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眠る夕日は琥珀に染まる


たくさんある部活の中から、美術部を選んだ理由なんて特になかった。

単純に、暇な時間を過ごす方法の中で一番、絵を描くのが好きだったから。
李亜は天才とまで言われる所業はこなせないが、何においても人より優れていた。

「また学年トップ!?。」

放課後の部室。
賑やかな声が飛び交う中、李亜の隣に座っていた真白が声を上げた。
真白の手には、李亜の数学の解答用紙。

李亜は呆れたような顔をしながら、真白の手から解答用紙を取り返した。

「勝手に見ないで。………そんなに驚くようなこと?学年に一人は、絶対にトップがいるものだけど。」
「ごめんごめん。分かってるけど…。なんか、実際に目の当たりにするとさ。」

申し訳なさそうに頭をかく真白。

二人は、部活の中でも常に一緒だった。

「木浜さん、神巫くん。課題の絵、描けた?。」

一人の女子生徒が、二人の側に走り寄ってくる。
部活でもっとも面倒見が良く、早くも部長候補に挙げられている生徒……………美紀は、にっこりと愛嬌のある笑顔を見せた。
李亜は無表情で頷き、立てかけてあったキャンバスを美紀に手渡す。

「はい。」
「どうも〜。えっと、神巫くんは?描けてる?。」
「あ、ごめん。僕、出さないんだ。コンクールにも出さないって先生に伝えといてくれるかな?。」
「分かった〜。」

美紀はそう言うと、部室を飛び出していった。
職員室にいる顧問に絵を届けるのだろう。

「李亜、今回は人物を描いたんだね〜。」
「…………あんた、また出さないの?。」

キャンバスに向かっていた李亜の手が止まる。
その問いに真白は、困ったように笑った。

「うん。…………どうしても、納得する絵が描けなくって。」
「………………そう。」

李亜の手がまた動き出す。

美術部の作品の提出は毎月一点だ。
だが……………。

李亜は未だ一回も、真白が絵を描いているところを見たことがなかった。



<2016/09/20 16:56 なうか>消しゴム
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