おためし小説投稿

登録一切不要で小説投稿!
文字サイズ変更 
君の笑顔を


あの、相原くんの笑顔を見た日から数ヶ月が経った頃。

中澤 瞬(なかざわ しゅん)という人物を知った。

可愛い系クール王子・相原 翼の唯一の友達らしい。

あの時会ってたの、中澤さんなのかな。

けど、1コ上の先輩。

危ない、よね。

変に手ぇ出さない方が良い。

相原くんも危ない人なのかな。

えぇ?

優しそうだけどな。

私だけ、みたいだけどね。

私の相原くんへの笑って欲しい思いが高まる一方で、周りのクラスメイトは相原くんへの警戒心が強まっているのが現状。

何故そんなに怖いのか。

私にはきっと分からないだろう。

確かにあの目は怖い時もあるけどさ。

そんなに?

あともうひとつ驚く所が。

髪の長さが変わらない。

常にあの長さキープしてる。

あの、悪いけど邪魔な前髪も。

縛ってあげたい。

凄い似合いそう。

目から上ダメだったり?

いや、全部良さそうだけど。

目は何回か合ったし。

けどやっぱり影になってるのね。

今もその前髪は相原くんの目元を隠してる。

下向いてるからね。

常に。

笑った時、バレないようにかな。

最近、そう思えてきた。

もう1つ1つの言動がそれに関わってる気がしてきてる。

そんな事を考えて学校に向かっていると、背中に痛みが。

「楓〜っ」

「うわっ、千花!」

「あずみんも〜っ」

「はぁい。皆様おはようございます」

「おはようございまーすっ!」

はぁ。

1人が良かった。

一気に4人増えたからね。

今日も私は千花、愛澄、その他2人を連れて学校へ。

まさかの女5人組。

最近私達も怖がられてきてる。

まぁ、それくらいが楽だけど。

「あっ、中澤さんだ」

「あれ?中澤って、相原の……」

私は千花のその言葉に頷いた。

「なんで?」

「隣に?」

「相原くんが居ない……」

「いやいや、ほら、まだ来てないだけとかさ。色々あん
じゃん。その場に居ない理由んてのぁ」

千花が必死に場を明るくしようとする。

「まぁ、そうだよね……」

私達は昇降口へ。

「靴確……」
「キモいよ?」

千花、強すぎない?

