「はぁ」
「そんなにため息吐かないで?」
別に吐きたくて吐いてるわけじゃない。
「きっと、結構すぐに帰ってくることになるわ……」
「俺も、そう思う」
きっと、あの人は……
「もっと早く行ってあげたほうがよかったのかもね」
あの人のためには、な。
「茜はできても……」
「そうだよね。家族だけじゃないんだもんね」
満月がどうか辛い思いをせずに過ごせることを願って
いる。
だから夏月、満月を、満月の涙を受け入れてやってくれ。
「お母さんには、笑って会おうね」
「あぁ」
もちろんそうするつもりだ。
上手くできるかは、分からないけど。
もう、どれくらい変わってしまっているか……
「はぁ」
茜ももう何も言わなくなった。
俺がどれだけため息を吐こうと、どんな顔でいようと。
「あぁ〜っ!都内だねぇ」
こんなにすぐ着くもんなんだな。
あいつのことを考えてると。
「あぁ、今度遊びに来たいねっ。昴と、できれば、
お母さんと……」
「あぁ」
あれっ。
「ちょっと前に来たんじゃねぇの?」
「でもやっぱりさぁ、ねっ?いくらでも来たくなるのよ」
へぇ~。
俺をおいてまでね。
「いいから行こうぜ」
「うん」
俺は茜と歩き出した。
母さんのいる、病院に向かって。
「ねぇ、あたしたちこうやって歩いてるとカップルに
見えるのかな?」
さっきからこればっかり。
「見える人には見えんじゃねぇの?つかそんなに他人の
ことなんか見てねぇから」
「んっとに冷たい男よね」
何回言われたか分からない言葉。
俺らは病室の前へ。
「ここ、か」
「みてぇだな」
俺らはほぼ同時に深めの呼吸をし、病室に入った。
「あらっ」
「あらっ」
そこにいた母さんは少し痩せてたけど、そんなには
変わっていなかった。
「ふふっ、ありがとね」
この、笑顔も。
「大丈夫?」
「まだ話せてるからねっ」
けど、結構進行しているだろう。
「昴、元気?」
「えっ、あぁ。かなり」
俺は笑って答えた。
残りの時間を、どうかこれ以上何もなく過ごしたい。
「大人しくしてなね?」
「あらやだ。子供じゃないんだから」
「子供に戻ってきてるでしょうよ」
「失礼しちゃうわね」
「ハハハッ」
二人のそんな姿を見ていると、自然と笑顔になった。
誰かが笑ってるところを見て自然と笑顔になる。
こんなことが俺には何度あっただろう。
「えっ、二人とも家は?」
「あたし友達が一人暮らししててね」
「そこに居候」
「居候」
「ふふふっ」
笑ってるのを見ると安心する。
これは初めてだった。
陽斗の時に、何度か思ったけど。
そんなにはなかった。
俺らはその茜の友達の家に。
「あら、茜っ。うわぁ、昴くん」
俺は軽く頭を下げた。
「かっこいいんだけど〜っ!」
「よーく言われるんだけどわーからないのね」
「嘘ーっ!いやーっ、えっ、入ってぇっ!いやぁ、
ほほほっ」
ほほほっ。
「うん。しばらくすれば落ち着くから」
「あ、あぁ」
そんな気がしないのは俺だけだろうか。
「おじゃましまぁす」
「おじゃまします」
ずいぶん綺麗な部屋。
「いやぁ〜っ、イケメンが家に来たぁ〜っ、どうしよう」
どうしよう。
そのうちどうにかなるさ。
「えぇ〜、いやー、座って〜っ、えぇ〜」
大丈夫かな。
茜が演じてた保健室の先生以上に危ない気がする。
「かっこいいって聞いてはいたけどさぁ。
えぇ、そんなに?えぇ、どうしよ、えぇ〜」
「あの、落ち着いてください?」
「キャッ!ハハハッ、喋ったぁ!ハハハッ」
壊れてる。
「えぇ〜、及川昴くん?」
「あぁ、はい」
「やだぁ」
どっちがっすか。
「名前もかっこいいんだけどぉ、えぇ〜、どうしよ」
どうしましょう。
「えっ、触っていい?」
芸能人ってこういう感じなのかな。
「あぁ、はい……」
「キャッ、温かい……」
温かい。
初めて言われた。
「えぇ、何でこんなかっこいいの?はぁ?」
はぁ。
「すごーい。作り物みたい」
作り物。
それも初めて言われた。
「どーしよっ」
「愛美、落ち着いて?」
「だって!俳優並みにかっこいい人が家にいるんだよ?」
「あの、俳優の皆様に謝って」
俳優の皆様。
「あの人に似てる!」
「どの人?」
「すっごい人気の!」
あれ、何か聞いたことある。
誰かに言われた。
満月、あいつか。
「上矢 空斗(かみや あきと)くんだ!」
「はぁい空斗くんに謝って〜っ」
「早くなぁい?ってか超似てるしぃ、ウケるぅ」
俺、ここにいるの?
本気?
