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「あっ!夏月!」

「えっ、何?」

「忘れてた!行くよ!」

「えっ、どこ?」

「陽斗!病院!」

「あっ!そうだ」

「友達?」

「えっ……」

いや、これくらい、ね。

「うん。そうだよ。大切な、友達」

「そう。気を付けてね」

あたしは笑顔で頷き、夏月と家を出た。










病室にはもう陽希も昴もいた。

そしてこれは……

「誰でしたっけ?」

「忘れられちゃったよ。川原 快斗だよ」

「陽斗の友達」

あぁ〜、なんかそんなような人もいたような気も……

って、ここにいるんだからいるのか。

「うーん」

「夏月くんは覚えてるっしょ?」

「もちろん。深月のお兄さん」

「そっ。さすが深月のボーイフレンド」

「まぁなぁ〜っ」

「イェーイ」

高校生同士みたい。

こういう集団いるよね。

「あっ陽斗、大丈夫?」

「もう全然っ」

かわいらしく笑って言う陽斗。

陽斗はやっぱりこの笑顔。

「まだ帰ってこれないの?」

「ここだからそろそろじゃん?」

「ここだから?」

「ここ軽いのよ。昴が帰った時も『もういいよー』
みたいな感じで。ねっ?」

「もうビックリだよな」

「そんな感じで帰れんだ。みたいな」

「あっ、昴が帰ってきた時って、陽斗が飛び降りた日
だよね?」

そして、あたしが暴れた日。

昴に、史上最高の迷惑と心配をかけた日。

「そっ。満月が荒れた日」

荒れた。

「昴、ほんっとごめん」

「気にすんな」

昴は優しく笑った。

「そういえば満月、あん時なんて言ってた?」

「え?」

「俺らが飛び降りた時」

なんて言ったっけ。


『ハルーーっ!!』

あっ。

思い出したくないこと思い出してしまった。

「ハル。ハルって言った……」

「だよね。いやぁ、満月すげぇなぁと思ってさ」

「え?」

「『希』も『斗』もとっちゃうし」

「いや、どっちがどっちか分かんなかったし……」

わけのわからない言い訳。

「あの、二人を同時に呼ぶにはそうするしかないかなぁと…」

「俺には絶対その発想はないわ」

「そう?咄嗟に思いついただけだし……」

「満月?」

昴が少し心配そうにあたしの名前を呼ぶ。

「何?」

「何かあった?てかよく今日来れたな」

あ、用事って言ったんだ。

「あ、なんか、大したことじゃなかった……ハハッ」

「そっか。とりあえず今日はゆっくりしろ」

「大丈夫だって。何もないよ?」

「なら…いいけど……」

昴……

あなたは何でそんなに鋭いの?

何でそんなにあたしの中を……

「満月、ほんとに大丈夫?」

夏月まで?

「大丈夫だって。みんなそんな気にすんなよ」

「無理、しないで?」

えっ、快斗くん……

「あ、うん……」

「今日は帰ったら?陽斗くんには俺らがいっからよっ。
なっ?陽斗」

「何か、疲れてる?なら休んだほうがいいよ?」

みんな、そんなに心配しないでよ。

陽斗なんか、まだ自分のことも……

どうしよう。

このままいてもみんなに気、使わせるだけだよね。

「じゃあ、今日はちょっと帰ろっかな」

「そうだよ。俺ももうすぐ帰るから」

「バーカ。大人しくしてなさい?」

「今にでも帰りたい」

「ハハッ。そう言ってみたら帰れるかもよ?」 

「ここならありえるな」

あ、陽希いたんだっけ。

大人しくなったね。

「じゃあ、今日はごめんね」

「満月こそ大人しくしてろよ?」

「大丈夫。昴とは違うから」

「気を付けてね」

陽斗が優しく言う。

「うん。夏月?」

「あぁ、はい」

あたしたちは病室を出た。

「満月?」

「ん?」

「珍しいじゃん。どうした?」

「何でもないよ」

「今日は帰ったら寝な?」

「夏月……」

夏月はあたしを見た。

「多分疲れたんだよ。あの二人のこと、考えて」

あの二人、か。

結局いい人なの?

ただ心配性なだけ?

