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Best Friend〜姿を変えた君と〜


さっきから俺のそばに居続ける翔。

特に話もなく。

戻れとも言いづらい。

そして。

愛生にはどうするか。

俺はただ、見えもしない天井を見つめた。

正直確かに愛生にはそばに居てほしい。

愛生はいつも居てくれたから。

そして、一番最初に気付いてくれた。

別に気付いてほしかったわけでもないけど。

愛生も他人なのに。

けど、愛生には居てほしかった。

「健」

「ん?」

「何があった」

翔にはいつも気付けばバレてる。

「何が」

「何もないならいいけど」

俺は翔から目を逸らした。

電気消したから翔には見えないけど。

「誰にも気を遣わせない方法ってないのかなぁ」

翔が少しわざとらしく言う。

俺は携帯の仄かな明かりに照らされてる翔の顔を見た。

それに気付いた翔が続けた

「んな事考えてんだろ?」

「別に」

「愛生と最近話してないでしょ」

なんでそこまで分かるかね。

「最近元気ないもんね。喧嘩でもした?」

「喧嘩じゃない」

あっ。

自分でも思うほど嘘が下手。

「なら何?」

翔の話し方が少しずつ優しくなってくる。

「なんでもない」

「そっ。言いたくないなら良いよ」

そう言って翔は俺の部屋を出た。

それを確認すると自然と涙が横に流れた。

またか。

最近よく泣く。

直前まで泣きたくもなかったのに。

気付けば涙が頬を伝う。

「はぁ……」

俺はゆっくり起き上がりその涙を拭った。

何も見えないほど、暗いこの部屋で。

そして机の電気をつけた。

そうして手に持ってるのはあの写真。

『その人も、銀杏が大好きだったから』

夕里に勇気を与えられる人、か。

どんな人なんだろ。

その人が、この木にね。

中学生で、か。

早すぎだろ。

俺は携帯で時間を確認した。

9時半。

俺は部屋を出た。

翔と、同時に。

「健、どした?」

「あ、ちょっと……」

俺は翔にそう言い、家を出た。





家からしばらく歩くと、夕里と来た時と全く変わらない
この場所に着いた。

街灯が数本立ってるくらいで薄暗いこの場所。

昼間はあんなに明るかったのに。


若い男女の声が聞こえてきた。

俺は咄嗟に暗くなってるところに隠れた。

そしてその二人がこの場所に夢中になってる間に家に
向かった。

「えっ、ちょっ……」

「えっ?」

ああいう声一番嫌。

なんとなく関係のありそうな声。

関係なんてあるわけないのに。

知ってる人に見られたような感覚。

俺は少し早めに歩いた。

「健くんっ?」

俺はついその声に立ち止まった。

けど振り返ることはできなかった。

「やっぱり健くんだ」

「えっ?健?」

俺は声の主が分かると、やっと振り返った。

「あっ……」

夕里と優。

「どーしたの?こんな時間に」

「いや、なんとなく……」

「そっか。ここいいよね。大好き」

唯一あの人に会える場所。

「あっ、じゃあ……」

「おっ、うん。気を付けてねっ」

俺は頷き、やっぱり少し早めに家に向かった。

夕里と優だったのに。

俺は一度深呼吸し、さらに歩きを速めた。


そう歩いていると結構早めに家の近くのコンビニの前へ。

そのコンビニの前を通り過ぎ、坂を下り、少し歩いた
ところを曲がった。

「健」

「っ!はぁ……いきなり話し掛けんなよ……」

「大丈夫?」

「あぁ……」

俺は翔を庭にのこし、自分の部屋に戻った。



そしてベッドに仰向けに寝た。

「はぁ……」

まだ呼吸が落ち着かない。

翔はそんな俺の隣の部屋に。

しばらくして呼吸が落ち着くと、考えるのは愛生の事。

普通で良いか。

本当に、ただの普通の友達。

また少しずつ近付けばいい。

それで愛生が落ち着いてきた頃に普通に接すれば。

近付ければ、だけど。

無理なら素直に諦める。

それ以上は無理なんだから。

なんでああ行ったかな。

どんなに考えても、悔やんでも何も変わらない。

分かってはいるのに、後悔する。

そして俺は、一番落ち着く自分のベッドで眠りについた。


<2016/07/31 13:40 秋の空>消しゴム
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