あたしはかなり明るい気分で部屋を出ようとした。
それを呼び止めるように携帯が鳴る。
「誰さ」
「さ」
『昴』
「すばるんか」
「すばるん。聞いたことない」
初めて言った。
「どーした?」
『いや……今、大丈夫?』
昴?
「大丈夫、だよ?」
『今から、うちに来てほしい』
「昴?どうしたの?」
『ごめん……』
いや、謝らなくていいんだけど……
「分かった。昴ん家行けばいいんでしょ?」
『うん……ごめん』
「気にすんなって。今行くからね」
あたしは電話を切り、携帯とお財布だけバッグに入れた。
「どっか行くの?」
「うん……昴。何かいつもと違ったから」
「そっか。じゃあ早く行ってあげて?」
あたしは頷き、家を飛び出した。
昴……どうしたの?
何があってあんな悲しそうな声……
『ごめん……』
何で謝るの?
昴は何もしてないじゃない。
そして昴ん家ってこんなに遠かったっけ?
「あっ、着いた」
「満月……」
「昴っ」
外で待ってるとか。
どうしたの?
普段は絶対 中で待ってるのに。
「満月……」
昴はあたしに抱きついた。
「すばる、大丈夫だよ」
「みづき、ごめん」
「大丈夫。何かあったの?」
「ううん。なんか、みづきに会いたくなった」
「そっか。いいよ?あたしはいつまでもこうしてるよ」
これが、ほんの少しでも昴のためになるなら。
これが、昴が望んでることなら。
『みづきに会いたくなった』
そんなふうに思ってもらえるなんて幸せだね。
学校の王子様に。
「昴、ごめんね」
「満月?」
「一人にして」
「ハハッ、満月にも塩やんねぇとダメかもな」
夏月にも言われた。
「取り憑かれてねぇし」
夏月にも言った。
「満月は、俺と陽斗、どっちがいい?」
どっちがいい。
「昴?どうしたの?」
昴がこんなこと訊くなんて。
「俺、分かった。満月がいないとダメらしい」
「あたしもだよ」
「だから、そばにいてほしい」
「あたし、変だよ?」
「知ってる。俺はそんな満月が好きなんだ」
うわうわ。
王子様の反則技。
「陽斗も、それくらい満月を必要としてる」
何でこの二人なの?
もっと決めやすい人にしてよ。
「昴も、あたしを必要としてるの?」
昴は頷いた。
あたしは昴も、陽斗も陽希も、夏月もいないとダメ。
それでやっとあたしが完成する。
誰か一人でも欠けたら、そこからあたしじゃない。
いけないあたしがそこから溢れだす。
「昴?」
「ん?」
「あたしには、みんなが必要なの」
昴は何も言わなかった。
「あたしには、昴と陽斗はもちろん、陽希も夏月もいないとダメなの」
「誰にも恋愛感情は……」
こう言われたらなんて言うのが正解なのさ。
あるって言ったら
誰?ってくるし
ないって言ったら
落ち込んじゃうし。
あたしなんかのために落ち込む必要なんてないの。
あっ、これ最強かも。
「分からない。あたしには、みんながいるのが当たり前になってきてる……感謝、しなきゃいけないのにね」
「満月……」
「もう、周りにはみんながいるのが当たり前って思ってる自分がいる」
「満月……」
「だから、誰を好きとか、分かんない……ごめん………」
「満月」
「昴?」
「もし、この辺を出るときは教えてね」
教えてね。
ね。
よじゃないの?
陽斗みたいなこと言いやがって。
「ないと思うよ?みんなと、離れることになるから」
「分かんないじゃん。どんな仕事に就くかも分かんないし」
「けどあたしはみんなをおいてこの辺から旅立つなんて
しない。ってかできねぇよ」
「みづき……」
「昴〜、どうした〜?」
「ごめん。しばらくこのままでもいいかな」
昴のこんな声、聞いたことない。
こんな、弱々しいっていうか。
何があったの?
けど、今はそんなこと話せないよね。
「すばる。あたしはずっとここにいる」
「みづき……」
「大丈夫。あたしには、ここしかないから」
ここが、唯一あるあたしの居場所。
あたしが自分でいられるところ。
「俺、満月がいないと生きてけない」
本気だ。
昴、本気。
「昴?」
「満月がいないと、俺じゃない」
昴、本当に何があったの?
