おためし小説投稿

登録一切不要で小説投稿!
文字サイズ変更 
大丈夫


「はーいっ!」

朝から元気な女子の声。

聞いてるだけで疲れる。

なのに彼女たちの近くにいるという。

話はなんとなくしか聞いてないけど。

「わたくし、ひとつ新たな噂を聞いてしまいましたぁ!」

さっきからずっとこんな感じ。

噂話ばっかり。

女の子ってみんなこうなのかな。

「なになに〜っ?」

どうせ誰かが付き合ったとかその辺でしょうよ。

「少し、悲しいお知らせです」

悲しいことなら聞かないほうがいいのに。

けど人はそれを聞きたがる。

「学校の王子様、及川 昴様に関わることです」

様。

「昴くんに、もう会えないかもしれない」

「はぁ!?」

二人が食いつく。

あたしはさっきからずっと頬杖をついて外を眺めてる。

「引っ越すかもしれないの」

「どこ!?」

あたしは静かに教室を出た。

「満月(みづき)っ!」

あたしは振り返らずに昴のいる場所へ向かった。

『引っ越すかもしれないの』

どこに行くの?

あたしに、言ってくれればよかったじゃん。

「ふふっ」

今の自分に笑えてきた。

何してんだろ。

ただの噂でしょ?

いつも気にしてないじゃん。

何本気にしてんのよ。

「ふふっ、ハハハッ」

廊下を通る人みんながあたしを見ていく。

そりゃそう。

誰と話してるわけでもないのに結構本気で笑ってるん
だもん。

「昴……」

まさか……

もしそうなら、絶対に訊いてはいけない。

昴に言わせてはいけない。

けど、確かめるには訊くしか……

あの噂が本当か嘘かだけ知りたい。

何かそれだけで終わる方法はないか。

「青山さん?」

可愛らしい女の子の声があたしを呼ぶ。

「ん?」

あたしはなるべく明るく答えて振り向いた。

「大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ?」

「調子悪かったら保健室行きなね?行く?私も行くよ?」

「大丈夫。なんでここ来たか忘れちゃって。
ほら、あたしそういうとこあるから」

「無理しないでね?」

「うん」

そう言うと女の子は自分の教室へ。

学年は同じらしい。

どうしよう。

昴。

とりあえず行くだけ行こうかな。

あたしは再び歩き出した。





いた。

屋上。

昴が教室にいない時は必ずここにいる。

普通。

いつもどおり。

何も知らない。

あたしはただ昴のところに来ただけ。

よしっ。

「昴っ」

なんかいつもより声高いけど。

意識しすぎたね。

そんな私の声にいつもどおりの昴。

「どした?」

ゆっくり起き上がって眩しそうにあたしの方を見る。

「なんとなくねっ」

あたしはそう言って昴の隣に座った。

なんて訊こう。

「あ……あのさ」

「ん?」

「噂……聞いたんだけどさ」

あたしが言うと昴はため息を吐いた。

嘘でしょ。

もう、会えないの?

どこ行くの?

「満月も聞いたのか……」

なんでそんな下向くの?

嘘だよね?

嫌だ。

昴……

「誰が言い出したかしんないけどさ、何があってあんな
寒いとこ行かなきゃいけないのかね」

「昴、じゃあ」

「嘘に決まってんだろーが。ってか、なんで満月がそう
思わなかったかっていう疑問が……」

「そうだよね……よかった……すばる」

昴はあたしを優しく抱きしめた。

「すばる……」

「いいよ。泣きたい時は泣け」

昴、なんでこんなに優しいんだろう。

「しゃーねーから後は俺に任せろ」

「すばる」

ちょっと意味は分かんなかったけどあたしは思い切り
泣いた。










「お〜い。満月〜」

目を開けると昴がいた。

「昴?」

「昴」

ここはどこ?

え、布団……

あたしは辺りを見渡した。

カーテンは閉まり、電気がついた部屋。

そしてここにはあたし以外昴しかいない。

と、いうことは?

