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君の笑顔を


あれからしばらくして教室に戻った私。

隣に、相原くんの姿はない。

どこ、行っちゃったんだろう。

『あいつは自分を出さねぇんだよ……』

『自分の気持ちや状態を上手く伝えられないのが
あいつだ』

そんな相原くんが今、教室に居ない。

もし、これで私に気付いて欲しい何かがあるなら。

私は絶対に気付いてあげたい。

相原くんからの、行動で示した私へのメッセージ。

絶対に受け取りたい。

私は相原くんの席の周りを見たり、相原くんの性格を
考えてみた。

人見知りかは分からないけど、自分を出せない。

自分の事を伝えられない。

それが、相原くん。

そんな相原くんの席の周り。

特に変わった様子はない。

ダメだ。

探偵ごっこは終わり。

何1つ分からない。

相原くん、どこ行っちゃったの?

さっき話して、教室を出たっきりか。

あれから結構経ったもんね。

「荷物……あっ」

荷物、ある。

とりあえず校内には居るって事かな?

『笑ってはいけないと思ってるんだ』

『もう一度笑うことを思い出して欲しい』

相原くんに、何があったの?

今、あなたはどこに居るの?

相原くんが私に求めてる事は何?

私が、相原くんに出来る事。

確かに少ないかもしれない。

少なくても、小さくても。

積もっていけば大きなものになる。

チリも積もればってやつかな。

いつか、私がこの小さな力で、長い時間を掛けてあなたを変えてみせるよ。

絶対に。

約束する。

あなたのその綺麗な顔に、再び笑顔を吹き込んであげる。

その、無の仮面を取ってあげる。

「あっ」

そんな事考えてる暇があったら探し行こうよ。

私はやっと現実に戻って来て、再び教室を出た。

「ちょ!楓っ!」

千花が追ってきて、私の腕を掴んだ。

「千花?」

「相原、探しに行くの?」

「だったら?」

「もう、もう相原の事は気にすんな。相原は大丈夫
だから」

「千花?」

千花は何を知ってるの?

相原くんの、何を。

「少しの間だけ、1人にしてあげよう」

「なんで……」

「大丈夫。そういう時間も必要だろ?一回、お互い冷静に
なろう?」

「けど、いま?それは、いまなの?」

何故か、今にも泣きそうだった。

「いま、このときに……あいはらくん……ひとり…」

「そうだよ。今、あいつは1人になろうとしてる。
だから今、教室にも居ないのかもしれないよ?」

遂に涙が溢れた。

そんな事も知らずに千花は続ける。

「今 相原が教室に居ないのは、『少し1人になりたい』
っていう、相原からの行動でのメッセージかもよ?」

相原くんが、行動で私に伝えたかった事。

『1人になりたい』

私は、気付いてあげられなかった。

相原くんの変化に、気付いてあげられなかった。

そんな事が悔しくて、そんな自分が嫌で。

千花に抱かれる私の目から、涙がどんどん溢れていった。

「大丈夫。落ち着いたら、冷静に考えられるように
なったら。絶対戻って来る。相原だよ?相原翼だよ?」

「わたしじゃ……だめなのかもね……」

「そんな事ないよ?相原は、絶対に戻って来る。
相原の事、信じてあげられるでしょ?」

小さい子に話し掛けるような千花の優しい言葉と声に、
泣きながら何度も頷いた。

誰が通るかも、誰に見られるかも分からない廊下で。


<2016/08/06 10:06 秋の空>消しゴム
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