「…暇ね」
「そうね」
「何かないのかしら…。全くもって暇だわ。こういうときに限って白黒は来ないし、全く、退屈すぎて眠くなって来ちゃうわ」
「吸血鬼が夜に眠くなってどうするのよ」
「あ、そうね。………ねえパチェ、少しは休んだら?」
「駄目よ。やっと上手く行きそうな筋が見えてきたんだから、調子が良いうちに出来るだけ進めて置きたいのよ。丁度よく魔理沙も来ないし、静かなうちに済ませたいわ」
「熱心ねぇ…。無理するとそれこそ死にかけるわよ?こないだみたいな事にはなりたくないだろうに」
「体調管理はしっかりしてるわよ。咲夜が気を使ってしょっちゅう様子を見にきてくれるし」
「はいはい…。それにしても暇だ…わ……」
「レミィ?」
「…客人よ、パチェ。……ほう、面白そうな奴だ。ちょっとここは泳がせとこうかしら」
「?」
「ふふ、暇潰しにはなるかしらねぇ…」
「えーと、貴女は昨日幻想入りして、妖怪に追いかけられてるうちに此処に辿り着いた、と。それでなんで幻想入りしたのかは覚えていない…。なるほど」
美鈴さんは門番の仕事があるからと出て行き、部屋には私とメイドの咲夜さんだけが居た。色々と教えて貰ったのだが、此処は『幻想郷』という結界で隔離された土地で、外で住みづらくなった妖怪や妖精、少数ではあるが不思議な力を持った人間が住んでいるという。咲夜さんもその不思議な力を持った人間の一人なんだそうだ。そしてこの洋館は『紅魔館』。人間は咲夜さん一人だけで、他はみんな妖怪やら妖精の人外なんだそうで。美鈴さんも妖怪だという。
そして私は咲夜さんの自室で匿って貰っている、と。
「あの…ルーミアに追いかけられてる時、おかしな事が…」
「おかしな事…ね。私も聞きたい事があるのだけれど、記憶が無いんじゃ聞くだけ無駄よね」
あの衝撃波と、ルーミアを縛った電気(?)の網。
あれはなんだったんだろう?
「…本当に何も知らないのね?」
「はい…。あの、人を襲う妖怪って沢山いるんですか?」
「それこそ、星の数ほどね。というか人間を襲わないのの方が数えるくらいしか居ないわよ。基本的に身を守る術がない普通の人間たちは人里から出ないし。妖怪同士、人里は襲うなって掟みたいなもので決まってるのよ。結果的に自分達の首を締めるハメになるし」
「…戦う方法ってどうすれば良いでしょうか」
「……私じゃ分からないわ。貴女が本当に平凡な人間だったら諦めろとしか言わないし、そもそも看病なんてしないけれど。いつも能天気なあの美鈴が警戒してたのに侵入できたし接近したのにも気付けた…。それが気になってしょうがないの」
どうやら美鈴さんはとっても強いらしい。確かにあれだけ怖い人が弱い訳がない。
「私はただ、言われた通りに避けただけなんですけど」
「え?」
ぽろっと小さく言ったら、咲夜さんが驚いたように私を見た。
「貴女、今、なんて?」
「え…、だから言われた通りに…」
「……誰に?」
「さあ…」
咲夜さんは、私をじっと見て、言った。
「貴女、何が聞こえるの?」
「ねえ、レミィ?」
「なあに?パチェ」
「いつまで放っておくつもり?そろそろ出て行っても良い頃合いなんじゃないの?」
「いいえ、まだよ。運命が私を彼女の元へ向かわせるまで。それまで待つの」
「はあ…気の長いことね」
「ふふ、パチェ、私だって早く見てみたくてうずうずしてるわよ。……さて、行こうかしら」
「あら、案外早いのね」
「運命は気まぐれなのよ」
「私が彼女と会う運命はいつかしら?」
「そう遠くないわよ。せいぜい怖がらせないように、ね」
「善処するわ。…ふふ、行ってらっしゃい」
私は、目の前の少女を見た。相手はきょとんとして、何を言っているのかまだ分からないようだった。
「…何かに、『危ない』とでも言われたの?」
「そんな感じ、かなぁ…」
まさか、彼女は_____。
