教室に戻り、気付けば授業が始まっていた。
「はい。終わり」
もう終わり間近だったらしい。
時計を確認すると、残りの授業はもうない。
「夕里」
健くんが何かを決心したように私の名前を呼んだ。
「なに?」
「今日……暇?」
健くん……
最高に嬉しかった。
「うんっ」
「じゃあ、今日……来て…くれない……」
久々にかなり緊張した健くんの声。
最近、やっと少し緊張解けた気がしたんだけどな。
そうだよね。
ゆっくり行こう。
うん。
「健くんの家?」
健くんは小さく頷いた。
「良いよっ。行こっ」
「ありがと……」
「ふふっ」
私は史上最高に明るい気分で帰りの準備を始めた。
もう、隣のイケメンくんは終わってるみたいだけど。
そして軽く挨拶をして、生徒たちが教室を出て行く。
「健くん?」
「あっ……ごめん…」
「また後にする?」
「いや……今日がいい…」
「そっか」
私は笑って言った。
笑おうとして笑ったわけじゃない。
健くんが誘ってくれた事が、心から嬉しくて。
「ごめんね……行こっ…か」
「大丈夫。部屋を調べるなんてしないわ」
健くんはほんの少し笑ってくれた。
良いよ。
少しずつ、笑えるようになって行こう。
笑えなくなったら笑わなければいい。
「夕里?」
そういえば健くんの私の呼び方、『さん』がとれたね。
「よしっ!行こっ!」
私は教室を飛び出した。
少し歩くと、健くんの家に着いた。
「友達で、いいよね……」
健くんが玄関の鍵を開けながら聞く。
「うん」
誰か、居るのかな。
なんとなく緊張してきた。
健くんが緊張を落ち着かせるように呼吸をして玄関の
ドアを引いた。
「あっ、健」
「翔……」
えっ、どっちがどっち?
声そっくり。
聞き分けるには大分時間が必要。
「おかえり」
「ただいま…」
「どうした?」
「ガールフレンド」
友達、じゃないんだ。
ガール、付けてくれるのね。
「へぇ〜。ファーストフレンド」
そのまま。
「あっ、弟」
健くんの表情に少し余裕が出てきた。
良かった。
「どうも」
うわっ、顔もそっくり。
もう、絶対分からない。
ケンとショウ?
「あっ、宮田夕里、です……」
「へぇ〜。健にはもったいなくね?」
兄弟っていうより、友達みたい。
健くんはそんな弟に鼻で笑い、私を部屋に連れて来た。
凄い綺麗な部屋。
私にその収納能力を分けてほしい。
私の部屋は誰にも見せられない。
散らかり放題。
けど私の部屋より今は健くんが心配。
「大丈夫?」
「あ、うん……ごめんね…こっちから呼んだのに……」
「気にしないで?ってか、本当に綺麗な部屋だね」
「そう…?」
しばらくこのままでいよう。
大丈夫だよ。
ゆっくりで。
よく私を呼んでくれた。
うん……でも、綺麗、だけど明らかに何か……
窓は、一見普通だけどこれ、何て言うんだっけ。
警察のドラマに出てくる。
片方からは鏡に見えてもう片方からはそのまま見えてる
ってやつ。
モノは知ってるけど名前を知らない。
それが私。
あれっ、『部屋を調べるなんてしないわ』って
言ったよね。
ガッツリ調べてる。
「夕里?」
「あっ」
バレた。
バレないわけないか。
「ごめん…」
「あっ、別に…」
どうしようか。
「あっ、何か言おうとしたの?」
「えっ……」
「私を呼んでくれたじゃん?」
これで、良いかな。
「あっ、うん……」
「良いよ。ゆっくりで。またいつでも来るし」
こんな事、言っちゃって良かったのかな。
また来るとか、怖いよね。
本当に言葉には気を付けないと。
私の一番苦手な分野。
「あのさ……」
呟くように、けど確かにそう言った健くん。
「ん?」
「俺……あの…いや……」
「大丈夫。私は居るよ?」
私は膝を抱えて座る健くんの前にしゃがんで言った。
危ない。
もう自分でも自分が何を言うか分からない。
『待ってるよ。健くんが言えるまで』そう言いそうに
なった。
待ってるとか、プレッシャーだし。
自分で分かってるつもりなんだけどな。
実際は全く分かってない。
勉強しよっかな。
「あっ、ごめん……」
「いや……」
私は健くんから少し離れた。
そして携帯で時計を確認した。
そういえば、時計がないこの部屋。
何かおかしいと思った。
これ?
