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東方幻霊奏
- 第七話 空中戦闘 -

とある昼下がり、一通りの仕事を終えて私は、与えられた自室で一人ぼんやりと考えていた。
「私の力…かぁ」
前の日の訓練で、パチュリーさんは私にこう言った。
『貴女の力、とても興味深い。出来ることをもっと増やして見ましょう』
私の力で出来る事。今のところ訓練では、ゆっくり飛んでくる弾なら避けられるようになり、あの扇を使えば2、3個の弾を撃ち出せるようになった。地上から30センチくらいをゆっくり浮きながら移動することも、成功率は7割程度まで上がっている。
もっと早く動けるようになるか、もっとたくさん弾幕を撃てるようになるか。今のところはその二択だ。
「うーん」
といっても、その方面の知識が皆無な私では良い考えが浮かぶ訳もなく、もう半分諦めかけていた。
「…散歩でも行こうかな」
急な仕事は入らないだろうし、忙しくなりそうだったら能力で分かる。私は腰掛けていたベッドから立ち上がり、自室のドアを開けて外へ出た。


あまり遠くへ行き過ぎないように注意しながら、私は湖畔をゆっくり歩いた。小鳥のさえずる声や湖の小さくさざめく音に混ざって、遠くの方で弾幕を撃ち出すような音が聞こえる。美鈴さんからこの辺りには妖精が多いと聞いたことがあるから、私は特に気にしていなかった。
______だから気付かなかった。後ろで青い光の粒が集まって、形を成していく事に。
「はあー。チルノちゃん速すぎるよぉ……。ってわああっ⁉︎」
「へ?」
「ご、ごめんなさい!ここに居るの知らなかったんです!変な事する気はないんです!ごめんなさい‼︎」
私が振り返ると、緑の髪の小さな女の子がやけに怯えながら必死に謝っていた。その子の背中には______羽。
「あの、なんか勘違いしてません?」
「……えっ?あ、違う人だった…。………よかったぁぁ…」
私も少し面食らいながら声をかけると、その妖精はふううっと安心したようにため息をついた。
「すいません…。メイドさんの格好してるからてっきりあの人だと…」
「あ、そっか…」
咲夜さんは紅魔館で唯一の人間。妖精メイドは今まで何度も会った事あるけど、みんな背中には羽があった。この子は羽が無くて、おまけにメイド服を着ている私を見てとっさに咲夜さんだと思った…と。
「ごめん、私は橘美咲。つい最近ここに来たばっかりで、紅魔館でメイドとして働いてるの。大丈夫、何もしないよ…というより何も『出来ない』んだけど」
「そうですかぁ。あ、私、大妖精です。大ちゃんって呼ばれてます」
安心すると、その妖精…大ちゃんは笑って自己紹介をした。その時、私はふっと疑問に思った。
「そういえばどこから来たの?全然気付かなかった」
「あ、私達今『隠れ鬼』やってるんです。それでとっさにテレポート使っちゃって」
「テ、テレポート…。すごいね」
やっぱり強くなるなんて無理じゃないかなぁ…と落ち込みかけた時、大ちゃんがふと心配そうに声をひそめて言った。
「…いきなりですけど、早く隠れた方が良いと思います。他の子に見つかったら絶対弾幕ごっこやろうって事になりますし……」
「え、そうなの?」
次の瞬間、上空から何かが落ちてくるようなヒューッとという音がした。かなり早い…。とっさに隠れようとした、その時。
「大ちゃん見ーっけ!また鬼ごっこだー!…ってあれ?」
木の葉っぱを突き破るようにして、上から女の子が降ってきた。その子は慣れたように地面にぶつかる前にぴたっと空中で止まり、私を不思議そうに見た。
「大ちゃん、この人だれ?」
「えっと、私もさっき会ったばっかりなんだよね。紅魔館のメイドさんらしいんだけど」
「ってことは、メイド長の子分なんだね!やい子分!さいきょーのあたいと勝負しろ!」
「子分って…」
あぁ、こうなるのか…。私がげんなりしたのをどうとったのか、降ってきた女の子はふふんっと胸を張って言った。
「どうしたー?降参するなら今のうちだよ?」
「うん、降参」
「ふふん、あたいに挑むなんていい度胸だ!」
………人の話を聞け!
「チ、チルノちゃん、この人、降参って」
「ほーら!こっちだよー!」
大ちゃんが慌てて止めようとするも聞かず、チルノと呼ばれた妖精は勢いよく上空に飛んで行った。
「ど、どうしよう…。私飛べないんだけど」
「チルノちゃーん‼︎降りてきてーっ‼︎」
私がわたわたしているうちに、チルノははるか上空に陣取っている。
「おーい、早くー!」
だから人の話を聞け。
「ああもう!待っててくださいね、私がなんとか言ってきます!」
大ちゃん、ごめん。
それにしても、なんとかしないと…。あぁ、飛べたらな…。
『…よ……』
「うん?」
どこからか声がする。私はかすかなその声に耳を澄ました。
『我に命を与えよ。我、汝の力となりし者。汝に翼を、汝に盾を』
『我に命じよ。さすれば汝の剣、敵を貫かん』
「……どういうこと?」
命じよ…って、誰に…?パチュリーさんの時みたいに声に出せって事?
『…飛べ!』
…次の瞬間、足元が緑に染まった。
「……えっ?」
さっきまで居た森が、眼下に広がっていた。…というより、私が上空に居た。
「え?え?えええ?」
「やっと来たかー!さあ、勝負だ!どこからでもかかってこい!」
そして目の前にチルノが居た。
「…どうしてこうなった……」


