おためし小説投稿

登録一切不要で小説投稿!
文字サイズ変更 
大丈夫


雨なんて、降ってなかった。

降ってたのは、この広い世界じゃなくて、俺の狭い心の中だったのかもしれない。

満月はそんな特殊な雨を止ませてくれた。

そして、『もう、あたしが降らせない』と言った。

本当にこの人だけは何かが違う。

今まで、関わってきた人の中で。

満月と、昴は。

本当に、何かが。

何が違うかはまだ分からない。

『もう降らせない。雨なんて』

雨、か。

「陽斗さん」

その時、夏月くんが部屋を覗いた。

「何」

今までの優しい声はどこへ。

「いや、別に満月に言ってないし」

「んとキカない子ね」

「まぁ、満月ほどじゃないけど」

「あ、どーした?」

「あ、そうそう。何かあります?コンビニ行くんすけど」

「いやぁ、特にないかな」

「っすか。しょうがないから満月は?」

しょうがないから。

「しょうがないからって何よ。あたしも特にないけど」

「ならいいじゃん。じゃっ、失礼します」

夏月くんはコンビニへ。

「コンビニねぇ」

「え?」

「ううん。何でもない」

「そっか」

昴、早く帰ってこないかな。

やっぱり昴がいないのは俺にも……

もっと強かったらよかったのに。

昴も、満月もいなくても平気なくらい。

でも本当の俺には、二人がいないとダメ。

「やっぱり昴ってすごいよね」

「え?」

「あたしもなんか変だし、陽斗も何かいつもと違う」

やっぱり、違うか。

いつも通りに、してるつもりだったんだけど。

「ごめんね」

俺はそう言った満月を見た。

満月は下を向いていた。

「あたしが、もう少しだけでも、強ければ」

「満月…そんなこと……」

満月は俺が言い切る前に、首を振った。

「あたしは、昴がいて、さらに陽斗たちもいなきゃダメ
なんだもん」

「俺もそうだよ?昴だけじゃないっていうか。
そこに満月と陽希、さらに夏月くんがいないと、
本当の俺ではいられない」

あれっ、こんなこと言っちゃってよかったのかな。

普通なら、『満月がいてくれれば十分』とでも言うん
だろうね。

しかも、あの時は昴だけいてくれればよかったのに。

あの、昴が事故に遭った頃は。

「やっぱりあたしたちは、五人で一人だよね」

「満月……」

「ふふっ。五人でいて、やっとみんな、本当の自分で
いられる。誰も強くなんかない。けど、強くいなきゃ
いけないとも感じない」

俺はもう、何も言わずに満月を見つめることしかできな
かった。

「あたしたち、一人の力は本当に小さいかもしれないね」

その時、全く辛くなく、一筋の涙が頬を伝った。

満月がそれに気付くと、優しく笑って涙をすくうように
拭ってくれた。

「いいんだよ?泣いたって」

満月は最近泣かないのにね。

「いいよ。泣きたいときゃ泣こうよ」

そう言った満月の頬も、涙が伝った。

「ふふっ。今日はいいよねっ」

俺は頷いた。

『笑うのは明日でも明後日でも遅くない』

いつか、俺らの中のいろんな人が言ってた。

『明日笑う』それを目標に、俺ら五人は生きていく。

その、明日がいつになったとしても。

今日から見た明日でも、明日から見た明日でも。

明日、笑えればいい。

今日は泣く。

そんな、簡単なようで、なかなか気付けなかったことを、
この満月は簡単に教えてくれた。

そして、昴も。

俺は気付いたら満月に抱きついてた。

いつになったら満月とから離れられるんだろう。

いつか、満月と昴を自由にしてあげる。

それが、俺の目標。

「あれっ、満月?」

こんな状態で眠ってしまった満月を見て、笑顔になった。

どこでも寝ちゃうんだね。

俺は満月をベッドに寝かせた。

「満月」

満月の幸せそうな寝顔を見てまた泣く。

こういう涙はどういう意味で出るんだろうね。





しばらく満月の寝顔を眺め、俺も夢の世界へ。

<2016/07/25 21:43 秋の空>消しゴム
Copyright(C) おためし小説投稿 Since2013 All Rights Reserved.