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君の笑顔を


「奥寺楓」

私のこの、最高に高まった気持ちを海底ほどの深い所に
沈める担任の声。

「何ですか?」

「こーれっ」

担任がそう言って渡したのは真っ白の紙。

「これに?何をしろと?」

分かってる。

再来週のイベントの飾りを考えろ、ですよね。

「イベントの、飾りをね?」

「どんな内容なんですか?」

それによってかなり変わってくる。

「結構大規模にしよっかなって」

結構困るやつ。

結構考えないとダメですよね。

「んで、障害物辺りをやろっかなって」

今回のターゲットは子供。

「だから〜、その障害物と飾りを」

何故そこまで私に?

私はキツめの目で担任を見た。

「いやぁ、居ないんだって。そんなにセンスの良い人」

「アタイはぁ?」

「チカ様はほら、ね?」

「私の次に怖い女の子っすよ?怒らせない方が良いっすよ」

「大丈夫。奥寺程じゃないから」

こいつ、ぶっとばす。

「まっ、そういう事で」

こんなのただのお絵描きでしょ?

何故それを私に。

分かってるよ?

この方がこの辺のそこそこ偉い人っての。

それでイベントの内容を考えたりしてるみたいなんだ
けど。

それで思いつかない時は私達生徒に助けを求める。

それで優しく引き受けてあげる私。

なんて優しいのかしら。

こんなに優しい人はいないわ。

「はぁ」

自分で悲しくなってきた。

「あっ、相原」

担任が呼ぶと相原くんは私の隣へ。

「相原、暇?」

「はぃ……」

何でいつもこんなに声小さいんだろう。

特に理由は無いのかな。

「んで、これ?」

担任は言い出しづらそうにさっき私に渡した紙を出した。

相原くんはそれを受け取り、少しそれを見て担任に視線を移した。

「今度そこの公園でイベントやるじゃん?」

私は席に戻り、そこから相原くんを見た。

大丈夫、かな。

「その、飾り?を考えてもらおうかなぁ、と……」

「いつまでに……」

「とりあえずそのイベントが再来週の日曜日だからそれ
までには」

「はぃ……」

えぇ、引き受けちゃうんだ。

優しいのね。

「断れば良かったのに」

私は席に戻ってきた相原くんに言った。

「奥寺ぁ、そんな事言わないで?」

「ならっ」

私はチャックするように口元で手を動かした。

担任は有り難そうに頷いた。

そんな担任がほんの少し可愛くて笑顔で首を振った。

そして隣の相原くんの紙を見てみると。

「うっ、そ……」

相原くんの視線机の紙から私に。

「あっ、いやっ、早い…のね……」

「まぁ……」

少し恥ずかしそうに言う相原くんは堪らなく可愛かった。

声の表情は、いつもどおりだけど。

顔も普通に見てたら分からない程。

「せんせぇ〜」

千花、バカにしてるよね。

「ん?」

「あたしのやることは〜?」

「ない、かな?」

あ、千花の顔が変わった。

「暇ぁ」

「じゃあ勉強でも」

「そーゆーの求めてなーい」

どーゆーの求めてんのよ。

「あっ」

つい声が出た。

来ちゃったよ。

「どうも……」

相原くんは何も言わなかったけど軽く頭を下げた。

何しててもかっこいいのね。

私は勉強してても勉強しろって言われるのに。

絵なんか描いてんなって。

絵じゃないし、みたいな。

こっちは暗号みたいな英語と格闘してたっていうのに。

あぁ、でも科学もそうか。

もう色んな記号出てきて。

訳が分からない。

「本当に同時に始めたの?」

「千花ちゃん?」

「あっ、すみません……」

隣で騒ぐ私達が居ないかのように色々書き進めていく
相原くん。

真面目、なんだね。

私や千花とは大違い。  

「どうしたの?」

「愛澄っ」

「わぁ、相原くん凄い」


「相原くん?」

真っ白い紙がいい感じに黒くなってきた頃、相原くんの手が止まり、少し緊張が伝わってきた。

顔は綺麗すぎるほどの髪で隠れてて見えない。

相原くんはため息ほど感じ悪くなく息を吐き、紙を
机の中へ。

そして教室を出た。

気、遣う人なのかな。

えっ、じゃあ笑わないのも、誰かの為に?


<2016/08/05 15:08 秋の空>消しゴム
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