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『イヤァーーーーッ!!』

満月の、悲鳴のような声。

あの、助けを求めてる満月の声を聞いた俺は何をしたら
いい?

俺は満月に何がしてあげられる?

弟の、小学生の、子供の俺に。

あれから何度が聞こえてくる満月の叫び声。

昴さん、ごめんなさい。

「満月っ!!」

俺は満月の部屋に入った。

「夏月?」

「陽斗さんだろ?何で関わり絶たなきゃいけねぇんだよ」

「いろいろあるの。いろいろ」

「分かってあげられないから。
あたしには何もできることはないから。
それが?本当に助けてぇなら、本当に救いてぇなら
何があってもそばにいるもんだろ?」

「まだ分かんないよ。あたしの気持ちなんて……」

「あぁ。一生分かんねぇだろ。
できることもろくに探さねぇで諦める辛さなんて」

「夏月?」

「さっき電話あったろ。陽斗さんだろ?なんて言われたか知んねぇけど、何でそんな道選んだんだよ」

「もうないのっ!」

満月はさっき昴さんといた時のように言った。

泣き叫ぶように。

「あたしが、陽斗にしてあげられることは、
もうこれくらいしか……」

「一回落ち着こうよ」

「あたしは落ち着いてるっ!もうほっといて」

昴さんにも言われた。

しばらくそっとしとけって。

「それができたらそうしてるよ」

「頑張ってして…もう一人にして……一回冷静になりたの」

その時、俺の部屋から携帯の音が聞こえた。

俺は黙って部屋に戻った。


『昴さん』

俺は深めの呼吸を数回して電話に出た。

「はい」

『満月は!?』

何でそんなに慌ててるの?

