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君の笑顔を


俺はしばらく、遊び疲れて眠る子供のような高校生の寝顔を眺めてた。

「あっ…」

「んーーっ、ったたた!」

「起きたか」

「えっ!?わっ!」

奥寺は勢い良く起き上がり、辺りを見渡した。

「相…原くん……」

呼び方、戻った。

最高 翼まで行ったのに。

帰って来た。

「子供みてぇ」

「何そのバカにしたような言い方!」

「バカにしてんもん」

「ムッカ〜っ」

自分で言う奴居るんだ。

こいつは全てに関して初めての奴。

「えっ、今、何時?」

「8時」

「うわっ、ごめん」

「しょうがねぇから送ってってやる」

まぁ、付いてくだけなんだけど。

「良いよ。危ないから」

うん、だから行くって言ったんだけどね。

「気にしないで?私は男も抱けますから」

何か、怖い。

「じゃあねっ」

「あぁ、そっち」

「あ、こっち?」

「それ」

「ハハハッ、じゃあね」

「あ、おぉ……」

奥寺は騒がしく俺の部屋を出て行った。

一気に静かになった部屋。

そして今まで奥寺が寝ていたベッドに触れるという、
怪しい俺が出てくる。

その時、雑に部屋のドアが開く。

「あの、もうちょい丁……」
「一人で帰らせたの?」

「まぁ、はい」

「ダメだよ、彼女でしょ?」

うん、友達、ね。

「今から追えば間に合うから」

「帰されるだけでしょ。あいつはそういう奴」

「凄い寂しそうだったよ?聞いても、教えてくれなかったけど」

「さっきの人が?」

匠は小さく頷いた。

「一人に、しないであげて?」

一人、か。  

意外と慣れてなさそうだもんな。

「ちょ、ごめん」

「急げっ」

俺は部屋を出た。

そして階段を降りる前に気付いてしまった。

「あぁ!」

「何」

「前髪、取るの忘れた」

「んなのどーでも良いだろ。誰も見ちゃいない」

弟、強烈。

そして正論。

俺は適当に縛った前髪をそのままに、家を飛び出した。


そんなに走ることも、なかったけど。

「奥寺……」

「相原く……ハハハッ、前髪縛ったの?すんごい可愛い」

俺は恥ずかしくて前髪を下ろした。

「ハハハッ、それ見せに来てくれたの?」

「バカ。早く帰んぞ」

「相原くんは家ここじゃん」

「ゴチャゴチャ言ってねぇで早く行くぞ」

「家知らないくせに」

「家は知らんがこの辺の道なら分かる」

「この辺分かりづらいもんね」

「迷ったら最……」
「最後って何!?」

後、言ってないけど。

「一度迷えば帰ることは出来ない」

「嫌ぁ!付いてきて」

なんて素直な女。

可哀想になってきた。

俺はそんな気持ちを隠し、奥寺の前を早めに歩いて
行った。

「あっ!相原くんっ、待って!置いてかないでよ〜っ」

そう言って俺の背中に飛び乗る奥寺。

「うわっ、腰へのダメージが……助走は付けないで……」

「腰弱いの?」

「強そうに見えるか」

「とっても」

「中が弱いの」

「中って何?」

確かに。

「まぁ、色々あんだわ」

「ふぅーん」





再び眠りについた奥寺を背負い、しばらく適当に歩いて
いると『奥寺』と書かれた表札が掛かった家の前に。

「あの、奥寺、ここ?」

「ん〜、うわっ!」

何回やるんだよ。

けど、そんな奥寺が可愛かった。

「凄〜い!着いたぁ!」

「じゃあ、俺はここで」

「ほんとにありがとね。気を付けて」

「あぁ」

俺はポケットに手を入れ、下を向いて家に向かった。

「あ……」

俺はついその足を止めた。


ここまで、どうやって来たんだっけ。


<2016/08/05 21:15 秋の空>消しゴム
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