これで、そんなに引っかかる?
私はそんなに鋭い人じゃない。
だから、他にも何か、少し変わった所があるはず。
ダメダメ。
調べないんでしょ?
そして時計で確認した時間は6時。
「ありがとねっ」
私は明るくそう言い、バッグを肩にかけた。
「あっ、こちらこそ……」
私は健くんと玄関の外へ。
ここまで来てくれるんだね。
「じゃあねっ」
「あれっ、帰るの?」
まるで他の人のようなことを言い出す健くん。
あっ、翔くんだ。
「うん。ありがとね」
私はそう言って敷地から出ようとした。
「あのっ」
うーん。
私を呼び止めるくらいだから、健くんかな。
私はその声に振り返った。
「信じてる!」
健くんのこんな姿、初めて見た。
こんなに、必死に何かを伝えようとしてる、健くん。
私は今、どんな顔してるだろう。
とても可愛いとは言えないだろう。
「初めて信じたっ」
健くんの、初めて聞く大きな声。
何ともない人なら少し大きいくらいだけど、健くんだと
かなりの声量。
「健くん……」
「えっ、健?」
私達の声に何も言わず、健くんは続けた。
「夕里と居る時は何も考えてなかった」
もう、泣きそうなんだけど。
健くんが、こんなに必死に伝えようとするから。
右手で自分の制服を握って、左手では翔くんの服を
握って。
今にも泣きそうな顔で、裏返った声で。
「だから、だから……」
健くんの声がどんどん小さくなっていく。
それにもまた、泣きそうになる。
「健?」
弟の翔くんでも心配になるほど。
「ごめん……なんでもない…」
ついに健くんの頬を涙が伝った。
そしてそのまま崩れ落ちそうになった健くんをそっと
支える翔くん。
「健くん……」
私はついに玄関の中に入った。
「夕里……」
「ん?大丈夫。ここに居るよ?」
健くん……どうしたのよ。
「健くん?」
「ゆり……」
「ん?」
その場にしゃがみ、膝の中に顔をうずめるようにして泣く健くんはとても小さかった。
立ってるとあんなに高いのに。
細い人だからね。
私は健くんの小さな背中をさすり、翔くんは健くんの頭を優しく撫でた。
「はい。終わり」
もう終わり間近だったらしい。
時計を確認すると、残りの授業はもうない。
「夕里」
健くんが何かを決心したように私の名前を呼んだ。
「なに?」
「今日……暇?」
健くん……
最高に嬉しかった。
「うんっ」
「じゃあ、今日……来て…くれない……」
久々にかなり緊張した健くんの声。
最近、やっと少し緊張解けた気がしたんだけどな。
そうだよね。
ゆっくり行こう。
うん。
「健くんの家?」
健くんは小さく頷いた。
「良いよっ。行こっ」
「ありがと……」
「ふふっ」
私は史上最高に明るい気分で帰りの準備を始めた。
もう、隣のイケメンくんは終わってるみたいだけど。
そして軽く挨拶をして、生徒たちが教室を出て行く。
「健くん?」
「あっ……ごめん…」
「また後にする?」
「いや……今日がいい…」
「そっか」
私は笑って言った。
笑おうとして笑ったわけじゃない。
健くんが誘ってくれた事が、心から嬉しくて。
「ごめんね……行こっ…か」
「大丈夫。部屋を調べるなんてしないわ」
健くんはほんの少し笑ってくれた。
良いよ。
少しずつ、笑えるようになって行こう。
笑えなくなったら笑わなければいい。
「夕里?」
そういえば健くんの私の呼び方、『さん』がとれたね。
「よしっ!行こっ!」
私は教室を飛び出した。
少し歩くと、健くんの家に着いた。
「友達で、いいよね……」
健くんが玄関の鍵を開けながら聞く。
「うん」
誰か、居るのかな。
なんとなく緊張してきた。
健くんが緊張を落ち着かせるように呼吸をして玄関の
ドアを引いた。
「あっ、健」
「翔……」
えっ、どっちがどっち?
声そっくり。
聞き分けるには大分時間が必要。
「おかえり」
「ただいま…」
「どうした?」
「ガールフレンド」
友達、じゃないんだ。
ガール、付けてくれるのね。
「へぇ〜。ファーストフレンド」
そのまま。
「あっ、弟」
健くんの表情に少し余裕が出てきた。
良かった。
「どうも」
うわっ、顔もそっくり。
もう、絶対分からない。
ケンとショウ?
