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Best Friend〜姿を変えた君と〜


愛生は何故か健と関わらないと言い出した。

なんで。

健には愛生だけじゃないの?

今日、学校で言ってた。

俺は携帯で時間を確認した。

「ハハッ」

昨日、だね。

2時半。

一睡もしないで朝を迎えるのかな。

「はぁ」

愛生、なんで急にあんな事。

俺にはしてあげられる事、ないかもしれないけど、
愛生にはいくらでもあるじゃん。

健の幼馴染は愛生だけでしょ?





『健、やっぱり夕里だよね』

愛生が少し暗い声で俺に言う。

俺はそんな愛生を見た。

『あたしが健にしてあげられる事は無いのかもしれない』

『なんでそう思ったの?だって、最初に気付いたのは愛生じゃん』

『あたしは気付いただけ。何もしなかった』

『ならこれ……』

愛生は俺が言い切る前に首を振った。

『これからじゃダメなんだよ。ああいうのは、なかなか
回復できるものじゃないから』

『なら、落ち着いたらそれからいろいろ話すればいい
じゃん』

『その頃には、あたしは健の記憶から消えてる……』

『いや、幼馴染でしょ?しかも、初めて気付いてくれた人。そう忘れないよ?』

しかも、健なら。

健、そういうのは絶対忘れなそうだから。

『ありがとう……』

愛生はそう、呟くように言ってどこかへ。





あの時の、愛生の顔と声。

凄く悔しそうで、泣きそうで。

あの時の愛生に、俺はなんと言うべきだったのだろうか。

どんな言葉を掛けるべきだったのか。

けど、俺は分かる。

健が、愛生を頼ってるって事。

幼馴染。

大切な存在でしょ。

俺にとっての、夕里みたいな。

出来ることは全部してあげたい。

何かあったら、話も聞いて、相談も乗って。

それだけでいいじゃん。

健、愛生のことは信じてるでしょ。






俺は真っ暗な部屋の中で、一人で眠りにつき、朝を
迎えた。

「いってらっしゃい」

「はい」

俺は眠気に耐えながら学校へ向かった。

珍しく晴れた、空の下で。

もうすぐにでも寝れる。

こんなに暖かいなんて。

ダメだよ。

眠気が最高レベルに達した時、誰かに声を掛けられた。

「あ、誰?」

「失礼しちゃうねぇ〜っ。幼馴染の夕里ちゃんでしょ?」

幼馴染、か。

「何?寝れなかったの?」

「んー」
 
脳は寝てる。

体がなんとかこっちの現実の世界に残ってる。

「危ないっ!」

夕里が俺の体を抱き寄せる。

「えっ?」

「目ぇ覚めた?」

「とっても」

血圧上がっちゃうよ。

「朝からこういうことはやめようね」

「頭では寝てたでしょうよ」

「そうだけど……」

今もそんなには起きてない。

10%くらいがなんとか起きてる。

「あっ……」

「ん?」

「愛生……」

俺は夕里の目線の先を見た。

「ほんとだ……」

そこには、学校の近くの大きな木に寄りかかり、空を
見上げる愛生の姿が。

俺らはお互いの目を見て頷いた。

そして俺らは愛生の方へ。

そしてそのまま中へ行こうとする夕里。

えっ、そっち?

さっきのお互いを信じてるような目は何だった。

俺はいつも通り声を掛けるのかと思っていた。

けど夕里はそっとしておく方だったらしい。

「愛生」

夕里は驚いたように振り返った。

「優」

「大丈夫」

愛生にそう言った時、鋭い視線を感じた。

俺ですら感じたんだから、その視線を向けた人物は相当な目をしていたのだろう。

愛生は下を向いた。

「愛生?」
「健……」

「えっ?」

俺は後ろを振り返った。

少し前の方には、確かに健の姿があった。

あの後ろ姿は間違いない。

そして、スクールバッグの持ち方。

方にかけるのね。

そしてそこから伸びる長い腕は制服のポケットの中へ。

「ねぇ、何かあったの?」

俺は視線を愛生に戻して尋ねた。

「みたいだね」

愛生が大人しい言葉遣い。

これは本気のやつだ。

「みたいってことは?何か分からないの?」

愛生は頷いた。

健でしょ?

そんなにすぐ怒るような人じゃない。

怒らせるほどのことしたら愛生も分かるはず。

「本当に分からない?」

「あたしはね。無意識に何かしてたのかも……
無意識の行動に嘘はないから、あたしたちにはそういう
距離感がちょうどいいんだろうね」

なんだか難しい言葉がたくさん。

俺が知らないだけかな。

「そのうち、どうにかなるよ」

愛生は驚いたように俺を見た。

俺はそれに笑顔を見せた。

俺は愛生と教室へ向かった。

健と愛生が仲直りできる事を、祈りながら。


<2016/07/30 16:43 秋の空>消しゴム
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