私は、頭の中を整理しながら、ゆっくり尋ねた。
「美鈴が近づいて来るのが、『音で分かった』のね?」
「多分…」
私は確信した。
彼女は『能力持ち』だと。
美鈴は敵に近付く時、音を立てて気付かれるなんてヘマはしない。気配で察する熟練者も居るには居るが、彼女は幻想入りしたばかり、宵闇の妖怪ルーミアに追いかけられてもとっさに逃げるしか術が無かった。彼女が戦い慣れているとは考えにくい。
なら、答えは一つ。彼女は能力によって美鈴に気付いた。そして、ルーミアに襲われても逃げ切れたのは_____
「さっきおかしな事があったって言ってたわね。何が起きたのか教えて頂戴」
「……転んじゃって、あぁ、もうダメって思ったらなんか衝撃波みたいなのがルーミアを吹き飛ばして、次にルーミアが電気の網…かな?に縛り付けられて動けなくなって」
やっぱり_____。
そこまで聞いた時、不意に彼女が私から視線を外した。何やら一点をじっと見つめている。
「…?」
つられて私もその方向を見ると、何もない。
「どうしたの?」
聞いてみても、何も答えずにある一点を注視している。
そして、かすかな羽音が聞こえた。羽音のした方向を見ると、小さな蝙蝠が羽ばたいている。
_____しまった。
「さて、初めましてだな。私が紅魔館の主、レミリア・スカーレット。それで貴女は橘美咲…、見たところ能力を持っているようね」
咲夜さんが蝙蝠を見つけてからなんやかんやあったが、おびただしい数の蝙蝠から出てきたのは蝙蝠そっくりの羽根をつけた十歳くらいの女の子だった。でも淡いピンクのくるぶしまであるワンピースを着て、堂々と振る舞う姿は私より、いや咲夜さんより年上に見える。不思議な感じだ。
私はベッドの上で正座をして、ぺこりと頭を下げた。自然と敬語になってしまう。
「は、はい…。ごめんなさい」
「まあいいわ。で、咲夜。一ヶ月私に妙な紅茶出すの禁止ね。福寿草の紅茶なんて飲めたものじゃなかったわ」
「仰る通りに。申し訳ございません」
「で?どんな力なのかしら?」
「さ、さあ…」
「お嬢様、彼女は記憶を失っているのです。能力を持っているのも自覚が無いようで…」
それを聞くと、レミリアさんはぴんと眉を跳ね上げた。
「自覚が無い?…ふむ。……………」
すぅっと目を細めて、顎に手を当ててしばらく考えた。そしておもむろにパチンと指を鳴らして、言った。
「咲夜、お茶にするから屋上に行くわよ。この人間も連れて行きなさい」
「かしこまりました」
「えっ_____」
私が言い終わった時には既に、屋上にティーテーブルと椅子、椅子に既に座っているレミリアさん、そしてレミリアさんに特大の日傘を差して横に立っている咲夜さん_____
と、なぜか私も席に着いていた。椅子に正座で。痛い。
「えっ…えっ…」
「咲夜、今日はいつものを。御茶請けは任せるわ。あと貴女も立ってないで座りなさい。私の話は長いわよ」
「はい。本日はシフォンケーキでございます」
「あら、美味しそう」
一瞬のうちに____一瞬より短いかも_____湯気を立てているティーカップ、きっちりティーコゼーの被せてあるポットが現れる。そしてお皿に綺麗に盛り付けられたケーキ。それを見た私のお腹がくぅ、と鳴った。そういえば何も食べてないや。急にお腹が空いてきた。
「いいわよ、食べても。_____さて、貴女は今、何が起きたのか分かる?」
ティーカップを片手に、レミリアさんが聞いてきた。
「今、何が起きたのか……ですか。……いいえ…」
「まあ流石にそこまで分からないか。貴女は咲夜を怒らせない方が良いわね…。咲夜から、だいたいの事は聞いてるんでしょう?此処がどこなのか、とか」
「はい、此処は『幻想郷』っていうんですよね。妖怪とか、妖精が沢山住んでいるって」
