夕食の時間、台所でレンツは何とも冴えない表情で極日東共和国に伝わる麺料理ラーメンを啜っていた。その様子を見ていたイヴは心配そうな表情を浮かべ、レンツに話しかけた。
「レンツ様?もしかして、お口に合いませんでした?」
その問いにレンツは我に帰り、首を素早く横に振った。
「凄く美味しいよ!ちょっと考え事してた」
その答えにイヴは胸を撫で下ろし安堵した表情を見せた。レンツの向かいに座るセブンはレンツの考え事に興味を持ったのか、ラーメンを啜りながらレンツに視線を向けた。
「お前が考え事なんて珍しいな?」
レンツはラーメン啜りながら視線を向けてくるセブンに対して、間抜けな表情をしているな。と思案しながら返した。
「実は、今日歴史の授業でさ…」
レンツは包み隠さず全て話した。その話にイヴとセブンはずっと耳を傾けていた。普段レンツはあまり話さない無口な少年の為、二人は興味を持った猫のようにその場に居た。
「俺、カリンに何もしてやれなかった…本当なら天空の先にある世界は実在する!って証明したかった!でも俺…何の知識も無いから、カリンの夢を馬鹿にして笑ってる奴らに何にも反論出来なかった!悔しいよ…」
レンツは歴史の授業の一件を思い出し腹を立てて力が入ったのか片手に持っていた木の割り箸を折った。悔しさと怒りの表情が相まって泣きそうな表情をしていた。その表情を隠すため、下を向いていた。
その時、レンツの頭に懐かしさを感じさせる感触が伝わった。温かく大きい手が泣きそうになるレンツの頭を優しく撫でた。
「レンツ。よくやった」
セブンは一言だけ喋るとレンツの頭を撫でていた。レンツはそれに対して何も言わなかった。と、言うよりは言えなかったのだ。何故ならレンツが下を向いているのは大粒の雨を眼から降らせているからだ。今、何か話すと声が震え、泣いている事を悟られるからだ。
しかし、セブンとイヴはレンツが泣いていることはお見通しだった。
セブンはラーメンを食べ終わると立ち上がってタバコを咥え、一服しようと台所から出ようと出入り口のドアノブを掴み立ち止まり、ずっと下を向いているレンツに向けて口を開いた。
「レンツ。信じるか信じないかは自由だ。その子が言っていた天空の先に存在する名も無い世界は実在する」
セブンの発言にレンツは驚愕した表情を見せた。セブンは今まで嘘をついた事は無いし、こんな変な冗談を言えるような人間でもない。それは長年育てて貰ったレンツにはよく分かったためレンツは下を向いたまま、声に出さず笑った。
セブンは台所から去ると二階のベランダでタバコを吸い始め、笑っていた。
(今まで、感情という感情はあまり見せなかったのに、学院に入れてから、色んな顔をするようになったな。良い傾向だぜ。しかし、懐かしいな。天空の先の世界か…よく行って帰って来れたよな。もうあれから20年以上経つのか…)
*
下を向いたまま、ラーメンに手をつけようしないレンツにイヴは何か言いたそうな表情をしたが、止めた。
イヴは温かいお茶を淹れ、何も言わずレンツの近くに置き、これ以上手をつけないであろうラーメンを下げようとした時、細いイヴの腕はレンツによって掴まれていた。
「まだ食べてんだ。下げないでくれ」
その様子を見たイヴは微笑み、何も言わずレンツの隣の椅子に座りイヴの長い赤髪がレンツの肩に触れるくらい密着するようにイヴの方から寄り添った。
「なぁ…イヴ」
「何でしょう?」
「最近の俺変だ…。変なことで笑ったり、イラついたり、泣きそうになったり、学院に入ってからだ。自分でもよくわかんねー。これは一体何なんだ?俺病気なのか?」
「それは多分、人間だからではないでしょうか?」
「人間…?」
レンツはよくわからない答えに、確認の為、もう一度聞き直した。
「人間は笑ったり、泣いたり、怒ったりする事で良くも悪くも成長します」
笑う事で達成感を味わったり、幸せを感じる。
泣く事で、自分の過ち、失くしたモノの重大さ、己の無力さを気づかせる。
怒る事で、自分を見失い、相手や自分に迷惑を掛けた事が後で分かり、反省しようとさせる材料になる。
即ち、感情とは人間の徳や心が成長する上で切っても切り離せないものである。
その事を遠回しにイヴはレンツに理解して貰えるようにゆっくりとした口調で伝えた。
「そうなんだ。病気じゃなくて良かった」
レンツは安堵し、イヴの優しく微笑む表情を見て小さく呟いた。
「イヴ。ありがとな…なんか気持ちが楽になったよ」
「いえ♪それよりレンツ様?若桜戦もうそろそろなんですよね?」
「うん」
「その日はいつもより、腕によりをかけてお弁当作りますから、楽しみにしていて下さいね♪」
「うん!ありがとう!よーし、若桜戦。マジで優勝狙ってみるよ」