「まぁもう気にすんな」

「夏月」

夏月はかわいらしく笑った。

あたしもつられて笑った。





久々に夏月といろいろ話しながら帰ってきたら
あっという間に家に着いた。

「満月、夏月」

「ただいま」

あたしたちは笑顔で言った。

本当のお母さんに言うように。

「あ、あたしたち部屋にいるから」

「分かった」

少し後ろの夏月の様子が変わった気がした。

とりあえず部屋に行こう。

あたしは階段を上った。

そして部屋に。

部屋の中は強烈な暑さだった。

まだ夏休みなんだっけ。

あたしは当たり前のようにエアコンをつけた。

「夏月?」

「あ、何?」

「どうした?」

「いや、何でも…ない……」

分かりやすい子。

「大丈夫だよ?水原さんはもう来ない」

「満月……」

あたしは夏月に笑顔を見せた。

「えっ、何で……」

「さっき、何か変わったから」

多分、あたしたちが病院にいるとき二人であんな会話を
したんだろう。

「水原さんとあんなこと話したの?」

夏月は頷いた。

「大丈夫。もうあたしはどこにも行かない」

「満月……ヤメろ…」

「いいよ」

今度は、あたしの番。

あたしが、夏月を泣かせてあげる時。

あたしはそっと夏月を抱きしめ、背中を優しく叩いた。

「満月……」

「ごめんね……一人で………」

怖かったんだね。

一人で、いろいろ。

「なつき」

「みづき……」

「いいんだよ。夏月もこうしてくれたでしょ?」

「俺は……」

「男とか女とか関係ない。男も女も泣きたい時は泣く」

「みづき、今日は、いい?」

「いつでもいいよ。明日、笑お?」

それを目標に、毎日生きてく。

明日笑えばいい。

その明日が、いつになろうと。

いつにでも、明日はある。

きっと。

「ねっ」

「みづき……」

あたしは最高に暑いこの部屋で、夏月を抱きしめた。





冷房が効いてきた頃には夏月もすっかり落ち着いていた。

今はあたしのベッドで寝てる。

泣くのって疲れるよね。

あたしたちの中に泣いた後寝る人三人いるからね。

昴は多分寝ない。

陽希は泣いてるの見たことない。

あんまり人前で泣くってこともないのかな。

まぁそれだけいろいろあったってことで。

「ねっ」

あたしは眠る夏月に話しかけた。

もちろん返事はない。

深い眠りについてしまったから。

外から元気な子供の声が聞こえる。

「いいね」

楽しいのが一番。

あたしは窓の前に立った。

けどそこから見るのは空。

明るい、真夏の空。

真っ青で雲もほどよくある。

「なぁに一人で喋ってんの」

「キャッ!?」

夏月?

起きたの?

寝言?

あんなはっきり?

あたしは少しずつ夏月に近づいた。

「起きてるし」

「おっ……おぉ」

「大丈夫?」

「大丈夫。いつから起きてたの?」

「『ねっ』って言われた時」

「そっ……か…」

恥ずかしい。

「子供は元気だねぇ」

いや、あなたも子供のはずなんだけどね。

「俺と同じくらいでしょ?とは思えないほどの騒ぎっ
ぷり」

まぁ、確かにそうなんだけど。

「子供は元気が一番じゃない?」

「ふーん」

ふーん。

夏月はベッドの上に座った。

「まだここまで連れてこれんだ」

「は?」

「俺のこと」

「まだって。これからも連れてくるし」

「なんか怖えんだよなぁ」

「んなことないわよ。しっつれいしちゃう」

夏月がドアを見つめる。

「え?」

あたしは夏月を見た。

「何かいる?」

何かって何よ。

怖いこと言いやがって。

「は?」

「水原夏樹?」

フルネーム。

「まっさかぁ」

あたしは少し怖かったけど、部屋のドアを開けてみた。

「うーっわ!いんならノックでもしなさいよ!バカ!」

「あぁ、ごめん。あの、何かいる?」

あなたがいる。

「は?」

「コンビニ、行くけど」

そのためにここまで?