「そう。で、幻想郷にいる人外の多くは能力を持っている。能力は本当に多種多様よ。私もそれなりに持っているしね。中には、種族は人間なのに人外達を凌駕するほどの能力を持つ者がいる。咲夜はそのうちの一人。そして、能力を持たない大多数の人間を護る為、ある一人の人間を頂点として幻想郷は成り立っている……『表面上は』ね」
「表面上は…ですか」
「実際は一言で済むくらい単純では無い。いくつもの勢力が複雑に関わり合って、今こうなっているの。でもその人間に誰も敵わないのは事実なんだけどねぇ…」
「そんなに強い人がいるんですか」
「全く霊夢ときたら、自然体でこの私より強いのよ?あの子が本気を出したらどうなるのか分かったもんじゃないわ」
「あ、あはは…。霊夢さんっていうんですか、その人」
「あぁ、話が脱線したわね…」
レミリアさんは本当に仕草が綺麗だ。今だって、ケーキを小さくフォークで切り分けて、上品に口に運ぶ。外見と仕草が合っていないけれど。横で日傘を差している咲夜さんはさっきから微動だにしない。でも強張っている様子は無く、手慣れている。
「さっきお茶の用意を咲夜が一瞬で済ませたのは咲夜個人の能力によるものよ。で、実際貴女は何が出来るのかしら」
「何が____と言われても………あ」
「え?」
「…今日そんなに風強くありませんよね?」
「…?そうだと思うけれど?」
「……誰か吹き飛ばされてるような悲鳴が…」
「はぁ?」
「うわぁぁぁ!」
「チルノちゃーん‼︎」
煙を引きながら墜落して行く氷精を、緑の髪の気弱そうな妖精が追いかけて行く。その様子を何者かが見下ろしていた。
「なんだ、他愛も無い。所詮口だけか」
その人は不意に顔を上げて、眼前の紅い洋館を一瞥した。
「やれやれ、観光ついでに見て回ってただけなのに……。なんでこう、面倒事が付いて回るかねぇ。まあ良いか。此処は居心地が良さそうだし、そう波風立てんでも」
頭を振りながら溜息をつく。そのままくるりと後ろを向き、空中を滑るように去っていった。
to be continued…
「そうね」
「何かないのかしら…。全くもって暇だわ。こういうときに限って白黒は来ないし、全く、退屈すぎて眠くなって来ちゃうわ」
「吸血鬼が夜に眠くなってどうするのよ」
「あ、そうね。………ねえパチェ、少しは休んだら?」
「駄目よ。やっと上手く行きそうな筋が見えてきたんだから、調子が良いうちに出来るだけ進めて置きたいのよ。丁度よく魔理沙も来ないし、静かなうちに済ませたいわ」
「熱心ねぇ…。無理するとそれこそ死にかけるわよ?こないだみたいな事にはなりたくないだろうに」
「体調管理はしっかりしてるわよ。咲夜が気を使ってしょっちゅう様子を見にきてくれるし」
「はいはい…。それにしても暇だ…わ……」
「レミィ?」
「…客人よ、パチェ。……ほう、面白そうな奴だ。ちょっとここは泳がせとこうかしら」
「?」
「ふふ、暇潰しにはなるかしらねぇ…」
「えーと、貴女は昨日幻想入りして、妖怪に追いかけられてるうちに此処に辿り着いた、と。それでなんで幻想入りしたのかは覚えていない…。なるほど」
美鈴さんは門番の仕事があるからと出て行き、部屋には私とメイドの咲夜さんだけが居た。色々と教えて貰ったのだが、此処は『幻想郷』という結界で隔離された土地で、外で住みづらくなった妖怪や妖精、少数ではあるが不思議な力を持った人間が住んでいるという。咲夜さんもその不思議な力を持った人間の一人なんだそうだ。そしてこの洋館は『紅魔館』。人間は咲夜さん一人だけで、他はみんな妖怪やら妖精の人外なんだそうで。美鈴さんも妖怪だという。
そして私は咲夜さんの自室で匿って貰っている、と。
「あの…ルーミアに追いかけられてる時、おかしな事が…」
「おかしな事…ね。私も聞きたい事があるのだけれど、記憶が無いんじゃ聞くだけ無駄よね」
あの衝撃波と、ルーミアを縛った電気(?)の網。
あれはなんだったんだろう?
