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眠る夕日は琥珀に染まる


スケッチブックをおもむろに開いていた。

いつもならここに来れば、いの一番にキャンバスに向かうのに。

「………また、金賞なんだってね。」

体育座りをしながら俯向くようにスケッチブックをめくる李亜。
その背後に、真白は立っていた。

柔らかい笑み。
心地いい中低音の声。
………風に溶けていってしまいそうな、そんな立ち姿。

李亜は振り向かなかった。
否定も肯定もせず、スケッチブックをめくる手だけがその動きを止める。

長い髪が視界を覆い隠していた。

「何か言われた?部活の人に。」
「……………。」
「僕も見てきたよ。………………すごく、綺麗な絵だった。」
「……………。」

李亜は何も言わない。
風が二人の頬を撫で、茜色が視界に広がっていく。
小さく体を丸め、らしくなくうつむき続ける李亜を、真白はいつもと変わらない笑顔で見つめていた。

沈黙が辺りを包み込む。

それっきり、真白も言葉を発しない。
李亜にとっては、そっちの方が都合が良かった。

自分の絵が、他者の精一杯の作品を否定し続けている。
何もない、空っぽの絵が。
それがたまらなく嫌だった。
今回もそう。
同じ絵が、毎回毎回最優秀に選ばれる。

「…………そっか。」

不意に、背後で小さな声が聞こえた。
小さくうずくまったままの李亜。

その背中を、真白が優しく包み込んでいた。

李亜は突然のことに目を見開く。
ぎゅっと握り締めた手に、真白の大きな手が重なった。

「……………李亜は、強いんだね。」
「………………違う。私は…………。」
「大丈夫。李亜は、十分頑張ってるよ。いつも隣で見てる僕が言うんだ。間違いないでしょ?。」
「……………説得力がないのよ……。なんでも、あんたの言葉には。」

真白の手は、冷たかった。
温めて貰いたいところなのに、本当、気が利かない。
李亜の口元に、小さな笑みが浮かんだ。







それでも、隣にいるのは、真白でいて欲しいんだ。




<2016/09/13 20:08 なうか>消しゴム
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