「...... ンだよォ、別にいいじゃねぇか」
「やだ、蓮ってば...。 彼女居るんじゃ無かったのぉ?」
...嫌な現場を目撃してしまう。 私、「夜澤未央(ヤナザワ ミオ)」 は、暗く静かな空き教室で 彼氏の「楸原蓮(ヒサギバラ レン)」が私と違う女の子と身体を寄せ合って、随分と仲良さ気に話しているのを見てしまう。...何て最悪な事だろう。
私は、幼い頃に母親を亡くした、病気で。 男手1つで育ててくれた父にも感謝している。
父は仕事熱心だ。だから、幼い私を1人残して仕事に行ってしまうのだって、もう慣れている。 だからだろうか、そんな孤独な環境で育ってきたからこそ私にとって「彼氏」と言う存在は大きな物だった。 それが、今目の前でボロボロと崩れて行く。あぁ、蓮にとって、私はどうでもいい存在だったのかな、と。
「... っあ、... 未央!?」
ドアから顔を覗かせて唖然としつつ眺めていた私の名前を蓮が呼ぶ。見られるとは思っていなかったのだろうか、目を丸くしてとても慌てている。
「嘘...浮気、なの? 私が遊びなの? ねぇ、ねぇ...」
半パニック状態になりながらも、喋り掛けられてやっと此方も声が出る。 目尻にじわっと熱くなる感触があり、 少し瞬きをすると大きな涙がぽろぽろと溢れ出し。
「あぁ、見られちゃったのねぇ。 ... まぁ、そういう事だから... ね、未央ちゃん?」
私に近付いてきつつもにたり、と不気味に微笑むと、 私の耳元で「貴女は遊び、だよ?」
と呟いて。そのあと、気分良さげにスキップしつつ出て行ったかと思うと、蓮もごめんな、と言うような笑顔で私の横を走って通り抜け。
力が抜けたように、ぺたんと地面に座り込むと、大声を張り上げながら嗚咽を漏らしつつ止まらない涙に手をやり。目を擦り、 涙を全て拭き取って誰にも泣いていた事を悟られないようにすると、鞄を持ち上げそのまま靴箱へと向かい靴に履き替え。
帰り道、 しみじみとしながらも蓮と付き合っていた時間のこと、全て思い出すようにゆっくりと家へと帰り。家へと着くと、まず時計を確認し。 父がまだ帰ってこない時間、と言っても大抵遅いが、ピンク色の可愛らしい時計を見つめ父が帰ってくる時間を見て。針は午後4時をさしていて。その後、ふっきれたように鏡の前で思いっきり泣いて。 顔がぐしゃぐしゃになることも気にせずに、 ただひたすら泣いて。 全部忘れて、泣きじゃくったあと、鏡をじっと見つめ。
「 _もしも 、別世界に行けたら...いいのに。」
冗談混じりに、でも本当にそうなって欲しいな、と思い、鏡に手を当てながら呟き。 「そんなこと起きないよね、」と苦笑いして言うと、そのままパタンと床に倒れて泣いた反動か眠りについてしまい。
真夜中 。
「 ん、... げ、もうこんな時間!?」
腕についている茶色のアンティーク時計を見つめ、そう呟く。 時計の針は午前2時をさしている。
...否、何故茶色なのだ。 あまり気にせずにいたが、気が付いて心の中でツッコミを入れてしまう。
周りをよく見ると... 否、此方も違う。 まるで庭園のような...。 噴水がしゃわしゃわと静かに音を立て水が出ている。 しかも己が寝ていた場所は石で出来た道。 此処は何処だと言うのだろう...___