「…本当に何も知らないのね?」
「はい…。あの、人を襲う妖怪って沢山いるんですか?」
「それこそ、星の数ほどね。というか人間を襲わないのの方が数えるくらいしか居ないわよ。基本的に身を守る術がない普通の人間たちは人里から出ないし。妖怪同士、人里は襲うなって掟みたいなもので決まってるのよ。結果的に自分達の首を締めるハメになるし」
「…戦う方法ってどうすれば良いでしょうか」
「……私じゃ分からないわ。貴女が本当に平凡な人間だったら諦めろとしか言わないし、そもそも看病なんてしないけれど。いつも能天気なあの美鈴が警戒してたのに侵入できたし接近したのにも気付けた…。それが気になってしょうがないの」
どうやら美鈴さんはとっても強いらしい。確かにあれだけ怖い人が弱い訳がない。
「私はただ、言われた通りに避けただけなんですけど」
「え?」
ぽろっと小さく言ったら、咲夜さんが驚いたように私を見た。
「貴女、今、なんて?」
「え…、だから言われた通りに…」
「……誰に?」
「さあ…」
咲夜さんは、私をじっと見て、言った。
「貴女、何が聞こえるの?」
「ねえ、レミィ?」
「なあに?パチェ」
「いつまで放っておくつもり?そろそろ出て行っても良い頃合いなんじゃないの?」
「いいえ、まだよ。運命が私を彼女の元へ向かわせるまで。それまで待つの」
「はあ…気の長いことね」
「ふふ、パチェ、私だって早く見てみたくてうずうずしてるわよ。……さて、行こうかしら」
「あら、案外早いのね」
「運命は気まぐれなのよ」
「私が彼女と会う運命はいつかしら?」
「そう遠くないわよ。せいぜい怖がらせないように、ね」
「善処するわ。…ふふ、行ってらっしゃい」
私は、目の前の少女を見た。相手はきょとんとして、何を言っているのかまだ分からないようだった。
「…何かに、『危ない』とでも言われたの?」
「そんな感じ、かなぁ…」
まさか、彼女は_____。
私は、頭の中を整理しながら、ゆっくり尋ねた。
「美鈴が近づいて来るのが、『音で分かった』のね?」
「多分…」
私は確信した。
彼女は『能力持ち』だと。
美鈴は敵に近付く時、音を立てて気付かれるなんてヘマはしない。気配で察する熟練者も居るには居るが、彼女は幻想入りしたばかり、宵闇の妖怪ルーミアに追いかけられてもとっさに逃げるしか術が無かった。彼女が戦い慣れているとは考えにくい。
なら、答えは一つ。彼女は能力によって美鈴に気付いた。そして、ルーミアに襲われても逃げ切れたのは_____
「さっきおかしな事があったって言ってたわね。何が起きたのか教えて頂戴」
「……転んじゃって、あぁ、もうダメって思ったらなんか衝撃波みたいなのがルーミアを吹き飛ばして、次にルーミアが電気の網…かな?に縛り付けられて動けなくなって」
やっぱり_____。
そこまで聞いた時、不意に彼女が私から視線を外した。何やら一点をじっと見つめている。
「…?」
つられて私もその方向を見ると、何もない。
「どうしたの?」
聞いてみても、何も答えずにある一点を注視している。
そして、かすかな羽音が聞こえた。羽音のした方向を見ると、小さな蝙蝠が羽ばたいている。
_____しまった。
「さて、初めましてだな。私が紅魔館の主、レミリア・スカーレット。それで貴女は橘美咲…、見たところ能力を持っているようね」
咲夜さんが蝙蝠を見つけてからなんやかんやあったが、おびただしい数の蝙蝠から出てきたのは蝙蝠そっくりの羽根をつけた十歳くらいの女の子だった。でも淡いピンクのくるぶしまであるワンピースを着て、堂々と振る舞う姿は私より、いや咲夜さんより年上に見える。不思議な感じだ。
私はベッドの上で正座をして、ぺこりと頭を下げた。自然と敬語になってしまう。
「は、はい…。ごめんなさい」
「まあいいわ。で、咲夜。一ヶ月私に妙な紅茶出すの禁止ね。福寿草の紅茶なんて飲めたものじゃなかったわ」