「昴さん?」

『満月、出ねぇから…』

「部屋にいますけど」

『とりあえず満月を陽斗ん家に呼べ』

「陽斗さん。分かりました」

『切るぞ』

俺は電話を切り、満月を呼びに行った。

『陽斗ん家に呼べ』

陽斗さんの名前はまずいだろ。

「満月」

「何?」

「陽希さんの家に来いって。昴さんが」

「陽斗、何かあったのかな」

意味ないけど。

「いいから早く行けよ!これがおまえにできること
だろ?家に行くくらいできんだろ」

「会うの?陽斗と?」

もう言っていいかな。

「ゴタゴタ言ってんじゃねぇよ!陽斗死んでもいいのかよ!」

「は?」

「電話の後ろで聞こえたんだよ……いろんな、サイレンの
音が」

「何の音?」

「サイレンっつったろ!んなこと気にしてられたら早く
行け!」

満月はようやく家を出た。

そしてそれに当たり前のようについていってる、俺。



「満月!夏月!」

昴さんがいたそこは、オレンジ色に染まっていた。

「昴!二人は?何でこうなったの?」

「俺も分かんない。とりあえず満月には伝えようと
思って」

出なかったけど。

「陽希さん、陽斗さん……」

「大丈夫。あの二人なら、きっと」

俺は昴さんの優しい言葉に頷いた。

その時、ガラスが割れる音がした。

「ハルーーっ!!」

そして破片が降ってきたところから人が落ちてきた。

「二人だ」

俺が言うと満月は二人の方に行こうとした。

「満月!大丈夫だから」

俺は昴さんと満月を止めた。

「嫌だ!ハルっ!ハルーっ!」

落ちてきた二人のうちの一人が立ち上がった。

「立った……」

「えっ、もう一人は?」

「嘘……嫌だ……」

「夏月、大丈夫だから」

「ハル!」

落ちた時に下にいた人が病院に運ばれた。

「どっち……」

んなことどうでもいいだろ。

「陽斗っ!」

「違う。あれは陽希さんだよ……」

陽希さんのほうが少し背が高い。

少し離れたここから見て近くで見る陽斗さんくらい。

「嘘……陽斗?陽斗……が……」

陽希さんが俺らの方に来た。

「いやぁ、ビックリだよね」

「ちょ、ビックリなんすけど、大丈夫ですか?」

「あぁ。陽斗のおかげでな」

「陽斗さん……」

「すごいよね。俺も超ビックリ」

陽希さん……

「何があったんすか」

「なんか分っかんないんだよねぇ」

「陽斗は!?まだ、まだ言いたいことあるの!」

「どうだろうな……俺の下に……」

「嫌……嫌だ……陽斗………」

陽希さんの体を見る限り、火事での傷はない。

「大丈夫だと思うよ」

「え?」

「二階でしょ?大怪我くらいで済んでるんじゃない?」

「くらいって……」

「命に問題がないなら、いいでしょ」

「いや、まぁそうだけどさ。あんたも冷たい人よね」

「別に」

ただ、信じたいだけ。

それくらいで、済んでると。

「えっ、ってか陽希さん行かなくてよかったんですか?」

「あっ!まぁ、みんな来てくれたから……と思って」

もういい人すぎ。

「ちょ、いいから行きましょ?どこですか?」

「みーんなお世話になったとこ」

「えっ、あの軽いとこ?」

「多分、な?そこしか近くねぇだろ」

あぁ、そうだよね。

「そこなら昴さんでも走って行けたんです。
早く行きましょ」

「あの、昴さんでも?おーい、夏月くーん?」

「いいから行きますよ?」

「小学生に言われちまったな」

「ほんっとだぜ」

三人も俺についてきた。






「あっ!」

「うーっわ!急に止まんなよ」

「陽希さんたちってほか……」

「あぁ、二人。今日はねっ」

「じゃあもう大丈夫ですね」

「んなことのために止まったの?」

「まぁまぁ」



俺らは病院に。

「あっ!」

「何。あ、陽希か」

「おぉ、陽希じゃん」

誰、この人。

「陽斗の唯一の友達。川原 快斗」

川原 快斗。

えっ。

「川原?」

「そうそう。夏月くんくらいの妹がいるって」

「深月」

「うーっわ!深月のお兄さん?」

「夏月くんってあれだ!深月の友達の!」

俺は快斗さんと指を指し合う。

「友達?」

「深月から聞いてるよ?最高にいい男の友達がいるって」

最高にいい男の友達。

俺はつい下を向いた。

「あら、夏月もかわいいとこあんじゃん」

「あの深月が……深月ちゃんが?」

「そうそう。青山夏月くんでしょ?」

「はい……」

「んじゃそうだっ。これからもよろしくなっ」

「は、はい……」

「ふーん。最高にいい男の友達ねぇ」

「んだよ」

「べっつに?」

「まぁ、喧嘩はここまで。陽斗は?」

昴さんが場を落ち着かせるように言った。

「そうそう、もう治療終わったってさ」

「じゃあもう……」

「行く?大好きな陽斗くんのとこに」

「みんなこう言うのね」

「ん?」

「あっ、いや、何でもないです」

何があるって言ってるし。




「陽斗っ!」

「満月?」

「ごめんね……」

「どうした?」

「はる……と………」

「えっ?泣かないでよ〜っ。痛っ……」

陽斗さんはゆっくり体を起こした。

「陽斗……ごめん」

「え?一回落ち着いて?」

「電話……くれた………うぅ…」

「あぁ、あれね。バイバイでしょ?ビックリよ」

「ねぇ、あたしには何ができる?あたしにできることは
まだある?」


えーっと、ラブストーリーの予感が。

俺は廊下に出た。

「夏月くんっ」

「まぁ、ここは、ねっ?」

快斗さんも陽希さんも廊下に。

今度は本音で話し合えよ?

「バーカ」

「夏月くん?」

「二人なんかあったみたいなんすよね」

「うん。いくら俺でもなんとなく分かった」

「絶対くっつくよね?」

えっ、そういう、感じ?

「まぁ、今の俺らにできるとことは静かに待つことです」

俺らに、できることは。

どうか二人が正しい答えを出せますように。

本当に二人が、幸せになれる、正しい答えを。

<2016/07/22 16:35 秋の空>消しゴム
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