最後まで言わせるのは大前提でしょうよ。

千花、怖い。



私達は教室に来た。

そこにも、相原くんの姿はなかった。

綺麗に置かれた鞄はあるのに。

「おかしくね?」

「なんでこんなに丁寧に置かれてるの?」

千花と愛澄は軽く怖がってる。

怪奇現象じゃあるまいし。

「準備しようとしたら誰かに呼ばれたとかさ。
色々あんじゃん。鞄が綺麗に置かれてる理由なんてのぁ」

私はさっきの千花風に言ってみた。

「えっ、ちょ!楓!?」

「何〜?」

「ちょいちょい、それはマズいって」

「もう終わったから」

「怒られても知んないよ?」

「それだけの元気があれば大丈夫。しかも見てない
っしょ」

って騒いでる時に出て来てくれたらいいのに。

やっぱりそこは現実なんだね。

いくら相原くんも。

人間なんだね。

私は机に鞄を投げ、教室を出た。

「楓っ!」

千花も。

愛澄も居る。

残りの2人は相原くんが怖い人だから待ってるらしい。

あの時の場所に、相原くんは居なかった。

「数ヶ月前はここに……」

「あぁ。他、行くか」

「他!?まだ、まだ走る、の?」

愛澄、ギブアップ。

「教室戻ってたら?相原くんも居るかもしれないし」

「別、別に、相原……くん、はぁ、はぁ……」

もう絶対ダメなやつじゃん。

「千花だけでも行こ?」

「置いてかないで!」

置いて行かれるのは嫌なんだ。

私達は屋上、踊り場、保健室、空き教室……色々探した。

けど、どこにも相原くんの姿はなかった。

「相原ぁ〜っ、どこ?もー疲れたで?」

「相原くん……鞄があったって事は一度は教室に来たんだよね?」

「あぁ、だろうな…はぁ……」

「くっそ……」  

「か、か楓?」

「携帯確認すりゃ良かった」

「えっ、ヤバい楓が出てきたよ?」

「有るか無いかだけだよ」

「あっ、中見るんじゃないのね」

見るかよ。

興味無いわ。

「携帯無かったら、もう学校には居ないわな」

「何で?」

分かってよ。

「教室着きました、携帯鳴りました、鞄丁寧じゃない?」

「あぁ、んで?」

「あっ、終わ……り?」

「いやいや、何で学校に居ないって分かんの?」

「こんだけ探して居ないんだよ?だったらその電話は急用の何かだって考えんのが自然だろうが」

「ふ〜ん。探偵ごっこは楽しかったか」

私達は聞き覚えのある呟くような声に顔を見合わせ、
その方を見た。

そこには片手に携帯を持った相原くんの姿が。

「相原くん……?」
「相原、じゃん……」

「俺の何を心配したか知んねぇけど鞄の中は見んなよ」

「だって、居ねぇんだもん。教室。中澤さん見かけたけど一緒に居なかったし?教室には丁寧に置かれた鞄
だけって。しかも探しても居ないしさぁ」

「朝からおつかれさんっ」 

このバカにした声。

「相原ぁ〜っ!背負ってけバカ」

「バカじゃねぇし」

確かに勉強は出来るよね。

運動もか。

「ん」

「ん?」

「携帯持て」

「ポケット入れりゃぁ良いじゃん」

「黙れ」

「ムッカ〜」

あの日以来、彼の笑顔を見たことはないけど、かなり話すようになった。

話すようになってくれた。

相変わらず前髪は長いし言葉も顔も表情は無いけど。

「バカップル〜っ、置いてかないで〜!」

「誰アイツ」

「いやぁ、知らない」

こうして、冗談も言えるまでに。

まだ数ヶ月しか経ってないのに。

相原くんも頑張ってるね。

「ね〜え?」

「何」

本当に表情っていうか、感情のない言葉。

「眠い……寝て良い?」

「力抜かなけりゃ」

寝るんだから力抜くでしょうよ。

つか、抜けるでしょ。

それ、寝れてないから。

「はぁ?」

「マジ黙れ。こっちゃ同じ身長の女背負ってんだよ」

同じって。

7センチも違うじゃん。

「あんたが低いんでしょ?」

「これは俺のせいじゃない」

「はぁ?引くわぁ〜」

「綱でも糸でも引いとけ。体力ついたら俺を背負え」

「糸って!あんたに私が何に見えてる訳!?納豆か!」

私が言うと相原くんはフッ、と笑った。

そう、相原くんだって人間。

笑うのは当たり前。

以外でも変な事でもない。

普通の事。

今までが変だったの。

私は必死に自分に言い聞かせた。

『あの見た目だから笑うのが想像出来ないんだろうな。
で、以外に思われたり驚かれたりするのが嫌らしい』

大川先生の、あの言葉を思い出して。

「お前、おもしれぇな……」

相原くんはいつも以上に小さな声で言った。

「相原くん?」

「初めてだった……」

あれっ、重いかな。

「良いよ?ありがとう」

あれ、降りれない。

「相原……くん?」

「しょうがねぇから背負ってやる……」

「相原くん?どうしたの?」

「んでもねぇよ……」

あれ、私、男の子泣かせちゃってる感じ?

でも、何で?

『初めてだった……』

あらっ、相原くんったら可愛いんだから。

「何とも思わないよ?」

「黙れ……」

可愛すぎないかな、それ。

「良いよ?また後で笑おうよ」


何も言わなくなっちゃった。

「良いよ、降ろして。ありがとね?」

私が言うと思った以上に大人しく降ろしてくれた
相原くん。

「あぁっぶね!殺す気!?」

「こんなもんじゃ死なねぇよ」

あ、いつもの声になった。

堪えなくて良いのに。

泣きたいのに普通で居るなんて。

耐えないでよ……

あれ、こっちまで……

「何泣いてんの」

「はぁ?泣いてねぇから」

「どうでも良いけど耐えんな」

うわ、何それ。

反則のやつじゃん。

こいつ、本当に何考えてるのよ。

そっちから人の涙誘っといて。

んでかっこいい事言おうってわけ?

そんなのかっこ良くないから。

けど、かっこ良く見えちゃうのが相原翼だよね。

我が校で最も恐れられてる可愛い系クール王子。


<2016/08/05 17:27 秋の空>消しゴム
Copyright(C) おためし小説投稿 Since2013 All Rights Reserved.