「……ん」
不意に部屋に迷い込んだそよ風にほおを撫でられ目を覚ました。
そしてすぐに後悔した。
……ああ、窓なんて開けておくんじゃなかったな。
風が涼しいと思ったのに、むしろ日光で部屋の中が蒸し暑い。
街を一望できる窓を閉めてすぐさまに冷房をつけた。外の明るさとは対照的に部屋の温度が下がり始める。
この町に越してきたときはこの眺めにもなんだか嬉しさで毎日外を眺めていたが……1ヶ月もしないうちに飽きてしまったのを覚えている。
馴染み深いかと聞かれたらそこまで長くはないし穴場も細々とした小道も知らない。ただ、観光客には負けない自信がある。
机の上のスマホがバイブレーションで電話の着信を知らせる。
「……誰だよ」
『画面見てわかってんだろ、変なボケすんな。暑さでおかしくなったのかよ』
「いや……なんとなく暇だったから」
『そのお前の自分勝手な暇を電話相手に押し付けるなよ、何がしたいんだよ』
「何も……。いや、どちらかと言えばやらなきゃいけないことはある。やりたくなくてやってない」
『いやまあそんなのどうでもいいんだが』
「そうなの?」
『いやそろそろ本題入らせてくれよ』
「え、何か用事があって電話したの」
『いや用事がないのに電話するような性分じゃねぇし』
「で? 何?」
『とりあえずこれからいう場所に来てくれ、要件はそこで言うから』
「えー」
『この間の金返すついでだと思って来てくれよ』
「しょうがないなぁ面倒くさい」
『じゃあいつものフードコードに来てくれ』
「うい」
通話時間二分半。
持ち物は特にないので用意も簡単に済ませる。
部屋着から着替えて綾鷹にごりほのかを持ってドアを開ける。
「……」
じっとりと湿った空気が体を包み込んで体全体がだるく感じた。
とりあえず帽子を深々と被ってマンション共有のエレベーターに向かった。
紫外線は男の敵だからな、早く行って早く帰ろう。
しばらく歩いてため息をついた。
「……やっぱ暑ぃな」