俺、無理。
「超ウケる!超似てんだけどぉ!」
「よーく言われるんだけど、わーからないのね」
その言われてるのも知らない俺。
「えっ、もう一回触っていい?」
触りたくなるんだね。
「えっ、いいっすけど……」
「やばい、温かい。つーか細いね〜」
これもよく分かんないね。
あ、満月にも言われたか。
「縦はあるのにぃ〜っ。横がなぁい!あたしは
縦はないけど横はあるよ?」
いや、縦十分だし横ないし。
「そんで横あったらない人いないわよ」
「えぇ〜?」
この女の中で生きてくの?
嘘だろ。
「ハァ。疲れたぁ。えー、かっこいい」
「落ち着きました?」
「キャッ!あ、はい……」
「愛美、これがかっこよかったらかっこ悪い人
いないよ?」
これも茜と満月に言われた。
「ダメだ。明日起きたら心臓止まるかも」
「なんでよ」
「このイケメンが家にいるんだよ?もうダメよ」
どうしよ。
この人。
「ちょ、確かめていい?」
「えっ、確かめる?」
「触るだけ」
そう言って俺に触りまくる愛美さん。
「やばい白い。細い。何このウエスト。ほっそ」
「いやもうどれも分かんないから」
「ほらっ、何この薄さ」
そこ、そこダメなやつ。
「ほらぁ」
「あっ!」
「ごめん」
「大丈夫。こいつその辺すぐ反応するから」
「マジぃ?かわいい〜っ!」
そう言って俺の脇腹を刺激しまくる愛美さん。
「あぁ、ダメダメダメダメっ」
「ハッハッハッ」
「だぁ〜、ごめんなさい、はい」
「ウケるぅ〜」
どれだけウケれば気が済む。
田舎、帰りたい。
普段は都内の方が好きだけど今だけは田舎を求めてる。
「うわっ、しゃがむと ちっちゃいのね」
「うぅ〜っ……」
「かわいすぎっ」
もういいでしょ。
「へぇ〜。か〜わいいねっ」
「昴の友達にもっとかわいい子いるよ」
「えぇ、マジで?これよりかわいいの?」
これ……
もう疲れた。
寝たいぜ。
「えっ、写真とか持ってる?」
写真、撮ってないな。
「いや、ないっす……」
「敬語とかかわいいんだけど。普通でいいよ?」
普通でいいよ。
どっちがだよ。
そう。
普通でいいの。
俺は今日初めて満月よりうるさい人に出会った。
世界、広い。
ますます満月に会いたくなってきた。
満月たちと、平和に過ごしたい。
「そんなにため息吐かないで?」
別に吐きたくて吐いてるわけじゃない。
「きっと、結構すぐに帰ってくることになるわ……」
「俺も、そう思う」
きっと、あの人は……
「もっと早く行ってあげたほうがよかったのかもね」
あの人のためには、な。
「茜はできても……」
「そうだよね。家族だけじゃないんだもんね」
満月がどうか辛い思いをせずに過ごせることを願って
いる。
だから夏月、満月を、満月の涙を受け入れてやってくれ。
「お母さんには、笑って会おうね」
「あぁ」
もちろんそうするつもりだ。
上手くできるかは、分からないけど。
もう、どれくらい変わってしまっているか……
「はぁ」
茜ももう何も言わなくなった。
俺がどれだけため息を吐こうと、どんな顔でいようと。
「あぁ〜っ!都内だねぇ」
こんなにすぐ着くもんなんだな。
あいつのことを考えてると。
「あぁ、今度遊びに来たいねっ。昴と、できれば、
お母さんと……」
「あぁ」
あれっ。
「ちょっと前に来たんじゃねぇの?」
「でもやっぱりさぁ、ねっ?いくらでも来たくなるのよ」
へぇ~。
俺をおいてまでね。
「いいから行こうぜ」
「うん」
俺は茜と歩き出した。
母さんのいる、病院に向かって。
「ねぇ、あたしたちこうやって歩いてるとカップルに
見えるのかな?」
さっきからこればっかり。
「見える人には見えんじゃねぇの?つかそんなに他人の
ことなんか見てねぇから」
「んっとに冷たい男よね」
何回言われたか分からない言葉。
俺らは病室の前へ。
「ここ、か」
「みてぇだな」
俺らはほぼ同時に深めの呼吸をし、病室に入った。
「あらっ」
「あらっ」
そこにいた母さんは少し痩せてたけど、そんなには
変わっていなかった。
「ふふっ、ありがとね」
この、笑顔も。
「大丈夫?」
「まだ話せてるからねっ」
けど、結構進行しているだろう。
「昴、元気?」
「えっ、あぁ。かなり」
俺は笑って答えた。
残りの時間を、どうかこれ以上何もなく過ごしたい。
「大人しくしてなね?」
「あらやだ。子供じゃないんだから」
「子供に戻ってきてるでしょうよ」
「失礼しちゃうわね」
「ハハハッ」
二人のそんな姿を見ていると、自然と笑顔になった。