ノックもしないで。

やっぱ怖いし。

「あ、夏月何かいる?」

絶対あいつって思ってる。

「お茶買ってきて」

お茶。

「満月は?」

「あたしは何もないかな」

「分かった」

そう言ってお父さん、は階段の方へ。

「あのっ」

それを呼び止めるように言った。

それに優しく笑って振り返るお父さん。

「あの……気を付けてね」

お父さんは頷き、家を出た。

あたしも部屋に戻った。

「自然じゃん」

「うん……」

「どした?」

「いや……何でもないっ」

あたしは無駄に明るく答えた。

「風邪でも引いた?」

「そうかな?」

「何かだるそうだけど。いいから寝な?」

そう言ってベッドから降りる優しい弟。

こうされたら寝るしかないよね。

あたしはベッドの上へ。

「あれっ?」

「ん?」

「あたしのお母さんってもういないんでしょ?」

「って言ってたな」

「何であたし知らないんだろ」

「え?」

「だって。夏月がいる時点でもうあたしはもう6歳とかになるわけでしょ?」

「そんな離れてんだ」

いや、これくらいはいくらでもいると思うんだけど。

「で、6歳なら分かるよね」

「あぁ、ちょっとバカだったんじゃね?」

「はぁ?……あっ」

もう考えたくないんだ。

「ごめん」

「何が?」

「ううん」

あたしはベッドの上で天井を見つめた。

あの人たちは本当に誰?

本当にお母さんの友達なの?

なら何であたしはあの人たちのこともお母さんたちのことも知らないの?

じゃあ夏月?

嘘、嫌だ。

夏月は本当の弟であってほしい。

6歳。

6歳ってどんなもん?

『スバにぃ!』

楓ちゃんくらいか。

楓ちゃん5歳って言ってたもんね。

5歳

ずいぶん大人しい5歳。

幼稚園でしょ?

もうちょっとキャッキャしてないのかな。

まぁスバにぃといるからかな。

スバにぃとか。

かわいすぎでしょ。

あの小さい子の声で元気に言えばね。

あたしたちが言ったらぶっとばされる。

許されない。

違う。

楓ちゃんも昴も関係ない。

「来た」

「え?」

「水原夏樹」

常にフルネーム。

「あぁ、いいよ」

あたしは夏月を座らせドアの前へ。

「いた」

「だろ?」

笑ってるよ。

笑顔が怖い。

「茶」

茶。

『お』付けても付けなくても笑いそうになる。

多分あたしだけだろう。

「あのさ」

「ん?」

『ん?』って。

普通なこと言うんだ。

ダメだ。

この人を完全に人間として見てない。

昴を男として見てないより大変なことかも。

「ここ来たらノックしてくれる?」

「はい」

はい。

言動のひとつひとつが怖い。

「あっ、もしかして」

「もしかして?」

夏月。

確かに基本バカにしてるかも。

「水原さん、緊張してんでしょ」

「は?」

怖っ。

「これさ、落ち着かせてる間に出てくんの嫌じゃない?」

「別にビビってねぇし」

言葉は若いんだ。

ビビってるとは言ってないけどね。

えっ、この人いくつ?

『もう歳なのに』

結構いってんの?

素早く動くのが辛くなってくる歳。

40代、後半?

ダメだ。

今度全部言わせてやる。

こんだこっちの番だ。

全っ部聞いてやる。

「何でもないわ。じゃ、またアトで」

あたしはドアを閉めた。

「ふふふっ」

「えっ、何?満月?満月?」

「ハハハッ。こんだこっちがたっぷり探ったる」

「え、たるってどこだっけ」

言われると気になるかも。

けど今はそれどころじゃない。

「ハッハッハッ。超楽しみなんだけど〜っ」

「満月?落ち着いて?おーい?満月?」

「どっちがよっ。あたしは十分落ち着いてるわ」

楽しくてしょうがない。

特にあの人が本当に緊張してノックできなかったら。

「満月、怖い。夏月のお塩事件、かな」

「あらやだ。あたしゃ取り憑かれてなんかないわよ」

「何か言葉もいつもと違うし……うぅ」

「ふふふっ。何でもないわよ〜っ!あぁ〜っ!」

あたしはベッドに飛び込んだ。

「何聞こっかなぁ。あの人、案外弱いかもよ?」

あんなにビクビクしてたのが、バカらしくなるくらい。

いざこっちが強気で言ったら何も逆らわなそう。

「ハハッ。青山コンビの復讐ね」

「復讐………怖いよ……」

「夏月もビビってたじゃん。それを体験させてあげる
だけっ。ゆっきぃにはやったからもういいか」

「ゆっきぃ」

「かわいいでしょ?」

「うーん……」





まずはお名前から聞こうかな。

恋愛要素、どこ行っちゃったんでしょう。

もう家族の問題。

本当、すみません。
<2016/07/24 09:13 秋の空>消しゴム
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