おためし小説投稿

登録一切不要で小説投稿!
文字サイズ変更 
小さな英雄
- 二章 動き始めた帝国 -

一人の少女が、上司の兵士と話をしている。美しい金髪は肩甲骨まである。エリィと同じく、美しい青い瞳。白い肌に、赤い服。緑のチェック柄の短いスカート。腰にはナイフが、手には弓が握られている。歳は10代の後半。身長は160位だろう。この少女は帝国兵だ。帝国兵と言っても、辺境を守る下っぱの中の下っぱなのだが。弓兵部隊所属、アリサ・ハルガルナ。
「私、兵士をやめます」
「兵士をやめて、どうするのかね?ハルガルナさん」
「これから考えます」
「そうか。それは残念だな。僕は、君のことを気に入っていたんだが………」
「別に教官が嫌いになった訳ではありません。生きていれば、また会えますよ」
「ああ。生きていれば………ね」
教官はそう言うと、アリサを剣で突き刺した。

「あー、眠い」
クロウは大きく欠伸(あくび)をして、ベッドに横たわる。もうゴブリンは余裕で捌(さば)けるようになった。次の目標はコボルドに勝つことだ。コボルドとは、強靭な腕力や脚力を持つ人狼で、知能もそれなりに高いという。
「まーた欠伸か。お前、本当やる気ないよな」
「いいじゃん。今は敵もいないし、今日は疲れたからね」
「ええ。そうね」
「でも、疲れ過ぎじゃねぇか?お前、体力ねぇな」
「体力はある方だよ。多分、この三人の中じゃ一番。ただ、僕は魔法が使えないからね。エリィやレインよりも動き回らないと駄目なんだよ」
クロウが何気無くそう言うと、レインは申し訳なさそうにする。
「なんつーか、悪いな。お前が魔法を使えないって言うのはわかってるんだけど………………」
「いいって」
そう言って、レインの肩を軽く叩く。
「仲が良いわね」
エリィは微笑みながらそう言った。
「まあ、クロウは良い奴だからな。最初はちょっと、一言余計………って言うか、一言以外全て余裕な奴だと思ってたけど、旅をしてわかったからな」
「レインは、ただの熱血戦闘馬鹿かと思ったけど、実際以外に冷静だし、優しいし」
お互い貶しているのか誉めているのかわからない様な言葉を言い合う。それを見て、エリィはクスクスと笑う。そんな時だった。もう夜だと言うのに、外がやけに騒がしくなってきた。クロウ達は、気になって外に出る。すると、金髪の美少女がくくりつけられ、今にも処刑されそうになっていた。
「どうする?」
クロウが、エリィとレインに訊いた。だが、答えも返さずに、二人は走り出す。やっぱりこうなるのか。クロウは少し飽きれながらも、
「じゃあ、やるか。美少女救出作戦」

「どうして………?教官?」
アリサが教官に訊いた。酷く掠れた声だった。
「帝国に一度忠誠を誓えば、それを二度とほどくことはできない。つまり、一度帝国兵になればやめられないということ。わかるよね。ハルガルナさんなら。本当は、僕だってこんなことしたくないんだ。だけど、今の帝国はそういうところだ。君をこうしなければ、辺境部隊は全員殺される」
教官が悔しそうな顔でそう言った。演技ではないということが、間近で見ているアリサには伝わってくる。
「わかりました。私の命で皆が助かるなら、そうしてください。別に、あなたたちに生きてほしいとか、そんなんじゃないです。ただ、私のせいで誰かが死ぬのがいやなだけ」
「すまない」
教官はそう言って、剣を振り上げた。

