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Best Friend〜姿を変えた君と〜


宮河 健。

あたしの幼馴染。

そんな健が、今日は何か変。

何が変なのか、そこまでは分からない。

普段が冷たいなら、今日は暗い感じ。

どっちにしろ喋らないことには変わりないんだけどね。

そして気付いたら健が居ない。

あたしは辺りを見渡した。

「あ、居た」

健は何も言わず席へ。

疲れたのかな。

ここは他人の集まり。

他人は全員敵という考え方の健にとっては地獄。

まぁ、小・中もそうなんだけど。

けどその小・中はなんとなくどんな奴が来るか分かる。

特に、健なら。

健、他人の情報には敏感だから。

クラス替えの時はしばらく紙の前から動かないから。

疲れるよね。

的に囲まれてるんだもんね。

まぁ、そんなに気にしなくても平気だよね。

「愛生?」

「何?」

「そんなに気にしなくて大丈夫だよ。健だよ?」

あたしは優を見た。

優は可愛らしく笑った。

「今まで、ここまで来れたんだもん」

「えっ……」

優はもう一度笑った。

『今まで、ここまで来れたんだもん』

だから、だからダメなんじゃん。

もう、無理させちゃ。

一人で、頑張らせちゃ。

「健、ほんとに何かあったのかな」

「さらにクールになったのかもねっ」

クール、か。

「だと……良いけどね……」

「愛生?」

「健、見た目ほど……タフじゃないから…」

「もしもの時は、俺らがいてあげればいいじゃん」

あたしは頷いた。

ずっと、居てあげるけど。

あたしは晴れてきた空を見た。

アイツを、思って。

中学の頃の、アイツを。

いつも、夕里とあたしに、勇気と自信をくれた、アイツ。

今はもう居ない、もう会えない、アイツ。

どんなに願っても会えない。

忘れた頃に、夢や記憶を辿って会う。

「あの人なら、健になんて言うんだろうね」

「なぁっ」

アイツは今も、あたし達を見ててくれてるかな。

「あっ、健……」

健を追おうとすると優に止められた。

「優…?」

優は首を振った。

「大丈夫。健に関わるのは、必要最低限で良い」

「ゆう……」

「それが、今俺らにできること」

今、あたし達にできる事……

それが、ただ放っておくこと?

何も、言えることはないの?

「俺らにはできる事では、それが一番いい事」

「それが…?」

優は頷いた。

見たこともないくらい、力強い目であたしを見て。

「ゆう……」

「大丈夫。健だから」

あたしは頷き、席に座った。

「あれっ、でも……」

優は笑って頷いた。

そうだよ。

何も無かったってことも。

「ハハッ」

「愛生?」

「ハハハッ、んでもない」

なんで、こんなに必死になってるんだろう。

あたしはなんとなく夕里の席を見た。

「居ない……」

「えっ?」

「夕里が、居ない…」

「夕里は、行っちゃったのかもね」

健の、所に……

「ダメだっ」

「ちょっ、愛生っ!」

あたしは優の言葉に振り向かず、向かった。

健の、居るところに。

健の居る、あの場所に。





あたしは勢い良く屋上のドアを開けた。

居た。

健が、夕里と。

夕里は笑って、健はいつもの無表情でこちらを見る。

「健…」

「何」

えっ、直った?

「健……」

この、鋭い目。

「健だ……」

「何」

「良かった!心配させやがって!」

あたしは強めに健の腕を叩いた。

「もう寝たから」

健はそう言って教室へ。

屋上には、あたしと夕里だけ。

「晴れたね」

「なっ」

あたしは夕里の隣へ。

「アイツ、なんか教えてくれた?」

「うん。あの人が教えてくれたから、その通りにしたら、健くんも」

「さすがアイツ。何でも見てんな」

「ねっ」

もう居ないのに、会えないのに、すぐそこに居るような
安心感をくれる。

ただ、あたしたちは空を見るだけなのに。

そんな空に夕里は両手を、あたしは右手を伸ばした。

アイツからいろんな事を教えてもらうような、
そんな気持ちで。

「受け取れたね」

「あぁ」

あたしたちは顔を合わせ、笑った。

そしてそのまま教室へ。

「何も訊かないんだ」

「何を訊くのさ」

「健くんが、何を言おうとしてたから」

「別にそんなの気になんねぇよ」

何を考えようとその人の自由。

そう、思ってるはずなのにあたしはここに来た。

何か言いたくて、何か聞きたくて。

いろいろ難しい事ばっかり。

けどあたしたちは、そんな世界を生きている。

アイツの居ない、この難しくなった世界を。

辛い時は、空を見上げながら。

この太陽の光と、あいつの、あの眩しい笑顔を重ねて。

「うわっ」

「え?」

「フッ、別に?」

健が、笑った。

あたしに向けて、笑顔を見せた。

「男の子みたいだね。かっこいい」

「っせぇ」

あたしは自分の席へ。

「変わって帰ってきたよ」

「みてぇだな」

「結局なんだったの?」

「それはそのうち、健が教えてくれんじゃねぇか?」

そう言って優を見ると、優は笑ってくれた。

とことん見る人を癒す、可愛い笑顔で。

「今のうちに、話したい事は話しとこ?」

「誰と?」

「健……と…」

あたしはつい下を向いた。

「なんで?どっか行くの?」

「分かんねぇけど、そんな気がする」

「えっ、嫌なんだけど」

「あたしも嫌だけど」

「あ、そっか」

あたしはつい笑った。

「きっとすぐ帰ってくんじゃねぇか?アイツぁ案外
弱いから」

「健?」

「そんな強くないと思うよ?ってさぁ、あたし、さっき
言ったよね?」

「えっ、ほんとに?分かんない」

このバカが。

「まぁ、素直そうではあるよね」

「本人は隠してるつもりでも、あたしらから見たら全部
言ってっから」

「愛生かっけぇ〜っ」

「だろ〜?」

これがあたしの、キャラだから。

でもそれが、一番楽。

素でいるより、楽。

素が、分からないから。

「本当の自分を分かってる人って、居るのかな」

優が珍しい事を。

「そう居ねぇだろ」

「だよね」

「優?」

「いや、最近家族でこういう話になんだわ」

家族と話なんかするんだ。

え、うちが変なのかな。

うちは基本家族での話はない。

別に話す事もない。

けど仲が悪いわけじゃない。

「優の家族、大丈夫?」

「えっ?」

「病んでね?」

「ハハハッ、無駄な心配はするな」

無駄な心配。

無駄、かな。

「ただなんとなく、フラ〜ってそういう話になるだけ」

フラ〜って。

どんな感じでなるんだか。


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