夜、昴の部屋にいるということで間違いなさそうだね。

あたしは壁を見た。

「こっち」

「あっ」

あたしは逆の壁を見た。

「は!?9時?」

「みてぇだな」

なんて冷静な男。

「いやいや、ごめん」

あたしは帰る準備をしようとした。

そしてひとつ気付いた。

動きやすい。

あたしは自分が着てるものを上から下まで見た。

「えっ……制服は?」

「あっち」

昴の視線の先には男用と女用の同じ学校の制服が。

「あ~、ほんっとごめん」

あれっ、でもなんでここまでしてくれたんだろう。

「お前さぁ」

「へ?」

「いや、泣いた後寝るのやめてくんねぇかな」

やめてくんねぇかな。

難しいこと言うね。

「多分……無理」
「ぶっとばす」

「もうちょっとゆっくり答えてね」

そう言って帰りの準備を始めた。

「ちょ、バカ?」

「は?」

「よくここでできんな」

「あっ!忘れてた。完全に昴を男として見てなかった」

あたしは笑って言った。

「はぁ。あ、そうそう。よければ泊めてあげようかなって思ってんだけど」

何となく恩着せがましいのね。

でもそれが及川 昴。

「いいよ。もう迷惑は十分かけたから」

「今日誰も帰ってこないけど」

「はっ!?」

だって昴、お姉さんもいたじゃん。

「関東巡りの旅だって。しーばらく帰ってこねぇわな」

あれっ、昴 一人嫌なのかな。

「一人が嫌なの?」

「は?」

「なら言えばいいのに」

「いや、俺は……」
「今日泊まってく」

昴はフッ、と笑った。

寂しいなら言えばいいのに。

そこは男の子なんだね。

「んで、着ろ」

「え?」
「服」

「あ、だからそっち向いてたんだ」

「お前ほんっとにバカ」

「昴 男の子なんだもんね」

「お前が忘れてんのは俺が男ってことじゃなくて
お前が女ってことじゃねぇの?」

なるほど。

「そうかも知れない。さすが昴くん。
いろんな考え方できるんだね」

「くんヤメろ」

「ごめんね。いいよ」

「ったくとんでもねぇ女だな」

「そんな事ないよ?」

「自覚してねぇとこがまた」

だってそんなことないもん。

「えっ、制服から着替えた時はどうしたの?」

「廊下で待ってた」

そうなんだ。

別に良かったのに。

「ほんっとに何にも気にしねぇんだな」

「いっちいち気にするよりマシじゃない?」

「いや、もうちょいさ……まぁいいや」

いいんだ。

あんなに言ってたのに。

「そうだ昴、あたしのことどうやってここまで……」

「俺が背負ってきた」

「そんなほっそい体で」

「お前ほどじゃない」

「んな女より細い男嫌よ」

「まぁ荷物だけ持ってくれてよかったよ」

持ったんだ。

何にも覚えてない。

「あれっ、荷物って……」

あたしは自分のバッグを持ちあげた。

「今日 超重い日じゃん」

「そうだよ?」

「スゴイね。体育ダメなのに」

「ダメじゃない。苦手」

「変わんな……」
「変わる」

最後まで言わせなさいよ。

「あ、お腹すいてる?」

結構かわいい訊き方するのね。

「そんなには」

「どうする?」

「ん?」

「何か食べる?お菓子なら無駄にあるけど」

「んなら消費手伝ってあげる」

「恩着せがましっ」

あなたほどじゃありませんけどね。

「持ってこよっか?」

「うん」

「一緒に行く?」

「行く〜っ」

あたしは昴の背中に飛び乗った。

「うわっ、帰りだけじゃ満足してねぇのかよ」

そう言いながらもそのまま階段を降りる昴。

「スゴイね。落ちないでね?」

「それが怖かったら降りることをおすすめする」

おすすめ。

細かいとこかわいいんだね。

そしてその部屋の前へ。

「降りろ」

「ありがと〜」

昴はその『お菓子が無駄にある』部屋の電気をつけた。

そこには夢の世界が。

「わお。ほんとだ」

「こんなにいつ食べんだか……」

「広いね」

「う〜ん。入りな?」

「おっ、失礼」

あたしは部屋に入った。

「なんでこんなにたくさんあるのに綺麗なんだろ」

「綺麗、なのかな……」

「お店みたい」

「お店」

「え?」

「結構かわいいこと言うんだな」

「昴こそ」
「は?」

怖っ。

「いや、さっきの『お腹すいてる?』とか『おすすめ』
みたいな」

「普通だし」

「ほんとかわいいね」

「お前ほどじゃない」

ダメだ。

顔 絶対 赤い。

そしてしばらく待っても来ない。

『嘘だけどね』の一言が。

「すばる?」

「ん?」

「いや……あの…さっき……」

「は?」

言わせたいわけ?

本当に悪い男。

「『お前ほどじゃない』って……」

「本気だけど?」

うわうわ。

とことん悪い人。

その顔でそんなこと……

「バカ」

「それもお前ほどじゃない」

よかった。

これ認められたらどうなるかと。

その時、昴の携帯が鳴った。

「あ、ごめん」

そう言ってお菓子の入った袋を渡す昴。

「おっ、はいはい」

昴は部屋を出た。

「はぁ〜っ」

あたしは一人で喋った。

棚、か。

あたしの部屋にも置こうかな。

んでカーテンみたいなのやっちゃえば隠せるし。

この家の人は収納能力がすごいよね。

あたしがなさすぎるのかな。

それもあるだろうけど。

「満月」

「おっ、昴」

「ちょ、行くか」

「どこに?」

「公園」

「何しに」

「お話」

お話。

どんなお話よ。

あたしはとりあえず昴と公園に向かった。



最初から長くてすみません。

こんな感じで書いていこうと思います。

更新のペースはバラバラだと思いますが、なるべく早めに完結させられるように頑張ります。
<2016/07/19 15:44 秋の空>消しゴム
Copyright(C) おためし小説投稿 Since2013 All Rights Reserved.