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君の笑顔を


私は相原くんを追うように教室を出た。

そうしたらすぐそこの壁に寄りかかってた。

「大丈夫?」

「ちょっと……」

そう言ってどこかへ向かう王子様。

私もついていった。





そして連れて来られたのは誰も来ないような階段の
踊り場。

そういえば初めて相原くんと話した所。

「どうしたのさ」

「別に」

さっきも思ったけど、本当に不安定なんだね。

「良いよ。今日はここに居よ?」

私がそう言うと何も言わずにその場にしゃがむ王子様。

「大丈夫?調子悪いなら保健室連れて行くよ?」

「いやっ、それは……」

嫌なんだ。

私はそんな相原王子の隣にしゃがんだ。

「気ぃ、遣わないで?」

「うん……」

少し高くなってきたけど、今日は低い日なのかな。

あの高い声、好きなんだけどな。

女の子程じゃないけど、一瞬迷うくらいに可愛い。

「誰の事も、気にしなくていいからね?」

私が言うと相原くんの顔つきが少し変わった気がした。

こういう小さい所気付いていかないと分からないよね。

相原くんが笑わなくなった、本当の理由なんて。

もう大川先生も教える気なさそうだし。

ヒドいよ。

あなたが言ったから私は今こんな事になってるの。

笑えなくなった学校の王子様を笑わせるなんて。

やりたくなんかなかった。

「人の……」

あっ、声高くなった。

あぁ、話聞いてあげないと。

「ん?」

「人の……幸せ………なんでもない」

「そっか」

人の幸せ。

その為に、笑わないの?

何でそんな事。

誰かに言われたとか?

そんなに気にする必要あるかな。

まぁ、色々気にするような人ではありそうだけど。

そんなに笑わないようにする程?

もう聞いちゃいたくてしょうがないんだけど。

「あのさ」

私の声と、高い相原くんの声が同時に言う。

「相原くん、良いよ?」

「もし…さ……」

緊張してるの?

「ゆっくりで良いよ?」

私が言った時、鼻をすする音が。

え、また泣かせちゃったの?

私?

別に泣かせるようなことしたつもりはないんだけどな。

私はとりあえず相原くんの少し小さくなった気のする
背中をさすった。

「相原くん、どうした?」

何も言わずに首を振る相原くん。

何もないわけないんだけどな。

無理し過ぎじゃない?

ストレスだろうに。

笑いたいのに笑えないなんて。

しかも小3の頃からでしょ?

それで今は高1。

1個学校超えちゃいましたけど。

「お…く……」

「ん?大丈夫っ」

ダメだ。

可愛いかも。

「私に行くところなんてないから」

相原くんは顔を上げ、邪魔な前髪をかきあげた。

目、大っきい。

しかも黒くない。

茶色くない?

そんな綺麗な目で見ないで。

私はつい目を逸らした。

「おく…でら……」

何その呼び方。

すんごい可愛いんですけど。

再び視線を相原くんに戻すと抱えた長い足に顔をうずめていた。

身長差、7センチ。

座高の差、かなり。

いやぁ、悲しい。 

「奥寺……」

そんな事を考えていると相原くんが私の手を掴んだ。

「どう…したの…?」

「いる……」

相原くんは安心したようにそう言い、私の方へ倒れて
きた。

「相原くん?おーい」

私は軽く相原くんの小さな体を揺さぶった。

「あれ、何してんの」

何だか聞いたことのある、ただ言ったって感じの声。

そんな声がした方を見ると中澤さんが居た。

「中、澤さん?」

「あっ、失礼……」

「あぁ、違うんです!」

「何?」

別に言い訳したいわけでもないんだけど。

「え、それ誰?」

それ。

「相原くん……」

私が言うと中澤さんは少し慌てて階段を上がってきた。

「ちょ、相原?相原……」

ちょ、後輩の扱い雑じゃないですかね?

「中澤さん?」

「あ、おてて繋いで夢の世界へ旅立ったイケメンね」

「えっ、おてっ、違いますよ!?」

中澤さんは楽しそうに笑い、手、そのままな、と言い
相原くんを余裕で抱き上げた。

「ちょっ先輩、何するんですか?」

「先輩ねぇ、初めて言われた」

初めて言いました。

「とりあえず、保健室行く?サボれんぞ」

そう言ってスタスタと先を歩く中澤さん。

「待って、なかざ、ちょっ」

「何、うるさい。起きちまう」

なら静かにさせてくださいよ。



私は中澤さんに相原くんが眠りにつくまでにあった事を
伝えた。

聞かれたから、ね。

「ふ〜ん……」

「何ですか?」

「相原には、奥寺が必要なんだよ」

「相原くんに、私が?」

中澤さんは寂しそうにあぁ、と呟いた。

「中澤さんは、相原くんと何かあったんですか?」

「まっ、こいつは憶えてねぇみてぇだけどな」

「そう、ですか……」
 
言いたくないのかな。

中澤さんと、相原くんに何があったか。


<2016/08/06 15:25 秋の空>消しゴム
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