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昴、大丈夫かな。

今、何してるんだろう。

「満月?」

「ごめん……」

陽斗は首を横に振ってくれた。

「大丈夫だよ。今までずっとそばにいた人が急に
いなくなったんだもん」

あたしが陽斗を見ると、陽斗は笑って続けた。

「いろいろ不安定なんだよ」

「陽斗……」

陽斗は笑ってあたしの頭をなでた。

こんな時に、こんなに優しくされたら……

「陽斗、ヤメてよ……」

あたしには、昴しかいないはずでしょ?

昴がいたから、今のあたしがいるんでしょ?

今度は、あたしが昴を変えてあげるんでしょ?

ずっと、ずっとそばに、一緒にいるんでしょ?

「満月、ごめんね」

陽斗はあたしに抱きつこうとした。

けど、途中でやめた。

あたしの考えてることが、わかったのかのように。

「ん?」

「俺、やっぱり満月が好き」

陽斗……

あたしが好き?

何で?

何で、何であたしなの?

陽斗には、もっと優しい人が、もっとちゃんとした人が
似合うのに。

そして、もっと素直な人が。

「もちろん分かってるよ。満月の、昴への思いが
揺るがないってことは……」

陽斗、それなら何であたしを。

あたし以外にもかわいい人はいくらでもいる。

あたしより優しい人も沢山いる。

「だけど、やっぱり満月が好き。俺には、満月がいないとダメ」

「陽斗?だって、あたしより優し……」
「いないんだよ」

陽斗はあたしが言い切る前に言った。

それも、真面目な顔で。

「えっ……」

「俺にとって、満月より優しい人はいない……」

陽斗……

「満月が初めてだったの」

「初めて?」

陽斗は何も言わずに頷いた。

そして、続けた。

「俺に、あんなに優しくしてくれたの、満月が初めて
なの」

「だって、あれは陽希が言ってくれてやっと分かったん
だよ?」

あたしが自分で気付いたわけじゃない。

だから、知ってすぐの時は思った。

何で気付いてあげられなかったんだろうって。

一人で我慢させでごめんねって。

けど、どんなにそう思っても、気付かなかったことには
変わりない。

「別にいいよ。陽希が言って、それで今までずっと一緒にいてくれた」

「はると……」

「なんかごめん。ただ、俺も満月のことが好きってこと
だけ言いたかったのに。大袈裟になっちゃった」

あたしは首を振った。

「嬉しいよ」

陽斗はあたしを見た。

あたしは笑って続けた。

「陽斗の気持ち、分かることができて……」

「みづき……」

「ごめんね。あたしも、陽斗のこと大好きだよ」

あたしは陽斗に抱きついた。

「みづき……」

やっぱりあたしには昴、だよね……

昴はあたしのことを全て分かってくれる。

「大丈夫。あたしはどんな時でも、陽斗のそばにいるよ」

「みづき、ごめん……」

何で陽斗が謝るの?

あたしがもっと早く陽斗の思いに気付いてあげられれば
よかっただけのことじゃん。

「満月、ひとつだけ、いい?」

「なぁに?」

「あの時と同じなんだけど、俺のそばにいて……」

「もちろんだよ。あたしはずっと陽斗のそばにいる」

あたし、陽斗のことも大好きだから。

そんな、いけない女だから。

「やっぱり俺らは友達でいいね」

陽斗……ごめんね。

「やっぱダメだ。満月がいると頼りすぎる」

「陽斗……」

「なんか満月、お姉ちゃんみたいで。いないんだけどね」

お姉ちゃん、か。

あたしも思ったよ。

陽斗、弟みたいだって。

何度も。

「じゃあ家族並みに仲のいい、頼れる友達になる?お互いそう思える友達」

「ハハッ、そんなもんでなれるんだ」

「なれるよ。陽斗となら」

「満月、面白いね。あれっ」

陽斗が窓の外を見る。

「えっ?」

あたしも見る。

「雨、止んだんだね」

「降ってたの?」

「うん。結構なのが」

けど庭は全く濡れてない。

きっと、降ってたのは陽斗の心に、だろうね。

「止んで、よかったね」

「うん」

「もう、降らせないからね」

「えっ?」

驚き混じりの顔であたしを見る陽斗に、あたしは笑顔を
見せた。

もう、降らせないよ。

二度と。

陽斗の、その綺麗な心には。

「もう、あたしが降らせない」

「満月が?」

「うん。もう、降らせない。雨なんて」

「満月……」

あたしは笑った。

陽斗もつられるように笑った。

その笑顔は、最高にかわいかった。

<2016/07/25 20:59 秋の空>消しゴム
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