あたしたちはずっと陽斗を見ていた。
「あのさ」
その時、昴が真面目な声で言う。
「昴?」
「俺、しばらく……」
「どっか行くの?」
あたしが昴を見て言うと昴は少し驚いた顔であたしを
見た。
「ふふっ、昴をどれだけの間見てきたと思ってんのよ」
昴は少し笑った。
「何があってどこに行くかは知らないし訊かないけど、
気を付けなさいよ?こんなにかわいい彼女がいるんだから」
「満月……」
あたしは昴に笑顔を見せて陽斗に視線を戻した。
「あたしは大丈夫だよ?昴なんかいなくても」
「なんか……」
「よかった」
「えっ?」
あたしはもう一度昴を見た。
「何て言うか迷ってたんだ」
「昴……」
何であたしのことそんなに気にしてくれるの?
「満月」
昴は優しく笑った。
驚いたり笑ったり忙しい人。
「大丈夫。あたしはいつまでも待ってるから。
絶対帰って来てよ?」
「そんなバカ女放って行けねぇだろ」
でも今回行くじゃん。
「バカ女?」
けど昴にとって放っておけない存在でよかった。
最近、あたしにも女の子の気持ちがほんの少し分かった
気がする。
「ハハッ。ちょっとしばらく、都内に行ってくる」
「都内」
「ちょいといろいろあってな」
ちょいとね。
「気を付けてね。あたしはずっと、いつまででも待っててあげるから」
「はいはい」
「じゃあ陽希、昴がいなくなったらよろしくね?」
あたしは陽希に抱きついた。
「えっ?」
あたしが、あたしでいられるように。
「あたしには、みんながいないといけないからさっ」
「満月、ごめん」
「あ、ごめん。そういう意味じゃないの」
あたしはなんとなく陽希から離れた。
「知ってる。お前がそんなに賢くないことくらい」
「なんっかムカつく」
「仕方ないだろ。俺はこういう人間なのだから」
変に丁寧。
「大丈夫だよね。昴が、いなくなっても」
「俺、帰ってくるんだわ」
「そうだよねっ」
あたしは昴も巻き込んだ。
「昴、いつ行くの?」
「20日」
「いつ帰ってくるの?」
「それは分からない。って、訊かねぇんじゃねぇのかよ」
「ごめん。でも気になって……好きだから」
「満月……大丈夫。俺は絶対帰って来る」
「しぶといもんね」
「は?」
「いや」
強いもんね。
昴は。
心も、体も。
体は強そうには見えないけど。
「ゲホッゲホ……」
あたしたちは陽斗を見た。
「陽斗、大丈夫?」
「風邪だね」
「薬、あるかな……」
あたしは部屋を出た。
「ちょっ、満月っ……」
何となく陽斗が止める声が聞こえたけど、
あたしはそのまま一階へ降りた。
「満月」
「雪菜さんっ薬、ある?」
「ちょっと待ってね。どんなの?」
どんなの。
あっ、なるほど。
「風邪」
「じゃあ、これ」
「ありがと。……お母さん」
「呼びやすい呼び方でいいわよ」
あたしは頷き、階段を駆け上がった。
「よかったのに……」
「気にすんなって」
あっ。
あたしは今来たところを戻った。
「今度はどうした?」
「ハハッ、水を忘れる事件」
「事件。あ、はい」
「あ、どうも」
あたしはもう一度階段を駆け上がった。
「ふぅ〜っ。あ、もしよかったら飲んで」
「なんかごめんね?」
「病人が気ぃ使うな」
陽斗は笑った。
相変わらず、かわいく。
「今日はゆっくりして?」
明日から学校なんだから。
陽斗のいない学校なんて。
絶対嫌だ。
「熱はない?」
「大丈夫だから。気にすんなって」
それができたらそうしてる。
「寒くない?」
「今 陽斗がお前にしてほしいことは黙ることだろ」
「はぁ?」
「はぁい。静かにしましょうねぇ〜っ」
「ムッカつくわぁ〜っ」
「ハハハハッ」
「笑われちゃったよ」
あたしたちもつられて笑った。
陽斗につられて笑ったことは、何回あるだろう。
「あ、陽斗」
「ん?」
「昴ね……」
あたしが言おうとすると咳払いをして止めた。
「昴、どうしたの?」
「俺、しばらく、ちょっと……」
「どこか行くの?」
昴は初めて伝えるように、真面目な顔で頷いた。
「どこ行くの?」
「ちょっと、都内にな」
「都内に?」
「いろいろあってな」
「そっか」
陽斗は優しく笑って、少し鼻にかかった声で言った。
「このバカ女をよろしくなっ」
「うん。えっ、いつ行くの?」
「あぁ、20日に」
「そっか。気を付けてね」
陽斗のこの笑顔。
こんなの見たらあたしには行けない。
「う〜ん。昴、いなくなっちゃうんだ……」
