カラー
- <桃山 可憐> -
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僕の席の隣、桃山可憐はクラスのマドンナで誰にでも優しくて、可愛い。間違いなく色に表すと桃色だろう。
「あの、落ちてますよ?」
桃山さんはシャープペンを僕の前に差し出した。いつの間にか落としていたらしい。
「ありがとう」
お礼をいって、受け取り大事に大事に震える手で筆箱にしまった。
「なにあいつ。きもい」
「桃山様に触らないで汚れるわ」
桃山さんに付きまとう子分AとBが次々に言った。
「そんなこと言わないの!次は移動教室だわ。じゃあね」
桃山さんはほほ笑むと、行ってしまった。子分たちもそそくさと桃山さんのあとをついていった。
ある日、僕は一通の手紙をそっと桃山さんの靴箱に忍び込ませ、少し離れた場所から様子をうかがっていた。すると、いつのもように桃山さんと子分たちがくだらない話をしながら降りてきた。
「桃山様、今日一緒にケーキでも食べません?おいしいお店を見つけたんですの」
「いえ、私と洋服を買いに行くの」
苦笑いをしている桃山さんは靴を履き替えようと靴箱に手を伸ばす。
「お手紙が……」
「やだー、キモ男からですわ。桃山様触っちゃだめです」
「いまどき手紙とか、ウケル」
子分たちは下品に笑い声をあげた。そんな中、桃山さんは真剣に手紙に目を通してくれている。
「それより、ケーキを食べに行きましょう」
「えぇ、洋服を買いに行きましょうよ~」
桃山さんの華奢な腕を引っ張りずかずかと歩いて行ってしまうのだった。子分たちの靴箱に立つと、ぐったりとして白い毛並みを赤く染めた子分Aの愛猫を詰め込む。さらに変色して緑色をした美しい模様の金魚たちをボタボタと子分Bの上靴に落とした。
その夜、口から出てきそうなほど上下する心臓を抑え、桃山さんが来るのを待った。教室の前のドアから顔がのぞき、桃山さんが恐る恐る入ってきた。後ろから、にやにやしながら子分たちがつづく。
「あの……」
「あのね、私も話したいことがあるの。いいかな」
僕が言い出すと同時に桃山さんの声が重なる。思ってもいない言葉に心臓が限界寸前だった。やっとのことで頷くと、
「消えろ!二度の視界に入ってくんな!!」
ドスの利いた声で叫びながら、桃山さんはしなやかな指で僕の手紙を破り捨てた。僕の理性は、この瞬間飛び去ってしまった。護身用のスタンガンを背中に隠し、静かに歩み寄る。桃山さんの元へと……
誰もいない教室に麻縄で縛られた両手足を縛られた桃山さんが転がっていた。まあ、自分でやったのだが。
「やめて……」
子ウサギのように怯えた瞳にゾクゾクと快感を覚えた。
「やめなさい!」
「桃山様に近づかないで!!」
椅子に縛り付けられた、子分たちが悲鳴に近い声で叫んだ。そんなことは無視して、涙目の子ウサギのほうにべっとりと触れた――
桃色。教室の隅でうずくまり、うつろな目で天井を見上げるボロボロの子ウサギを見ながらにやりと笑った。
「あの、落ちてますよ?」
桃山さんはシャープペンを僕の前に差し出した。いつの間にか落としていたらしい。
「ありがとう」
お礼をいって、受け取り大事に大事に震える手で筆箱にしまった。
「なにあいつ。きもい」
「桃山様に触らないで汚れるわ」
桃山さんに付きまとう子分AとBが次々に言った。
「そんなこと言わないの!次は移動教室だわ。じゃあね」
桃山さんはほほ笑むと、行ってしまった。子分たちもそそくさと桃山さんのあとをついていった。
ある日、僕は一通の手紙をそっと桃山さんの靴箱に忍び込ませ、少し離れた場所から様子をうかがっていた。すると、いつのもように桃山さんと子分たちがくだらない話をしながら降りてきた。
「桃山様、今日一緒にケーキでも食べません?おいしいお店を見つけたんですの」
「いえ、私と洋服を買いに行くの」
苦笑いをしている桃山さんは靴を履き替えようと靴箱に手を伸ばす。
「お手紙が……」
「やだー、キモ男からですわ。桃山様触っちゃだめです」
「いまどき手紙とか、ウケル」
子分たちは下品に笑い声をあげた。そんな中、桃山さんは真剣に手紙に目を通してくれている。
「それより、ケーキを食べに行きましょう」
「えぇ、洋服を買いに行きましょうよ~」
桃山さんの華奢な腕を引っ張りずかずかと歩いて行ってしまうのだった。子分たちの靴箱に立つと、ぐったりとして白い毛並みを赤く染めた子分Aの愛猫を詰め込む。さらに変色して緑色をした美しい模様の金魚たちをボタボタと子分Bの上靴に落とした。
その夜、口から出てきそうなほど上下する心臓を抑え、桃山さんが来るのを待った。教室の前のドアから顔がのぞき、桃山さんが恐る恐る入ってきた。後ろから、にやにやしながら子分たちがつづく。
「あの……」
「あのね、私も話したいことがあるの。いいかな」
僕が言い出すと同時に桃山さんの声が重なる。思ってもいない言葉に心臓が限界寸前だった。やっとのことで頷くと、
「消えろ!二度の視界に入ってくんな!!」
ドスの利いた声で叫びながら、桃山さんはしなやかな指で僕の手紙を破り捨てた。僕の理性は、この瞬間飛び去ってしまった。護身用のスタンガンを背中に隠し、静かに歩み寄る。桃山さんの元へと……
誰もいない教室に麻縄で縛られた両手足を縛られた桃山さんが転がっていた。まあ、自分でやったのだが。
「やめて……」
子ウサギのように怯えた瞳にゾクゾクと快感を覚えた。
「やめなさい!」
「桃山様に近づかないで!!」
椅子に縛り付けられた、子分たちが悲鳴に近い声で叫んだ。そんなことは無視して、涙目の子ウサギのほうにべっとりと触れた――
桃色。教室の隅でうずくまり、うつろな目で天井を見上げるボロボロの子ウサギを見ながらにやりと笑った。
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