誰かが笑ってるところを見て自然と笑顔になる。
こんなことが俺には何度あっただろう。
「えっ、二人とも家は?」
「あたし友達が一人暮らししててね」
「そこに居候」
「居候」
「ふふふっ」
笑ってるのを見ると安心する。
これは初めてだった。
陽斗の時に、何度か思ったけど。
そんなにはなかった。
俺らはその茜の友達の家に。
「あら、茜っ。うわぁ、昴くん」
俺は軽く頭を下げた。
「かっこいいんだけど〜っ!」
「よーく言われるんだけどわーからないのね」
「嘘ーっ!いやーっ、えっ、入ってぇっ!いやぁ、
ほほほっ」
ほほほっ。
「うん。しばらくすれば落ち着くから」
「あ、あぁ」
そんな気がしないのは俺だけだろうか。
「おじゃましまぁす」
「おじゃまします」
ずいぶん綺麗な部屋。
「いやぁ〜っ、イケメンが家に来たぁ〜っ、どうしよう」
どうしよう。
そのうちどうにかなるさ。
「えぇ〜、いやー、座って〜っ、えぇ〜」
大丈夫かな。
茜が演じてた保健室の先生以上に危ない気がする。
「かっこいいって聞いてはいたけどさぁ。
えぇ、そんなに?えぇ、どうしよ、えぇ〜」
「あの、落ち着いてください?」
「キャッ!ハハハッ、喋ったぁ!ハハハッ」
壊れてる。
「えぇ〜、及川昴くん?」
「あぁ、はい」
「やだぁ」
どっちがっすか。
「名前もかっこいいんだけどぉ、えぇ〜、どうしよ」
どうしましょう。
「えっ、触っていい?」
芸能人ってこういう感じなのかな。
「あぁ、はい……」
「キャッ、温かい……」
温かい。
初めて言われた。
「えぇ、何でこんなかっこいいの?はぁ?」
はぁ。
「すごーい。作り物みたい」
作り物。
それも初めて言われた。
「どーしよっ」
「愛美、落ち着いて?」
「だって!俳優並みにかっこいい人が家にいるんだよ?」
「あの、俳優の皆様に謝って」
俳優の皆様。
「あの人に似てる!」
「どの人?」
「すっごい人気の!」
あれ、何か聞いたことある。
誰かに言われた。
満月、あいつか。
「上矢 空斗(かみや あきと)くんだ!」
「はぁい空斗くんに謝って〜っ」
「早くなぁい?ってか超似てるしぃ、ウケるぅ」
俺、ここにいるの?
本気?
俺、無理。
「超ウケる!超似てんだけどぉ!」
「よーく言われるんだけど、わーからないのね」
その言われてるのも知らない俺。
「えっ、もう一回触っていい?」
触りたくなるんだね。
「えっ、いいっすけど……」
「やばい、温かい。つーか細いね〜」
これもよく分かんないね。
あ、満月にも言われたか。
「縦はあるのにぃ〜っ。横がなぁい!あたしは
縦はないけど横はあるよ?」
いや、縦十分だし横ないし。
「そんで横あったらない人いないわよ」
「えぇ〜?」
この女の中で生きてくの?
嘘だろ。
「ハァ。疲れたぁ。えー、かっこいい」
「落ち着きました?」
「キャッ!あ、はい……」
「愛美、これがかっこよかったらかっこ悪い人
いないよ?」
これも茜と満月に言われた。
「ダメだ。明日起きたら心臓止まるかも」
「なんでよ」
「このイケメンが家にいるんだよ?もうダメよ」
どうしよ。
この人。
「ちょ、確かめていい?」
「えっ、確かめる?」
「触るだけ」
そう言って俺に触りまくる愛美さん。
「やばい白い。細い。何このウエスト。ほっそ」
「いやもうどれも分かんないから」
「ほらっ、何この薄さ」
そこ、そこダメなやつ。
「ほらぁ」
「あっ!」
「ごめん」
「大丈夫。こいつその辺すぐ反応するから」
「マジぃ?かわいい〜っ!」
そう言って俺の脇腹を刺激しまくる愛美さん。
「あぁ、ダメダメダメダメっ」
「ハッハッハッ」
「だぁ〜、ごめんなさい、はい」
「ウケるぅ〜」
どれだけウケれば気が済む。
田舎、帰りたい。
普段は都内の方が好きだけど今だけは田舎を求めてる。
「うわっ、しゃがむと ちっちゃいのね」
「うぅ〜っ……」
「かわいすぎっ」
もういいでしょ。
「へぇ〜。か〜わいいねっ」
「昴の友達にもっとかわいい子いるよ」
「えぇ、マジで?これよりかわいいの?」
これ……
もう疲れた。
寝たいぜ。
「えっ、写真とか持ってる?」
写真、撮ってないな。
「いや、ないっす……」
「敬語とかかわいいんだけど。普通でいいよ?」
普通でいいよ。
どっちがだよ。
そう。
普通でいいの。
俺は今日初めて満月よりうるさい人に出会った。
世界、広い。
ますます満月に会いたくなってきた。
満月たちと、平和に過ごしたい。
