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大丈夫


あの二人は何を考えているのか。

俺らに関わる人のことを知って何になる。

それも、名前だけでなく、住んでいる所まで。

あの人たちは普通じゃない。

「夏月」

「満月?」

「大丈夫。気にしないで?」

気にしない。

それができたらすぐにでもそうする。

「難しいか」

「まだな。けどそのうち慣れる……」

はず。

「あのさ」

「ん?」

「今度、全部消す?」

「消す?」

「俺らに関わる人のことが分かるもの、全部」

「訊かれるよ」

そう言った満月の声が本気すぎて俺は何も言えなかった。

「モノが無かったら訊く。それがあの人たち」

あの人たちは俺らの何が知りたい。

何かあの人たちと関わらない方法はないか。

「あの人たちのこと、他には何も知らないの?」

「うん……」

「けど二人は……」

「でしょうね」

俺らはあの二人について何も知らないがあの二人は
俺らのことを全て知っている。

二人は何者なのか。

俺らと二人の関係は?

あの二人は誰?

「あの人たちの名前は?」

「知らない……」

「本当に何も知らねぇんだ」

「そうなの」

あの人たちは俺らの何が知りたい。

もう彼らが知りたいことを全て言ってしまいたい。

そして、彼らとの関わりを断ちたい。

「あいつらは本当の親なのかな」

「似てるところはひとつもないけどね」

確かに。

俺らの母親と言っている人と満月は全く似ていない。

俺も彼と似ていると言われたことがない。

「ねぇ」

満月が少し明るい声で言った。

「え?」

満月はコソッと明日やることを教えてくれた。










俺らは昴さんの家を出て、自分らの家へ。

そしてリビングへ。

「あの」

「なぁに?」

「あなたは誰?」

「え?」

「あなたは何者?」

「あなたたちの母親よ?」

やっぱりそう言うか。

「母親があたしたちの何を調べてるの?」

「調べてるわけじゃないわ?」

「あたしたちと関わる人、みんなのこと訊かれた」

「はぁ。もうダメか……」

彼女は何かを決心したように話し始めた。

「長くなるけど、いい?」

俺らは彼女のその言葉に頷いた。

「あのね……」


彼女が言うには

俺らの母親は病気でもういない。

彼女と母親との関係は友達。

俺らの本当の父親はその母親の病院に向かっているときに事故で。

俺らの両親と、彼らは仲がよかった。

そして母親が彼女に『あの子たちをよろしくね』と。

それで今に。

「なんかわけ分かんないんだけど。え、確認だけど
夏月は弟でしょ?」

「もちろん。あなたたちは本当の姉と弟よ」

満月は俺に笑顔を見せた。

俺も笑った。

「えっと、私は原田 雪菜。よろしくね」

「あ、よろしくお願いします」

俺は満月と同時に言った。

「で、今はいないけど彼は水原 夏樹。
なかなか発揮できなそうだけど、彼、すごい優しいから」

あの人が。

優しい。

考えられない。

ただの変な人でしょ。

「夏月、超ビビってたよね」

「は?」

「『満月が電話くれたとき部屋の外にいた!』
『風呂から戻ったら部屋が違う!』って」

「は?」

「優しい人なんだ。ゆっきぃ、今の本当だよね。
信じていいんだよね」

ゆっきぃ。

「無理にとは言わないけどね」

「信じる。水原さんの優しさに慣れるには、もう少し
時間かかりそうだけどね」

「ゆっくりでいいわ。ごめんね。今まで隠してて……」

「別に」
「いいっすよ。なんか気、使わせちゃって……」

「そんなことないよ?あたしがもっと早く言ってれば
よかっただけ」

その時、玄関が開く音が。

「おっ、水原来たか?」

雪菜さんは玄関へ。

「おかえり」

「ただいま」


「あの時と、声が全然違う」

あの時。

探ってた時のことだろう。


水原さんもリビングへ。

俺らは立ち上がり、頭を下げた。

「えっ、何?」

「今、聞きました」

「いろいろあったのね。けどあの必死さはダメよ」

引きずり女。

「超怖かったかんね?本気でヤバイ人だと思った」

「満月ちゃん」

ちゃん付いた。

「水原さん……」

「わーお」

満月は水原さんに抱きついた。

「ごめんね?」

「んっとだよ。バーカ」

バーカ。

「ごめん」

「ふふっ、そんなに時間はいらなそうね」

「だな」

雪菜さんは少し驚いたような顔で俺を見た。

「母さんって、呼んでいい?」

雪菜さんは涙を浮かべて頷いた。

「水原は?」

「父さんで、いい?」

「夏月くん……」

「お前もナツキだろ」

父さんは笑った。

父さん、か。

初めて呼ぶ。

小6になって、やっと。

「夏月も来いっ!」

「夏月っ!」

二人が呼んでる。

「っしゃ行ってやる!」

「ちょ、夏月!」

俺は父さんに後ろから飛びついた。

「じゃあ私もっ」

母さんも抱きついた。

「これが、『青山家』でいいよね」

「でも満月、何で自分が青山って分かったの?」

「あれっ?何か、なんとなく……」

「もう難しいことは考えないで?みんな仲よければ
いいよ」

「お母さん……」

俺ら青山家の家族は、しばらくそのままでいた。

青山家の、家族は。

<2016/07/23 23:02 秋の空>消しゴム
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