「いやいや、嫌でも帰ってくっから」
「ハハハッ、そうだよね。いつ帰ってくるの?」
「それは、まだ分かんない」
「そっか」
昴、何があったんだろう。
何で行くかを教えてくれないってことは、良くないこと
だろうね。
大丈夫だよね。
昴、いなくても。
あたしには、陽希、陽斗、夏月。
この三人がいる。
「ゲホッゲホ……」
「陽斗さん」
「大丈夫?」
陽斗は少し辛そうに頷いた。
「咳って嫌だよね」
「一回止まんなくなると息できない」
あたしは昴の人間らしいところに笑ってしまった。
「何」
「いや、昴も人間らしいとこあんだなぁって」
「何考えてんだオメ」
「はい。すいません」
「もう昴さんのことどう思ってんの?」
「今まではただの幼馴染だった」
「今までは?だった?」
陽希が食いつく。
あたしはそれに頷いた。
「だけど、今は……」
「今は?」
「いなきゃダメ。いて当たり前、みたいな」
「いて当たり前、か。なんか分かる」
陽斗……
「陽斗にとってそんな人は誰なの?」
「満月」
陽斗が笑って言う。
「あたし?」
「そう。誰より笑っててほしくて、大切で。近くで
笑ってるのが当たり前って感じ」
「陽斗……」
「だから昴、絶対帰ってきてよ?」
「あぁ。満月のためにも、陽斗のためにも」
昴は笑って言った。
「みんなくっつこ?」
「は?」
昴と夏月が言う。
「よくね?たまには」
「陽希、珍しいじゃん」
「んなこたねぇよ」
「じゃっ」
あたしは陽斗の隣に座った。
「お隣失礼?」
陽希も来た。
「昴と夏月だけよ?」
「ったく」
「しゃぁねぇな」
二人も来た。
「みんなぁっ!だーいすき」
「満月が初めて」
「女の子に見える」
「初めて?」
「あ、いや……」
あたしはこんな四人と過ごす時間が大好き。
こんな時間が、もっとずっと続けばいいな。
「また、あるよね」
「ん?」
「こんな時間、また来るよね。昴が帰ってきて、また」
「もちろんだ」
やっぱりこの四人にはどれだけ言っても足りない。
けど、言わせて。
「ありがとう。大好きっ」
「知ってる」
みんなが揃って言う。
陽斗がこんなこと言ったの、初めて。
もっと、仲よくなれるかな。
仲よく、なれるよね。
今より、もっと。
「あのさ」
その時、昴が真面目な声で言う。
「昴?」
「俺、しばらく……」
「どっか行くの?」
あたしが昴を見て言うと昴は少し驚いた顔であたしを
見た。
「ふふっ、昴をどれだけの間見てきたと思ってんのよ」
昴は少し笑った。
「何があってどこに行くかは知らないし訊かないけど、
気を付けなさいよ?こんなにかわいい彼女がいるんだから」
「満月……」
あたしは昴に笑顔を見せて陽斗に視線を戻した。
「あたしは大丈夫だよ?昴なんかいなくても」
「なんか……」
「よかった」
「えっ?」
あたしはもう一度昴を見た。
「何て言うか迷ってたんだ」
「昴……」
何であたしのことそんなに気にしてくれるの?
「満月」
昴は優しく笑った。
驚いたり笑ったり忙しい人。
「大丈夫。あたしはいつまでも待ってるから。
絶対帰って来てよ?」
「そんなバカ女放って行けねぇだろ」
でも今回行くじゃん。
「バカ女?」
けど昴にとって放っておけない存在でよかった。
最近、あたしにも女の子の気持ちがほんの少し分かった
気がする。
「ハハッ。ちょっとしばらく、都内に行ってくる」
「都内」
「ちょいといろいろあってな」
ちょいとね。
「気を付けてね。あたしはずっと、いつまででも待っててあげるから」
「はいはい」
「じゃあ陽希、昴がいなくなったらよろしくね?」
あたしは陽希に抱きついた。
「えっ?」
あたしが、あたしでいられるように。
「あたしには、みんながいないといけないからさっ」
「満月、ごめん」
「あ、ごめん。そういう意味じゃないの」
あたしはなんとなく陽希から離れた。
「知ってる。お前がそんなに賢くないことくらい」
「なんっかムカつく」
「仕方ないだろ。俺はこういう人間なのだから」
変に丁寧。
「大丈夫だよね。昴が、いなくなっても」
「俺、帰ってくるんだわ」
「そうだよねっ」
あたしは昴も巻き込んだ。
「昴、いつ行くの?」
「20日」
「いつ帰ってくるの?」
「それは分からない。って、訊かねぇんじゃねぇのかよ」
「ごめん。でも気になって……好きだから」
「満月……大丈夫。俺は絶対帰って来る」
「しぶといもんね」
「は?」
「いや」