「クソ。人が邪魔で通れねぇ」
「すいません。通してください」
エリィとレインが、人混みを掻き分けながら進む。クロウは近くの建物の屋根に登り、金髪の少女がくくりつけられている台に飛び降りた。格好良く着地。とはいかず、そのまま少し体制を崩してしまった。だが、さっき剣を振り上げた処刑人は驚いて、少し間ができた。その隙に、クロウが少女の縄を斬る。そして、処刑人に体を向けた。処刑人は、剣をこちらに向けている。
「帝国に逆らうとどうなるかわかっているのかい?」
と、優しく語りかけてくる。なかなかやるね。優しく語りかけて、同情をひく作戦か。でも、そんなのには乗らないよ。クロウの考えはそうだったが、教官は心の底から優しく訪ねていた。この少年は、まだ助かるかもしれない。今のうちに、早く逃げるんだ。クロウが、エリィに少女を渡す。エリィが少女の治療を始める。すると、エリィを攻撃しようと兵士達が寄ってきた。それを、レインが蹴散らす。すると、いきなり処刑人が声を上げた。
「やめるんだ!」
その言葉で、皆が静まる。そして、クロウ達とその処刑人が話をすることになった。宿に戻る。レインとエリィが机に腰掛ける。だが、席は三つしかない。クロウは手で、どうぞ、と促して座らせた。その後ろには、二人の兵士が立っている。兵士とクロウは睨み合いを続けている。すると、処刑人が全てを説明してくれた。
「死んだことにしたりとかすればいいんじゃねぇか?」
レインがそう言うが、
「それは無理ですよ。兵士達が、もうすでに報告に向かっています。止められません」
「どうしてですか?」
エリィがそう訊くと、
「皆死にたくないでしょう?一人が処刑されるだけで、皆が助かるのです。パニックになっているんですよ」
「情けねぇな」
レインがそう言うと、兵士が剣を抜いた。
「やめるんだ。この人達は悪くない」
教官の一言で、兵士は剣を納める。慕われてるんだな。この教官。
「ハルガルナさんは、とても人気のある子でした。少し気が強いところもありますが、根は素直な良い子です」
教官がそう言う。そしてクロウは、それに付け加える。
「それにエリィと同じくらい美人だしね。それに、自分の命を捨てて、全員を助けようとした。凄いことだよね。僕なら絶対に死にたくないし、まぁ、仲間なら話は別だけど。そんなに親しくない、言ってしまえば他人だね。他人を助ける為に自分の命を捨てたりなんかしないよ。多分、普通の人はみんなそうだよ。僕の仲間達みたいにお人好しなら、話は別たけどね」
「そうですね。凄いことです。ハルガルナさんも、あなた達も。どうかお許しください。私達は、ハルガルナさんを殺しません。この辺境部隊は解散。私の命を持って、皆を救ってみせましょう」
そう言って、教官は出ていった。しばらくすると、少女が目覚める。アリサ・ハルガルナ。歳は17。ということらしい。やめた理由も聞いた。帝国は、もう昔の帝国じゃない。王がやりたいように政治をする、いわゆる独裁政治。腐りきった帝国に遣え続けるのは、もう嫌になったらしい。ただ、自分のせいで辺境部隊が解散したことに責任を感じているらしい。
「大丈夫だって。安心しろ」
レインがそう言うと、アリサは小さな声で、
「ありがとう」
「ん?」
レインは聞こえなかったらしく、訊き返す。
「別に、あんたに慰められて嬉しいとか思ってないし、ありがとうなんて絶大言うはずないわよ。ただちょっと、ああ、もう。何でもないわよ。馬鹿」
「はぁ!?なんで俺が馬鹿呼ばわりされるんだよ!意味わかんねぇ!」
クロウはレインを部屋の外に連れて行き、
「あれだよ。アリサはツンデレなんだって。わかる?それも、9:1くらいの黄金比率」
「ツンデレ?ああ、あれか。って、なんであいつが俺にデレてんの!?」
「声がでかいよ。て言うか、まだデレてたいし」
クロウは飽きれ気味にそう言って、苦笑する。
「しばらくは、エリィに任せよう。エリィは基本何でもできるし、僕たちが下手に慰めるより、よっぽどどうちかしてくれるはずだよ」
「ああ。そうだな」
二人は、エリィとアリサを残して宿から出ていった。

どうも。こんにちは。最近小説を書くスピードが少しずつ上がってきました。そして、この小説が伸びてきました。嬉しいです。毎回閲覧してくれているあなた。ありがとうございます。多分二人、いるかいないかくらいだと思いますけど。そこで、感想頂けると嬉しいかなと(露骨なアピール)。実際、やる気も出ますしね。よろしくお願いします。
<2016/07/15 23:50 トウヤ>消しゴム
Copyright(C) おためし小説投稿 Since2013 All Rights Reserved.