪を纏めていたリボンを取った。
その直後、突風が吹き長い金色の髪が大きく揺れた。
レンツの背中に近づこうと一歩足を進めたのだ。

「あ、あの!先程は危ない所を助けて頂き、本当にありがとうございました!」

ジャケットの少女は昼間と別人かと思うほど、声音が高く態度も大きくなく謙虚だった。
しかし、レンツは少女に何も返事せずフードを被ったまま去ろうとする。

しかし、少女はめげず、さらにもう一歩踏み出した。

「私!エリス・ロード・ヴィルフルートと申します。貴方にお礼が言いたいのです。どうか、お名前を教えて頂けませんでしょうか?」

エリスは真っ直ぐな瞳でレンツの背中に名前を問いかけた。
しかし、レンツは歯を食いしばり、何か言いたげそうな表情をしたが、結局何も言わず。
フードを深く被り、右手を挙げ左右に振った。

多分、また会おうという意味合いなのだろう。
エリスはそれを理解したのか首を縦に振った。
レンツは何も言わず、去って行った。

「見つけた…!わたしの王子様」

エリスは遠い景色を見つめ、目に焼き付けたレンツの背中を思いだし、小さく呟いた。

今の出来事を木の影に隠れて一部始終、監視していた人物がいた。
その人物は手に持っていた魔動拳銃を太ももに装備しているホルスターに収納し金髪の少女エリスを微笑ましく思いながら観察していた。

金髪の少女エリスはリボンで纏めていた髪を下ろしていた。
その姿は昼間の気が強い雰囲気ではなく、年相応のふわふわした雰囲気の少女である。

身体つきは非常にスタイルが良く、また身長も高いため、スマートに見えた。

服装は黄色のインパクトあるジャケットにジーンズ。ジャケットの中は黒いシャツを着込み、防寒対策を取っていた。

(あらあら…折角、心配して駆け付けて差し上げましたのに。レンツ様、惚れられちゃいましたね…?フフ)

監視していた人物は、レンツの使用人のイヴだった。もう、この現場に用がないと悟ったイヴはすぐさま、腕時計を確認し、急いで家へ向かった。






<2016/06/25 23:47 ライスマン>消しゴム
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