もう言っていいかな。
気になってしょうがない。
「昴」
「ん?」
「何があったの?」
「フッ、んもねぇよ」
「嘘つき」
「ただ茜が……」
茜さん。
茜、さんが何かあった?
「は?茜さんがどうしたの?」
「茜に、あかね……」
「ごめんね。もういいよ」
「茜に病気が見つかった」
病気……
「あんな元気なのにな」
元気、なんだ……
あたしに、茜さんの……
できないよ。
「やっと言えた」
やっと。
「やっと!?」
「ごめん……満月には、なかなか言えなかった……」
「そっか。ごめんね」
「こっちこそ」
茜さん、どうして……
本当、あんなに元気だったのに。
けど、茜さんならまた……
そう、だよね。
そうですよね。
茜さん……
「あ、バカなお前が誤解しないために言っておく」
バカなお前。
「バカなって!そこま……」
「俺が満月を好きなのは本気だ」
「昴……」
「満月はどんな時もそばにいてくれた……だから今の俺が
いる」
そういえば、あたしにもずっと昴はいてくれた。
昴は本当にずっといてくれた。
あたしなんかの、そばに。
そう、あの日だって。
『満月が本気でそう思ってくれたら、いいよ。
でも満月には昴じゃない?』
『俺は満月が誰と付き合ってもいいよ。
将来その人と、結婚しても』
陽斗……
あたしはずっと、陽斗のそばにいるよ。
「昴、あたしのそばにいてくれる?」
「満月?」
「分かんねぇか。あたし、昴の彼女になってあげるっ」
「いいの?俺で?」
「誰がから言い出したんだよ」
「そうだけど……本当に?」
「疑い深い男だな」
「イェーーイッ!」
「おめでとーーっ!」
陽斗、陽希、快斗くんまで。
夏月もいる。
「は?みんな?陽斗、帰ってこれたの?」
「そりゃ見れば分かんだろ〜っ!」
陽希がそう言ってホースで水を撒く。
「うわっ、冷たっ!」
「水かかったからな」
ムカつく言い方。
そしてそこには、あたしの知らない女の子もいた。
「満月ちゃん、かわいいね」
誰この子。
「叶。今の俺を作った人」
作った。
「何でも分かってくれるでしょ?あたしのおかげ」
「恩着せがましい女」
「あら、昴くんほどじゃないよ?ねぇ?」
あたしは最高の笑顔で頷いた。
「満月?」
「あっ……ごめんなさい」
「ハハハッ!やっぱりこの二人だよな!」
「最高のコンビ」
「陽斗くんはフラれちゃったな」
「別にいいんだよ。それで、満月が幸せになるなら」
陽斗の優しい言葉に泣きそうになる。
「もっと笑えよ〜っ!最高に心綺麗な男の子フッといて」
「フッたんじゃないわよ!」
「涙こらえてる時ってそんなにかわいくねぇんだな」
昴がちょっと楽しそうに言う。
「何よ」
「だから泣け。かわいくなるために。俺に似合う女になるために」
「はぁ〜?信じらんない!この男」
「泣け!濡らしてやっから」
「井戸水で?」
「いいから泣きてぇときゃ泣け!」
あたしたちは全身ずぶ濡れになった。
真夏には最適な遊び。
もうどれが涙かわからない。
笑いながら泣いて、さらに騒いで。
もう分けわかんない。
けどそれが最高に楽しい。
「昴〜っ!満月ちゃーんっ!」
この声……
あたしはその声がした方へ振り向いた。
「茜……さん………」
夏月もここまでは知らなかったらしい。
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ?は?昴、テメェなんて言った」
「病気が見つかったって聞いたんですけど……」
「あんたどーゆーつもり?んであたしが
病気んなってんの?」
あたしの言葉を聞いて茜さんは昴の前へ。
「えっ、あ、いや、ハハハッ」
「笑ってんじゃねぇよ」
「えっ、本当は何があったんですか?」
「ちょっとわちゃって病院連れてかれて、検査入院」
わちゃってね。
「何ともなかったんですか?」
「えぇ。けどこのアホ昴が?バッカみてぇに話盛りまくって?」
「昴のお話盛り盛り事件」
また新たな事件が。
そして昴が起こす事件は絶対解決しない。
茜さんが、茜さんでいる限り。
それを呼び止めるように携帯が鳴る。
「誰さ」
「さ」
『昴』
「すばるんか」
「すばるん。聞いたことない」
初めて言った。
「どーした?」
『いや……今、大丈夫?』
昴?