レンツはお弁当と言うワードに反応し、やる気が出たのか、声音が元に戻り、いつもと同じ元気な表情を取り戻していた。
「レンツ様?もしかして、お口に合いませんでした?」
その問いにレンツは我に帰り、首を素早く横に振った。
「凄く美味しいよ!ちょっと考え事してた」
その答えにイヴは胸を撫で下ろし安堵した表情を見せた。レンツの向かいに座るセブンはレンツの考え事に興味を持ったのか、ラーメンを啜りながらレンツに視線を向けた。
「お前が考え事なんて珍しいな?」
レンツはラーメン啜りながら視線を向けてくるセブンに対して、間抜けな表情をしているな。と思案しながら返した。
「実は、今日歴史の授業でさ…」
レンツは包み隠さず全て話した。その話にイヴとセブンはずっと耳を傾けていた。普段レンツはあまり話さない無口な少年の為、二人は興味を持った猫のようにその場に居た。
「俺、カリンに何もしてやれなかった…本当なら天空の先にある世界は実在する!って証明したかった!でも俺…何の知識も無いから、カリンの夢を馬鹿にして笑ってる奴らに何にも反論出来なかった!悔しいよ…」
レンツは歴史の授業の一件を思い出し腹を立てて力が入ったのか片手に持っていた木の割り箸を折った。悔しさと怒りの表情が相まって泣きそうな表情をしていた。その表情を隠すため、下を向いていた。
その時、レンツの頭に懐かしさを感じさせる感触が伝わった。温かく大きい手が泣きそうになるレンツの頭を優しく撫でた。
「レンツ。よくやった」
セブンは一言だけ喋るとレンツの頭を撫でていた。レンツはそれに対して何も言わなかった。と、言うよりは言えなかったのだ。何故ならレンツが下を向いているのは大粒の雨を眼から降らせているからだ。今、何か話すと声が震え、泣いている事を悟られるからだ。
しかし、セブンとイヴはレンツが泣いていることはお見通しだった。
セブンはラーメンを食べ終わると立ち上がってタバコを咥え、一服しようと台所から出ようと出入り口のドアノブを掴み立ち止まり、ずっと下を向いているレンツに向けて口を開いた。
「レンツ。信じるか信じないかは自由だ。その子が言っていた天空の先に存在する名も無い世界は実在する」
セブンの発言にレンツは驚愕した表情を見せた。セブンは今まで嘘をついた事は無いし、こんな変な冗談を言えるような人間でもない。それは長年育てて貰ったレンツにはよく分かったためレンツは下を向いたまま、声に出さず笑った。
セブンは台所から去ると二階のベランダでタバコを吸い始め、笑っていた。
(今まで、感情という感情はあまり見せなかったのに、学院に入れてから、色んな顔をするようになったな。良い傾向だぜ。しかし、懐かしいな。天空の先の世界か…よく行って帰って来れたよな。もうあれから20年以上経つのか…)
*
下を向いたまま、ラーメンに手をつけようしないレンツにイヴは何か言いたそうな表情をしたが、止めた。
イヴは温かいお茶を淹れ、何も言わずレンツの近くに置き、これ以上手をつけないであろうラーメンを下げようとした時、細いイヴの腕はレンツによって掴まれていた。
「まだ食べてんだ。下げないでくれ」
その様子を見たイヴは微笑み、何も言わずレンツの隣の椅子に座りイヴの長い赤髪がレンツの肩に触れるくらい密着するようにイヴの方から寄り添った。
「なぁ…イヴ」
「何でしょう?」
「最近の俺変だ…。変なことで笑ったり、イラついたり、泣きそうになったり、学院に入ってからだ。自分でもよくわかんねー。これは一体何なんだ?俺病気なのか?」
「それは多分、人間だからではないでしょうか?」
「人間…?」
レンツはよくわからない答えに、確認の為、もう一度聞き直した。
「人間は笑ったり、泣いたり、怒ったりする事で良くも悪くも成長します」
笑う事で達成感を味わったり、幸せを感じる。
泣く事で、自分の過ち、失くしたモノの重大さ、己の無力さを気づかせる。
怒る事で、自分を見失い、相手や自分に迷惑を掛けた事が後で分かり、反省しようとさせる材料になる。
即ち、感情とは人間の徳や心が成長する上で切っても切り離せないものである。
その事を遠回しにイヴはレンツに理解して貰えるようにゆっくりとした口調で伝えた。
「そうなんだ。病気じゃなくて良かった」
レンツは安堵し、イヴの優しく微笑む表情を見て小さく呟いた。
「イヴ。ありがとな…なんか気持ちが楽になったよ」
「いえ♪それよりレンツ様?若桜戦もうそろそろなんですよね?」
「うん」
「その日はいつもより、腕によりをかけてお弁当作りますから、楽しみにしていて下さいね♪」
「うん!ありがとう!よーし、若桜戦。マジで優勝狙ってみるよ」
レンツはお弁当と言うワードに反応し、やる気が出たのか、声音が元に戻り、いつもと同じ元気な表情を取り戻していた。
