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君の笑顔を


あの、朝から大泣きした日から1週間経った今日。

相原くんは一度も姿を見せていない。

1周間、ずっと休んでる。

欠席の理由はバラバラ。

体調不良だったり、用事だったり。

体調不良。

確かにそうだね。

疲れちゃったんだよね。

無理に、笑って。

自分を作って送る、学校生活に。

『落ち着いたら、冷静に考えられるようになったら。
絶対に戻って来る』

信じてるよ。

相原くんが、戻ってくると。

私に、まだ相原くんにしてあげられる事があると。

「相原さん、大丈夫かな」

「用事もあるみたいだし、それで調子も悪いん
じゃない?」

最近、相原くんを心配するそんな女子たちの声が聞こえ
始めてる。

最近にしてやっと相原人気が上昇。

けど相原くん、まだ来ない方が良い。

この人気最高潮の頃に来てしまったら沢山の女子に
囲まれる。

もし中澤さんが言ったように人見知りなら。

その女子や先生に囲まれたらまた疲れる。

意外と敏感そうだもんね。

心が綺麗っていうかさ。

私も、見習わなきゃね。

笑うこと教えてる場合じゃない。

その時、いつもの静かさが教室に。

奴だ。

担任の奴、顔を出しやがった。

まぁ、最近仲良くなってきたけど。

もう私には友達みたいな。

この学校の先生。

全員って言っても大袈裟じゃないくらい。

「奥寺、あ……」
「はい」

もう分かってる。

『奥寺、後で』

そう言われることは。

だからどれだけ早くそれに答えるかが勝負。

1日1回の勝負。

「先生、負けてますよ?」

先生、バカにされてますよ?

大丈夫なんでしょうか。

「奥寺ぁ、早いよぉ~」

可愛くないし。

私は軽く担任を睨む。

それに気付きすんなり目を逸らす担任。

楽しいね。

相原くんが居れば、もっと。

けど今はゆっくりしてね。


「はーい終わりー奥寺~」

何だか言葉の一部になってきている私の名前。

失礼な担任ですこと。

私はそんな失礼な担任と廊下に。



「後で、もっと大事な話がある」

大事大事って、もう全部大事なんじゃん。

「あのっ」

「何?」

「今じゃ、ダメ?」

「良いけど、長くなるぞ?」

そのためにそう言ったんです。

授業お休みしたくてね。

「別に良いよ。相原くんの事なら」

私の演技力も急上昇。

「そっか、分かった」

先生は荷物をまとめてくる、と教室の中へ。


しばらくして出てきた担任。

「もう少し待ってて」

「え、うん」

「あっ、どうも~」

でた。

大川 清。

「おはようございます」

「今日は丁寧じゃん」

なんて失礼な奴。

この学校はこんな奴ばかり。

まぁ、そんなもんだと思ったけど。



そして今日も連れて来られたのは何故か保健室。

保健室で大切なお話、好きね。

「相原くんの事、何か教えてくれるの?」

「最近、相原がおかしいんだ」

どういう意味で。

おかしいって。

あなたも可笑しいけどね。

「最近、気分の浮き沈みが……」

あーあ、さらに重症化してんじゃん。

それでもあなた達は私と相原くんを一緒に?

あれ、でも何故?

「何でそんなの知ってんの?」

「毎日行ってる」

「家?」

大川先生は頷いた。

こいつ、バカだ。

「ちょっと今日は許してね?」

大川は不思議そうな顔をして頷いた。

「お前バカ?なんで毎日行ってんの?話もしなくなった
って言ってたのはお前だろ?分かってやれよ。何があったか知んないけどさ、今の相原くんは普通じゃないんだよ。
色々落ち着いてないの。そんな状態であんたが先生として
毎日、家に行ったらどうなるよ?」

黙りやがった。

私はついため息を吐いた。

「いや、大川先生も、ほら。心配で……」

担任が必死に私を落ち着かせようとする。

けどこいつのこの態度にさらに腹が立つ。

何で今大川をかばうの?

「心配なら少しくらいそっとしといてあげてよ」

私には、出来なかったけど。

けど今は全く関わってない。

私でも分かるのに。

何でこの大人達が分からないの?

「何で相原くんが来てないか分かる?」

何か答えなさいよ。

「1人に……なりたいんだよ……」

私も気付いてあげられなかったけど。

けど学校に来なくなれば流石に分かる。

けどこいつらは分からなかった。

「奥寺?」

「何」

自分でも驚くほどそう言った声は低かった。

私はつい担任を見た。

「ごめん……何?」

「いや、落ち着いて?」

「どっちがだよ?もう相原くんは高校生。少し放っとく
くらいの気で良いんだよ」

いや、私も高校生なんだけどさ。

「何でそんなに必死なるほどに相原くんに来て
ほしいの?」

どうせ学校の印象とかその辺でしょ?

学校側の人間はそんなもん。

生徒の事を考えて行動する人はほぼ居ない。

「もし、その必死になってるのが相原くんの為なら、
あなた達は間違えてる……」

私は呟くように言って保健室を出た。

「楓……」

その時、驚いたような千花に呼ばれる。

「どうしたの?」

「ちょ、暴れたねぇ~」

「もう何か、どうでも良くなってきた」

私は笑ってそう言い、教室に向かった。

「楓」

それを止めるような千花の声に振り返った。

「相原の事…?」

「何が?」

「その、どうでも良いって……」

千花の声は、とても暗かった。

「そんな訳無いでしょ?自分の事」

「それならそれで言う事がある」

どっちにしろ怒られるんだ。

「自分の事も大切にできない人に他人の事なんか大切に
できない」

あれ、何か、誤解生みました?

「えっ、違う……」

「何?」

「私は、相原くんの負担を減らしたいの。そのためなら、先生に変な態度とって辞める事になるのも良いって意味」

「凄い奴だな……何でそこまで相原を?」

「私の、翼だから。その手入れをしてるだけ」

「翼……か」

そうだよ。

相原翼は、私の人生を支える、大きな翼。

だから、その翼が楽に私の背中に居る事が出来るように、
サポートしてるだけ。

今は、その翼、傍には無いけど。

その翼が、帰って来やすいように、周りの状態を整えてる
だけ。

帰って来た時、すぐに私の背中で翼としての役割を
果たせるように。

だから私は待ってるよ。

この、小さな学校で。

君が心の傷を癒やしている間に、私はこの場所を整えて
おくよ。

これが、私が君に出来る、最後の事かもしれないから。


<2016/08/06 11:43 秋の空>消しゴム
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