「大丈夫、だよ?」
『今から、うちに来てほしい』
「昴?どうしたの?」
『ごめん……』
いや、謝らなくていいんだけど……
「分かった。昴ん家行けばいいんでしょ?」
『うん……ごめん』
「気にすんなって。今行くからね」
あたしは電話を切り、携帯とお財布だけバッグに入れた。
「どっか行くの?」
「うん……昴。何かいつもと違ったから」
「そっか。じゃあ早く行ってあげて?」
あたしは頷き、家を飛び出した。
昴……どうしたの?
何があってあんな悲しそうな声……
『ごめん……』
何で謝るの?
昴は何もしてないじゃない。
そして昴ん家ってこんなに遠かったっけ?
「あっ、着いた」
「満月……」
「昴っ」
外で待ってるとか。
どうしたの?
普段は絶対 中で待ってるのに。
「満月……」
昴はあたしに抱きついた。
「すばる、大丈夫だよ」
「みづき、ごめん」
「大丈夫。何かあったの?」
「ううん。なんか、みづきに会いたくなった」
「そっか。いいよ?あたしはいつまでもこうしてるよ」
これが、ほんの少しでも昴のためになるなら。
これが、昴が望んでることなら。
『みづきに会いたくなった』
そんなふうに思ってもらえるなんて幸せだね。
学校の王子様に。
「昴、ごめんね」
「満月?」
「一人にして」
「ハハッ、満月にも塩やんねぇとダメかもな」
夏月にも言われた。
「取り憑かれてねぇし」
夏月にも言った。
「満月は、俺と陽斗、どっちがいい?」
どっちがいい。
「昴?どうしたの?」
昴がこんなこと訊くなんて。
「俺、分かった。満月がいないとダメらしい」
「あたしもだよ」
「だから、そばにいてほしい」
「あたし、変だよ?」
「知ってる。俺はそんな満月が好きなんだ」
うわうわ。
王子様の反則技。
「陽斗も、それくらい満月を必要としてる」
何でこの二人なの?
もっと決めやすい人にしてよ。
「昴も、あたしを必要としてるの?」
昴は頷いた。
あたしは昴も、陽斗も陽希も、夏月もいないとダメ。
それでやっとあたしが完成する。
誰か一人でも欠けたら、そこからあたしじゃない。
いけないあたしがそこから溢れだす。
「昴?」
「ん?」
「あたしには、みんなが必要なの」
昴は何も言わなかった。
「あたしには、昴と陽斗はもちろん、陽希も夏月もいないとダメなの」
「誰にも恋愛感情は……」
こう言われたらなんて言うのが正解なのさ。
あるって言ったら
誰?ってくるし
ないって言ったら
落ち込んじゃうし。
あたしなんかのために落ち込む必要なんてないの。
あっ、これ最強かも。
「分からない。あたしには、みんながいるのが当たり前になってきてる……感謝、しなきゃいけないのにね」
「満月……」
「もう、周りにはみんながいるのが当たり前って思ってる自分がいる」
「満月……」
「だから、誰を好きとか、分かんない……ごめん………」
「満月」
「昴?」
「もし、この辺を出るときは教えてね」
教えてね。
ね。
よじゃないの?
陽斗みたいなこと言いやがって。
「ないと思うよ?みんなと、離れることになるから」
「分かんないじゃん。どんな仕事に就くかも分かんないし」
「けどあたしはみんなをおいてこの辺から旅立つなんて
しない。ってかできねぇよ」
「みづき……」
「昴〜、どうした〜?」
「ごめん。しばらくこのままでもいいかな」
昴のこんな声、聞いたことない。
こんな、弱々しいっていうか。
何があったの?
けど、今はそんなこと話せないよね。
「すばる。あたしはずっとここにいる」
「みづき……」
「大丈夫。あたしには、ここしかないから」
ここが、唯一あるあたしの居場所。
あたしが自分でいられるところ。
「俺、満月がいないと生きてけない」
本気だ。
昴、本気。
「昴?」
「満月がいないと、俺じゃない」
昴、本当に何があったの?