強いもんね。
昴は。
心も、体も。
体は強そうには見えないけど。
「ゲホッゲホ……」
あたしたちは陽斗を見た。
「陽斗、大丈夫?」
「風邪だね」
「薬、あるかな……」
あたしは部屋を出た。
「ちょっ、満月っ……」
何となく陽斗が止める声が聞こえたけど、
あたしはそのまま一階へ降りた。
「満月」
「雪菜さんっ薬、ある?」
「ちょっと待ってね。どんなの?」
どんなの。
あっ、なるほど。
「風邪」
「じゃあ、これ」
「ありがと。……お母さん」
「呼びやすい呼び方でいいわよ」
あたしは頷き、階段を駆け上がった。
「よかったのに……」
「気にすんなって」
あっ。
あたしは今来たところを戻った。
「今度はどうした?」
「ハハッ、水を忘れる事件」
「事件。あ、はい」
「あ、どうも」
あたしはもう一度階段を駆け上がった。
「ふぅ〜っ。あ、もしよかったら飲んで」
「なんかごめんね?」
「病人が気ぃ使うな」
陽斗は笑った。
相変わらず、かわいく。
「今日はゆっくりして?」
明日から学校なんだから。
陽斗のいない学校なんて。
絶対嫌だ。
「熱はない?」
「大丈夫だから。気にすんなって」
それができたらそうしてる。
「寒くない?」
「今 陽斗がお前にしてほしいことは黙ることだろ」
「はぁ?」
「はぁい。静かにしましょうねぇ〜っ」
「ムッカつくわぁ〜っ」
「ハハハハッ」
「笑われちゃったよ」
あたしたちもつられて笑った。
陽斗につられて笑ったことは、何回あるだろう。
「あ、陽斗」
「ん?」
「昴ね……」
あたしが言おうとすると咳払いをして止めた。
「昴、どうしたの?」
「俺、しばらく、ちょっと……」
「どこか行くの?」
昴は初めて伝えるように、真面目な顔で頷いた。
「どこ行くの?」
「ちょっと、都内にな」
「都内に?」
「いろいろあってな」
「そっか」
陽斗は優しく笑って、少し鼻にかかった声で言った。
「このバカ女をよろしくなっ」
「うん。えっ、いつ行くの?」
「あぁ、20日に」
「そっか。気を付けてね」
陽斗のこの笑顔。
こんなの見たらあたしには行けない。
「う〜ん。昴、いなくなっちゃうんだ……」
「いやいや、嫌でも帰ってくっから」
「ハハハッ、そうだよね。いつ帰ってくるの?」
「それは、まだ分かんない」
「そっか」
昴、何があったんだろう。
何で行くかを教えてくれないってことは、良くないこと
だろうね。
大丈夫だよね。
昴、いなくても。
あたしには、陽希、陽斗、夏月。
この三人がいる。
「ゲホッゲホ……」
「陽斗さん」
「大丈夫?」
陽斗は少し辛そうに頷いた。
「咳って嫌だよね」
「一回止まんなくなると息できない」
あたしは昴の人間らしいところに笑ってしまった。
「何」
「いや、昴も人間らしいとこあんだなぁって」
「何考えてんだオメ」
「はい。すいません」
「もう昴さんのことどう思ってんの?」
「今まではただの幼馴染だった」
「今までは?だった?」
陽希が食いつく。
あたしはそれに頷いた。
「だけど、今は……」
「今は?」
「いなきゃダメ。いて当たり前、みたいな」
「いて当たり前、か。なんか分かる」
陽斗……
「陽斗にとってそんな人は誰なの?」
「満月」
陽斗が笑って言う。
「あたし?」
「そう。誰より笑っててほしくて、大切で。近くで
笑ってるのが当たり前って感じ」
「陽斗……」
「だから昴、絶対帰ってきてよ?」
「あぁ。満月のためにも、陽斗のためにも」
昴は笑って言った。
「みんなくっつこ?」
「は?」
昴と夏月が言う。
「よくね?たまには」
「陽希、珍しいじゃん」
「んなこたねぇよ」
「じゃっ」
あたしは陽斗の隣に座った。
「お隣失礼?」
陽希も来た。
「昴と夏月だけよ?」
「ったく」
「しゃぁねぇな」
二人も来た。
「みんなぁっ!だーいすき」
「満月が初めて」
「女の子に見える」
「初めて?」
「あ、いや……」
あたしはこんな四人と過ごす時間が大好き。
こんな時間が、もっとずっと続けばいいな。
「また、あるよね」
「ん?」
「こんな時間、また来るよね。昴が帰ってきて、また」
「もちろんだ」
やっぱりこの四人にはどれだけ言っても足りない。
けど、言わせて。
「ありがとう。大好きっ」
「知ってる」
みんなが揃って言う。
陽斗がこんなこと言ったの、初めて。
もっと、仲よくなれるかな。
仲よく、なれるよね。
今より、もっと。
