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Of hope to tomorrow
- Fragments of memory -

Fragments of memory


「起きなさい、朝よ」

あれから何年か過ぎた。

わたしは今、十四歳・‥らしい。

あのときのせいでいくつかの記憶を無くした。

覚えている記憶は、あのときと、お母さんが呼んでいた私の名前くらい。

ティナ。私はそう名乗る。

あのあとよくわからないけど親切なおばあさんに拾われた。最初は警戒してたけど、もうなれてしまっている。

おばさんは何も言わず、問い詰めもせず、私をここまで育て上げてくれた。

チィルゥヘエイ・アーベーロ。お婆さんの名前。私はチィルさんと呼ぶ。

「お早う、ティナ。今日は用があって午前中は店を空けるわ。仕事、お願いできるかしら?」
チィルさんは手早くカーテンをまとめる。

のんびりベットからおり、鏡を見ながら髪をとかす。
「うん。グフィイも?」

グフィイとはチィルさんの実の息子。この店の副店長。

あ、ここはパン屋。小さいけど、常連さんに人気のパン屋なの。

「グフィイは店にいるわ。ひとりで町に行かなきゃならないの」

「はい。分かった。」

長くなった髪の毛を結んだ。仕事するからお団子結びに。

寝巻きを脱ぎ、パン屋の服に着替える。そして慌ただしいキッチンへと歩く。

「ティナ」

卵を片手に持ったグフィイが声をかける。

「おはよう。今日も元気そうだね」

グフィイは顔は少し怖いけど性格は結構いい。優しいし、面倒見がいいし。

でもあの時から私は笑顔を失った。決して誰にも笑顔を見せたことはなかった。

見せたくても‥‥見せられない。
「うん」

口にする言葉もだいぶ減った。返事をする言葉も大体同じ。

そんなことも知らずにグフィイは私を笑顔にしようとしてくれていた。
「新作のパンが思い付いたんだ。名付けて目玉焼きパン!」

小さな皿に乗った、一口サイズほどのパンを見せる。パイの上に生クリームをのせて、ミカンを一口分のせて会った。


確かに目玉焼きみたい。

「一口どうぞ!」

促されるままにパイを口にふくむ。意外と旨い。パイの中には生クリームが入っているようで、口の中が生クリームだらけ。

「どうだい?美味しい?」

「うん」

ますます嬉しそうに微笑むグフィイ。ティナの手を引きながらもうひとつパンを見せる。

「こっちは大きい方だ。ミニとビックにしようとおもう。
どう?」

「うん」

ヨシッ、とガッツポーズをグフィイはとったあと、従業員にパンの事を説明し始めた。

私は自分の持ち場に戻る。








私の持ち場は皿洗い。

結構大変だが、もう長年やってる。十分な腕前だ。

皿を洗い、干していく。それだけだ。




~†~


休憩。グフィイと二人でベランダのベンチで紅茶を飲む。

「なあ、ティナ?」

「うん?」

突然グフィイは恥ずかしそうに舌を出す。
「あのさぁ‥‥明後日ここの店休みじゃん」

「うん」

「だからさぁ、どこか二人でいかない?」





<2016/07/28 23:32 栗原小雪>消しゴム
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