もう言っていいかな。
気になってしょうがない。
「昴」
「ん?」
「何があったの?」
「フッ、んもねぇよ」
「嘘つき」
「ただ茜が……」
茜さん。
茜、さんが何かあった?
「は?茜さんがどうしたの?」
「茜に、あかね……」
「ごめんね。もういいよ」
「茜に病気が見つかった」
病気……
「あんな元気なのにな」
元気、なんだ……
あたしに、茜さんの……
できないよ。
「やっと言えた」
やっと。
「やっと!?」
「ごめん……満月には、なかなか言えなかった……」
「そっか。ごめんね」
「こっちこそ」
茜さん、どうして……
本当、あんなに元気だったのに。
けど、茜さんならまた……
そう、だよね。
そうですよね。
茜さん……
「あ、バカなお前が誤解しないために言っておく」
バカなお前。
「バカなって!そこま……」
「俺が満月を好きなのは本気だ」
「昴……」
「満月はどんな時もそばにいてくれた……だから今の俺が
いる」
そういえば、あたしにもずっと昴はいてくれた。
昴は本当にずっといてくれた。
あたしなんかの、そばに。
そう、あの日だって。
『満月が本気でそう思ってくれたら、いいよ。
でも満月には昴じゃない?』
『俺は満月が誰と付き合ってもいいよ。
将来その人と、結婚しても』
陽斗……
あたしはずっと、陽斗のそばにいるよ。
「昴、あたしのそばにいてくれる?」
「満月?」
「分かんねぇか。あたし、昴の彼女になってあげるっ」
「いいの?俺で?」
「誰がから言い出したんだよ」
「そうだけど……本当に?」
「疑い深い男だな」
「イェーーイッ!」
「おめでとーーっ!」
陽斗、陽希、快斗くんまで。
夏月もいる。
「は?みんな?陽斗、帰ってこれたの?」
「そりゃ見れば分かんだろ〜っ!」
陽希がそう言ってホースで水を撒く。
「うわっ、冷たっ!」
「水かかったからな」
ムカつく言い方。
そしてそこには、あたしの知らない女の子もいた。
「満月ちゃん、かわいいね」
誰この子。
「叶。今の俺を作った人」
作った。
「何でも分かってくれるでしょ?あたしのおかげ」
「恩着せがましい女」
「あら、昴くんほどじゃないよ?ねぇ?」
あたしは最高の笑顔で頷いた。
「満月?」
「あっ……ごめんなさい」
「ハハハッ!やっぱりこの二人だよな!」
「最高のコンビ」
「陽斗くんはフラれちゃったな」
「別にいいんだよ。それで、満月が幸せになるなら」
陽斗の優しい言葉に泣きそうになる。
「もっと笑えよ〜っ!最高に心綺麗な男の子フッといて」
「フッたんじゃないわよ!」
「涙こらえてる時ってそんなにかわいくねぇんだな」
昴がちょっと楽しそうに言う。
「何よ」
「だから泣け。かわいくなるために。俺に似合う女になるために」
「はぁ〜?信じらんない!この男」
「泣け!濡らしてやっから」
「井戸水で?」
「いいから泣きてぇときゃ泣け!」
あたしたちは全身ずぶ濡れになった。
真夏には最適な遊び。
もうどれが涙かわからない。
笑いながら泣いて、さらに騒いで。
もう分けわかんない。
けどそれが最高に楽しい。
「昴〜っ!満月ちゃーんっ!」
この声……
あたしはその声がした方へ振り向いた。
「茜……さん………」
夏月もここまでは知らなかったらしい。
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ?は?昴、テメェなんて言った」
「病気が見つかったって聞いたんですけど……」
「あんたどーゆーつもり?んであたしが
病気んなってんの?」
あたしの言葉を聞いて茜さんは昴の前へ。
「えっ、あ、いや、ハハハッ」
「笑ってんじゃねぇよ」
「えっ、本当は何があったんですか?」
「ちょっとわちゃって病院連れてかれて、検査入院」
わちゃってね。
「何ともなかったんですか?」
「えぇ。けどこのアホ昴が?バッカみてぇに話盛りまくって?」
「昴のお話盛り盛り事件」
また新たな事件が。
そして昴が起こす事件は絶対解決しない。
茜さんが、茜さんでいる限り。
