S
- 飲み会 -
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よく人におっとりしているって言われる私。実は、Sなの。Sがばれるのが嫌だからM系を演じている。
それに気づかない男性も多くて、よくS系男に絡まれる。
私が就職したのは、業界13位というなんとも微妙な中堅会社。
入社二年目になって、後輩が8人入ってきた。
そのうちの一人に私の目は釘付けになっていた。
井上大輔(いのうえだいすけ)。自己紹介によると、一浪して一留しているから私より一つ上らしい。
ハンサムで仕事ができるせいか、他の先輩には礼儀をわきまえるものの、私に対しては、ぞんざいな態度を取っていた。
『新入社員歓迎会』の日にたまたま、隣りの席になってしまい、なんだか嫌だなあと思っていた。
やつは、うさぎを見つけた狼のような顔をしていた。
そして、とんでもないことを口にした。
「小林光代(こばやしみつよ)先輩ですよねー、確か」
「そうですが……」
「相変わらず、影薄いっすね。いつも幽霊みたいだと思っていました」
はあ……?のっけからこれですか?
私は自分のSが出るのが怖くて、静かに地味に平和に暮らしているだけなんですっ!!
獲物を見つけたように、S系丸出しの井上大輔はますます調子づいてくる。
「小林先輩ってさあ、彼氏いたことないでしょ?」
はい、はい。24年間いませんでしたが、それが何か?
「俺が開発してあげようか?……肉だけの関係でよかったら」
酔っているのか、井上大輔の言葉はますますエスカレートしてくる。
私はお酒をぐびぐび飲み始める。こんな奴は無視に限る。飲みに飲んでいたら、酔ってしまったみたいで……。
「この後、俺の部屋に来ない?やばいでしょ、いつまでもそれじゃあ……」
その言葉に挑発されて、
「いいわよ。行ってやろうじゃないの」
と、すっかりM女の自分を忘れて、Sっ気たっぷりに頷いていた。
自慢じゃないけど、私。
男とホテルに入っても、無傷で逃げ出すのが趣味で、何度も成功している。
だからショジョに過ぎない。
小さい頃から父に暴行をされていた私はすっかり男性が嫌いになり、男性を馬鹿にすることを趣味にしていたのだ。
Sって言うのはそういうことかもしれない。つまり、知恵がついてきたら、憎き男たちを弄んで、捨てるのが趣味になってきたってことで……。
それほど、父親の暴行はひどかったのだ。今でも悪夢を見るくらいに……。
井上大輔ごとき、チャラ男は簡単に巻けると思っていた。
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