「ねえ咲夜」
「はい」
「美咲はどこ行ったのかしら」
「さあ…。あとで厳しく言っておきます」
「それより訓練の時間伸ばした方が本人は嫌がるんじゃない?」
「ふふ…。そうですね」
「決まりね。フランと遊ばせようかしら」
「妹様が喜ばれますね」
「あ、良い事思いついたわ。…に稽古をつけさせれば良いのよ。体力もつくし、良いこと尽くしだわ」
「では伝えてまいりますね」
「よろしくね」


「わはは、どうだー!逃げてばかりじゃ勝てないぞーっ‼︎」
「だから降参だって、おっとと…」
十分ほど経過。霧の湖、上空。
最初から、私はチルノに押されっぱなしだった。
「氷符『アイシクルフォール』!」
パチュリーより密度は低いが、若干早い。おまけに私は空中で避けるのは初めてで、自分でも危なっかしいと感じる。
「どうしたどうしたー?そんなふらふらしてると当てちゃうよー!…それっ!」
「わわわ!」
小さな矢じりのような氷の結晶がメイド服の袖をかすめて飛んで行った。弾幕だけじゃなくて空気から氷を創り出して撃ってくるのがまた厄介だ。
「あははは!びっくりしてる!やーいやーい!」
チルノは私が追い詰められているのを見てはしゃいでいる。また姿は見えないが、他の妖精も集まって来ているらしい。小さな笑い声が下の森からかすかに聞こえる。なんとか反撃したいが、手段がなくては相手が飽きるか止めるまで避けるしかない。わざと当たって終わらせるのも考えたが、チルノの能力のせいか湖に薄く氷が張っていて、そしてその氷がチルノの弾幕で一撃粉砕されたのを見て止めた。
「…ああもう!考えてても仕方ない!」
私は緋扇を取り出して、それを横薙ぎに振った。
「そんなので何するつもり…わぁぁっ⁉︎」
覚えたての弾幕が不意を突かれたチルノに命中して、チルノは少し仰け反った。
「…いたたた、やったなー!もう怒った!凍符『パーフェクトフリーズ』‼︎」
チルノが態勢を立て直し、様々な色の丸い弾幕を撃ってきた。隙間を縫って避ける。
「これだけじゃないよ………えいや!」
ピシィッと周囲の空気が丸ごと凍りつく音が聞こえて、弾幕が一斉に動きを止めた。
「えっ、何⁉︎」
「ふふん、これがあたいの『ひっさつわざ』だよ!そーれ!」
チルノの掛け声で、止まっていた弾幕が一斉に動き出す。慌てて私は下に降りて、湖面すれすれを飛んで逃げた。
「あっこら、待てえー!」
チルノが追ってくる。そのうち追いつかれるだろう。
どうする?落ち着け、考えろ考えろ考えろ…。今自分に何ができるか考えろ。
『我に命じよ』
戦い始める前に聞こえた、あの声を思い出す。
『…美咲、いざって時は自分でなんとか出来るようにならないとね。だから、覚えておきなさい…』
優しい声が聞こえてくる。子供に言い聞かせる、穏やかな声…。
『これは、貴女を護ってくれるおまじない________』
「霊歌……」
唱える。
「『言の葉・蓮花蝶』」
目の前が、さっと明るくなった。身体が暖かくなってくる。私は静かに緋扇を開いて、前方を扇ぐように振り下ろした。
「な、なに…?…わぁぁぁぁっ⁉︎」
目も開けていられないほどの眩しい光の中で、チルノの悲鳴が聞こえた。薄く目を開けると、光る何千匹もの蝶が、飛び去って行くのが見えた。


「ん?」
私はふっと顔を上げた。目を凝らすと、光る蝶の群れが空に飛び立ち、光の粒を振りまきながら消えていくのが見えた。
私はあんぐりと口を開けていたが、やっとのことで言った。
「な、なんですかあれは……」
私はしばらく門前から動けなかった。
to be continued…

はい、どうも。あまなつみかんです。
とうとうやってしまった。オリジナルでスペルカード…。良い名前が思いつきませんでした。厨二チックなのは許してください。
美咲のスペルカードの説明は別に出します。チートではないのでご安心を。
<2016/10/14 16:53 あまなつみかん>消しゴム
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