「仰る通りに。申し訳ございません」
「で?どんな力なのかしら?」
「さ、さあ…」
「お嬢様、彼女は記憶を失っているのです。能力を持っているのも自覚が無いようで…」
それを聞くと、レミリアさんはぴんと眉を跳ね上げた。
「自覚が無い?…ふむ。……………」
すぅっと目を細めて、顎に手を当ててしばらく考えた。そしておもむろにパチンと指を鳴らして、言った。
「咲夜、お茶にするから屋上に行くわよ。この人間も連れて行きなさい」
「かしこまりました」
「えっ_____」
私が言い終わった時には既に、屋上にティーテーブルと椅子、椅子に既に座っているレミリアさん、そしてレミリアさんに特大の日傘を差して横に立っている咲夜さん_____
と、なぜか私も席に着いていた。椅子に正座で。痛い。
「えっ…えっ…」
「咲夜、今日はいつものを。御茶請けは任せるわ。あと貴女も立ってないで座りなさい。私の話は長いわよ」
「はい。本日はシフォンケーキでございます」
「あら、美味しそう」
一瞬のうちに____一瞬より短いかも_____湯気を立てているティーカップ、きっちりティーコゼーの被せてあるポットが現れる。そしてお皿に綺麗に盛り付けられたケーキ。それを見た私のお腹がくぅ、と鳴った。そういえば何も食べてないや。急にお腹が空いてきた。
「いいわよ、食べても。_____さて、貴女は今、何が起きたのか分かる?」
ティーカップを片手に、レミリアさんが聞いてきた。
「今、何が起きたのか……ですか。……いいえ…」
「まあ流石にそこまで分からないか。貴女は咲夜を怒らせない方が良いわね…。咲夜から、だいたいの事は聞いてるんでしょう?此処がどこなのか、とか」
「はい、此処は『幻想郷』っていうんですよね。妖怪とか、妖精が沢山住んでいるって」
「そう。で、幻想郷にいる人外の多くは能力を持っている。能力は本当に多種多様よ。私もそれなりに持っているしね。中には、種族は人間なのに人外達を凌駕するほどの能力を持つ者がいる。咲夜はそのうちの一人。そして、能力を持たない大多数の人間を護る為、ある一人の人間を頂点として幻想郷は成り立っている……『表面上は』ね」
「表面上は…ですか」
「実際は一言で済むくらい単純では無い。いくつもの勢力が複雑に関わり合って、今こうなっているの。でもその人間に誰も敵わないのは事実なんだけどねぇ…」
「そんなに強い人がいるんですか」
「全く霊夢ときたら、自然体でこの私より強いのよ?あの子が本気を出したらどうなるのか分かったもんじゃないわ」
「あ、あはは…。霊夢さんっていうんですか、その人」
「あぁ、話が脱線したわね…」
レミリアさんは本当に仕草が綺麗だ。今だって、ケーキを小さくフォークで切り分けて、上品に口に運ぶ。外見と仕草が合っていないけれど。横で日傘を差している咲夜さんはさっきから微動だにしない。でも強張っている様子は無く、手慣れている。
「さっきお茶の用意を咲夜が一瞬で済ませたのは咲夜個人の能力によるものよ。で、実際貴女は何が出来るのかしら」
「何が____と言われても………あ」
「え?」
「…今日そんなに風強くありませんよね?」
「…?そうだと思うけれど?」
「……誰か吹き飛ばされてるような悲鳴が…」
「はぁ?」
「うわぁぁぁ!」
「チルノちゃーん‼︎」
煙を引きながら墜落して行く氷精を、緑の髪の気弱そうな妖精が追いかけて行く。その様子を何者かが見下ろしていた。
「なんだ、他愛も無い。所詮口だけか」
その人は不意に顔を上げて、眼前の紅い洋館を一瞥した。
「やれやれ、観光ついでに見て回ってただけなのに……。なんでこう、面倒事が付いて回るかねぇ。まあ良いか。此処は居心地が良さそうだし、そう波風立てんでも」
頭を振りながら溜息をつく。そのままくるりと後ろを向き、空中を滑るように去っていった。
to be continued…
