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君の笑顔を


私達はしばらく相原くんの出て行ったドアを見ていた。

「相原は、大丈夫だから。書い…てて?」

先生、全然大丈夫そうに聞こえないのですが。

私は教室を出て行く担任に心の中で言ってみた。

「相原くんって、何がありそうじゃない?」

愛澄が千花に抱きついて言う。

緊張、解けたのかな。

今日の緊張は。

「う〜ん」

「楓、何か知ってる?」

こういう時私、知らなかったらなんて言うんだっけ。

あっ、そうか。

「何も?」

「そう……」

「相原くん……」

「何?愛澄が相原好きなの?」

「恋愛感情は無いよ?けど、少し心配なだけ……」

「心配?」

私と千花が同時に言うと、愛澄は頷いた。

「何が?」

「何か、寂しそうな目、してない?」

私達3人しか居ない静かな教室に、愛澄の悲し気な声が
響く。

寂しそうな目、か。

冷たいって取っちゃったけど。

寂しい、か。

「相原に何かあったってこと?」

「いやっ、違う。私が、勝手に……」

千花、ビビらせないでよ。

せっかく何か知れるかもしれなかったのに。

まぁ、千花の服掴んでる時点でそんなでもないんだろう
けど。

「あっ!」

愛澄が珍しく大きめな声を出す。

私と千花は愛澄の視線の先を見た。

なんだ。

担任じゃん。

「ん?」

「あっ、いえ……」

「相原くん、何かあったんですか?」

「あぁ、いや、何も?」

素直すぎ。

何かありすぎだっつーの。

私も教室を出た。

とりあえず、さっきの踊り場かな。

「あれっ」

でも、そんな私にバレそうな所、行くかな。

まぁ、とりあえず行ってみよう。





私はさっきの踊り場へ。

そこに、相原くんの姿はなかった。

「そりゃ、そうだよね」

でも、ならどこに?

本当に帰っちゃったのかな。

荷物も持たずに?

「はぁ〜っ」

男の子、難しい。

「相原くん、どこ行っちゃったのぉ〜?」

千花のムカつく言い方でそんな言葉が聞こえてきた。

私はその方を見た。

「相原、居ねぇんだけど」

「探す」

「はぁ!?」

「相原くん、探す」

「いや、何か怖えけど?」

「なら教室行ってな」

私は走ってその場を去った。

何故か千花も隣を走ってるけど。

そしてしばらく走った頃、気付いた。

「ちょっ!千花!」

「うあっ!何よ……」

「愛澄……愛澄も居ない」

「あれっ、ああ!ほんとだ」

嘘は、言わないかな。

こんな時に。

「愛澄と居るのかもな」

嘘……

相原くんが?

愛澄と?

何で……

別に誰と居ても良いんだけど、相原くんが愛澄と居るとはどうしても思えない自分がいた。

さっき、愛澄が千花に抱きついた時、何か変わったもん。

千花?

千花の事好きなのかな。

いやいや。

あの相原くんがそんなこと……

しかも、愛澄女の子だし。

「あっ!」

私は何となく保健室に向かって走りだした。

「いやいや、よく分かんないんだけど?」

そう言いながらもついてくる千花。


少し走ったところで保健室の前に。

「和菜ちゃん!」

「うん、先生ね?」

「相原、相原くんは?」

「え?」

「あぁ、いや。居なくて……」

「楓?落ち着きな?」

本当だよ。

私は深呼吸した。

「相原くんが、居なくて……」

「うん、それは分かるんだけど。何故ここに?」

「じゃあ居ないのね?」

「えぇ……」

私達は再びどこかに向かって走りだした。

まだ目的地は決まってない。

ただ、こうしてればいつか会える気がした。

「あれっ、相原?」

「は!?」

「そこ」

千花は少しずつ走りを遅め、止まって指を指した。

私も止まってその指が示す方を見た。

その先には誰かと話をしているような相原くんが。

態度や表情から見てかなり親しい人だと思う。

初めて見るほどリラックスした相原くんの顔。

そして、どこかバカにしてるのね。

まぁ、クール王子だから、ね?

「誰だろ」

「う〜ん」

そしてしばらく見てた、その時。

「えっ、嘘……」

私はまた声が出た。

「えっ?」

「いや……何でも、ない……」

相原くんが、笑った。

あの口元。

絶対笑ってた。

鼻から上は長めの前髪とその影で見えなかったけど、
あの口元は、絶対。

私も笑顔になれた。

相原くんにも、笑顔を見せられる人が居るんだね。


「奥寺」

低い相原くんの声が私を呼ぶ。

バレ、てる?

隠れてたのに。

「ん?何?」

「こっちのセリフだし」

私はこっそり千花を逃がした。

捕まるのは私だけで十分。

うん。

「いや、教室出てからなかなか戻って来ないし?うん……」

「気にすんな…」

相原くんは教室に向かった。

私もそれについていった。

まぁ、同じ教室だからね。



もう教室に着く頃。

「相っ!原…くん……」

相原くんは優しめな目で私を見た。

「今の……誰?」

「教える程の奴じゃない……」

相原くんは、やっぱり呟くようにそう言って教室の中へ。

私だけが残された廊下には、雨の音だけが鳴り響いて
いた。


<2016/08/05 15:57 秋の空>消しゴム
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