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眠る夕日は琥珀に染まる


翌日。
放課後の廊下。


「…………あ。」

しまった、と口元を抑える。

放課後になり、一番に教室を飛び出して屋上へ向かっていた李亜。
何故か嫌な予感がして鞄の中を探ってみれば、筆がないことに気づいた。
きっと、教室に忘れてきたのだろう。

せっかく直ぐに教室を出てきたのに…………。

鞄を閉じ、小さくため息をついた。
面倒だが、筆がなければどうしようもできない。

(戻るしかないか…。)

李亜は方向を変え、元来た道を戻った。
茜色の空が眩しい。
窓に手をかざせば、漏れる光が美しく輝いた。

真白はきっと、もうすでに屋上に来ているだろう。

いくら真白でも、待たせるわけにはいかない。
さっと取って直ぐに屋上に向かおう。
そう思い、たどり着いた教室の引き戸に手をかけた時だった。

「………………屋上の風景?。」

聞こえてきたクラスメイトの声に、手を止める。
李亜はクラスメイトとほとんど話したりしないが、だいたい誰なのか予想はついた。
男子グループだ。

「そうそう。木浜の絵だよ。毎回同じ絵だけど、必ず賞取るあの絵。」
「あー、はいはい。」
「美術部の奴らから批判くらってるってやつか。」
「あの絵の夕日、どっかで見たことあると思ってたんだよなぁ。」

会話の内容に、指先がピクッと動く。
李亜の絵。
屋上は立ち入り禁止だ。
誰も、あの風景のことは知らないはずだ。
なのに、どうして屋上だと……………?。

「俺さ、一回だけ行ったことあるんだよ。屋上。」
「うわ、マジ?。」
「あそこ立ち入り禁止だよな。先生に見つかったらヤバかっただろ。」
「俺が行ったのは一年前。そん時は、普通に出入り自由だったじゃん。一回だけしか見なかったけどさぁ、あそこの風景と、木浜が描いてる夕日。なんか、似てる気がすんだよ。」

どくん、と心臓がなる。
一年前。
確かにあの時は、まだ自由に屋上に出入りできていた。

「木浜って確か、仲良かっただろ?あいつと。これは俺のただの考えに過ぎないんだけどさ……。」

男子生徒が一息に何かを言おうとした瞬間。
教室のドアが、勢いよく開いた。

男子グループが、全員弾かれたように出入り口を見る。
何人もの視線を集めながら、李亜は静かに自分の席へと進んだ。
机の中から筆を取り出し、鞄にしまう。
そして、何事も無かったかのように出入り口へと戻っていった。

まるで、その先を聞くのを拒んだかのようだった。

もう、話し声は聞こえない。

李亜は顔をしかめ、早足で屋上へ向かった。









<2016/09/15 20:35 なうか>消しゴム
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