「あっ、宮田夕里、です……」
「へぇ〜。健にはもったいなくね?」
兄弟っていうより、友達みたい。
健くんはそんな弟に鼻で笑い、私を部屋に連れて来た。
凄い綺麗な部屋。
私にその収納能力を分けてほしい。
私の部屋は誰にも見せられない。
散らかり放題。
けど私の部屋より今は健くんが心配。
「大丈夫?」
「あ、うん……ごめんね…こっちから呼んだのに……」
「気にしないで?ってか、本当に綺麗な部屋だね」
「そう…?」
しばらくこのままでいよう。
大丈夫だよ。
ゆっくりで。
よく私を呼んでくれた。
うん……でも、綺麗、だけど明らかに何か……
窓は、一見普通だけどこれ、何て言うんだっけ。
警察のドラマに出てくる。
片方からは鏡に見えてもう片方からはそのまま見えてる
ってやつ。
モノは知ってるけど名前を知らない。
それが私。
あれっ、『部屋を調べるなんてしないわ』って
言ったよね。
ガッツリ調べてる。
「夕里?」
「あっ」
バレた。
バレないわけないか。
「ごめん…」
「あっ、別に…」
どうしようか。
「あっ、何か言おうとしたの?」
「えっ……」
「私を呼んでくれたじゃん?」
これで、良いかな。
「あっ、うん……」
「良いよ。ゆっくりで。またいつでも来るし」
こんな事、言っちゃって良かったのかな。
また来るとか、怖いよね。
本当に言葉には気を付けないと。
私の一番苦手な分野。
「あのさ……」
呟くように、けど確かにそう言った健くん。
「ん?」
「俺……あの…いや……」
「大丈夫。私は居るよ?」
私は膝を抱えて座る健くんの前にしゃがんで言った。
危ない。
もう自分でも自分が何を言うか分からない。
『待ってるよ。健くんが言えるまで』そう言いそうに
なった。
待ってるとか、プレッシャーだし。
自分で分かってるつもりなんだけどな。
実際は全く分かってない。
勉強しよっかな。
「あっ、ごめん……」
「いや……」
私は健くんから少し離れた。
そして携帯で時計を確認した。
そういえば、時計がないこの部屋。
何かおかしいと思った。
これ?
これで、そんなに引っかかる?
私はそんなに鋭い人じゃない。
だから、他にも何か、少し変わった所があるはず。
ダメダメ。
調べないんでしょ?
そして時計で確認した時間は6時。
「ありがとねっ」
私は明るくそう言い、バッグを肩にかけた。
「あっ、こちらこそ……」
私は健くんと玄関の外へ。
ここまで来てくれるんだね。
「じゃあねっ」
「あれっ、帰るの?」
まるで他の人のようなことを言い出す健くん。
あっ、翔くんだ。
「うん。ありがとね」
私はそう言って敷地から出ようとした。
「あのっ」
うーん。
私を呼び止めるくらいだから、健くんかな。
私はその声に振り返った。
「信じてる!」
健くんのこんな姿、初めて見た。
こんなに、必死に何かを伝えようとしてる、健くん。
私は今、どんな顔してるだろう。
とても可愛いとは言えないだろう。
「初めて信じたっ」
健くんの、初めて聞く大きな声。
何ともない人なら少し大きいくらいだけど、健くんだと
かなりの声量。
「健くん……」
「えっ、健?」
私達の声に何も言わず、健くんは続けた。
「夕里と居る時は何も考えてなかった」
もう、泣きそうなんだけど。
健くんが、こんなに必死に伝えようとするから。
右手で自分の制服を握って、左手では翔くんの服を
握って。
今にも泣きそうな顔で、裏返った声で。
「だから、だから……」
健くんの声がどんどん小さくなっていく。
それにもまた、泣きそうになる。
「健?」
弟の翔くんでも心配になるほど。
「ごめん……なんでもない…」
ついに健くんの頬を涙が伝った。
そしてそのまま崩れ落ちそうになった健くんをそっと
支える翔くん。
「健くん……」
私はついに玄関の中に入った。
「夕里……」
「ん?大丈夫。ここに居るよ?」
健くん……どうしたのよ。
「健くん?」
「ゆり……」
「ん?」
その場にしゃがみ、膝の中に顔をうずめるようにして泣く健くんはとても小さかった。
立ってるとあんなに高いのに。
細い人だからね。
私は健くんの小さな背中をさすり、翔くんは健くんの頭を優しく撫でた。
